幽霊は都合の良い世界で生きたい
幽霊になった私の七転八倒。@短編100になりました!!
夢かな?
最近ラッキー展開目白押し。
友達ともなんかいい感じで、遊びに誘ってもらえたり飲みに行ったり。
好きな人が彼氏になり。
仕事も絶好調。
億劫な上司や取引先ともツーカー、理解してもらえるしすぐにオッケーしてもらえるし。
自分がハッピーだと、ちょっと困っている人にもすんなり親切してあげちゃえるし。
で、1の親切が10の大きなお返しとなる。
そんなラッキーはいつまでも続かない。
そのうち終わる。
・・・ま、いっか!
終わりが来るまで堪能しよう。
なんて思っていたけど、ハッピーな人生・・
それは突然崩壊していく。
友人が彼氏と隠れて付き合っていて。何故か友人に一方的に責められて。
仕事でミスしたのが何故か私のせいになっていて責められて。
取引先が勘違いしていたのに、私が責められて。
困っている人がいたけど、私も一杯一杯になっていたから無視したら喰ってかかられて。
ドン、と突き飛ばされ・・車道に転がって、キキイイィとタイヤの音、暗転・・
ああ、参っちゃったなぁ・・
私、死ぬのかな?
ここで都合いい展開って言ったら、異世界転生とか転移でしょ?
この嫌な世界から跳ばしてくれればいいなぁ。
いいえ、そのまま死んでもいいや。
転生した先で、また人生苦労するなんて御免だわ。
そうだなーー・・
もしも異世界転生出来るなら、小妖精とかになりたいなぁ。
フワフワ飛んで、花の蜜を啜ったり、美味しい果物を齧ったりして呑気に過ごしたいな。
あら?
私透けてる。
私の体、ベッドに横たわっているわ。どうやらまだ死んではいないようね。
私は寝ている自分の体の上に寝て・・・
幽体離脱ぅ〜〜〜♪
なんかやってみた!誰も見ていないっつーの。
バカ〜〜。
そっかー、私幽霊になったんだねー。まだ死んでないけど、そのうち幽霊・・浮遊霊?
それとも恨みで地縛霊になるのかな?
恨み・・・
彼氏と友人と会社の上司と取引先の部長と突き飛ばしたおっさんと・・多いな?
いやいや、いいんだもう。
死なせて欲しいなぁ。
そして、無になって、記憶も消して真っ新になって再生したい。
この世界でもいい、異世界でもいい。
もう私でいたくない。
人との付き合いも、恋も、仕事も・・頭を使いたくない。気を使いたくもない。
私は人生頑張ったわけではないけど、傷付かなかったわけでもない。
友人にも、彼にも裏切られたし。
上司にも取引先にも信用してもらえなかったし。
見知らぬおっさんに・・これはどうしようもないか。
はあ、もういいや。
もういいや。
そのうち死んじゃう私に、何をしろと。
私はこの世界からもうすぐいなくなるんでしょう?
もういいや。
転生も無いようだし。
浮遊霊っていつまで浮遊するものなのかな?
もしかして完全に死んでいないから、転生も無しかな?
転生したいわけじゃ無いけど、こうしてフワフワ存在しないといけないのかな?
フワフワ小妖精に転生したかったけど、同じフワフワでも浮遊霊?
勘弁して欲しいなぁ・・
私はフワフワと漂い、病室を離れる。
フワフワ〜・・・
病院は会社の近くだった。
ちょっと見に行こう・・・
私のデスクに・・何と花瓶が置かれていた。
まだ死んでいないんだけどなぁ・・・死にそうだけど失礼しちゃう。
窓をすり抜け、デスクに近寄ると・・
部屋の皆が私のデスクを見、そして上司の方を見る。
こそこそと何か言っている。
あの書類、課長のところにあったんでしょ?
そうなのよー。彼女に偉そうに説教してたくせにね。
自分の勘違いだったんだって?
酷えなぁ・・俺も同じことされたんだよな、この間。
そうなんだ。あの机、書類もぐしゃぐしゃだもん、失くすわよねぇ、あれじゃあ。
可哀想よね・・事故に遭ったんだっけ?彼女。
頑張ってたのにね・・課長のフォローもしてたんでしょ?
