-2-
詰んだ…
舌を噛んだ瞬間、私はもう首吊り女に連れ去られると感じ、硬直した。
足を指からどかし、腫れ上がった自分の人差し指を見つめる。
ジンジンと痛みは熱を放つ。
ごめんね…
パパ…
ママ…
しかし、首吊り女の姿は現れない…
少し時間が経ち、まだ動けると思った私は泣きながら電話ボックスに入った。
家にはママがいる。
さよならだけ伝えなきゃ…
そう思い、受話器を取り、10円玉を入れた。
ガチャ
電話は呼び出し音を鳴らすことなく、取られた音がした。
「もしもし、ママ?」
私は受話器に向かって声を出す。
少しの沈黙の後――
声が返ってきた。
「こっちにいらっしゃい。」
知らない女性の声だった。
無機質で冷たい感じの声だ。
しかし、誰もいない所で首吊り女に連れていかれるという恐怖と戦っている私にはその声も救いの声に聞こえた。
「た… 助けてーーー。」
私は涙を溢しながら、無機質な女性の声に助けを求めた。
するとまた少しの沈黙――
「どうしたの?」
電話の女性の声に温もりを感じ始めた。
「道で… 転んで… 首吊り女に連れてかれるの…」
私は涙声のまま、女性の声に状況を伝える。
すると女性はクスッと軽く笑い、返事をする――
「首吊り女はただの作り話だから怖くないよ。 転んだの? 怪我は?」
「足を擦りむいた。 後指踏んでジンジンしてる…」
「あら、それは痛いね。 何も怖くないから、落ち着いて、気を付けてお帰り。
お家に帰ったらしっかり消毒して、ママにお医者さんに連れて行ってもらおうね。」
「うん…」
ガチャ
電話を切ると私はお姉さんに言われたように気を付けながら家へと帰った。
* * *
「あら、美幸! どうしたの? こんな遅くまで?」
家に着くとママが私を迎えてくれた。
私はママにしがみつき、涙ながらに起こったことを伝えた――
しかし、ママはきょとんとしながらしながら私にこう答えた。
「何を言ってるの? あの道に電話ボックスなんて無いわよ――」




