05.セイレーン
ー1ー
「わたしも連れてって!」
リッチー討伐の旅。
それにポニィは同行したいと言った。
一旦ポニィから離れて三人で話し合う。
「ポニィがついて来たいと?」
ローゲンに事の経緯を説明する。
「そうなんだよ。ローゲンはどう思う?」
「個人的な意見を言えば賛成だな。うちには攻撃魔法の使い手がいないし、昨日の戦いを見ても戦力として申し分ない」
ローゲンの意見に対して、アマテルは反対する。
「私は反対です。ポニィを危険な目に遭わしたくありません」
向こうはアマテルが危ないから付いて行きたいと言っていた。
お互いがお互いを心配する形になっている。
「勇者様も反対ですよね?」
「自分は賛成かな。昨日だけでも何回も助けられたし、このまま恩を返さないで別れるのは気分が悪い」
「勇者様は村を救ったのですよ。それで充分だと思います」
「それはポニィの助けがあってのことだよ。それじゃあ、恩を返したとは言えないよ」
「それはそうですけど……それでも私は反対です」
アマテルは頑なに反対する。
理屈では彼女は納得しないだろう。
「何も無理矢理連れて行くわけじゃない。ポニィも危険を重々承知して一緒に行きたいと言っている」
「……」
「出会って数日の自分でも分かることがある。ポニィは普段自分の気持ちを口に出すタイプじゃないだろ。そんなポニィが連れて行って欲しいと自らが言い出したんだ。それがどういう意味か、アマテルなら分かるんじゃないか?」
「分かりますよ、友人ですから。それでも私は、反対です……」
アマテルも理解しているはずだ。
この先、ポニィの力が助けになるのは間違いない。
それでもアマテルは、ポニィの身を案じて同行するのを反対している。
「アマテルはポニィと一緒に旅するのは嫌なのか?」
「……その言い方はズルいです……」
アマテルは顔を俯かせる。
「ポニィと一緒にいるとアマテルは楽しそうにしているよな。それを見てるとこっちまで楽しく思えて来るんだよ。こんな旅がずっと続かないかなぁってついつい考えちゃうんだ。長く続く旅だからこそ、辛いじゃなくて楽しくやっていきたい。そう思っている」
「私も楽しくやっていきたいと思っています……。ですけど、危険な旅になります。ポニィを危険な目に遭わせたくありません」
アマテルの言葉を聞いたローゲンが呆れ気味に口を開いた。
「危険な旅。危険な目に遭わせたくない。それをお前が言うか。正直言うとな、今でもお前がリッチー討伐の旅に出るのは反対だ。理由はお前が言ったのと同じだ」
ローゲンがそう言うと、アマテルはバツが悪そうにする。
「それでも旅に出ている。どんなに反対してもお前は旅に出る気でいたからな。勝手にやられるよりも、せめて目の届く範囲でという事でこうして同行している。あの子もお前に反対されたくらいじゃ引き下がらないだろう。同行できなくても勝手について来る気だぞ」
「…………」
アマテルは青い空を見上げながら押し黙る。
彼女はいま何を思っているのだろうか。
「アマテル」
「いえ、もう言わなくても大丈夫です」
青い空から視線を落とし、目が合う。
「少しポニィと話がしたいので行ってきます」
そう告げて、アマテルは一人でポニィの元へと向かった。
「大丈夫かな?」
「大丈夫だろう。何も心配することなどない」
アマテルとポニィが話し合っているのを静かに見守るのだった。
ー2ー
アマテルとポニィ。
彼女達の間にどのような会話がなされたのかは分からない。
だけど、ポニィがこれからの旅に同行するということに落ち着いたようだ。
「あの……これから、よろしくおねがいします……」
「こちらこそ。ポニィの魔法には期待しているよ」
その後、当初の予定よりは遅くなったものの無事に村まで辿り着いた。
入口に集まっていた村人達に出迎えられるも何やら様子がおかしい。
「あれ? アンタ達だけかい?」
「そうですけど。それが何か?」
そう答えると村人達がざわめく。
「何かあったのですか?」
「……」
尋ねてみるも村人達は互いの顔を見合わせるだけで何も答えてくれない。
「村長への報告は引き受けよう。お前達はゆっくり休んでおけ」
彼らが何も語ろうとしないのを悟ったローゲンはそう言い残し、村長の家に向かう。
ローゲンが立ち去っても、村人達は残り続けた。
なぜだか冷たい眼差しを向けられる。
一人や二人ではなく、その場にいる村人全員からだ。
冷たい眼差しはアマテルやポニィに向けられることはなく、自分に集中している。
気のせいや勘違いではない。
しかも、軽蔑や敵意、そういった負の感情が宿った眼差しだ。
「あの、何かあったのですか?」
アマテルも不穏な気配を感じ取る。
「……実はな、警備隊長が……あっ」
ようやく口を開いた村人の一人が何かを見つけたようだ。
驚いて瞼を見開いた彼の視線の先は村の外。
なんだろうかと自分も村の外に視線を向ける。
「どうして……」
そこにいたのは一体のアンデッド、ゾンビだ。
ゾンビがゆっくりとした足取りで村に近付いてくる。
「……警備隊長とは昨日洞窟の入口で別れました。彼はまだ、戻ってないのですね?」
村人達に問い掛けるも返事は帰って来ない。
返事を聞くまでもない。
目の前にいるゾンビが警備隊長自身なのだから。
「……アマテル。確認で聞くけど、アンデッドになった人間は元に戻れるのか?」
「……残念ですが、それは無理です……」
「そうか……」
分かってはいたが、やはり人間には戻れない。
「……誰も手を出さなくていい」
一人、前に出て鞘から剣を抜く。
ここにいる村人、アマテル含めて全員が警備隊長とは顔馴染みだ。
彼らにアンデッドと化した警備隊長の討伐は苦行でしかない。
討伐するのは、出会って間もなくて関係が浅い自分が適任だろう。
勝負は呆気なくついた。
ゾンビによる正面からの単調な動きでの攻撃を軽くいなし、胸を剣で貫く。
これで討伐は完了だ。
村の入口へと引き返そうとした時、後頭部に小石が当たる。
「いてっ。誰だ、石を投げたのは」
「人殺しっ!」
罵声が飛ぶ。
「えっ?」
「警備隊長は生きていた。それなのに、お前が殺した!」
罵声は村人達から発せられている。
「どうして殺した!」
「まだ助けられたはずなのに!」
「人殺しめ!」
そして、次々と石を投げられる。
「くっ……」
石が当たった額は切れて出血する。
「この村から出ていけ! 二度と顔を見せるな!」
「この悪魔め!」
「所詮は名ばかりの勇者だ」
