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08.エクリプス


 ー1ー


 「敵に情けを掛けるな。お前が情けを掛けても、敵は情けを掛けてくれない。容赦なく、躊躇なく殺せ。躊躇うな、迷うな。敵は所詮敵でしかない。和解など不可能だ。殺せ、私のために、お前自身のために、殺すんだ」


 ルナの言葉は容赦がない。

 敵に対する情はないが、殺意もない。

 あるのは保身のみ。

 生き延びることだけを目的としている。

 たとえ敵を、人間を殺すことになってもルナは迷わずに殺す。

 生き延びる事こそが、彼女の生きる理由なのだから。


 「向こうの世界でお前が何をしようと構わない。だけどお前は私の従者だ。それを忘れるな。私の目が届かない所で死ぬなんて許さない。お前の命は私の物だ。それを勝手に失うなんて絶対に許さない」


 傲慢。

 我が儘。

 彼女の言葉はいつも自分勝手で棘がある。

 だけど、その言葉の中には優しさが隠れている。

 無理はするな、無茶をするな、怪我には気を付けろ。

 そして何より、死ぬな。

 遠回しではあるが、そう言いたいのだ。

 これまでの付き合いで彼女の性格はある程度理解した。

 だからこそ、そんな伝わるかも分からない言葉を使う彼女が面白いと思うし、守ってあげたいとも思えた。

 だって彼女は不器用だから、それでいて心が弱いから。

 ただ単に強がっているだけだと気付いてしまった。

 気付いた時にはもう彼女のためにと考えるようになっていた。




 ー2ー


 ルナの住むマンションの地下には訓練場と称した広い空間がある。

 なんでこんなものがあるのか疑問に思い、ルナに尋ねてみるも「必要だから」と要領を得ない返答をされる。

 他の住人はどう思っているのかと考えたが、すぐに止めた。

 そういえば、他の住人の姿を見たことがない。

 ルナに聞いてもまともな答えは返ってこないだろうし、取り敢えず考えないようにする。


 そんな地下に、自分とルナ、茜の三人が降り立つ。


 「銃の扱い方は教わったな?」

 「一通りは」


 地球での戦い方を学び始めて二週間。

 榊から銃の扱い方を学び、茜からは近接戦闘の手ほどきを受けた。


 「それじゃあ、見せてみろ」


 目の前に用意されているのはバラバラになった拳銃。

 それを組み立てて、銃弾を装填し、目標に向けて狙撃する。

 その一連の動作をルナに披露して二週間の成果を確認してもらった。


 「及第点といったところだな」


 特別速いというわけでもなく、むしろ遅い。

 それでも難なくこなせるようになった。


 「ただ、狙いが悪いのは頂けないな」


 ルナの視線の先には人型をした的が置いてあった。

 的の銃痕を確認すると、急所を外しているのが分かる。


 「射撃は向いてないのかなー。剣を振り回している方がしっくりくる」

 「その剣での戦闘訓練は茜に一方的にやられていると聞いたぞ」

 「うっ……。それは茜さんが強いからであって、別に弱いわけじゃないから」

 「まあ、それに関しては同意する。茜を相手取れる奴なんてそうそう居ない。だがな、茜が強いのはその通りだが、お前が弱くないというのには疑問が残るな」

 「少なくともルナよりは動けると思うぞ」

 「そうか? なら一度、手合わせをしようではないか」


 ルナが魔法でナイフを作り出し、それを手に持つ。


 「魔法を使用しても構わない。全力で来い」

 「いいのか?」


 手合わせをするつもりで言ったわけではないし、ルナに剣を向けるのは気が引ける。


 「構わない。むしろ手を抜いたら殺すぞ」

 「でも……」

 「ヘタレめ」


 ボソリと呟いた言葉であったが、しっかりと聞き取れた。

 その言葉に、久し振りにカチンと来た。


 「いいだろう。やってやろうじゃないか。後で泣いて謝っても許してやらないからな」


 剣を抜き、間合いを取る。

 その様子を見守っていた茜がルナに聞こえないように声を掛けてきた。


 「……ルナ様を押し倒してもいいんですよ」

 「……やりません」


 茜は悪戯っぽく笑みを浮かべているが、実際にやったら真っ先に止めに入るのは間違いない。


 「どこからでも掛かって来い」


 剣を構え、ルナを見据える。

 ルナがどういう風に攻めて来るか興味があった。


 「そうか。なら、行かせてもらうぞ」


 ルナはゆっくりとした歩みで近付いて来る。

 警戒している雰囲気はなく、ただこちらに向かって歩いているだけだ。


 剣とナイフ。

 当然ながら剣の方が長いため、ナイフの間合いの外から攻撃を仕掛けることが可能だ。

 ルナが剣の間合いに入った時が勝負である。


 一挙手一投足を見逃さず、何か策を弄しているのかと警戒するも何も起こらない。

 不審な態度も起こさないでいる。


 そのままルナは剣の届く間合いへと足を踏み入れた。

 風の加護を得た素早い斬撃を放つ。

 しかし、それよりも早くに柄に繋がる刃の根本に強い衝撃を受けて剣を弾かれてしまう。


 「っ……!?」


 体勢を立て直そうと後退するも、ルナは影のように離れずに纏わりつく。

 離れられず、むしろ近付かれる。

 そして、ルナの持つナイフが喉元に突きつけられた。


 「まだ続けるか?」

 「……降参します」


 剣を下ろすと、ルナもナイフを下ろした。

 自分の負けである。


 「認識阻害の魔法。これまでも何度か見せただろう」


 ルナの言う通り、認識阻害の魔法はこれまでも何回も見てきた。

 その度に驚かされた印象がある。

 他者の認識を阻害する魔法。

 その魔法のせいで目測を誤り、ナイフの届く範囲まで近付かせてしまった。


 「……」


 ルナは少し離れた所まで移動し、突然振り返ってナイフを投擲してきた。

 咄嗟の出来事であったが、右眼で捉え、ナイフを弾くべく剣を振るう。

 しかし、ナイフを捉えたかと思われた剣は虚しく空を切り、ナイフの柄がおでこに直撃した。


 「ぐへっ」

 「刃が付いていない方で良かったな。じゃなければ死体に変わっていた」


 認識阻害の魔法。

 分かってはいたが、それでも防げなかった。


 「お前は右眼の力に頼り過ぎだし、使いこなせていない」

 「使いこなせていない?」

 「そうだ」

 「どう使えばいいんだ?」


 痛むおでこをさすりながらルナに問う。


 「さあな。それはお前だけの能力だ。お前が考えるしかない」


 言われて改めて考える。

 よく視える眼としか認識していない右眼。

 その右眼をどう使うか。

 目なんだから見るしかなくね?

