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Legend of Star Night  作者: パインティー
第三章 閉ざされし歴史
69/166

Record:12 さらに北へ  


 そんなこんなでしっかり羽根を伸ばし充分な休息が取れたおれたちは部屋に戻り、今後の作戦会議を行う。今後の道程はどうするかって話だ。

隊長クラウンが示した場所は三つ。第五大陸の東部にある「ザンティノーグ聖王国」の北海岸、第二大陸マルタ公国の西海岸が残りふたつの候補地ね。」

 どちらもここからは今まで来た道と同じくらいの距離か、もっと長い。まだまだ旅は長丁場ということだ。

「次の目的地はどっちにいけばいいんだ?」

 ウルは広げた地図の前で顎を手で支え、思考に入る。

「そうね………。」

 ウルはうんうん唸ってしばらくしてから、懐からデバイスを取り出した。文明の利器、スマートフォンだ。

「うん、ルートは生きているわね。」

 スマホで少し調べたあと、ウルは頷く。

 その様子から見るに、どっちの大陸も何かしら問題があるみたいに聞こえるけど。

「何かあったのか?」

「何かあったって………第五大陸は空前絶後のハリケーンが通ったってニュースになったし、第二大陸も世界最大級の火山が噴火して一部の地域にずっと灰が降り注いでいるのよ。」

「大ニュースじゃねえか!」

 おれたち三人は田舎出身でそういうデバイスなんて持っていないからな。そういうニュースをキャッチする環境になかったから知らないのも無理はないと思う。

「幸いどっちもいまは事態が落ち着いてきて、船で行くルートが復活しているわ。」

 そう言ってウルはスマホを懐にしまい、再度広げた地図を見る。

 世界地図で見て、おれたちはいま第一大陸の北端にいるわけだが―――さらに北へ向かえば第四大陸、東へ行けば第五大陸、その第五大陸の南に第二大陸があるって感じだ。

 ちなみに第五大陸を更にもっと東へ向かえば―――第一大陸を中心に描いた世界地図をぐるっと反対側に回って紅津国とその東方に着く。

「まぁ順当にいけば―――この第五大陸がここからの道だと近いんだからこっちからのほうが良いわよね。」

 ウルはその白く細い人差し指でつつーっと大陸から大陸の間をなぞる。ウルの言う通り、もし残りふたつの候補地へ行こうと思うなら、まずは第五大陸を目指したほうが良い。

 ここから出発すればどちらも同じくらいの距離だが、第五大陸から攻略すればそのまま第二大陸へ島続きで行くことができる。

「ちなみに飛行機ではいけないのか?」

「無理ね。第五大陸周辺は『おろし』が激しくて危険よ。」

「それで『颪嶺おろしやま大陸』と呼ばれるわけか………。」

 ジダゴが昨日調べた結果知り得た言葉を口にする。

 第五大陸には―――世界一巨大な山、へバイエスタが存在する。マンガみたいな形をしている釣鐘型の山で、白乃塔よりも遥かに高い標高三万メートルを超える。人間が生息できる高度一万メートルをゆうにぶっちぎっており、成層圏に突っ込んだ高さだ。

 そんな巨大な山から何故か吹き下ろされる『颪』という風が尋常じゃなく、おかげで第五大陸には飛行機で行くことができない。

「じゃあ船で行くしかないな。その船はここから出るのか?」

 世界最大の湾港ガリュースからは、ヴェルニトリアの玄関口でもあるここと世界各国をつなげる航路がたくさん結ばれている。

「当然あるわ。どうやったって長期間の船旅にはなるから………あなたにはまた辛い思いをさせてしまうけれど。」

 おれを見てウルが申し訳無さそうに言う。すでに今更だよ。

「気にしないでくれ。」

 これまでどれだけリバースしてきたと思ってるんだ。本当に今更だし、もう慣れた。

「よほどのことじゃない限りは大丈夫だ。薬ももらってるしな。」

「無理はしないでね。―――よし、じゃあ行程は決まり。」

 ウルは地図をテキパキときれいに畳み、懐にしまう。そしてスマホを取り出した。

「ちょっと隊長に連絡してくるわ。」

「はいよ!」

 そうしてウルは部屋を出ていく。残ったおれたちはゆっくり椅子に座ってだらーんと休む。

「また長旅になるなぁ〜。」

 ジダゴはニコニコしながらそう言った。この旅が楽しいらしい。よかった。

「そういえば………。」

 ジダゴの最終目的地は確か天廻大陸ガルガンタル。文字通り遥か高い空に浮かぶ大陸だ。おれにはそもそも行き方がわからないんだが、どうやって行くんだ?

