白猫と薬草 後編
「ライネ嬢は、ぼぐが、だずげる」
太っちょは、顔を腫らしたままで泣いている。
しかし、彼が持っているのは白い花ではなく、花が緑色で、葉っぱが白色と言う、珍しい花。
「ごの、緑花でなぁど、ライネ嬢はだずがらね」
太っちょはそう言いいながら、泣いている。
「どうして、そんな事を知ってるの?」
ココが首をかしげると。
太っちょは泣き始めた。
「わじが、悪いんじゃぁ!あんだ 毒づぐっでもうだがらぁ!」
ひとしきり泣く太っちょ。
「わじ、薬つくって、ライネ様を治してだ。ライネ様、昔から弱かったがら」
「でも、まちがえで、毒をづぐっじまって。すぐ、捨てたんだが、その後から、ライネ様の状態がわるぐなっで」
ココたちは、太っちょの前に座り込んで話を聞く。
「ずぐわがっただ。わしの毒のせいだど」
ぐしゃぐしゃの顔のまま、緑花を突き出す。
「ごれで、解毒薬がづぐれるだ」
二人で顔を見合わせるココとタタ。
「どうする?」
「嘘かもしれないけど」
「んー私は本当の事かもって思うな。このあたり、来るのも大変だもの」
「だよねぇ」
二人はしばらく顔を見合わせて。
「分かった。僕たちを襲ったのは見逃してあげる。だから、薬を作ってくれるんだよね?」
タタが太っちょを覗き込むと、必死に頷いていた。
白猫は、我関せずとでもいわんばかりに、顔をしきりに舐めている。
しかし、しばらく毛づくろいをしていたのに、突然顔を上げて歩き出した。
「あ」
「猫ちゃん」
双子がその後を追うように歩き出した時。
「助けてくれぇえっぇぇぇ!!」
大声を上げながら、3人が森の方から走って来るのが見えた。
後ろから、さらに大きな塊が3人を追いかけている。
「あれ、暴走猪だよ!」
ココが叫ぶ。
「ひぃぃぃぃ!」
逃げきれなかったのか。
森の中で、威圧的だったフォンは、猪の牙にひっかけられて空中に飛んでいた。
「ぼっちゃーん!」
筋肉ムキムキの男二人は、そんなフォンを助ける事もなく、逃げながら叫んでいる。
「あの二人弱いのかな」
「うん。めちゃくちゃ弱いと思う」
双子は、呆れた顔で見ていた。
猪は双子の方へと走って来る。
「やれる?」
「だれに言ってると思ってるの?」
ココは得意げに杖を取り出す。
タタは、自分の後ろにある剣を抜くのだった。
「ふはははっは!今回は見逃してやろう!されど、ライネ嬢を守るのは、このフォンだ!忘れるでないぞ!」
ぼろぼろになった服を引きずりながら、ムキムキ筋肉の男の背中で叫び。フォンは町へと帰って行く。
「なんなんだろうね?」
「ああいう人なんじゃない?」
双子はそんなフォンを遠い目で見送っていた。
あっさりと倒した暴走猪の背中の上で。
双子が、太っちょを連れてお館に戻ると。
館の中は大騒ぎになってしまった。
太っちょがいないために、きちんとした薬が作れなかったらしく、急いで太っちょに薬を作るようメイド全員が言っていた。
息苦しくそうにしていたライネは、太っちょの薬を飲むと、しばらくして穏やかな顔になり。
そのまま、眠ってしまう。
「ごれで、だいじょうぶ」
太っちょは、穏やかな顔でライネ嬢を見ている。
メイド達も安心した顔をしていた。
「ごめんなさい。みなさんに迷惑をかけてしまって」
目を覚ますと、ライネはメイドや太っちょに謝っていた。
「元気になられて、本当に」
泣きそうな顔をしているメイド達。
「本当に迷惑をおかけしました」
そう言って笑うライネ。
その足元に、白猫が甘えるようにすり寄る。
「ココと、タタにも、たくさん迷惑かけちゃいました」
申し訳なさそうに視線を下げるライネ。
「大丈夫!」
「私たち、友達だもの!」
笑う双子を見て。
ライネもついつい笑ってしまう。
「そうね。たくさん迷惑かけちゃたし。友達の証として、これをあげるわ」
ライネは、ベッドの宝石箱から三つのネックレスを取り出す。
星と、太陽と、月をモチーフにしているそのペンダント。
ココとタタに、月と太陽のペンダントをかける。
「おそろいよ」
そう言って、自分の星のペンダントを見せるライネ。
双子も自分のペンダントを持ち上げ。
3人で笑うのだった。
友達できた!