 それ以外にどう使えばいいんだか。


 「右眼の事はさておき、今日はお前に魔法を一つ教える」

 「ルナが直伝でか? それは光栄だな」

 「この魔法が使えるだけで生存率が上がるはずだ」

 「へー、どんな魔法なんだ?」

 「守護の魔法だ」


 守護の魔法。

 自身の魔力で全身を覆い、魔法攻撃や飛び道具を防げるようになる魔法だ。


 「茜」

 「はい」


 茜は拳銃の銃口をルナに向ける。

 引き金は引かれ、銃弾がルナへと向かう。

 しかし、ルナの手前で見えない何かによって弾かれてしまった。


 「これが守護の魔法だ。地球では敵に狙撃手が居る場合があるし、魔法を行使してくる輩も居る。その時にこの魔法が使えれば、敵の攻撃を防ぐだけでなく奇襲を阻止することが可能だ」

 「便利な魔法だな。欠点らしい欠点もないしいいな」

 「欠点があるとすれば、茜が使う時に制限される事くらいだな」

 「茜さんが? どうして?」

 「さてな。さあ、さっさと魔法を教えるぞ」

 「……」


 はぐらかされている気もするが、なんだか雑じゃないか?

 まあ、今は魔法を教えてくれるらしいので、素直に応じておこう。



 ルナによる魔法の指導は意外と解りやすく、大して時間を掛けずに会得することが出来た。


 「軽く試験をしてみるか。茜」

 「はい」


 ルナに呼ばれた茜が鞘から刀を抜き放つ。

 どこか禍々しさを感じる刀だ。

 たしか、以前に魔女狩りという名の悪魔の武具と言っていたな。

 その刀を構える。


 「集中しろ。集中を途切れさせず、守護の魔法を維持し続けろ。茜の振るう刀に心を乱されずに維持しろ」


 神速の如くに動いた茜。

 右眼で捉えていても反応する事が出来ず、いつの間にか茜が懐へと侵入していた。

 そこから振るわれる刀を回避出来ない。

 刀身が頬に押し付けられて、少しでも横に動かせば傷を走らせられる。

 疾い。

 刀をただ眼で追うことしか出来なかった。

 恐怖で背筋を凍てつかせる。

 死を感じた。

 そして、死を宿らせた刀が今も尚頬に押し付けられている。


 「解けてるぞ」


 ルナに言われて気付く。

 守護の魔法がいつの間にか解けていた。


 「守護の魔法を扱うのならどんな時での維持し続けろ。魔法が解けた瞬間に死ぬぞ」


 守護の魔法は便利であるが、それは使いこなせてこその話である。

 今のように簡単に解けてしまったら意味がない。


 「今日はここまでだ。上に戻るぞ」




 ー3ー


 後ろを振り返ると、アマテルとポニィが楽しそうに会話をしていた。

 相変わらず仲が良い。

 いつも会話をしているけど、よく話のタネが尽きないな。

 どんな話をしているのか気になるが、盗み聞きするのは気が引ける。


 「どうした?」

 「なんでもない。それよりもさっきの話の続きを聞かせてくれないか」


 ローゲンにさっきまで話していた内容の続きを催促する。


 「最強と呼ばれているアンデッドがリッチーの配下にいる。そいつはリッチーが現れた当初から存在が確認されていた。今に至るまで傷を負わせた者がいないと伝えられている」


 最強と呼ばれているアンデッド。

 全ての勇者候補や冒険者だけでなく、王国の軍隊でさえも恐れる存在。


 「リッチーが現れたのって、結構昔だよな。たしか初代国王が建国して、その後にリッチーが現れたんだろ」


 どれくらい昔の話だったか覚えていないが、数年前とか数十年前とかそんなレベルの話ではなかったはずだ。


 「そんな昔から存在していて傷一つ負ったことがないなんて本当なのか? さすがに誇張され過ぎじゃないか?」

 「実際に奴と戦えば解かる。これが誇張された話ではなく、真実だと」

 「その言い方だと、ローゲンは戦ったことがあるようにも聞こえるのだが」

 「戦ったさ。……仲間がいなければ俺は死んでいた。殺されていた。奴に出会ったら、迷わず逃げろ。容易に逃してくれる相手ではないが、奴とだけは決して戦うな」

 「そんなに強い相手なのか?」

 「力試しや腕試しだとかで戦う相手ではないのは確かだ。奴には誰も勝てない。長く続くリッチーとの戦いの中で奴の存在が大きな障害になっている。これまで多くの勇者候補や冒険者が戦ってきたが、誰も勝てずに殺された」

 「出会ったら必ず誰かが死ぬ。そう聞いた」


 後ろでアマテルと会話をしていたポニィが口を挟んできた。

 こちらでの会話を聞いていないようで聞いているんだなと感心する。

 ポニィの口振りからその最強のアンデッドとやらを知っているようだ。


 「それも本当だ。奴からは逃げられない。捕捉されたら、どこまでも追い掛けて来る。分散して逃げようと、一人は捕捉され続けて、やがて殺される」


 ローゲンも戦ったことがあって、仲間がいなければ殺されたと言っていた。

 それはつまり、仲間が犠牲になったという事だ。


 「リッチーが出現し、魔法で城を築き上げたと言われているが、その周辺一帯に住む人間をジェノサイドが一人で殺し回ったそうだ。大人も子供も関係なく、人間は一人残らず殺された。その時に付けられた名前がジェノサイド」


 ジェノサイド。

 その言葉が意味するのは、虐殺。


 「その名の通り、周辺の村や街の住人を虐殺した……」


 村や街の住人は、どれ程の数がいたのだろうか。

 アマテルの生まれ故郷である小さな村でも結構な数の人が暮らしていた。

 小さな村一つであの規模だ。

 それを考慮すれば、相当な数の人が暮らしていたのが分かる。

 住人の全員が戦う力を有していたわけではないが、たった一体のアンデッドの手によって虐殺されたのだ。

 もはや高位アンデッドという次元ではない。

 底知れない強さ。

 もしも自分達がジェノサイドに遭遇してしまったらどうする。

 全員で挑むのは当然ながら論外だ。

 自分を囮にして、皆を逃がす。

 それとも誰かを犠牲にして逃げる。

 その二つしか方法はない。

 誰かを犠牲にするくらいなら、自分が。

 自分が犠牲になって、それで皆が助かるのなら……。

 ……ダメだ。

 それはダメだ。

 死ねない。

 こちらの世界では死ねない。

 死ぬなと言われている。

 あの我が儘な主が自身の目が届かない所で死ぬことを許してはくれないだろう。

 如何に理由があろうとも、こちらの事情なんぞルナには関係ない。

 勝手に死んだら怒るだろうな。

 死んだら会えないから怒ったところで意味はないのだけど。

 だからといって自分が犠牲になって死んでいいというわけではない。

 それに誰かを犠牲にもしたくない。

 自分。

 アマテル。

 ローゲン。

 ポニィ。

 誰かを犠牲に……。

 ……やめておこう。

 これ以上考えても答えが出る問題ではない。

 それに今からジェノサイドに遭遇した時のことを考えてもしょうがない。

 誰かを犠牲にする以外にも何か方法があるはずだ。

 ジェノサイドが居るのはリッチーの居城、その周辺らしいから、対策は追々考えておこう。


 「最強のアンデッドの話は解ったけど、最強の勇者候補や冒険者なんかもいるのだろ?」

 「現役で最強と呼ばれているのはアダチという勇者候補だ。十年前のリッチー討伐作戦にも参加していて、その時の生き残りでもある」

 「へー。そのアダチって人は、どれくらい強いんだ?」

 「どれくらいと言われても困るが、そうだな……彼の強さには派手さはないが、技術面でみれば一級品だ。堅実な強さといったところか」


 どれくらいの強さかはイマイチ伝わってこないが、なんとなく理解できた。

 ローゲンも自分よりも強いが、派手さはなく堅実的である。

 それと似たタイプなのだろう。


 「その最強の勇者候補でも、ジェノサイドには勝てないのか?」

 「勝てない。過去に戦ったことがあるらしいが、その際に仲間を失ったと聞いた。十年前の討伐作戦でも、わざわざ陽動部隊を出してジェノサイドを遠ざけたほどだ」

 「ちなみにその陽動部隊はどうなった?」


 ローゲンは黙って首を横に振った。


 「そうか……」


 リッチーの討伐作戦に参加するくらいだ。

 陽動部隊であっても弱いわけがない。

 その全員が殺された。

 虐殺という名は伊達ではないということだ。


 「……」


 ふと、ローゲンが足を止める。

 何かあったのだろうか。


 「おじ様?」


 アマテルも訝しむ。


 「失念していた。この辺りはそうだったな……。十年前と何も変わってないか……警戒しろ」


 十年前?

