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Legend of Star Night  作者: パインティー
第一章 最果ての町の物語
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Record:4 滲み出る不安


 「ありがとう……ありがとう! 助かったぞ兄ちゃん!」

 「本当にありがとう! ゴロッソさんのところに向かうわ!」

 

 チンピラどもをボコボコに倒して町のひとたちを次々に解放しながら、おれたちは前に進んでいく。

 ボロ雑巾のようになっていくチンピラのうちひとりを掴み上げては尋問もやってはみるが………。

「おい。バントーラってやつはどこにいるんだよ!」

「誰が……フガフガ……教えてやるかバァーガァー! ……ガクッ」

 この通り尋問しても教えもせず簡単に意識を失うから情報を得られない。

「町の人に聞いてみた方が早いのかもしれない。」

「……それは盲点だった。」

 よし、次助ける人に聞くぞ! 

 もう大分助けたけど、あの町の軒数と人数的に考えてまだいるはずだ。

 おれたちは工場のさらに奥へ突っ込む。

「おうコラ! ずいぶんと好き勝手に暴れまわりやがって! もうお頭は黙ってねぇぞ!」

 またチンピラどもが増援をつれて出迎えに来た。いい加減うんざりしてきた。ちょっとガタイのいい奴や拳銃を持って武装してくる野郎も増えてきやがった。

「テルシア、そこ!」

「えーい!」

 互いのカバーをうまく回しながら、おれたちは敵を次々と倒す。

 

 おれもテルシアも、あの修行で体と技を鍛えずっと強くなってきた。

 二人で―――いや、あの時五年を共に修練を重ねたおれたちの同期は誰よりも強い絆を持っている。

 銃をもっていようが、数で押してこようが、この程度のチンピラなら読書片手間にいなせる。そんな簡単にやられるほどやわじゃない。

 

 ある程度倒し、残りが一目散に逃走した頃に、おれたちは捕らわれてた人たちを解放し、情報を聞き出す。

「あのクソ野郎をとっちめてくれるのかっ!?」

「あいつなら……ここから先を行って右に曲がった先の建物に……」

「あんたたちならやつらをやっつけられるよ! いい腕っぷしだ!」

 ようやく奴ら黒獅子団の根城の場所も分かってきた。

 町の人たちからの声援も受けておれたちは先へ急ぐ。

 ところで、おれはこのチンピラたちの正体を掴みあぐねていた。

「………こいつら一体何者なんだ…?」

 一応他所の国ではあるけど、ここは少なからず雷神の里の影響下でもあった。鎖国により里の影響が薄れて何か変なものが入り込んでしまったのだろうか。

 どこからやってきたのか。

「何もわからないけど、なんだか嫌な予感がするよ。」

 テルシアが言った言葉、おれもそう感じる。

 数年前に襲撃を受けた里の、一番近い町がこんな有様だ。

 

 考えすぎなのかもしれないが…。

 誰かが何かの目的をもって雷神の里に接触しようとしてる……そんな気がする。

 

「―――何もわからないこと考えても仕方ねぇ! まずは黒獅子団のやつらをぶちのめしてからだ。」

 おれたちはそう切り替えて、前に進む。

 とんでもなく重大な謎は残ったままだが、ヒントもなにもない状態で解けるはずもない。必要な情報が集まればいつかわかるだろう。

 

 そんなこんなでおれたちは敵の根城の入り口の前にたどり着いた。

 根城の前には当然のように通報を聞いて集まった敵がたくさん集まっている。さてここからどう動くか。

 おれたちは作戦会議をひそひそと始める。

「テルシア、ここからどうする方がいい?」

 目下の懸念事項はバントーラの強さだ。

 どこまで強いのか実際に目にしてみないことにはわからないが……

「………硝斗くんなら真正面から突っ込んでも良いんじゃないかな?」

 テルシアが何の気もなくそういった。

「……それはまた豪快だなぁ。」

 あまりテルシアのイメージには合わない豪胆な提案におれは口角が上がる。

「わたしたち、そんなやわな鍛え方で卒業した?」

 そうだな。

 あの五年間の修行は死ぬほどしんどかった。

 自分の手と足で生きるすべを磨き、強くなってきた。

 先達からの武術を教えてもらい、鍛えてきた。

 あるときは山の中で一ヶ月生き延びてみせたり、またあるときは岩を持ち上げぶち破ってみせたり、またあるときは―――

 ―――そんな修行の日々を過ごしてきたんだ。

「あれでテルシアは冗談抜きに死にかけたんだよな。」

「そうだよ! 璃子りこ先生、全然手加減なんかしてくれないんだから本当に……本当に!」

 特に一緒に修行をこなしてきたテルシアにとっては、大変厳しく辛いものだった。おれたち里の人間に比べて、テルシアの身体は成長が遅く弱かった。

「おれたちが一日で持ち上げたやつを一ヶ月かけてようやく持ち上げたくらいだもんな……。」

「あんな大きな岩をすぐに持ち上げるなんてできるわけないでしょ!? 1メートルだよ!? 普段あんな重くて大きいもの持ち上げるなんて無理に決まってるじゃない!!」

「そうなのか……?」

 当たり前のようにやってのけてしまったからこそ、しばしばテルシアとは感覚がズレてしまったりしてる。

 だからこそ、テルシアはおれの強さを客観的に理解しており、「笹川硝斗ならばこんなもの真正面から破れる」と分かっているみたいだ。

 

「それにしても…璃子先生、か。」

 その名前を久しぶりに聞いた。

 テルシアのお師匠で、近衛家に連ねる重鎮のひとりだ。修行についていけないテルシアを教え導き、鍛え上げたすごい女性だ。

 おれたちと同期の修行生だった近衛志乃のお母さんでもあり、頑固で古風な考えを持ち、他人に厳しく己にさらに厳しい。人一倍曲がったことが嫌いでよくも悪くも生真面目だ。

 娘本人である志乃からはオニババアと言われ、重じいからは融通の利かない娘だと言われている。

 先生と銘打ってるが、璃子先生は本質的に軍人らしく雷神の里の防衛の一端を担っている。里のなかで一番強い女の人は? と里の人たちに聞いて回ったら満場一致で璃子先生と答えるほど、彼女は非常に強い。

 いや、もしかしたら女の人に限った話ではなく、里で一番強い人かもしれない。

 そんな璃子先生の指導のもとで、今のテルシアへと成長できた。テルシアがこの町の戦闘で使ってた、あのしなやかさのあるスタイルは璃子先生直伝の体術だった。

「戦ってるときのスタイルで思い出したけど、璃子先生って特にテルシアに厳しかったよな。」

 その言葉を聞いたテルシアがふと、その五年前のことを思い出す。

「璃子先生、見送りに来なかったし…やっぱり不満に思ってたんだろうな。」

 それをふと思い出したテルシアは寂しそうな表情を浮かべた。

 おれたちもおれたち相応に厳しい修行が課せられたが、テルシアもテルシアで璃子先生直々に叩き折られてきた。

 でも、二人三脚でずっと頑張ってきたことは聞いている。

「テルシア―――璃子先生が見送りに来なかったのにはきっと理由があるはずだ。」

「……うん。わかってる。」

「―――なら良いんだ。全部終わったら里に戻って、また会おうぜ。」

「………うん、そうだね。また、会うんだ。」

 よし。

 話は終わりだ。

 おれは身体の柔軟体操を終えて戦いに備える。

 

 


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