「やはり、異界からの来訪者など信用出来ない」
「顔色一つ変えずに人を殺すなんて、なんて恐ろしい」
「人殺し、お前が死ねば良かったのに!」
警備隊長はアンデッドと化していた。
それは間違いない。
やむを得ず討伐したが、彼らはそれを受け入れられないでいる。
助かる見込みがあったと思っているのだ。
「違う。警備隊長はもう手遅れだった。アンデッドになっていた。それは本当だ」
「……なら、お前が見殺しにしたのではないか」
「見殺し?」
「警備隊長がアンデッドだったと言うのなら、なんで警備隊長はアンデッドになっていた。お前がアンデッドに襲われていたのを助けないで見殺しにしたからだろう」
「そうだそうだ、お前が見殺しにしたんだ。殺したんだよ、お前が」
「違う……。警備隊長と一緒に居る時はアンデッドに出くわさなかった!」
弁明を試みるも村人達の耳には届かない。
「本当はお前が直接殺したんじゃないか。森にはアンデッドはいないはずだ。だったらお前が直接手を下した以外にありえない」
「そんな事してない! 警備隊長を殺したりなんてしてない!」
「お前の言うことなど信じられるか!」
「現に今目の前でトドメを刺していたじゃないか!」
誤解を解こうとにもこちらの話が通じない。
再び村人達が小石を投げようとした時、爆音を轟かせながら爆炎が上がった。
突然の爆音に巻き起こる炎。
その場に居る者達は動きを止めて静まり返る。
爆炎を起こしたのはポニィだ。
彼女以外にこの魔法を扱える者はいない。
誰もその炎に巻き込まれないで済んでいるのは、ポニィの腕があってこそだ。
炎はすぐに消え去ったが、静寂は残ったままである。
魔法を使ったポニィに皆の視線が集まるも、彼女は逃げるようにアマテルの背後へと隠れてしまう。
アマテルは視線が自身に移ったのを確認してから口を開く。
「皆さんの言い分は分かりました。ですが、どんなに言い分を募ろうとも事実は変わりません。勇者様が言っていることが事実です」
アマテルは毅然とした態度で言い切った。
「けどよ……、そいつが警備隊長にトドメを刺したのも事実だ」
「残念ですが、あの時すでに警備隊長さんはお亡くなりになっておりました。アンデッドになってしまった者を救う手立ては少しでも早く眠りにつかせるしかありません」
風が吹き、灰が舞う。
この灰は魔臓石を砕かれたアンデッドの成れの果て。
灰に帰した警備隊長に向けてアマテルは祈りを捧げる。
祈りの最中に口を挟む者はいない。
誰もがアマテルの祈りを静かに見守る。
「……私達が森を甘く見ていた結果、警備隊長さんは最悪な結末を迎えてしまいました。謝って済む問題ではありません」
祈りを終えて、アマテルは語り出す。
「皆さんの辛いお気持ちは分かります。ですが、警備隊長さんがどういった方か思い出してください。彼は警備隊長という役職に就いておりましたが、一人の狩人でもありました」
警備隊長の生前について語る。
「村を守りたい、その一心で警備隊長に立候補したのが彼です。誰よりも平和を願っていた彼は争いごとを嫌っておりました」
アマテルは村人達に頭を下げる。
「私達の失態を許して欲しいとは言いません。ですが、警備隊長さんが望んでいたものを忘れないでください」
彼女の言葉を聞いて村人達は押し黙る。
誰もが怒りを鎮めて、口を噤む。
「私達が目障りと言うのなら、すぐに出て行きます。ですから、もう勇者様を――」
「頭を上げてくれ」
村人の一人が口を挟む。
「俺達も感情的になり過ぎていた。すまなかった」
この場に居る村人達の気持ちを代弁する。
「ただな、村はすぐに出た方がいい。俺達は納得出来ても、他の連中はどう思っているか分からない」
「はい、分かりました。すぐに支度を整えます」
「また、遊びに来るといい。その時までに、皆の誤解は解いておく」
「はい。いつか必ず遊びに来ます」
村には入らず、すぐに旅立つ。
「すみません、勇者様。碌に準備もできていないのに」
「アマテルが謝ることじゃないよ。むしろ、助けてくれたお礼を言わないと」
村から距離を置いた所でローゲンの帰りを待つ。
「ポニィはどうしますか? 旅の準備すら出来ていないのに、村から出て来てしまいましたけど、引き返すなら今しかないですよ」
敵意を向けられたのはアンデッドと化していた警備隊長を討伐した自分だけだ。
ポニィなら今から村に戻っても問題ないはず。
戻るか戻らないか、その決断を下す前にアマテルが気付く。
「あっ、おじ様が帰って来ましたね」
アマテルの言う通り、ローゲンが村から出て来た。
一人ではなく人を連れている。
その人物の顔に見覚えがあった。
ポニィの母親だ。
ローゲンとポニィの母親、その二人と合流をする。
「事情は聞いている。必要な物の買い出しは済ませておいた。いつでも旅立てる」
そう言うローゲンの手には村で買ったと思しき荷物があった。
「助かるよ。正直、今の手持ちじゃ心許なかったんだ」
次にポニィの母親が娘に歩み寄る。
「ローゲンさんから話は聞いたわ。今でも気持ちは変わってない?」
「うん。わたし、テルを助けたい」
「そう。お母さんね、最初に話を聞いた時は驚いちゃった。だけどね、嬉しくもあったの。ポニィが自分の道を選んでくれて、本当に嬉しかった」
そう言って、持っていた荷物を手渡す。
「急いで準備したけど、ローゲンさんのアドバイス通りにしたから必要な物は揃っているはずよ」
「ありがと、お母さん」
ポニィはお礼を述べながら荷物を受け取った。
それを確認して、ポニィの母親はこちらに向き直る。
「うちの娘を頼みます」
「お、お母さんっ、やめてよ」
ポニィの母親が頭を下げると、その娘は恥ずかしそうに慌てている。
「心配しなくても大丈夫ですよ。おじ様と勇者様がついていますから安心してください」
アマテルはそう言うが、ポニィからは頼りなさそうだからついて行くと言われている。
だけど、それを言うとポニィの母親を心配させるだけなので黙っておく。
別れの時。
ポニィは母親に抱きしめられる。
恥ずかしそうにしているが、拒絶せずにそれを受け入れた。
「これから先、多くの困難が立ち塞がると思うの。そしたら、一人で悩まないで皆と話し合って、協力し合って困難に立ち向かうのよ。大丈夫、あなたならきっと出来るはずよ。だってポニィは自慢の娘なんだもの」
「うん、がんばる。わたし、がんばるね。ぜったい帰ってくるから、待っててね、お母さん」