 さっきの話の続きか?


 「アンデッドか?」


 警戒するべきものといえばアンデッドだ。

 セイヴァーハンドなる警戒すべき団体もいるが、この世界には存在しない。

 なので、アンデッドが現れたのかと思ってローゲンに確認を取る。


 「アンデッドではない。盗賊だ」


 盗賊。

 日本ではなじみのない言葉で一瞬何を言っているのか判断できなかった。


 「えっと……盗賊ってことは、人間でいいんだよな?」

 「この一帯に出るのは、人間の盗賊だけだ」


 ローゲンは冷静に剣を構え、周囲を警戒する。


 「それよりも剣を構えろ。森の中に潜んでいるぞ」


 両脇に生い茂る木々の中を観察する。

 視線を巡らせるも何も見つけられない。

 気配すらも感じ取れない。

 ローゲンの勘違いではないか。


 「なあ、ローゲン……」

 「危ない!」


 ローゲンに声を掛けようとした瞬間、アマテルに突き飛ばされた。

 飛ばされた衝撃でそのまま地面に転がってしまう。


 「一体、何を……」


 立ち上がると、そこには左肩に矢が突き刺さったアマテルがいた。


 「うっ……無事、ですか……?」

 「テル!」


 ポニィがアマテルに駆け寄る。

 それと同時に森から何者かが飛び出してきた。

 剣を持った人間。

 おそらくあれがローゲンの言っていた盗賊だ。

 その盗賊の後ろから何人かが追随する。

 全員が剣を手にしていた。

 彼らの他にもアマテルに矢を射た人物が森に潜んでいるはずだ。

 苦しそうに顔を歪めるアマテルを一瞥して、盗賊に斬りかかる。


 よくもアマテルをっ!

 許さない、絶対に許さない!


