Mission:0 Full Blood Bullets
※注意※
このお話は、【鉄血の軍人の異世界譚】のリメイクとなります。あらかじめご注意ください。
炎。
真っ暗な暗闇の中でごうごうと燃え盛る炎。
やけに大きく響く、心臓の鼓動。
炎の光を受け、何かがぬらぬらと赤く光っている。
灰色のコンクリートの床。そこに液体が広がって染みていく。
赤。黒に近い赤色。
自分の血液だ。
痛い。あぁ、痛い。
「ひゅー…ひゅー…。」
灼熱の刃に焼かれ、斬り飛ばされ無くしてしまった左腕。
無理な体勢を取り続け、何度もぶつけた痣だらけの左足。
機関銃の追撃を受け、大量に穴が開いて皮だけで繋がっている右足。
そして.....胴体を大きな槍が貫いている。
「ひゅー………ひゅー………」
血液を無駄に外へ垂れ流す心臓の鼓動と、あたしの掠れた呼吸音だけが聞こえる。
あたしを貫く槍は後ろの壁に突き刺さっており―――身動ぎさえできず微動だにしない。
「ようやく折れたか、“聖剣”。」
そんな自分にかけてくる声があった。
少し高い、男の声。
眼だけを上に見上げると、そこには炎の光に照らされる男の姿があった。
黒いベレー帽に、黒いコンバットスーツに身を包み、階級の高さを表す紋章を身に付けている。わずかに見えるスキンヘッドにはタトゥーが見える。
「あれほどに勇猛果敢で強いお前も、こうしてみればボロクズだ。これが米陸軍最強の第12分隊の…リーダーか。」
男はロボットのような凍てついた表情のままだった。
「よくやったよ、お前らは。本当によくやった。この『俺』がここまでやられるとは想定していなかった。」
男は腰元から拳銃を取り出し、チャンバーチェックを行いながら言った。
「あともう少しだった。」
チェックを終え、男は拳銃の銃口をあたしに向ける。
「ひゅー…ひゅー…。」
「息さえまともにできない…か。安心しろ。さっさと楽にしてやるさ。一足先にみっともなくやられた、仲間と共に……クソ溜めのなかにでもな。」
がちゃり、と奴の手の指が引き金に掛けられた。
「………。」
あたしは、意識が遠のこうとするを防ぐために拳銃を握る右手に力を込めた。それでも胴を大動脈ごと貫いた槍からあたしの血液が垂れ流されていくのを止められない。
もう、助からない。なにをどれだけ尽くしたところで、終わる。
否。
こんなところで、こんな無様な死を晒してたまるものか。
それだけを確かな意志として右腕を動かす。
目の前の男に照準を合わせる。
本当だったら両手で合わせるはずのそれは、ボロボロの右腕だけでは持ち上げるにも苦労し、照準も定まらない。
「 ………これ以上戦ったところで何の利益もないだろうが。」
男はその様子を酷く淡々と見ている。何の感情も感じられない、黒い瞳が。
穴の空いた体で必死に右腕を動かし引き金を引き絞ろうとする。
あたしはふと思った。死というものはこうやって静かに訪れてくるものなのかと。
あたしは最後の力を振り絞って―――
―――拳銃の引き金を引く指に力を込める。
その時男の顔がはっきりと変わった。無表情から焦りの入り交じった何かに。
そうして男はこちらに向けた拳銃の引き金を引き絞る。
あたしが引き金を引き切る前に。
「この死に損ないが。」
撃つ。
たくさんの銃弾があたしのからだの中に撃ち込まれていく。
新たな激痛がいくつも生まれ。
真っ赤な体液が飛び散る。
からだの中に次々と大きな穴が開く。
何度もからだが衝撃と激痛で魚のように跳ねる。
意識がだんだん白くなっていく。
痛みと喪失感とがないまぜになっていく。
ぐちゃぐちゃとした思いが混沌と成り果て、あたしは涙を流す。
どうして。
どうして。
どうして。
やめて。
もうやめて。
やめてください。
だれか。
だれか。
たすけて―――
これは、あたしの物語。
理不尽ともいうべき運命があたしからすべてを奪い。
こことはまったく違う、不可思議な世界へ旅して。
あまたの人々と出会い。
そして―――再び異境の地で戦うお話。