「ええ、いつまでもあなたの帰りを待ってるわ」
母娘は別れの挨拶を交わす。
旅に危険は付きものだ。
行き先で、その道中で、死ぬことだってありえる。
もしもの事があれば、これが最後の会話になってしまう。
命が懸かった危険な旅に娘を送り出す。
果たして親はどんな心境をしているのだろうか。
「うちの娘をよろしくお願いします」
ポニィの母親は改めて頭を下げた。
「はい、任せてください」
「行ってらっしゃい、ポニィ」
「いってきます」
ポニィは力強い声で応えるのだった。
ー3ー
「ふーん。で、魔法使いの仲間が増えたということか」
地球にて、ルナに今日の報告をする。
村でのひと悶着も話してみたが、そちらには興味がない模様。
「ポニィって名前でアマテルの幼馴染なんだ」
「こっちの事は話したのか?」
「一通り。それに目の前で召喚されるところをさっき見せたしな。で、これが写真」
ルナにスマホを差し出し、ポニィの写真を見せる。
「ん?」
「どうした?」
ルナは写真を凝視する。
ポニィについて何か気になる事でもあるのだろうか。
そういえば、以前にアマテルの写真を見せた時も何か気になっていたな。
「この魔法使いについて何か気になる事はなかったか?」
「うーん……特にないかな」
「本当になかったのか?」
「なかったよ」
「……そうか」
納得いっていない様子だ。
「気になることがあるのなら言ってくれないと分からないのだが」
「逆に聞くが、お前は昨日から一緒に居て何も気付かなかったのか?」
質問したはずが、逆に聞かれてしまった。
だが、何度聞かれても変なところはなかった。
その旨を伝えると「これだから男子は」と言われてしまった。
なんだろう。
何かおかしなことでも言っただろうか。
「あれっ? 来てたんだー」
奈々がリビングに入って来た。
何か調べものがあったらしく、さっきまで出掛けていて今帰ってきたようだ。
「戻ったか。どうだった?」
「中々尻尾を掴ませてくれませんね。ただ、罠を張っておいたので近々成果を出せるかと」
「そうか。この調子なら予定通りに行けそうだな」
何の話をしているのだろうか。
「何かやるのか?」
「襲撃を仕掛ける、その準備だ」
物騒な話をしているな。
「襲撃って、どこに?」
「セイヴァーハンドだ。気になる動きをしているのが他にもいるが、そっちは放って置いても構わないだろう」
セイヴァーハンド。
度々話に出てくるが、名前は聞いたことがある。
たしか、世界中で慈善活動をしている団体だったはずだ。
日本でも募金活動をしているのを何度か見掛けたことがある。
「前から気になっていたけど、セイヴァーハンドはなんでルナを狙っているんだ? あれってただの慈善団体のはずだろ?」
「表向きはな。いや、違うか……慈善団体だからこそ、私の命を狙ってくる。奴らが掲げているスローガンを知っているか?」
「……いや、知らない」
テレビや新聞、ポスターなんかで見聞きした気がするも思い出せない。
「人類の救済。それが奴らの掲げているものだ」
「随分と壮大なスローガンだな」
「それだけじゃない。奴らは自分達を人類の救世主だと名乗っている。末端の人間まで浸透しているかは知らんが、少なくとも裏で仕事している奴らは本気で自分達を人類の救世主だと信じ込んでいる」
「裏で仕事って、何かアウトなことでもやっているのか?」
「表では慈善団体。裏では人類の敵の排除。それがセイヴァーハンドのやっていることだ」
そこでルナと初めて出会った時のことを思い出す。
あの男性と女性はセイヴァーハンドの一員で、ルナを殺そうとしていた。
「つまり、ルナは人類の敵だから命を狙われているということなのか。人類の敵なの?」
「私個人ではなく、ネクロマンサーの力が人類にとって害悪らしい。お前は知らないだろうが、この世には私みたいに異能の力を持った者が世界中にいる。セイヴァーハンドはその能力者達を問答無用で人類の敵に認定して排除して回っている」
「排除って、殺すってことだよな。人類の救世主を自称するわりにやってることは野蛮だな」
「奴らに罪悪感なんてないさ。悪人を断罪してやった、その程度にしか認識していない。むしろ、世界を救っていると考えているだろうな。それに、実際に悪事を働いている者がいるのも事実であるし」
「人を殺していることには変わりないだろ。そんな連中に狙われていたのか」
「一応言っておくが、私は狙われていないぞ。セイヴァーハンドにはまだ捕捉されていないからな」
セイヴァーハンドにネクロマンサーであることがバレたら全力で殺しに来る。
それがないということは、まだルナの存在が知られていないということだ。
「セイヴァーハンドを潰そうとは考えないのか?」
「規模を考えろ。ヘタに手を出しても、世界中に散らばる奴らを刺激するだけだ。要所要所で勝てても、最終的に勝つのはセイヴァーハンドになる」
規模が違い過ぎる。
世界中で活動しているのだ。
多くの人間がセイヴァーハンドに属しているのは当然といえよう。
全員が戦闘できるわけではないとはいえ、その数は相当数に上る。
「セイヴァーハンドを潰す気はないのに襲撃を仕掛けるのはリスクしかないんじゃないか?」
「世界中の敵対勢力が争っている。小競り合いは日常茶飯事だ。それに、いくら潰す気はないとは言え、奴らを放置して蔓延らせる方が厄介だ。数を揃えて大規模な魔法を行使するからな。そうなればあっと言う間に隠れている者達が捕捉される」
「世界中で……。なんか想像出来ないな」
「裏でこそこそしているからな。さすがのセイヴァーハンドも魔法の存在を一般人に知られたくないらしくて、表立って派手なことはしていない」
「ああ、たしかに魔法の存在は表に出せないよな」
魔法の存在が表に出たら、科学が発展した世界は混乱に包まれる。
今の社会は崩壊し、秩序は失われるだろう。
それ程までに魔法とは脅威な存在なのだ。
「襲撃を仕掛けるのにはもう一つ理由がある。さっきも言ったが、他にも異能力者がいる。そいつらに舐められないよう、定期的にセイヴァーハンドを襲撃しないといけないんだ」
ルナが言うには、セイヴァーハンドに狙われている者は日本にも多く存在しているそうだ。
その者達とコミュニティとまではいかないが、情報交換だけは密に行なっているらしい。
行うのは情報交換だけだが、地域によっては独自のルールがあるそうだ。
ルナが住む地域でもルールがある。