 現れた盗賊は三人。

 森の中に潜んでいる弓を持った盗賊を含めると四人になる。

 もしかしたら、他にも潜んでいる者がいるかもしれない。


 「ローゲン、矢が飛んできた方角はわかるか?」


 盗賊と剣を打ち合いながら確認をする。


 「こっちの茂みからだ! 俺が壁になる、お前は他の盗賊を!」

 「了解!」


 ローゲンが盗賊の相手をしながら、矢による攻撃を警戒する。

 土属性の加護を受けたローゲンの盾は簡単には崩せないが、弓を持った盗賊が移動を開始しているはずだ。

 こっちの盗賊を早急に片付けなければ。


 一対ニ。

 敵の数の方が多い。

 それがどうした。

 いつもの事だ。

 敵がアンデッドか人間かの違いに過ぎない。

 人間を相手にしているのに異様に冷静な自分がいる。

 殺す。

 ただ、それだけを成せばいい。

 殺さなければ殺される。

 殺さなければ守れない。

 これ以上、仲間を、アマテルを傷付けさせない。

 それに人間と対峙するのはこれが初めてではない。

 殺すのも初めてではない。

 二人の盗賊は剣を持って応戦しているが、はっきり言って弱い。

 自分一人でも対処できる。

 雷の加護を発動させ、斬撃の威力を上げて盗賊の剣を弾き飛ばす。

 そして、必殺の斬撃が盗賊の体をを両断する。

 上半身は血と臓腑を撒き散らしながら宙を舞い、下半身はその場で崩れ落ちた。

 人を殺すのを躊躇ったら逆にこちらが殺される。

 地球でそれを学んだ。

 容赦は不要。

 敵はただ殺すのみ。


 目の前で両断された仲間を見て、残った二人は怯む。

 怯え、逃げ出そうとするも、その背中に剣を突き刺して心臓を貫いた。

 倒れる盗賊。

 逃げ出そうとするのはローゲンの相手をしていたもう一人の盗賊。

 逃がさない。

 背中に刺した剣を引き抜き、逃げる盗賊を追い掛ける。


 「待て! 深追いは……!」


 ローゲンが叫ぶが、それに構わず駆け出す。

 木々の間を縫うように逃げる盗賊。

 意外と足が速い。

 風の加護を発動して追い掛けようとした時、目の前の木に矢が突き刺さった。

 それに驚き、思わず足を止めてしまう。


 この矢はアマテルを射掛けた……。


 「そこに居るのか!」


 今ので弓を持っている者の方角が分かった。

 その方角の先から茂みを掻き分けて逃げる音が響く。


 お前は逃がさない。

 アマテルに怪我を負わせたお前だけは逃がさない。


 風の加護を得て、疾風のごとく森の中を駆け抜ける。

 逃げ惑う人の背中を捉えた。

 弓を片手に矢筒を肩に掛けている。

 間違いない、奴だ。

 弓矢を持った盗賊を捕捉する。

 こちらの追跡に気が付いたのか。

 盗賊は足を止めて振り返り、弓を構える。

 その顔は怯え、恐怖に歪んでいた。

 全身を震わせており、あれでは狙いが定まらない。

 構わず突き進む。

 足を止めないこちらを見て、ついに矢が放たれた。

 右眼で矢を捉えて、剣で払い除ける。

 盗賊は驚くも、すぐさま次なる矢を番え始めた。

 矢が放たれる前に仕留めてやる。

 剣を振りかぶると同時に矢が放たれた

 左肩に矢が刺さる。

 その震える手でよく当てたものだ。

 見事だ。

 素直に称賛したい。

 だが、狙った場所が悪かったな。

 振るった剣によって盗賊の首を斬り飛ばす。

 もしも、頭や心臓といった急所、もしくは足や剣を持った右手に当たっていれば結果が変わったかもしれなかった。


 「一人逃したか……」


 もう一人の盗賊が逃げた方角を見やる。

 今から追い掛けたところで、追いつくことは叶わないだろう。


 「……っ!」


 突然背後から肩を掴まれる。


 「ローゲン……」


 振り返った先に居たのはローゲン。

 肩を掴んだのはローゲンだった。


 「これ以上追い掛けるのは止めておけ。危険を伴う」

 「……解ってる」

 「あの子が待っている。戻るぞ」


 負傷したアマテルを放ってはおけない。

 血に塗れた剣を拭い、鞘に納める。

 ローゲンに先導されながらアマテルの元に戻るのだった。




 ー4ー


 引き返すと、アマテルとポニィが元の場所で待っていた。


 「こっちの怪我は大したことない。それよりもアマテルの方を先に診てやってくれ」


 自分よりもアマテルだ。

 彼女は大丈夫だろうか。


 「歯を食いしばれよ」


 ローゲンはそう告げるなり、アマテルの左腕に刺さる矢を思いっきり引き抜いた。


 「ぅぁっ……!」


 アマテルが小さく悲鳴を上げる。

 傷口から溢れる血が白い神官服を赤く染めていく。

 痛々しい光景だ。


 「治癒の魔法は使えるな?」

 「は、い……」


 アマテルは自らの傷口を塞ぐため治癒の魔法を発動する。

 苦痛が和らいでいくのがアマテルの表情から読み取れた。


 「次はお前だ」


 アマテルの傷が塞がったのを確認してローゲンがこちらに向き直る。


 「矢を引き抜くぞ」


 さっきまで必死だったせいか痛みを感じていなかったが、意識し出したら急に痛み出した。


 「そこに座れ。すぐに楽にしてやる」


 ローゲンの言葉に従い、その場に座る。

 アマテルはすぐに治療できるように隣りに立つ。


 「アマテルは、無事か?」

 「治療したのでもう大丈夫ですよ……」


 彼女はそう告げるも、声からは元気が感じられない。

 治癒の魔法を施したからといっても、即座に痛みがなくなるわけではない。

 そのせいで元気がないのかもしれない。


 「私の心配をするよりも今は勇者様ですよ。……おじ様、お願いします」

 「ああ」


 ローゲンが肩に刺さった矢を抜き、アマテルから治癒の魔法を掛けてもらって治療する。

 その後、ローゲンは盗賊の死体を埋葬しに向かった。


 「勇者様が、その……盗賊を全員、倒したのですか?」

 「うん。ただ一人逃しちゃったけどね」

 「そう、ですか……」


 なんだかアマテルの態度がぎこちない気がする。


 「その……」

 「ん?」

 「いえ……、なんでもないです……」


 アマテルは何かを言おうとしているが、躊躇っているように感じられる。

 様子がおかしい。

 やはりさっき受けた矢のダメージが大きいのだろうか。


 「……勇者様」

 「ん?」

 「変なことを聞くようですけど、勇者様は……以前にも人を殺したことが、あるのですか?」


 アマテルの言葉が頭の中で反響する。

 人を殺したことが、あるのですか?

 人を……殺した。

 その答えは、ある。

 だけど、それをどう伝えたらいいのだろうか。

 素直に「はい」と言っていいものではないだろう。

 では、何と伝えるべきか。


 「……」

 「……すみません、変なことを聞いてしまって……。少し驚いてしまっただけですので、気にしないでください」


 アマテルは視線を逸らして、ポニィの元へと駆け出して行った。

 まるで避けるように。

 ポニィもどこか怯えている気がする。

 自分のせいだろうか。

 自分のせいだろうな。

 アマテルが傷つけられ、自分は怒りに狂った。

 そして、盗賊を惨殺した。

 怒りに我を忘れて、人を殺めたのだ。

 アンデッドではない。

 人を殺したのだ。

 アマテルが驚くのは無理もない話だ。

 だけど……。

 少し驚いた。

 アマテルはそう言うが、それだけだろうか。

 他にも何か思うところがあるのではないだろうか。


 「気にするな、とは軽々しく言えないが、あの子達も頭では解っている。気持ちが追いついていないだけだ。時間が経てばいつも通りになる」


 盗賊の死体を埋葬していたローゲンが帰ってきた。

 きちんと埋葬していない死体はアンデッド化してしまう。

 いくら自分達を襲撃してきた盗賊とはいえ、そのまま放置するわけにもいかなかった。


 「それと、すまなかった……」


 唐突にローゲンが謝ってきた。


 「この辺りは盗賊が出るのを知っていたのに、それを伝え忘れていた」

 「気にしなくていいよ。盗賊の情報を知っていても、襲われるのは変わらなかっただろうし」


 ちなみにこの世界では、盗賊や山賊、夜盗といった犯罪者を殺しても罪には問われない。

 むしろ、凶悪性が高い犯罪者には報奨金が掛けられ、始末するとお金が貰える。

 そのような法律はあるが、やはり人殺しは忌避されていた。

 アマテルとポニィが、自分を避けるのも当然のことだ。

 ローゲンは特に気を悪くした様子はなく、埋葬するのも手慣れていた。

 十年前がどうとか言っていたし、以前から盗賊がいたのだろう。


 「テル、ケガはだいじょうぶ?」


 ポニィは友人の怪我を心配する。


 「傷は塞がったので大丈夫です。心配してくれてありがとうございます」

 「お前も剣を振るのに支障はないか?」


 ローゲンに問われて、軽く肩を回して感覚を確かめる。


 「問題ない」

 「なら、また盗賊に襲われないうちに先に進むぞ。近くに村があったはずだ。そこを目指す」




 ー5ー


 訪れた村は活気に溢れているとは言い難かった。

 どこか暗い雰囲気が流れ、村人達からは冷たい視線が向けられる。

 余所者を警戒しているのが伝わってきた。


 「すみません。宿はどこにありますか?」


 近くにいた村人に尋ねるも怪訝な顔をされて、方角を指差すだけだった。

 不愛想だな。

 だけど、道を教えてくれたのは事実。

 素直に礼を述べて宿に向かった。

 宿屋の主人も他の村人程ではないが、どこか対応が冷たい。

 借りた部屋に入ると、村で感じた違和感をローゲンが教えてくれた。


 「エクリプスを知っているか?」

 「エクリプス?」

 「とある盗賊団の名称だ。今日襲ってきた盗賊もエクリプスの一味だ。腕にエクリプスの印があったから間違いない」


 そんな印があったのか。

 全然気が付かなかった。


 「エクリプスは二十年以上前から活動している。最初は小規模な盗賊だったらしいが、徐々にその数を増やして勢力を拡大していった。今や王都の軍に匹敵する程の数を揃えているといわれている。もはや盗賊団ではなく武装集団と呼んでも差支えがない」

 「そんな連中の一味を手にかけてしまったけど大丈夫なのか? 報復とかないのか?」

 「大丈夫だ。今日殺したのは末端の連中だ。酷な物言いになるが、エクリプスにとっては使い捨ての部類に入る。そんな連中ををいくら失っても奴らは気にも留めない」

 「……」

 「この村を出てさらに先に進むと大きな街がある。その街を中心にして多くの村や街が点在している。中には数時間歩いただけで隣の村に行けるところもある」

 「盗賊が住み着いているのに、そんなに村や街が多くあるのか?」

 「逆だな。多いからこそ盗賊が住み着いているんだ。日がなどこかの村や街を襲っている。それと、そこを通行する冒険者や行商人も襲っていると聞く」

 「毎日どこかしら襲われているのに逃げ出さないとは、ここいら一帯の村人は馬鹿なのか勇敢なのか……」

 「どちらかと言うと勇敢なのだろうな。中央の街では対エクリプス用の組織を編成し、各村や街に派遣しているそうだ。村や街の方でもそれぞれで自警団を結成してエクリプスに対抗している」