俺はもう御免だな、あんな上司のフォローなんか。
・・・そうでしたかー。
本当、ぐしゃぐしゃだもんね、課長の机。
まあ、私のミスで無い事がこれでみんなに分かってもらえたんならいいや。
でも花瓶飾るの時期尚早ですよーーー。
もしかして、取引先のミスも分かったかもね。
まあ行かないけど。
フワフワーー・・
私はまた外に出て漂う・・景色はそろそろ夕暮れ。
駅前は繁華街で賑わいだす頃だ。
彼とよく待ち合わせた飲食店に、何気なく漂い近付くと・・
あらま、友人と彼がいるわ。まあこっそりと付き合ってたんだし・・知らないうちに彼を盗られてたし。
でも私と行きつけの店に他の子と行くとか、なんか残念だな、彼。
二人で行くと、いつも彼はこの店の目玉焼きハンバーグを頼むんだよね。
旨ーーい!って頬をリスみたいに膨らませてさ。
それが可愛くて、嬉しそうに食べるの見てたら私も嬉しくなって。
・・・楽しい思い出だった。
あの可愛い顔を、友人にも見せてるのかな。悔しいけど、もう今更だね。私幽霊だし。
席に着いた二人は・・・笑っていなかった。
頼んだのも彼はコーヒー、彼女はカフェオレだ。あれ?ここの食事は美味しいよ?何で頼まないの?
あんたの好きな目玉焼きハンバーグは?
あ。もしかして、彼女と来る時は店一番人気のおしゃれなカフェメシだったのかな?
私と一緒の時は『お前には気を遣わなくていいからな〜』なんて言ってたけど、それって『雑な扱いでもいいよね』って意味だったのかなー。私、好きな人が恋人になって浮かれてて分からなかったよ・・
大好きだったからすごく泣いたよ。
私を振って友人を取ったんだから、もっと楽しそうにしろ。そうじゃなきゃ私が浮かばれない。
てか、幽霊になって浮いてるけどね!自虐乙!
「やっぱりお前と付き合えない」
「はぁ?」
『はぁ?』
彼が言ったセリフに友人が聞き返し、私も思わず同じく聞き返してしまった。聞こえてはいないでしょうけどね。
「お前とこっそり遊ぶのは刺激があって楽しかった。でもそれだけだ。俺が間違っていた」
え。
私はポカンとして聞いていた。
友人はテーブルを両手でバンと叩いた。
「遊びって?!私を好きって言ったじゃない!」
「雰囲気に流された。言えばお前も喜ぶと思ったし」
ええー・・酷いな彼。でも友人は美人でグラマーだ。モーション掛けられたら、つい浮気心に火が付くのも分かる。
「あいつが入院した病院に俺の友人が勤務してるんだけど、お前の事色々教えてくれたぞ。友人の彼氏を誑かすのが趣味らしいな。まんまと俺も引っかかった口というわけだ」
そういえば・・彼女、他の友人に意地悪されているなんて言ってたけど・・確かその子、彼が浮気をしたとか言っていた。
あ、ああ〜〜・・そういう事かぁ。友人と付き合うようになったら私、その子と疎遠になっちゃったんだよなぁ。
あちゃー。付き合う友人間違えてたわー。
でも彼も悪いよね。
私はもういいから、二人で話し合って頂戴・・
フワフワ〜〜・・
私は店を後にする。
病院に戻り、自分の寝ている姿をじっと見つめる。
私は死ぬのかな。
そしたらこのまま浮遊霊なのかな。
恨みとかはもうなんか無い感じがするし、地縛霊になる気もないし。
あ。
なんか私・・・消えていく・・・
転生するなら小妖精一択で。
死ぬならさっさと頼みます・・・
結局私は生き残った。
「死にぞこなったっ・・・!!」
このセリフが持ちネタとなった。自虐ギャグ、乙。
退院後初出勤の日、あのいけ好かない上司が謝った。
驚きすぎてつい『死んでみるもんですねぇ』なんて言って、周りを一瞬凍らせた。
ムードメーカーの出来る同期が、ナイスフォローをしてくれて何とか収まったけど。
取引先の部長も自分が言った事だったと思い出してくれて、こちらからも謝られた。
で、私を突き飛ばしたおっさんはやらかしたことの大きさに正気に戻ってから気付いて・・
刑務所に入れてやるのもなんか後味が悪いので、慰謝料と治療費で示談、和解した。
おっさんの家族に感謝された。まあそうでしょうね。
『死んだらそれで終わりですし、生きてますからチャラに』と言ってお別れした。
さあ、ここからが・・面倒だ。
元彼の土下座、謝罪、復縁が畳み掛けられ、私は逃げる日々。
そしたらね?
あの出来る同期が私を庇ってくれたんですよ。
そしたらまた加速するのですよ、恋心が。
今更モテ期?
二人の男の人に告白されるなんて、もう無いでしょう!
1年付き合った元彼と、入社してから4年、ずっと仕事で一緒だった同期・・・
で、今日は結婚式です。
お相手は出来る同期とです。当然です。
浮気、いくない。
「死に損ないなんかもうほっといて新しい子探しなよ」
元彼に言ったら、黙って頭をペコっと下げてくれた。いい人だったけどね・・
事故がきっかけで反省しようが、したもんは覆せない。
仕事も信用第一ですしね!
私にとって都合のいい世界で、これからも頑張るか!
去年の4月に短編投稿を始め、ついに100となりました。
これからも思いのまま書いていこうと思います。