セイヴァーハンドに関する情報は全て開示しなくてはならない。
お互いがお互いの邪魔をしない。
協力をする場合は自己責任。
等々、こんな感じでルールが設けられている。
立場を明確にするために、実力を証明するために、ルナはセイヴァーハンドを定期的に襲撃しているそうだ。
「それでも襲撃なんてリスクがあるよな?」
「無論、自己責任であり、失敗した奴が悪い。中には企業を動かしてセイヴァーハンドに損害を与えている奴もいる。私には、そういった手法は使えないのでな。ちょっかいをかけているってわけだ」
企業を動かしてとか、それはそれで規模が大きいな。
ちなみに、裏切りというのは余程のことがない限り起こらないそうだ。
セイヴァーハンドに幾ら情報を流しても、排除対象から外れることはないし、一度でもそういった行動を取れば、周りからの信頼は失われて居場所を失う。
さらに情報を流せば、セイヴァーハンドに捕捉されるのは免れない。
情報を流してもセイヴァーハンドに人類の敵として排除されるか、同胞から裏切り者として粛清されるかのどちらかしかない。
そういうわけで、裏切りは滅多に起こらない。
「ルナ様、例の物は渡したのですか?」
「ああ、そうだ。忘れるところだった。これをお前に渡しておこう」
そう言ってルナはある物を手渡してきた。
「これは……」
「見覚えがあるだろう」
ルナから手渡されたのは丸い石。
ただの石ではない、眼球の形をした石だ。
「なんだ、この気持ちの悪い石は?」
プレゼントにしては趣味が悪過ぎる。
「忘れたのか? お前の右眼だぞ。自分の体を気持ち悪いとか言うなよ」
そう言われて思い出した、ルナと初めて出会ったあの日の事を。
「どうしてこれを?」
「微力ではあるが、それにはお前の魔力が宿っている。さらに私の魔法を組み込むことで目印、基点となる」
「目印だか基点だかになると何か意味があるのか?」
「いつだったかは忘れたが、お前が言っていたであろう。地球から向こうに戻ると、召喚された時に消えた場所と同じ場所に戻されると。だが、この石を向こうに置いておくことで、お前はこの石がある場所を基点に戻れるようになる……はずだ」
「はずだって、確証はないのか」
「お前の存在は特殊だからな。色々と試していくしかないんだ」
「……この石って、害はないよな?」
「安心しろ。問題が起きても、私に実害はない」
「おい」
ルナに実害がなくても、こっちには何かあるかもしれないじゃないか。
「名前を付けるなら『召喚石』だな。これを向こうの世界の誰かに預けておけ」
「了解」
預けるならアマテルがいいか。
「それで、村から追い出されたらしいが、明日からの予定は決まっているのか?」
「追い出されたって言っても、大した問題じゃない。目的は変わらないし、ひとまずは近くの街を目指すよ。その道中にポニィから魔法を教えてもらうことになっている」
ずっと気になっていた魔法。
それをついに自分で使えるようになる。
未知が手の届く所にあると考えるだけで心が躍る。
こんなにも明日が楽しみだと思ったのはいつ以来だろうか。
ー4ー
森の中を歩き、かつてサラマンダーが潜んでいた洞窟に至る道は通らずに別の道を歩む。
通る道が違うので辿り着く場所も変わってくる。
遠くには木々が見えるが、歩いている付近には草が生い茂っているだけで木は生えていなかった。
なだらかな起伏が続く丘陵地帯。
歩いていると足腰に負荷が掛かって辛い。
日差しが強くないのが救いである。
適度に休憩を挟みながら進んでいく。
起伏の陰に隠れていたアンデッドを遭遇することが二回あった。
最初の遭遇時、不意をつかれて怪我を負ってしまうも撃退する。
二回目は警戒していたこともあって、不意はつかれずに済んだ。
だが、疲労が溜まっていたからだろうか、下手を打って危うく殺されかけてしまう。
今回も仲間に助けられて事無きを得たが、危ないところだった。
「少し休みましょうか」
アマテルに治癒の魔法を掛けてもらい、今日何度目になるか分からない休憩を取る。
「勇者……ぜんぜんダメだね」
「悪い……」
ポニィの言葉を受けて素直に謝る
怪我をしてばっかで情けない。
ポニィの母親から頼まれたのに、こっちが頼りっぱなしである。
少し休憩を取り、アマテルの横に腰掛けているポニィに歩み寄った。
「ポニィ。昨日話したことだけど、魔法を教えてくれないか?」
「いいけど、いま?」
もちろん、今だ。
今までも休憩の最中、ローゲンに剣の稽古をつけてもらっていた。
今日からは魔法の稽古もつけてもらう。
これ以上足を引っ張るわけにはいかない。
魔法が使えるようになって、すぐに強くなれるとは思わないが、戦略の幅が拡がるのは確かだ。
「じゃあ、基本を見せるね」
やれやれといった感じでポニィは立ち上がり、手の平を広げる。
見せるように差し出された手の平から炎が上がり、瞬時に消えた。
「今のが発現。魔力を目に見える形に変換して現出させる」
再び手の平に炎が現出するが、今度は瞬時に消えることはなく炎は燃え続ける。
「これが維持。発現させた魔法を消えないように保つ」
炎を消すと、今度は杖を構えて再度魔法を発動させる。
杖の先端に炎が灯り始めた。
「これは付与。自分の持つ武器に魔法属性を与える」
杖に灯る炎を消して、さらに別の魔法を披露する。
「最後に自分の身に魔法による強化を施す加護の魔法」
そう言うと、ポニィの纏う雰囲気が変わった。
「加護の魔法は魔法属性によって効果が変わってくる。わたしの場合は魔法属性が炎と氷だから、炎属性は魔法威力向上。氷属性は魔法耐久力向上の効果がある」
一通り魔法を見せるとポニィはこちらに視線を向ける。
「基本はだいたいこんな感じ。質問は?」
「説明してくれたのは嬉しいのだけど、さっぱり分からないのだが」
「どこが?」
「どこって……全部かな」
「勇者の世界にも魔法はあるって聞いたけど?」
あると言えばあるが、ごく一部の者しか存在を知らないし、使える者はさらにその中の一部でしかない。
「地球だと魔法は一般的ではないんだよ」
「そうなの? それにしては魔法の技術は相当高いと思うよ。失った左腕を元に戻す魔法なんて聞いたことがないし、別世界から人間を召喚する魔法も聞いたことがない。一応は召喚の魔法ていう異界からモンスターを召喚する魔法はあるにはあるけど、それは結構高位な魔法だからこっちの世界じゃ使えるのはごく僅かしかいない。それなのにモンスターじゃなくて生身の人間を召喚するなんてすごいよ」