 「なるほど。立ち向かっているのか。それは勇敢だな」

 「村を出ても行き先がないというのもある。行き場を失った者が盗賊になるとも聞くしな」

 「村の住人がどこか冷たいのはエクリプスを警戒しているからだったのか」


 村人達にとって、余所者は盗賊の可能性がある。

 警戒していたので冷たい態度を取っていたのだろう。


 「エクリプスの幹部以外はそれほど脅威ではない。その幹部も姿を現す事は滅多にない。このまま中央の街を通過して、この一帯から抜けるぞ」

 「通過するのは構わないけど、このまま盗賊団を放っておいていいのか?」


 如何にも勇者候補が対処すべき問題のように思えるのに、このまま素通りでいいのだろうか。


 「言いたいことは分かる。だが、優先すべきはリッチーだ」

 「でも、エクリプスは盗賊団を名乗ってはいるけど、その本質は武装集団なんだろ? 今はよくても将来を考えると早めに対処した方がいいんじゃないか?」

 「……」


 ローゲンは苦虫を噛み潰したかのような顔をする。


 「ローゲン?」

 「……そうだな。エクリプスの問題は早いうちに手を打った方がいいだろう。この辺りに暮らしている者も対策はしているが手を焼いているのには変わりないしな。……困っている人を助ける、まさに勇者の出番だ」

 「なら、助けないと」

 「お前の言っていることは正しい。だが、この国がそれを許さない」

 「国が許さない?」

 「この事はあまり、お前に話したくなかったが、やむを得ない……」

 「事情があるなら教えてくれ。仕方のない事情があるのなら、それで納得するから」

 「納得は出来ないと思うぞ。これは王国の恥でもあるからな」

 「恥ね……とりあえず聞かせてくれ。話はそれからだ」

 「そうだな。まず初めに、この王国の政治を評価するとだな。お世辞にもあまり褒められたものではない。むしろ最悪だ」

 「……はっきりと言い切るんだな。それって侮辱罪とかで捕まったりするんじゃないか?」

 「バレたら極刑ものだが、お前が喋らなければ問題ない」

 「言わないよ……。それで?」


 続きを促す。


 「エクリプスが武装集団と呼ばれる程の力を付けても、王国の中枢にいる連中からしてみれば、ただの盗賊団としか認知していない。リッチーは王国の敵であるが、エクリプスは小さな盗賊団、連中の認識はそこで止まっている。リッチー討伐だけが重要、それしか考えていない。リッチーの影響によって王国が衰え続けているのは事実だが、世の中は変わり続けている。新たな脅威が生まれるのに時間は流れ過ぎた」

 「要するに王国はリッチーの事しか考えていないから、エクリプスよりもリッチーを優先しろということか」

 「そうだ、と言いたいが、現実はもっと悲惨だ。連中が考えているのは金の事だけだ。リッチー対策は民に対するアピールに過ぎない」

 「民にアピールするのなら、盗賊団を放置しないで対処した方がいいのではないか?」

 「王都に暮らす連中にとって、ここいらで暴れ回っている盗賊団なんて正直どうでもいいんだ。盗賊団が村や街を襲っても王都では話題にも上がらない」

 「……」

 「納得はできたか?」

 「できるわけないだろう。でも、まあ、理解はした……」




 ー6ー


 「ルナは盗賊団についてどう思う?」


 その日の夜、ルナにエクリプスについての意見を求めてみた。


 「放置して構わないのなら放っておけ。余所者が首を突っ込んでも邪魔になるだけだ」

 「でも、放置したら人を見殺しにしていることになるんじゃないか?」

 「所詮は赤の他人だ。他人の死ほどどうでもいいものはない。お前が命を懸けてまで助ける理由はないだろ」


 たしかに命懸けになる。

 だからといって何もしなくていいのだろうか。


 「命を懸けるのはお前一人だけの話じゃない。お前のお友達も命を懸けるということになる。それはお友達を危険に誘うってことだぞ。第一、放っておいていいって国のお墨付きが付いているのだろ?」

