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瑞獣を探す旅に出た姫君  作者: はなもり
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これから 【第1章完】



久しぶりの太陽に皆が空を見上げ、その暖かさを感じた。

しばらくの無言の後、重い口を開いたのはルイジュだった。


「メイアン、今まで隠していたことがある。」


そうしてルイジュは母上であるメイズの死が病ではなく毒殺であったこと、その毒もおそらく福寿草であると推測されることを話した。


「……今まで黙っていてすまなかった。まだ幼いメイアンには伝えるのが躊躇われた。いや、それももはや言い訳か。俺は結局可愛くてしょうがないんだよ、メイアンが。可愛い大切な妹が見る景色が綺麗なものであってほしいと常に願ってしまうんだ。そんな自分のエゴでお前に伝えることを先送りにしてしまった。」


ルイジュはそう言うなりメイアンに頭を下げた。

次期皇帝でもあるルイジュが頭を下げることは誰が言わずとも、とてつもない重さであった。



「お兄様、顔をあげてください。」


ずっと黙って聞いていたメイアンのハッキリとした声が室内に響いた。

ルイジュがゆっくり顔を上げるとまっすぐと自分の兄の瞳を見つめ微笑み言った。


「大事なのはこれからです」


「どんなに悔やんでも恨んでもお母様は戻ってはきません。それでもお母様の死を無駄にはしてはなりません。そのためには今これからの行動が肝心です。お兄様は正しい判断をなさいました。わたしの身勝手な復讐心などどうだっていいのです。この国の民のために、この国の未来のために。」


「ああ…!そうだなメイアン。私たちは未来を作らなくてはならない。」



二人は見つめ合い頷きあった。

ただの兄弟でいられたのならどれほど良かったか。

どんなにねがってもルイジュはこの国の皇子であり次期皇帝で、メイアンはたった一人の姫でありいまや神の巫女でもある。本音でぶつかり合うにもそれ相応の代償が伴う。だから、メイアンは精一杯の強がりを言ったのだった。





今後のことはミハクやルイジュたちで今一度現状を整理してから、と言うことになり一同はルイジュの部屋を辞した。

最後に部屋から出たのはメイアンだった。

扉を閉めるなり部屋の前にしゃがみ込みこらえきれず静かに涙をこぼした。


「メイアン」


ハクジがメイアンの前にしゃがみ込み顔を覗き込む。先に部屋へ戻ったと思っていたのに。

ハクジはメイアンを待っていたのだろう、ただ側で涙を流すメイアンを見つめていた。


「…メイアン、ずっと嘘をついていてごめん」


絞り出すような声だった。

いつも将軍という若くして手に入れた役職に見合うよう背筋を伸ばし腹から声を出すハクジとは思えないような、そんな声だった。


「……別に気にしていないわ」


それはメイアンとしては本心だった。

ハクジが瑞獣ハクタクだったこと、それについてずっと隠していたことは正直驚きはしたが大した問題ではなかった。ハクジはハクジだから。幼い頃から兄の側でメイアンを可愛がってくれた少し無愛想な優しい人。瑞獣だから、隠し事をしていたからといってそれが揺らぐようなものではなかった。



「お母様が……あの時徐々にやつれていくのは病のせいだって、仕方のないことだって幼いながらできることは何もないのだと思っていたのよ。それは今でも揺らがない。私はまだ小さかった、きっと毒だってわかっても何もできなかったはず。それでも……。それでもあんなに優しかったお母様がどうして誰かの悪意によって殺されなければならなかったの!あんなに…神様のように優しかったのに……。もっと出来ることはなかったのかって思わずにはいられないわ。」


嗚咽を漏らしながら兄の前では言えなかった言葉が溢れ出てくる。

兄は優しいから。今回私に言うのだってきっと悩んだのだろう。

私が復讐に燃えてしまったら兄が悲しむ。そんなこともわかっている。

でも、それでも、メイアンは母の死について徹底的に問い詰めてやりたい気持ちでいっぱいだった。


「メイアン、あとはルイジュに任せるんだ」


ハクジはメイアンの涙を自身の服の袖口でそっと拭いながら言った。


「君に綺麗な景色だけを見ていてほしいと思うのはルイジュだけじゃない。俺も……そして亡くなったメイズ様もきっとそうだ。それはたとえ誰に責められても決してメイアンの責任などではなく周りの、俺たちの責任だ。願わくばメイアンはずっと俺たちが守る小さな世界で笑っていてほしいと思ってしまうんだ」


そんなことできるはずも無いが、とハクジは自嘲めいた笑いをこぼす。


「私はそんなこと望んでいないわ。自分の足でこの国の大地に足をつけきちんと立っていたい」


「ああ、わかってる。だからこそ俺を……」


「俺を?」


しばらくの沈黙の後ハクジは何かを小さく諦めたような、よくわからない顔で言い直す。


「いや、瑞獣たちを常にそばにおいてほしい。俺たちは丈夫だから」


「貴方達をわたしの盾にしろというの?そんなことだってわたしは望んでいないわ!」


「違う、違うんだ。わかってる。でも、俺は…俺たちはメイアンを守りたいんだ。それが俺たちの存在価値なのだから」


ハクジの真剣な瞳にメイアンはこれ以上の反論が出来なかった。

瑞獣達の存在価値。この国を繁栄させ、賢帝と巫女を守り支える。

メイアンがその役割を拒否なんてできるはずが無かった。


「……貴方達を盾になんかしない」

「メイアン!」

「共に、背中を預けて戦えるように……たとえ武力がなくともわたしなりの戦い方でこれからの未来、貴方達と対等でいられる努力をするわ」


メイアンはそう言うとすっくと立ち上がり、ひざまづくハクジに手を差し伸べた。

ハクジは小さく微笑みを浮かべるとその小さな手をとり立ち上がった。


「承知いたしました。私の姫君」



「ちょっと何してるのよ〜!早く来なさいよお〜!」

「あ!おい!俺のメイアンに触るな!」

「…メイアン顔赤いよ」

「ふふ、仲良しですね」


なかなか来ないメイアンとハクジを心配した瑞獣達が口々に声をかける。

メイアンはその光景を見て涙をこらえたような表情を隠し花が開くような笑顔を見せた。


「今いくわ!」




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