「……」
「ん?」
呆気にとられているのを不思議に思ったポニィは首を傾げる。
「その……今日はよく喋るんだなぁ、と思って」
普段はオドオドして、たどたどしく話していたのに、今は活き活きと饒舌に語っていた。
それを指摘されたポニィは恥ずかしそうに顔を赤く染めたかと思えば、先の折れた三角帽子で顔を隠してしまう。
「もう、勇者様。ポニィをいじめないでください」
「いじっ!? えっ? いや、そんなつもりじゃないのだけど……」
何か気に障ることでも言ってしまったのだろうか。
アマテルは耳元に顔を近付けて来てそっと囁いた。
「ふふっ、冗談ですよ。ポニィは昔から魔法が好きなのですよ。魔法のことになると周りが見えなくなっちゃう時がありますけど、からかわないでくださいね」
ポニィは自分の好きなことになると周りが見えなくなるタイプらしい。
そういえば、昨日も同じように饒舌に話す場面があった。
あの時もたしか魔法について話している時だったのを思い出す。
どんな人柄なのか改めて認識したところで、魔法についての話を進める。
次に魔法属性について教えてくれた。
「基本的に魔法属性は、テルみたいに属性を一つしかない持たない『単一型』と、わたしみたいに炎と氷属性の二つを持つ『複合型』の二種類がある」
「やっぱ複合型の方が強いのか?」
「単一型は魔法属性の力を最大限引き出せるけど、複合型はそうはいかない。だけど複合型は汎用性がある。どっちが強いかどうかは本人次第」
結局は使い手次第ということか。
「それで魔法属性はいくつあるんだ?」
「七つ。光、炎、水、風、土、雷、氷」
「なるほど……。ちなみに、誰がどんな魔法属性を持っているのか調べられるのか?」
その問いに対し、ポニィは首を横に振った。
「できない」
どうやら、自分の魔法属性は調べられないようだ。
「さっきも言ったけど、加護の魔法は魔法属性によって効果が違ってくる。風は俊敏性が上がる。雷は筋力の強化。それぞれが魔法属性に応じた恩恵が得られる」
「じゃあ、全部の魔法属性を操れる複合型がいたら最強だな」
「残念だけど、複合型でも魔法属性は二つだけ。魔法属性は生まれ持ったものだから、訓練で魔法属性が増やせるとかはない」
「そうなのか……」
全部の魔法属性を操れれば最強だなと思ったが、さすがに中二過ぎるか。
「多くて二つの魔法属性というが、例外もいる」
近くで話を聞いていたローゲンが口を挟む。
「ケルベロスと呼ばれているアンデッドが魔法属性を三つ持っている」
三つの魔法属性を持つというアンデッド。
強敵なのは間違いない。
いずれそういったアンデッドに出会すのだろうか。
「おじ様。そのアンデッドって有名な……」
「そうだ。リッチーの居城、その門を守護しているアンデッドだ」
いずれ出会すどころか目的地にいるのか。
ポニィによる魔法の指導が始まる。
「目を閉じて。手を差し出して。手の平の上に魔力を集めるイメージをして」
言われた通りに体を動かし、イメージする。
手の平の上に魔力を収束させ、魔法を発現させるのだ。
「……」
「……」
「……」
アマテルとポニィ、ローゲンの三者が見守る中、集中して事に当たるも何も起きない。
何度も試してみるが結果は変わらず何も起きなかった。
「うーん……なんでかな?」
ポニィは首を傾げる。
「何ででしょうか?」
アマテルもつられて首を傾げる。
こっちの世界の住人なら、このやり方で上手くいくらしい。
最初の段階が出来なければポニィにはお手上げの模様。
「勇者候補だと、こっちの世界の住人と何か違うのかな?」
思ったことを口にしてみる。
生まれてからずっと魔法と接して来た者達が感じられる何かがあるのかもしれない。
「それはない。勇者候補でも問題なく使えるはずだ。もちろん得手不得手はあるが、全く使えないなんてことはない」
若い頃に旅に出ていたローゲンは、多くの勇者候補を見てきたはずだ
その彼が言うのだ、勇者候補であろうと魔法を使えないなんてないのだろう。
その後も何度か挑戦してみるも残念ながら魔法が発現する事はなく、失敗に終わる。
「ごめんなさい……」
ポニィは申し訳なさそうに謝るが、悪いのは彼女ではない。
「気にしないでくれ。ただ単に向いていなかったってだけだよ」
「ちがう。魔力をもってない人なんていない。勇者にもあるはず。だから何かしらの現象がおこるはず」
それなのに何も起きなかった。
魔力の有無というより、素質の問題なのだと思う。
残念だけど、使えないのならしょうがない。
地道に剣の道を極めるしかないか。
「ひとまず、練習はここまでにして、もう少し進もう。いい場所が見つかれば、そこで夜営だ」
ー5ー
「そうだ、アマテルに渡しておきたい物があるんだ」
夜営の準備をしていた際にふと思い出す。
「私にですか?」
「うん。誰かにと思っていたけど、アマテルが一番いいかなって思って」
「そうですか。勇者様からプレゼントを貰えるなんて嬉しいです」
「……」
渡そうと思っている物はプレゼントって呼べる代物ではないし、女子に贈るような物でもない。
「どうしましたか?」
「……ごめん。やっぱローゲンに渡しておくよ」
なんでこんな物をアマテルに渡そうと思ったのだろうか。
「私では不都合だったのですか? 勇者様がそう言うのなら仕方がないのですけど……」
アマテルはあからさまに気落ちする。
「そうじゃないよ。んと……、説明するより、見せた方が早いか」
そう言って取り出して見せたのは眼球の形をした石。
ルナから渡された召喚石である。
「……これは?」
石を見たアマテルは一瞬動きを止めた。
案の定、反応は芳しくない。
眼球の形をしているのだ、気味悪がるのも無理はない。
ひとまず、ルナから聞いた話をそのままアマテルに伝える。
「なるほど。そういう事だったんですね。眼だけに目印ってことですね」
「眼球の形になったのは偶然だけどな」
話を聞いて納得してくれたようで何よりだ。
「話は分かりました。私が召喚石を預かっておきますので、管理は任せてください」
「悪いけど頼んだよ」
召喚石の管理はアマテルに任せることに決まり、夜に備えるのであった。
ー6ー
「ちょっと肩が凝ったから揉んでくれ」
目の前にいる小生意気な少女、ルナが地球に召喚するなり奉仕を要求してきた。
「その面倒くさそうな顔を今すぐ止めろ。見ていて不愉快だ」
小生意気ではなく、生意気だ。