 「それは、そうだけど……」

 「なら、堂々としていろ。何か言われたら、文句があるなら国に言えって言い返してやればいい」

 「……」

 「前にも言ったが、向こうで死ぬことは許さない。それだけは肝に銘じておけ」


 そこで奈々が口を挟む。


 「そうだよー。命はルナ様のために使うものだよ」


 奈々の言葉にルナは若干顔を曇らせる。


 「……分かった。余計なことはしない」


 他人を見殺しにするような真似をアマテルはどう思うだろうか。

 許せないのだろうか。

 それとも、黙認するのだろうか。

 いずれにせよ、エクリプスには余計な手出しはしない。

 そう決めた。




 ー7ー


 「この先にある村を三つ過ぎれば中央の街に辿り着く」


 ローゲンは以前にリッチー討伐の旅に出た際にも、この辺りを訪れている。

 詳細な情報とまではいかないが、大まかなことなら憶えていた。


 「中央の街まではどれくらい掛かるんだ?」

 「三日程あれば行ける距離だ。急げば二日で行けるが、その場合は野宿になる。エクリプスのことを考えれば、無理して急がずに村で休みながら行った方がいい」


 進路上でエクリプスと遭遇する可能性がある。

 そう考えると、強行して体力を減らすのは避けたい。

 それに中央の街は通過点であって目的地ではない。

 焦らずに進んだ方がいいだろう。


 「そうだな。ゆっくりと行くか」


 ふと、アマテルの方を見やる。


 アマテルは何も言わない。

 彼女も盗賊団が村を襲っている話は知っているはずだ。

 てっきり盗賊に襲われている村を助けようと言うのかと思った。

 助けようと言われれば困るのだが、何も言われないのもなんか変な感じがする。


 昨日、盗賊に襲われて何か思ったのだろうか。

 怖かったのだろうか。

 矢を受けて痛かったのは確かだ。

 自分も痛かったのだからそれは間違いない。

 それが原因で盗賊を恐れている……ようには見えない。


 「そろそろ行きましょうか」


 アマテルが出発を促す。


 「そうだな。行こうか」


 アマテルが何を考えて、何を思っているかは自分には分からない。

 けれど、ルナからは余計なことをするなと言われているので、これはこれでいいかとも思えた。


 「っと……!」


 歩き出そうとした時、人にぶつかってしまう。


 「すみません、余所見してました。怪我はないですか?」

 「大丈夫です。こちらこそすみません」


 そう言って、頭を下げたのは少女。

 短く切られた黒髪。

 村人とは違う雰囲気。

 まさか……、


 「もしかして勇者候補の方ですか?」


 少女は頷いて肯定するも、その左腕にはガントレットが嵌められていた。

 なので勇者候補の証は確認出来なかったが、彼女が肯定するので勇者候補なのだろう。


 「自分も勇者候補なんですよ」


 こちらは手の甲を隠していないので勇者候補の証を見せることが出来た。

 ただ、見た目は同じであるが、その効果は違う。

 そういえば、未だにルナからどんな効果があるのか聞いていなかったな。


 「……そうですか。でも、それ……」

 「ん?」

 「いえ、なんでもないです」

 「そうですか?」

 「はい。ところで、村を出るようですけど、行き先はやはり中央の街ですか?」

 「そうです。村を三つ経由して向かう予定です」

 「なるほど。それで後ろの方が仲間ですか?」


 少女が向けた視線の先にはアマテル達の姿があった。


 「ええ、そうです」

 「なるほど。……あっ、すみません。足止めさせてしまって」

 「いえ、気にしないでください」

 「では、仲間達が待っておりますので」


 少女は軽く会釈をして去っていった。


 「さっ、行こうか」


 まさか他の勇者候補と遭遇するとは思わなかった。

 探してみれば、案外他にもいるのかもしれないな。

 ともかく今は中央の街を目指そう。




 黒髪の少女はとある建物へと入っていく。

 そこは一見すると普通の建物である。

 内装もおかしな所は見受けられない。


 「殺されかけたという勇者候補は、あれで間違いない?」


 少女は中にいた男に話し掛ける。


 「はっはい、そうです……」


 男はガタガタと震え、怯えている。


 「なるほど」


 少女は確認が取れると怯える男を放置した。

 この男はもう用済みだ。


 「伝令を出す」


 控えていたもう一人の男に話し掛ける。


 「どちらに?」

 「エビータに。あの勇者候補、気になる所はあるが、それよりも同行者である神官」

 「普通の神官のように見受けられましたが?」


 少女は男の疑問には答えず、窓の外を見つめる。

 あの勇者候補達は中央の街に向かうと言っていた。

 そこまで行かれてしまうと手が出せない。

 さらにその先は管轄の都合で手が出せなくなる。

 中央の街に辿り着く前に手を打たなくては。


 「全く、思い掛けない所で良い物を見つけた」


 上手くいけばあの方の野望が一気に躍進する。

 この機会を逃す手はない。


 「こいつの処遇はどうします?」


 男は傍らの怯える男に視線を向ける。


 「使えるのなら使って。使えないならテキトーに。まあ、任せるよ」


 それだけ告げて、少女は出て行った。

 背後からくぐもった声が聞こえる。

 口でも抑えられているのだろうか?

 声は止み、倒れる音と扉を閉じる音が同時に響くのだった。




 ー8ー


 予定通りに中央の街を目指す。

 順調である。

 このまま順調に行けば、今日中には辿り着けるはずだ。


 朝に村を出て、昼過ぎに中央の街に至る一つ前の村に着く。

 そこまでの旅路は平和なものだ。

 道中、盗賊団であるエクリプスやアンデッドにも襲われるどころか、姿を目にすることもなかった。


 「少し遅いですが、お昼にしましょうか」

 「そうだな。村が近いからお昼抜きで来たから、さすがに腹が減った」


 お昼をどうするか相談をしていると、ポニィが異変に気が付いた。


 「ねえ。なんか、さわがしくない?」


 ポニィに言われて周囲を見渡すと、確かに村人達が忙しなく動き回っていた。


 「何かあったのでしょうか?」


 事件でも起きたのだろうか。


 「お前達は先に店を探していろ。その間にこっちで何があったのか聞いて回る」


 アマテルとポニィと一旦別れ、ローゲンに連れられて村人に聞き込みをする。


 「何かあったんですか?」

 「今忙しいんだ! 後にしろ!」


 手近にいた村人に話し掛けるも、一方的に怒鳴られてどこかに行ってしまった。

 その後も幾人かに話し掛けるも似たような対応をされてしまう。


 「一体、何があったんだよ……」


 事情が分からないまま、時間は経過していく。

 村人達はその間動き回っている。

 妙に慌ただしい。


 「マズい事になったぞ」


 少し離れた所で聞き込みをしていたローゲンが慌てた様子で戻ってきた。


 「どうやらエクリプスの集団がこの村を目指して進行しているようだ」


 エクリプスの集団。

 盗賊団がこの村に来る。

 エクリプスは盗賊団と言われているが、その実態は武装集団だ。

 数が多ければ、かなりの脅威になりうる。


 「数はどれ程なんだ?」

 「村人も正確な数は把握していないようだが、最低でも五十はいるらしい」

 「五十も……」


 最低でもということは、それ以上の数がいるということか。

 村人が慌てていた理由がようやく理解できた。


 「とりあえず、アマテルとポニィと合流しないと」


 その時、悲鳴が響いた。


 「この悲鳴は……」

 「エクリプスが村に侵入したようだな」


 悲鳴を聞いた村人達がさらに慌てる。


 「なんで東門から悲鳴が聞こえるんだよっ! 盗賊は西門に向かっているんじゃなかったのか!?」

 「んなの、知るかよ! いいから東門に向かうぞ!」

 「何言ってんだよ、西門に盗賊が大勢来ているんだぞ!」


 西門に五十を超える盗賊。

 東側には侵入者。

 予期せぬ事態が相次ぎ、村は混乱に包まれる。


 「東に向かうぞ」


 ローゲンは返事を聞かずに駆け出す。

 東側に向かう理由は即座に理解できた。

 アマテルとポニィ。

 二人が向かったのは悲鳴が聞こえた東側だ。

 胸騒ぎがする。

 すぐさまローゲンの後を追った。



 「食堂に盗賊だ! 逃げろー!」


 東側に向かう途中、逃げ惑う村人達とすれ違う。

 中には怪我をしたのだろうか、腕を抑える者や足を引きずる者の姿がある。

 村人達の脇を通り抜けていくと、徐々に人の数が少なくなっていく。

 勇敢にも武器を片手に脅威に立ち向かおうとする村人の姿が見受けられる。

 その村人達と共に、エクリプスが現れたという食堂に向かう。


 逃げる人の中に二人の姿はなかった。

 道に倒れる血塗れの村人を見て、嫌な予感が脳裏をよぎるが振り払う。

 二人は無事だ。

 きっと無事だ。

 そう自分に言い聞かせる。


 やがて争いの音が聞こえてきた。

 勇敢な村人達とエクリプスが衝突している。

 武器が交差し、魔法が行き交い、血飛沫が舞う。

 怒号が飛び交い、悲鳴が上がり、雄叫びが響く。

 村人が倒れ、エクリプスの構成員も倒れる。

 村に死が蔓延する。


 「こっちだ!」


 前を走るローゲンは戦場を見渡し、アマテルとポニィの姿がないのを確認して食堂の中に入った。



 食堂の中も酷い有様だった。

 無数の死体が転がり、テーブルや椅子は無残にも壊され、壁と床に血や肉片が飛び散っている。

 死体の中には黒く焦げて、焼けた肉の匂いを漂わせる惨い死体まであった。


 荒れ果てた食堂。

 死体に溢れている食堂だが、生きている人間がいた。

 腕にエクリプスの所属を示す刺青を入れた女盗賊。

 その女盗賊の後ろに控える複数の人間。

 彼らにもエクリプスの刺青が入っている。

 それに対峙するアマテルとポニィ、その背後には村人の姿も見えた。


 「勇者様!」


 アマテルは入口から入ってきたこちらに気が付いたようだ。


 「勇者? ああ、そうか、お前がこの神官の付き人か」


 女盗賊もこちらの存在を捉える。

 斬り込みたいが、動けない。

 エクリプスが人質を取っているのだ。

 人質にされている少女が逃げられないように首に腕を回され、その顔に剣の刃を向けている。

 これでは手が出せない。


 「どうする、勇者? 邪魔立てをするなら、このガキは殺すぞ」

 「くそっ……!」

 「そう血走った目で睨むな。こっちも仕事なんだ」


 女盗賊はこちらには興味がないようで、向かいに立つアマテルに話し掛ける。


 「なあ、神官。お前が高い魔力を秘めてい物を隠し持っているのは知っている。そいつを寄越せ」


 アマテルが隠し持っている物?