「このままだとジダゴ、お前の最終目的地には行けないんじゃないのか?」

 ジダゴはそれを聞いてドヤ顔を浮かべる。なんでだよ。

「ふっふーん。よくぞ聞いてくれた。オレはな、昨日のうちに行き方を調べたんだ!」

 そしてジダゴは自前の地図を取り出した。ウルのよりはちょっと古くところどころぼろっとはしているが、しっかりした地図だ。

 おれとテルシアは地図が広げられた机の上に乗り出し、そのメモされたものをよく見る。

「天廻大陸ガルガンタル―――そう、それは遥かな高く、もはや夜並にブラックな空に浮かぶ天空の大地!」

 なんだか芝居のかかったジダゴの口上を聞きながら、ジダゴがメモしている内容を読む。ふむふむ、ガルガンタルは赤道線と交差しながらおおよそ半年でぐるっとこの星を一周する、と。まるで月みたいだな。

 地図上のラインを見るに、南半球と北半球を行き来している。

「ガルガンタルの高度は五万メートル以上。ぶっちゃけこの高さは異常だ。人間の住める高さじゃねえ。」

 もちろん酸素なんかない高度だ。というかここオゾン層だとかその辺じゃないか?

 ということは当然だが、飛行機でも行くことはできない。ロケットか何か―――それこそ宇宙に行く装備がないと無理な話か。

「何のためにそこにいくんだ?」

「何のために………そう、それはロマン! ただのロマンだよショート。」

 おれの疑問に終始ずっとドヤ顔なジダゴ。彼の生い立ちがどうであったかおれたちは何も知らないし、本当の理由をおれたちに伝えるつもりはないようだ。

「わかった。んで、どうやって、いつ行くんだ? 目星は付いてるんだろ。」

「さすがだショート! お前ならわかっていると思ってたよ。」

 机の上に広げられた地図のある箇所を、ジダゴは指し示す。

「ここだ!」

 第二大陸と赤道が交差する位置だ。そこは―――軌道エレベーターのある位置だった。

「ここにガルガンタルへ行くための道があるんだ。」

「そうなのか……軌道エレベーターから行くのか?」

「そうみたいだ。とりあえず軌道エレベーターに行ければいい。」

 高低差の情報がない地図上からは見えないが、とてもガルガンタルに行けそうなところには見えない。一体どうやって行くんだ?

「ここなら、わたしたちの旅の途中でガルガンタルに行けるね。」

「タイミングとしては第五大陸攻略後、第二大陸へ渡る途中だな。」

 そこでガルガンタルへ寄り道、と。

 見かけ上は確かに無駄のない計画だな。

「実際行けるかどうかはわからないけどよ、オレはやってみたいんだ。迷惑かけるかもしれねえ、今のうちに謝っておく。」

「いいよ。大丈夫、おれたちは気にしていない。」

 これからまた大陸を海を超えて渡るんだ。運が悪ければもう一個。もうそういう旅なのだとおれたちは最初から理解している。

「うん。大丈夫だよ、ジダゴくん。」

「おまえら………うぅっ!」

 急に男泣きを始めやがった。やめてくれや!

ガチャッ。

 おっ?

 部屋の扉が開き、ウルが入ってきた。話は終わったようだ。しかし………顔があまり浮かない表情だ。

 ―――ハッこれは………嫌な予感!