ただの生意気な小娘だ。
だが、それを口にしてはいけない。
どこから報復が飛んでくるか分からないからだ。
それに表情に出てしまったのは自分の失態である。
ちょっとしたこと機嫌を悪くするから困ったものだ。
せめて、ルナの要望に応えようと表情を変えてみる。
「その作ったであろう表情、ハッキリ言って気持ち悪いぞ」
「……」
殴りたい。
だが、堪えろ。
この程度のことで怒るなど、こんなちびっ子相手にみっともない。
渋々と、できるだけ態度に出さないように努めながらだがルナの肩を揉む。
「意外と上手いじゃないか」
お世辞……ではないか。
そもそも、お世辞を言うようなキャラでもないし、本当に褒めているのだろう。
「こんなことで褒められても嬉しくないのだが」
「買い物しか取り柄がないと思ったが、意外な才能もあったんだな」
「才能があるのなら、もっと別のものが良かったな」
「そう言うな。何であろうと、一応褒めているんだ。ありがたく思え」
買い物と肩を揉むしか才能がないって、ただのパシリじゃないか。
「肩を凝ったって、今日何かあったのか?」
「んー? 今日は体育があってな……」
体育の授業で疲れるって、結構真面目に取り組んでいるんだな。
「なんかそれ、子供っぽいな」
「うるさい。体育以外にはも色々あったんだ。奈々に生徒会に推薦されそうになったのを止めたりとか色々と……」
「生徒会に? 奈々が推薦ってことはルナが生徒会に入るのか?」
「入らない。全力で阻止したからな。おかげで今日は疲れた」
「ふーん」
裏の世界を生きているって聞いたから、学校ではこそこそしているのかと思ったら違うようだ。
むしろ、学校生活を満喫している。
「そっちは今日はどうだった?」
肩を揉むのを切り上げ、今日の出来事を報告する。
「ふーん、そうか」
「そうかって大変だったんだぞ」
「色々と?」
「色々と」
「そうか」
なんか気付いたら普通に会話してるな。
「とりあえずの問題は魔法が使えないという事で、いいんだな?」
「ああ」
「なるほど。まあ、原因はともかく、こっちのやり方を試してみれば使えるようになるかもしれないな」
「地球のやり方? どんな事をやるんだ?」
「一言でいうと契約だな。ただ、今は厄介事があるからな。そっちが済んでからだ」
向こうでは魔法が使えなかったが、ルナの言う地球のやり方はどうだろうか?
どういったやり方かは知らないが、それを試してみるのはいいかもしれない。
しかし、なんだか忙しいらしく、それを試すのは後日になりそうだ。
ー7ー
世界が歪んで見えるほどの目眩から解放されると、召喚石を持つアマテルが目の前に立っていた。
向こうに召喚された時と周りの景色が違う。
「召喚石はちゃんと機能したようだな」
「ですね。なんだか、これを持っていると、勇者様とずっと一緒にいるみたいです」
そうなるのか?
それはちょっと違くないか?
「思ったのですけど、これって勇者様からの初めての贈り物ですよね」
「贈り物ね……そう言われると照れるな。でも、どうせならもっとマシな物を贈りたかった。今度別の物を贈るよ」
「ありがとうございます。ですけど、贈り物はこれだけで充分ですよ。お気持ちだけ貰っておきます」
アマテルはそう言うけど、いつもお世話になっているのだ。
何か感謝の気持ちをカタチとして伝えたいと思うのだった。
翌日、半日掛けて丘陵地帯を抜けることが出来た。
足場が落ち着き、ここからは歩きやすくなる。
休憩中、先日に引き続き魔法を教えてもらう。
だが、結果は昨日と同様、魔法を行使出来ずに終わった。
やはり地球のやり方というのを試してみるしかないようだ。
ー8ー
とある噂が流れた。
学校で流れる噂など他愛のないものである。
いつものルナなら噂の真偽に限らず興味を持たない。
だが、今流れている噂には自然と耳を傾けずにいられなかった。
ルナの学校で。
ルナの学年で。
ルナのクラスを中心に噂は流れていた。
「ねえ、あの噂聞いた?」
何度も耳にした。
「委員長の兄貴が行方不明なんだって」
そういう事になっているな。
「そうそう。なんか事件に巻き込まれたのだとか」
事件といえば、事件だったな。
「あれ? あたしが聞いた話だと事件を起こして警察に捕まったって」
起こしていない、巻き込まれたんだ。
「なんにしても委員長のお兄ちゃんが行方不明なんでしょ」
奈々がテキトーに話を纏めた。
「そうなんだけど、気になるじゃん。なんで行方不明になったかって」
「あっ。もしかしたら駆け落ちなんじゃない?」
「それはない」
今までテキトーに相槌を打って話を聞いていたが、思わず口を挟んでしまった。
「だよねー。今どき駆け落ちなんてねー」
思わず本音が漏れてしまったが、幸いにしてすぐに流されてしまった。
「あたしはちょっといいと思うな。好きな人と愛の逃避行なんて憧れる」
「さすがに夢見すぎっしょ」
「ひっどーい」
「あははは」
下らない会話だ。
ルナは心底そう思った。
「でさ、委員長の兄貴ってどんな感じなの? イケメンなのかな」
「知んなーい。見たことないもん」
「そっかー。イケメンだったら付き合いたいのに」
残念ながら全然イケメンではないぞ。
駆け落ちなんてできるようなタマでもないし。
そもそも相手がいない。
「ルナはどう思う? イケメンだと思う」
嫌な話題を振ってくるな。
アイツが聞いていなくても、褒めることはしたくない。
だけど、悪口を言って委員長の耳に入ったら気を悪くさせてしまうかもしれない。
「あれ? 次の授業なんだっけ?」
返答に困っていると奈々が無理やり話題を変える。
「忘れたの? 現国だよ、現国」
「あーそうだった。じゃあ中山の授業か」
「中山の教え方、マジで下手だから何とかしてほしいよ、ホントマジで」
話題が委員長の兄から別の話題に変わった。
奈々はルナに向けてウィンクする。
それにルナは微笑み、お礼を伝える。
他人には分からないアイコンタクトを交わし、チャイムが鳴るまでクラスメイトとの雑談を続けるにだった。
ー9ー
委員長の兄とは言わずと知れたアイツのことだ。
最近ルナの配下に加わった生意気な男。
なにかと文句を言ってくる嫌味な奴である。
今こうしている間にも別の世界で悠々自適に過ごしていると思うと実に腹立たしい。
その生意気な下僕の妹であるのが委員長だ。
彼女はその役職名、あだ名というべきかは分からないが、クラス委員を務めており、クラスメイトからは委員長と呼ばれている。