 高い魔力を秘めている物……そんな物持っていたっけ?


 隣に立つローゲンに視線で尋ねてみるが、首を横に振る。

 ローゲンも心当たりがないようだ。


 「何の事だか分かりませんが、私はそんな物持っていません」


 アマテル自身も所持しているのを否定する。


 「しらばっくれるのかい。まあ、それもいいだろう」


 女盗賊が合図すると、人質の少女の頬に剣先が触れ、血が滴る。


 「ひぃっ……」


 少女は涙を流しながら、悲鳴を上げる。


 「やめなさい……!」


 アマテルが静止を求める。


 「冗談だ。だが、次は冗談では済まない。いいから渡せ、さもなくば殺すぞ」

 「だから、何のことだか分かり……」


 再度否定しようとしたアマテルだったが、何かに気付いて言葉を止める。

 アマテルは恐る恐るこちらに視線を向けて来た。

 困惑の眼差しが向けられる。


 どうしたのだろうか。

 アマテルは一体何に気付いたんだ?


 「姐さん、陽動役の連中が圧されているようです」


 その時、エクリプスの一員が女盗賊に耳打ちする。


 「五十人も集めたのに情けないね。ただ、これ以上は時間は掛けられない。しょうがない。少々強引な手を取らせてもらうか」


 女盗賊はそう言うと、腰に差した短剣を引き抜いた。

 短剣を抜いたと思った瞬間、女盗賊がアマテル目掛けて駆け出していた。


 「っ……!」


 ポニィがアマテルの前に氷の壁を作り出す。

 だが、女盗賊は突如として現れた氷の壁にも躊躇わず突撃していき、寸前で体を滑らせるようにして進行を変えて壁の横を走り抜ける。

 そのままアマテルの元に辿り着き、胸ぐらを掴んで押し倒した。


 「うぐっ……!」

 「テルっ!」


 ポニィが魔法を発動しようと、女盗賊に杖を突きつける。

 しかし、女盗賊はアマテルを掴み上げて盾にする。


 「また人を殺すのかい?」

 「っ!」


 女盗賊の言葉にポニィは体を硬直させた。

 その隙を女盗賊は見逃さず、ポニィの顔面に短剣の柄頭を叩き込んだ。


 「ぐっ……!」


 ポニィは昏倒する。

 駆け寄ろうにもアマテルは女盗賊に捕まっていて手が出せない。

 それに人質の少女もいる。


 「アンタ達、この二人を……いや、二人と生き残っている村人を連れて行け」


 女盗賊が仲間全員に指示を飛ばす。


 「死体はいいのですかい?」

 「放っておけ。今回は逃げるのに邪魔になるからね」


 アマテルとポニィ、そして村人達が次々と拘束していく。


 「ポニィ……」


 アマテルは気を失ったポニィが拘束されるのを力無く見つめる。


 「手を出さないでくれよ、勇者。さもないとコイツらがどうなるか、分かっているよな?」

 「屑共め……」


 手が出せない。

 助けたいのに助けられない。

 人質のせいで身動きが取れない。

 しかも、人質の中にはアマテルとポニィも含まれている。

 自分は何も出来ない。


 「サッサとずらかるよ。じゃあね、勇者。もう二度と会わないだろうけどね、アタシにも、この娘にも」


 女盗賊は仲間と人質を連れて、裏口から出て行く。

 アマテルと目が合う。

 信じています。

 そう目で訴えてくる。

 彼女は助けに来てくれるのを信じてくれている。


 「ほら! さっさと歩け!」


 エクリプスはアマテル達を乱暴に連れて行く。

 それを見送ることしかできなかった。




 ー9ー


 食堂から出ると、外での争いも終わっていた。


 「おい、アンタ達、食堂の中はどうなった?」

 「……」

 「人質を取られて逃げられた」


 村人の問いかけに答えられなかった自分に代わって、ローゲンが答えてくれた。


 「なんてことだ……」


 告げられた事実に村人は頭を抱える。


 食堂の外を見渡すと中と変わらず酷い有様だ。

 村人とエクリプスの構成員、それぞれの死体が山のように積み上げられている。

 切り刻まれた死体。

 肉塊と成り果てた死体。

 バラバラになった死体。

 肉片や臓物が地面に転がり、大地に血が染み渡っていた。

 死屍累々。

 地獄の光景。

 目にするだけで気分が悪くなる。

 その光景から目を背けても、血の匂いが辺り一帯に立ち込めており、死の蔓延する地獄から逃れられない。

 死者の放つ匂いだけで吐き気を催した。


 「大丈夫か?」


 気分を悪くしたのを察したローゲンが気に掛けてくれた。


 「これ全部、人間がやったことなのか……」


 この地獄を作ったのは人間だ。

 人間同士の争いが招いた地獄の産物。

 アンデッドに襲われた死体を何度も見たことある。

 アンデッドに成り果てた死体を何度も見たことがある。

 どれも酷い有様だった。

 その死体以上に酷い死体がこの場に転がっている。

 人間もアンデッドもやる事は変わらない。

 所詮は人間もアンデッドも同じなのだ。

 そもそも、アンデッドの多くは人間の成れの果てである。

 行動原理が人間の残虐性に似ていても不思議はない。


 「……助けなきゃ」


 人間は時にアンデッドよりも残酷だ。

 ならば、すぐにでもアマテルとポニィを助け出さなければ。


 「今すぐ二人を助けに行こう」


 そう言ってローゲンを見る。


 「ダメだ」


 賛成するかと思いきや、反対されてしまう。


 「なぜだ! 二人が心配じゃないのか?!」

 「そういうわけではない。無策に飛び込むのが危険だと言いたいのだ」


 ローゲンとしても助けることに関しては反対ではない。

 しかし、闇雲に剣を振り回して終わりなら、食堂で事を起こしていた。

 人質がいる。

 迂闊には動けない。

 アマテルとポニィも人質になっている。

 下手に手を出したら、殺されてしまう。


 「じゃあ、どうやって助けるんだ?」

 「……」


 ローゲンは言葉を詰まらせる。

 どうする事も出来ないのだ

 自分達は何も出来ない……。




 ー10ー


 「中央から憲兵が来てくれたぞ」

 「マジか、助かった……」

 「せっかく来てくれたのに、もうエクリプスは去った後だけどな」

 「警備を大幅に増強してくれるそうだぞ」

 「珍しいな。いつもは警備強化はおまけ程度なのに」

 「今回の襲撃がいつもと違ったから念のためだとか」

 「そういや今回はすごかったな」

 「そうそう。五十を超える盗賊共が押し寄せて来たし、しかもそれが囮で反対側から侵入されるとは」

 「今回の目的はなんだったんだ?」

 「分からん。やったことは殺戮に人攫いで被害が大きい以外はいつも通りだ」

 「そうなのか。何がしたかったんだろうな」

 「お前ら知らないのか? 何かを探していたらしいぞ」

 「何を?」

 「それは知らん」

 「なんだよ。使えねえな」

 「うっせ、俺だってさっき聞いたばっかなんだよ」




 ー11ー


 「なあ、ローゲン。アマテルは本当に高い魔力を秘めた物は持っていないのだよな?」

 「そのはずだ」


 確認のためローゲンに聞いてみるも、返ってきた答えは変わらなかった。


 「お前の方は何か心当たりはないのか?」


 逆に聞かれてしまう。

 だが、聞かれても心当たりなどない。

 しかし、あの時のアマテルは最初は否定していたが、何かを思い出したかのようだった。

 何を思い出したんだろうか。

 困った顔でこっちを見ていたけど、その理由は?

