白猫と薬草
多分、前・後編になると思います。 題名変更します~
「今日は大丈夫だよね」
「うん。大丈夫だよ」
赤毛の男の子と女の子は、ちょっと必死な顔で町を歩いていた。
男の子は、タタ。女の子はココと言う。
女の子は、小さな杖をしっかり握っており、音の子は、剣を背中に刺していた。
二人が真剣な顔で見ているのは。
防具屋である。
二人は、顔を合わせると二人で同時に頷き。
防具屋に入って行くのだった。
しばらくして、二人はしょんぼりした顔で出て来る。
「背、、伸びてなかった」
「成長してなかった。。。」
二人とも、それぞれに気にしている所が成長していなかったせいか、落ち込んでいた。
決して可愛い装備が高すぎて買えなかったせいでも、カッコいい鎧が着こめなかったせいではないと思う。
そんな二人が、しょんぼりとしていると。
「にゃぁ」
そんな声がする。
「ココ。可愛く鳴いても、お金は出ないよ」
「タタじゃないんだから、動けなくなるような、高っかい、重っもい鎧が欲しいとか言わないから大丈夫よっ。まだ、私のが良心的だもん」
二人が、言い合っていた時。
「にゃぁ?」
また、声が聞こえる。
二人が顔を見合わせて、下を見た時。
「かわいいっ!」
ココは、思わず足元にいた生き物を抱きかかえていた。
「可愛いね」
タタも、その頭を撫でる。
「なー」
甘えるように、ココの手の中で自分の頭を摺り寄せるのは、真っ白な猫だった。
二人は、ひとしきり頭を撫でたり、体を撫でたりして猫の感触を楽しむ。
その後で。
「ねぇ。タタ。この子、迷子かな?」
「あ、かもしれないね」
二人は、その猫の首に、これまた可愛い、水色っぽい首輪がしてあることに気が付く。
「こんな可愛い子だもの。きっと飼い主さん、探してるよね」
「うん。だよね。もしかしたら、ギルドに捜索願いなんか出てるかも知れないから、聞いてみる?」
タタの言葉に、ココは小さくうなずく。
その間も、可愛く小さく喉を鳴らし続けココの腕の中で甘える白猫。
二人が冒険者ギルドに行ってみると。
「あら、その猫ちゃん。捜索願いがかかってる子じゃないの。確か、依頼があったわよ」
ギルドに入り、お姉さんに聞こうと思った瞬間。
お姉さんから、そんな事を言われてしまう。
「西の屋敷に住む、お嬢さんからの依頼ね。どうする?猫ちゃん届けるなら、依頼達成として、処理するわよ」
お姉さんにそう言われ、二人は即座に、「「お願いします」」
と同時に叫ぶ。
二人とも、新米冒険者。
達成できる依頼があるなら、一個でも達成して新米冒険者から早く卒業したいと思っていたのだった。
依頼を受けた形にしてもらい、依頼主の屋敷に行く二人。
そして、依頼主の屋敷の前で、二人はぽかんと館を見上げていた。
「おっきい」
「すごい」
二人が感動するのも良く分かる。
依頼主の館と紹介された屋敷は、4階建ての大きな屋敷だった。
見た事はあるけど、絶対来ることは無いと思っていた大きな屋敷。
この辺りの屋敷は、全て平屋が多く、たまに2階建てがあるくらいで、2階建てでも、宿屋か超お金持ちでなければ建てれないくらい高いものなのに。
まさかの4階建て。
見上げなければ、屋根すら見えない建物を、二人とも口を開けて見上げていた。
そんな二人を無視して、ココの手の中から、白猫は飛び降りさっさと中に入っていってしまう。
「あ、まって」
「猫ちゃん」
屋敷の門番が、二人立っていたのだが。白猫が門の下に作られた猫扉をくぐるのを見て、険しかった顔が緩む。
その緩んだ顔のまま、小さな冒険者に気が付いた二人の門番は。
必死に顔を作り、威厳をつけるように声を張り上げる。
「ここは、ライネ様のお屋敷である!猫の捜索、感謝する。入って、お嬢様よりお話をいただくように!」
必死に声を張り上げているのだが。
目元がゆるんでいるため、そんなに怖くなかったのは秘密である。