噂の中心にいる委員長は端的に言っていつも通りだ。
家族が行方不明になって落ち込んでいるという感じはなく、普段通りに過ごしている。
授業は真面目に受けて、休み時間は友人と雑談を交わし、学校が終われば帰路につく。
兄妹の仲がどうだったかは知らないが、兄の心配をしているようには見受けられない。
「ルーナーさーまー、かーえりーましょー」
放課後になり、帰り支度を済ませた奈々が声を掛けてきた。
奈々は学校でも様付けで呼んでくる。
もちろん状況によって呼び方を変えるが、友人との会話中などでは基本的に様付けだ。
いつ作ったのかは知らないが、ルナ様親衛隊なるものを裏で密かに結成しており、奈々を親衛隊長に何人か入会しているのだとか。
勝手に何やっているんだとは思ったものの、それのおかげで様付けで呼べると奈々は嬉々として語っていた。
あの笑顔を見てしまったら何も言えない。
なので渋々黙認しているが、様付けで呼ぶためだけにわざわざ作ったのではないかと疑っている。
親衛隊のメンバーはクラスメイトの仲良しグループが主だった面子だ。
他にも使えそうな面子を何人か集めたと聞いているが、何に使えるかは詳しく聞いていない。
ついでに親衛隊は、男子禁制との事。
他にも規約があるそうだが、どうでもいいのでそれも聞いていない。
「河合ー、ちょっといいかー?」
教室の入り口から担任教師が顔を出して奈々を呼び出す。
「はーい、なんですか?」
「悪いけど、それ運んどいてもらえるか?」
担任教師は教壇に置かれたプリントの束を指差して示す。
「えー、これから帰ろうとしていたのにー」
「んー、じゃあ、望月でいいや。頼んでいいか」
奈々の近くに居たせいだろうか、こちらに飛んできた。
「やっぱ、わたしがやるからいいですよ」
「そっか、頼んだぞ。職員室の俺の机に置いといてくれ」
「はーい」
用が済んだ担任教師は教室から去っていった。
「手伝うよ」
「いいですよ、ルナ様。これくらい一人で出来ますから」
そう言って奈々はプリントの束を抱える。
「急いで届けてきますので、待っててくださいね。すぐに戻りますから」
駆け足で去っていく奈々をルナは見送る。
奈々はすぐ帰ってくるだろうし、それまで大人しく教室で待とう。
ふと、前の席に座っている一人の生徒が気になった。
委員長だ。
今はどうやら日報を書き込んでいるようで、一人で黙々と作業していた。
最近いつもこうだ。
委員長が気になる。
兄がいなくなり、その噂がクラスのみならず学校中に流れている委員長。
どうしてこんなにも気になるのか。
これは……心配?
果たして自分は委員長のことを心配しているのだろうか?
「……兄が行方不明なのは本当なのか?」
気付いたらルナは委員長の隣に立ち、話し掛けていた。
突然話し掛けられた委員長は顔を上げてこちらを見る。
委員長の瞳は困ったような驚いたような戸惑ったような、そんな色を帯びていた。
「えっと……望月、さん?」
普段、ルナと委員長は会話をしない。
全く話さないというわけではないが、せいぜい挨拶をする程度の仲だ。
それなのに今日はルナから話し掛けられ、その内容は噂の真偽を確かめる失礼なものである。
「それって、みんなが噂している話だよね……」
「そうだ」
「……気になるの?」
「気になる」
「そう……」
教室にはまだ他にも生徒がちらほらと残っているが離れているのでルナと委員長の会話は周りの耳には届かない。
「……初めてだな。そんな直接的に聞いてきた人は……」
「友人もか?」
「うん……みんな、気を遣ってくれているみたいで……」
「そうか。で、話してくれないのか?」
「うーん。噂についてはあまり話したくないかな」
「そうか。ならいい」
ルナは翻して委員長の元から離れる。
「あ……」
委員長の呼び止めようとする声を聞いてルナは足を止めて振り返る。
だが、委員長は何も語ろうとしない。
ルナは委員長に一瞥をくれて、足を進めた。
離れるのと同時に奈々が教室に戻ってきたので、合流して教室を出る。
委員長は帰っていくルナの後ろ姿をただ静かに見つめるだけだった。
「委員長になにか用があったのですか?」
先程のことを聞いていたのだろう。
「教室にいなかったのに何で知っているんだ」
「情報収集は得意なので」
胸を張って自慢げに語る奈々。
「そうか……。委員長には噂のことが気になって聞いてみただけだ」
噂がいつ誰がどのように流したのかは分からない。
誰が噂を流したにせよ、今の状況は委員長にとって好ましくないものだろう。
「……気にしているのですか?」
「え?」
真剣な面持ちで奈々が聞いてきた。
「偶然とはいえ、委員長の家族を巻き込んでしまったことを気にしているのですか?」
「……気にしてはいないさ。それに今まで殺してきたセイヴァーハンドにも家族はいただろ。それを考えれば今更な話だ」
「そうですね。今更な話です。気にしていたらキリがありません。ですから、ルナ様も気に病むことはないですよ」
「だから気にしてないって」
「顔に出てますよ。委員長が心配だって」
顔に出したつもりはないが、やはり奈々には伝わってしまうものなんだな。
「委員長については、わたしの方でも気にかけておきますね」
「悪いな」
「悪いと思っているのでしたら、なにかご褒美が欲しいです」
「欲しい物でもあるのか?」
「物ではないですけど、いいですか?」
「内容による」
「でしたら、だいじょぶですね。ルナ様は優しいですから」
「私の優しさは関係ないと思うぞ」
「それはそうですけど……ウェへへ」
「……」
「おっと、すみません。ちょっと、よだれが……。それよりもご褒美ですが、とりあえず今日一緒にお風呂に入ってくれませんか? あっ、勘違いしないでください。別にやましい目的があるわけではないので」
「……一緒に入るなんてよくしてるだろ。いちいちそれを褒美にしなくもいいんじゃないか?」
「いえいえ、確約をいただければ、それでいいのです」
「よく分からないが、それでいいのなら別に構わない」
「ホントですか! 今夜がたのしみです!」
ー10ー
朝の通学路にて、昨晩のことを思い出したようで奈々が話し掛けてきた。
「昨日のお風呂は楽しかったですね、ルナ様」
「そうか? ただ一緒に入っただけだが?」
奈々は時折よく分からないことを口にする。
意思の疎通が上手く行かないのは、すれ違い……コミュニケーション不足が原因なのだろうか?