 アマテルが持っているのではなく、他の人物が持っている可能性は?

 ポニィはどうだろうか。

 ローゲンに聞いてみるも、ポニィも持っていないとの事。

 他の誰か……あの場に居た村人。

 村人については確認のしようがない。

 若しくは人違い。

 人違いというのが一番ありそうな話だ。

 他にあるとしたら……自分?

 心当たりはない。

 ルナからスマホと腕時計を持たされたが、腕時計はサラマンダーの炎に焼かれて失った。

 スマホは違うだろう。

 この世界の住人にとっては珍しい代物ではあるが、魔力は宿っていないし、電波が入らないのでまともに使えない。

 わざわざ大勢を引き連れてまで奪うような物でもない。

 ならば、他の物が目的だと考えるべきだ。

 高い魔力。

 アマテルとポニィは魔力量が多いと聞いた。

 だけど、物ではない。

 そういえばルナも魔力量が多いのだったな。

 ……あれ?

 ルナ。

 地球。

 召喚。


 「あっ」


 地球に召喚。

 地球から持ってきた物。


 「どうした?」

 「召喚石……」


 地球から帰還した際に、召喚石を基点に戻ってこれる。

 ルナが魔法を組み込んだと言っていた。

 もしかしたら、召喚石が高い魔力を秘めている物なのではないか?


 「召喚石の事かもしれない」

 「召喚石……。そうか、それがあったか。だが、あの石からは魔力は感じ取れなかったぞ」


 高い魔力を秘めた物と呼ばれるくらいだ。

 魔法の扱いに長けていない者でも魔力を感じ取れるはず。

 だが、召喚石からは魔力を一切感じ取れなかった。

 よくよく考えてみればそんなことあり得るのだろうか。

 あれはルナの魔法と密接に関わっている。

 魔力を帯びていても何ら不思議ではない。

 それでも何も感じられないとすると……。


 「認識阻害の魔法……いや、他の魔法の可能性もあるのか。魔法で魔力を感じ取れないようにした。やはり召喚石の事を言っていたんだ」


 何故召喚石を狙っているのか。

 エクリプスの目的を考えても結論は出ない。

 それよりもどうやって二人を助けるかだ。


 「そこの冒険者。お前達は食堂に居たそうだな。何があったか詳しく聞かせてくれ」


 鎧を着こみ、腰に剣を差した男性が近付いて来た。

 村人にしては装備が整い過ぎている。

 自警団の人だろうか。


 「構いませんけど、あなたは?」

 「失礼。自分は中央より派遣された憲兵の一人です。此度の件についての協力を願います」


 中央から派遣された憲兵。

 そういえば村人達がそんな話をしていたな。

 こちらも簡単に自己紹介をして、食堂であった出来事を話した。


 「人質の中に幼い少女はいなかった。背格好は――」


 憲兵が少女の容姿について語る。

 その少女は剣を突きつけられて人質にされていた少女だった。


 「やはり捕まっていたか。厄介だな……」

 「その少女がどうかしたのですか?」

 「中央の高官の娘さんだ。たまたまこの村に遊びに来ていたのだが……。彼女を何としてでも助け出さなければ」


 高官、つまりお偉いさんの娘というわけか。

 他の村人よりも、その少女一人だけを気に掛けているようだ。

 少女の命が大事なのは分かる。

 だけど、他の命がどうでもいいとなってはいけないはずだ。

 それでもこれは渡りに舟である。


 「人質の中には自分達の仲間もいます。人質を助けるのに協力させてください」

 「ふむ……」


 憲兵は考え込む。

 勇者候補がエクリプスに手を出すのは許されていない。

 だけど、仲間が囚われているのだ。

 それを無視して旅なんか続けられない。


 「……今回は救助隊が派遣されるはずだ。それに君達が同行できるように上に掛け合ってみよう」

 「感謝します」


 素直に礼を述べて頭を下げる。


 「ただ厄介な問題がある」

 「問題?」

 「話を聞いた限り、食堂に現れた女盗賊の正体はエクリプスの幹部の一人、エビータだと推測できる」


 幹部?

 エビータ?


 「そいつは……強いのか?」

 「強い。他の構成員とは格が違う。直属の部下も大勢いる。次の戦いは厳しいものになるな。救いがあるとすれば、エビータが連れ去ったというのなら、場所は推察できるという事。エクリプスのアジト、その中の一つ。エビータが管理しているアジトに人質がいるはずだ」




 ー12ー


 中央の高官の娘が捕まったということで、すぐさま救助隊が編成された。

 又聞きではあるが、その高官は相当高い地位だったらしく、その助けもあってか救助隊の編成が迅速に行われた。

 ちなみに自分とローゲンも救助隊に参加する。


 「今夜には攻めるとはいうが、大丈夫なのか?」


 不安な要素がいくつかある。

 エビータの管理するアジトの場所は割れているが、鉄壁の要塞と呼ばれており、一度も落とされたことがない。

 これまでに何度も攻撃を仕掛けたことがあるそうだが、いずれも返り討ちにあっているそうだ。

 難攻不落の要塞。

 本当に人質を助けられるのだろうか。


 「今回編成される救助隊は今までで一番の規模になるらしい。油断が出来ないのには変わらないが、勝ち目はあるはずだ」


 今回は勝つことが目的ではない。

 人質を助けられれば、それでいいのだ。

 エビータを倒す必要はない。

 アジトを落とす必要はない。

 人質を助けられれば自分達の勝利である。


 「……ローゲン。作戦を思い付いた。これが上手くいけば人質全員を助け出すことが可能だ」

 「ほお……。どんな作戦だ?」


 思い付いた作戦をローゲンに説明する。


 「ふむ……。それはお前にしか出来ないことだな。必然的にお前が作戦の要になる。最も危険で重要な役目だ。それでもやるのか?」

 「もちろんだ。アマテルとポニィを救えるのなら、命だって懸けてやる」

 「覚悟は出来ているのだな。なら早急に動くぞ」


 救助隊に作戦の概要を伝えて協力を仰ぐべく動き出すのだった。


 今回も読んで頂き、感謝致します。


 今回の話は次回の話のための前フリとなり、イマイチ盛り上がりに欠ける話となりました。

 ですが、この話は次の話だけでなく後々の話のための布石となります。

 特に11話は全編通しても盛り上がる話になるので、是非楽しみにしておいて欲しいです。


 タイトルにあるエクリプスは盗賊団の名称となり、元々は日蝕や月蝕に使われる単語になります。

 ルナが月の女神、その対となるアマテルは天照大神、つまり太陽の女神が名前の元ネタとなっています。

 そのアマテルを害した者達というわけでエクリプスという名前にしました。


 さて、次回の内容はある程度予想出来ると思いますが、アマテルとポニィの救出作戦になります。

 救出といっても事は簡単に運びません。

 結果がどう転ぶか楽しみにしておいてください。


 それでは、また次回も読んで頂ければと思います。

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