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 おや。そこで立っていないでお入りなさい。睨み付けてもムダだよ。今日からお前はここで過ごすんだ。

 納得いかないって顔だねぇ。なぜここにいるのか本当に分からないのかい?

 まあいい、いずれ分かるさ。それより喉の調子はどうだい?

 ああ、無理に出さなくていい。別に声などなくても相手ができればいいからね。

 なぜ声が出ないのかって? お前は本当におバカさんだねぇ。罰に決まってるじゃないか。

 なんだっけ? その声は天上のようで、その容姿は妖精のごとく……だったか。

 確かに容姿は妖精のように可憐だ。声は分からないが、噂通りならばそのへんの男どもはコロッといくだろうねぇ。

 ただし性格は自分本位。自分が一番と思っているとか。自分よりも優れた身分、容姿の者には陰湿な嫌がらせをすると聞いているよ。

 本当の事だからってそういきり立つものではないさ。お前は知らないだろうが、社交界どころか国中の者が知っていることなのだからね。

 まあ、もうお前には関係ないことだ。そうだろう? お前はここで住み込みで働くのだからね。

 おやおや、本当に何もわかっていないのかい。お前が何をしたのか。その罰の内容も。

 ……そうさねぇ、あとで暴れられるよりは今知った方がいいかもしれないねぇ。

 リー、あれを持ってきてくれるかい?

 ああ、ありがとう。さて、これがお前の調査書だ。国がきちんとした調査をしてくれらから噓偽りはないよ。

 ここに書かれていることに心当たりはないかい?

 おやおや、顔を真っ赤にしてることからしてあるのだろうねぇ。

 そうさ、お前はこの国で一番尊い方に対し、やってはいけないことをした。それだけではない、かのお方以外にも四人も篭絡したというじゃないか。お前のその手腕はもう天性の代物さ。

 その可憐な容姿をいかしか弱い令嬢を演じ、その声をいかし心を揺すぶらせ、その肉体を持って篭絡した。ふふ、天性の娼婦そのものじゃないかい。

 ああ、紙を投げないでくれないかい。癇癪は醜いものだ、お茶でも飲んで冷静になってくれないかね。

 反論したくともできないからと言って、茶器を投げるのはいただけないな。お前、本当に元貴族令嬢かい?

 リー、悪いが片づけを頼むよ。私は別室で彼女とじっくり話し合う必要があるみたいだからねぇ。

ふふ、現実逃避もここまで来ると本当に醜いものだ。さあ、向こうでじっくり話し合おうじゃないか。





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