二人は、そんな門番を見ながら、ニコニコしながら屋敷の門をくぐる。
中で挨拶されたメイドさんに連れられて、入ったのは女の子が寝ている寝室だった。
「あら、あなたたちが、私のみーちゃんを連れて来てくれたの?」
そう言う、女の子は、金髪の長い髪をした、人形のようにきれいな女の子だった。
年は二人とあまり変わらないくらいか。
女の子の方が少し年上に見えるが、少し顔色が悪かった。
「同じくらいの年の冒険者さんなんて、初めて見ました。お名前は?」
にっこりと笑う女の子。
「あ、タタですっ!」
「え、え、ココです」
二人は、少し緊張して、自分の名前を伝える。
そんな二人を見ながら。
「こんな場所で、ごめんなさいね。でも、年の近い方とお話をするなんて、久しぶりだから、なんか、嬉しいの。もし良かったら、冒険のお話をしてくだされないかしら?」
綺麗な顔でそんな事を言われて、タタが少し顔を赤くする。
それを見た、ココが、タタの足を力いっぱい踏む。
「いたっつ!何するんだよっ!ココ!」
「知らないわよ。デレデレしてる剣士様の事なんか」
「え、妬いてるの?」
「みっとも無いから、止めて欲しいだけよっ!」
二人が突然を言い合いを始めてしまい。
それを見た、女の子はコロコロと笑い始める。
「ほら、笑われちゃったじゃないか」
「知らないわよ。タタが悪いんでしょ」
まだ、言い合いを続ける二人。
ひとしきり笑った後、女の子は笑い涙を拭きながら、にっこりと笑う。
「楽しい冒険者さまたち。出来れば、お友達になってくだされないかしら」
「もちろんです」
「はい。私たちでよかったら、いくらでも」
二人とも、笑顔で返事をする。
「よかった。きっと、みーちゃんがお友達を探して連れて来てくれたのね」
そう言う女の子は、ほんとうに綺麗で。
タタはもちろん。ココまで顔を赤くしてしまうのだった。
二人は女の子、ライネと言う綺麗な女の子に勧められるまま一生懸命に今までの冒険を話する。
それをころころと笑いながら聞き続けるライネ。
しばらくそんな楽しい時間を過ごしてたんだけど。
突然、ライネちゃんが、激しくせき込み始める。
「ココ、何か出来ない?」
慌ててライネの背中をさするタタ。
「ダメよ。タタ。私、攻撃魔法しか使えないもの」
ココも泣きそうな顔をしながら、でも何も出来ない自分を責めるようにぎゅっと唇を噛みしめる。
咳の音を聞いてなのか、慌ててメイドさんたちが入って来る。
ライネを横にさせ、何か薬を飲ませていた。
しばらくしたら、咳は落ち着きそのまま、寝てしまうライネ。
「お嬢様は、お疲れです。お引き取りお願いできますか?」
メイドの一人にそう告げられ、二人はライネを心配そうに見るのだが。
他のメイドさんたちが、忙しそうにライネの回りを動き回っているのを見て、近づくことすら出来ない。
二人は何も出来ない事に、寂しさを感じながらその部屋を出ようとしたとき。
「お二人は、冒険者様ですか?」
ライネの回りで、ライネの介抱をしていたメイドさんの一人が、二人に声をかけてきた。
「はい!」
「友達になりました!」
元気に返事をする二人。
「今ので、薬が無くなってしまったのです。本当なら、きちんと依頼を出して、お願いしないといけないのですが。無理を承知でお願いしたいのです」
メイドさんが、頭を下げる。
「赤地の丘に生えると言う、白映草という薬草を取って来てもらえないでしょうか?遠くから見ると、赤っぽいのに、近くで見ると、真っ白に見える不思議な薬草なのです」
「「任せてください!!」」
その言葉に。
二人とも即座に返事をしていた。
「今日は、遅いのでこちらでお泊りください。お嬢様のお友達でしたら、何の不都合もございません。お食事もお出ししますので」
「ほんとうに?」
「やったー!温かい布団で眠れるよっ!」
そうメイドさんに言われて、二人は笑顔で喜ぶ。
冒険者は、遠慮していては出来ない仕事なのだ。