「えーっと………。」

「ウルちゃん…どうしたの?」

 苦虫を噛み潰したような表情を浮かべるウルは言いにくそうに言葉を紡ごうとしてた。

 テルシアも察したようだ。この短時間で何かが起こった。

 ウルは意を決したように深呼吸をする。

 そして、その言葉を放った。

 

「貴方達にも、第四大陸の調査に参加してもらうことになったわ。」

 

 ………。

 おれはため息を付きつつ、ウルが座れるよう椅子を差し出す。ウルは少し申し訳無さそうにしつつそれに座る。

「―――なんでまた?」

 ウルは経緯を説明する。

 時は少し遡り、おれたちが天廻大陸への行き方を話し合っているさなかのとき―――

 

 

 

 

 

 

『隊長、今大丈夫ですか?』

『ウルか。ちょうどよかった、こちらから連絡をしようと思ってな。』

『ちょうど…? 何かあったんですか。』

『いや俺の話は後にしよう。何か緊急の連絡か?』

『あっ、はい。これから行く目的地が決まりました。第五大陸のザンティノーグ聖王国へ向かいます。』

『………つまり、ヴェルニトリアではないと判断したわけか。』

『話によればかなり似ていたそうではあります。ですが諸々鑑みてここではないと断じました。』

『わかった。話は以上か?』

『はい、あたしからは以上です。隊長、何かあったんですよね? お話をお願いします。』

『あぁ。第四大陸の調査に、ウル、君の力も借りたい。連合に動きがあった。どこから仕入れたのか知らんが、駆逐艦一隻が第四大陸に向かっている。』

『駆逐艦………洋上型じゃないですね。』

『それと―――硝斗たち三人も調査に加わるよう言ってくれ。』

『民間人の彼女たちを? 彼女たちを第四大陸の調査に向かわせるのはあまりにも危険ではないのですか。』

『悪いが、これはお願いではなく命令だ。俺は今別件で手が離せない。最大限のフォローと手当は出す。詳細はハリスから聞いてくれ。』

『………わかりました。』

『すまない。』

 

 

 

 

 

 

 

「………ということで、申し訳ないけど第四大陸の調査に加わってもらうわ。」

 ………一応軍とは無関係な民間人のおれたちに「お願い」ではなく、「命令」、か。

「理由については、何も聞いていないの………?」

「ごめんなさい、何も聞けなかったわ。でも、隊長があなたたちに「命令」だなんて極めて異常事態よ。」

「何かのっぴきならない理由があるってんだな? それでオレたちに命懸けろって話かよ。」

 ジダゴもテルシアもかなり困惑している。おれもだ。

 あのクラウンが命令という形でおれたちに強制的に調査に加わらせる、だと?

連合テロリストか………。」

 第三大陸のときといい、ジン帝国のときといい、おれたちの旅路にしょっちゅう連合が絡んでくる。

 何なんだこいつらは。

 クラウンの命令と何か関係があるのか?

「もともと平和維持軍の小隊が調査の護衛任務を請け負ってるんだけれど、駆逐艦が動いていると聞いてあたしにも力を貸してほしいという流れね。」

「洋上型じゃない駆逐艦ってことは………大気圏・宇宙航行仕様のでけえやつか?」

「ジダゴくん流石ね。その通りよ。製造できる国なんて限られているのに、一体どこから仕入れてきたのかしら………。」

「マジかよ………。」

 ヘカ・クイスラムの首都で実施されたフリートセレモニーに参加した、あのふわふわ飛んでいた宇宙駆逐艦だ。

 それをテロリストが持っているのか?

 どうなってんだよ。

「とにかく、より危険な前線の方は平和維持軍の護衛部隊が担当するわ。あたしたちは後方、ハリスさんの護衛を担当。」

 これまで以上に危険で、特務隊の隊員も命を落としている第四大陸の調査に強制的に加えられる。

 ………クラウンの思惑が知りたい。

 なぜこんなことをおれたちにやらせる?

 ウルも聞かされていない以上、ここであーだこーだ考えていても仕方ない。そもそもなぜかおれたちは特務隊の監護下にある。頼んだわけでもなく、流れでこうなっている。

 おれの嫌な予感は胸の奥でずっとくすぶり続ける。

「明日にはここにハリスさんと軍の人、それに―――士兵団ストロヴァリアのメンバーが来るから、今日はとりあえず明日に備えて早めに休みましょう。」

 ウルは顔を下に向け、申し訳無さそうにため息を吐く。

「はぁ…本当にごめんなさい。」

 

 そういうわけで、おれたちは第五大陸へ向かう東、ではなく―――さらに北………第四大陸へ赴くことになった。

 とても危険な旅路になるだろう。念入りに備えなきゃならないな。

 

 

 

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