だとしたら、もっと仲良くした方がいいのかもしれないな。
「どうしたのですか? なにか考えごとですか?」
「何でもない。行くぞ」
学校の登下校はいつも奈々と一緒である。
今日の朝もそれは変わらず、二人での登校だ。
「んっ? あれ、委員長じゃないですか」
校門の前に立つ一人の生徒。
その生徒は奈々の言う通り委員長だった。
「望月さん、少しいい?」
こちらの姿を認めた委員長が近付いて来て声を掛けてきた。
「昨日の話の続きがしたいの」
周りにいる他の生徒達が何事かと視線を向けてくる。
校門の前だと何かと目立つようだ。
「昨日? 何の話?」
奈々は首を傾げる。
知っているくせに。
「ちょっと話してくる」
「うん、いってらー」
委員長に連れられ、ルナは人目のつかない校舎の裏へと移動する。
「それで話って?」
「昨日もそうだったけど、なんかいつもと態度違うよね?」
普段学校にいる時は色々と取り繕っている。
だけど、委員長を見ていると、どこかの生意気な奴の顔を思い出してしまい、つい取り繕うのを忘れてしまう。
「……気のせいだ」
「そう? まあいっか。それで昨日した話の続きだけど、いい?」
ルナは黙って頷く。
「……あの噂はさ、本当なんだ。今は色々と尾ひれがついているけど、うちの兄が行方不明なのは本当」
「……」
「夏休みの終わりに遊びに行って、それっきり家に帰ってないの……。警察が調べてくれてはいるけど、事故だか事件に巻き込まれたのかも分かってない状況なの」
「……」
「ねえ、望月さん」
話を聞かせくれている間に委員長の目には涙が浮かんでいた。
「兄は生きているよね? 死んでいないよね?」
涙は零れ落ち、地面を濡らしていく。
「ごめんね……こんなこと聞かれても困るよね」
「別に構わない」
ルナは優しく委員長の背中を優しくさする。
「今まで我慢していたのだろう。今は私しかいない。今の内に泣いておけ」
「うぅ……ありがとう」
身長差があるため、小柄なルナが委員長の背中をさするだけでも一苦労である。
委員長の涙が収まるのを待ってからルナは口を開いた。
「……なんで私に話そうと思ったんだ」
「なんでかな……。理由は自分でもよく分からないの。だけど、望月さんになら話してみてもいいかなって思って」
「私と委員長は普段あまり話さないだろ。それなのに、よく話そうと思ったものだ」
「それは望月さんもだよ。昨日はいきなり話し掛けられてびっくりしたよ」
ルナ自身も昨日はなんで話し掛けたかよく分からない。
「あまり話さないけど、望月さんが茶化したり馬鹿にしたりしない人だってことは分かるよ。他の人とはどこか違う、不思議な感じがするもん」
「私自身のことはよく分からないが、そう見えるのか?」
「うん、見える見える」
「そうか」
「話を聞いてくれてありがと」
「話くらい、いくらでも構わない」
「そう? それじゃあ、お言葉に甘えてこれからもいっぱい話すね」
嬉しそうにはにかむ委員長の目にはもう涙はなかった。
「あっ、いけない。もうこんな時間。一時限目始まってるよ」
「完全に遅刻だな」
「遅刻どころか、サボりだよ」
「委員長が授業をサボっているなんて新鮮だな」
「そりゃあ、サボるのなんて初めてですからね。でも、なんだろう……なんかドキドキしてきた」
「案外楽しんでいるな。クセになり過ぎて、サボりの常連にはなるなよ」
「あははっ。忠告ありがとう、気をつけるね」
「さて、そろそろ教室行くか」
「……」
「どうした?」
「このまま行っても怒られるだけだし、どうせサボるなら、一時限目が終わるまで話してかない?」
「不良だな」
「たまにはいいでしょ」
「そうだな。悪くない提案だ」
「ここで話すのもなんだし場所を変えようか」
ー11ー
「別にさ、うちの兄とは仲が良かったわけじゃないの。かといって仲が悪かったでもない。たまに会話する程度の家族、兄妹だった」
ルナには血の繋がった家族はいない。
兄も姉も弟も妹もいたことはいない。
母と父はルナを残して死んでしまった。
なので、委員長の語る兄妹の話はいまいちピンとこない。
「兄はある日突然消えたの。何の前触れもなく、忽然と。帰ってこなかった」
夏休みの終わりにセイヴァーハンドとの争いに巻き込まれて死んだからだ。
「大して仲良くなかった家族なのにさ。いなくなると喪失感って言うのかな? 生活の一部が欠けちゃったの。当たり前にあったものがなくなって、家に空白が出来ちゃった。今まではさ、ただの同居人程度にしか思っていなかったのに、いなくなった途端、なんか悲しくなった」
「……」
「あはは……おかしいな。望月さんが聞き上手だから、つい話しすぎちゃった」
聞き上手?
特に何もリアクションを取っていないのだが。
相槌も打たずに黙って聞いていただけで、委員長の方から勝手に話し続けただけだ。
「私は何もしてない。ただ黙って聞いていただけだ」
「それでもありがと。本当にありがとう。話を聞いてくれて」
おそらくだが、委員長は誰かに話を聞いて欲しかったのだ。
話す相手は誰でもよかった。
なぜ委員長が自分を選んで話してくれたのかはよく分からないが、話して彼女の肩の荷が下りたのは良かった。
気持ちが軽くなったのか、委員長の表情は明るい。
「さっき言ってたよね、また話を聞いてくれるって」
「ああ、言ったな」
「ありがとう。聞いてくるだけでも嬉しいよ」
時間を確認すると、一時限目は終わるにはまだ時間があった。
「ねえ、次は望月さんの話を聞かせてよ」
「私の?」
「だってこっちばかり喋っていたら不公平じゃん。だから聞かせてよ」
いきなり言われても、何を話したらいいのか迷う。
「そうだな……。これは知り合いの話なのだが」
「その言い方だと望月さん自身の話みたいに聞こえるよ」
「……なわけないだろ」
ルナの反応を見て委員長は察するが、あえて口を挟まなかった。
それには気付かずにルナは一度咳払いをして話を続ける。
「最近知り合った仲間……じゃなくて、友達……とも違うな。なんて説明したらいいか分からないが、まあ知り合った人がいるんだ」
「何か事情があるんだね。それで?」
「そいつがとにかく生意気で嫌味な奴なんだ。歳が一つ二つ違うだけでいつも上から目線でいるし、自分は達観してますよっていう大人ぶった態度が何よりムカつく」
「あー、いるよね、そんな人。見ているだけでイラッと来るよね」
「文句があっても口には出さないで顔に出してくるし。しかもその顔がホント憎たらしくて見ていて不快だ。言いたいことがあるのならはっきりと言えばいいのに」
「はっきりしない人っているよね。せめて何か言ってほしいよね」
「ああでも、そいつは口が悪いからな。口に出したところで苛つかせるのは変わらないか。この前もようやく口答えして来たかと思ったら生意気なことばかり言ってくるし、本当に嫌味な奴なんだ」
「あはは。口が悪い人っているよね。どうしてあんなにも悪いんだか」
「別の日にはちょっと頑張っていたから、それとなく褒めたんだ。そしたら、見るからに舞い上がって調子に乗り始めたよ。思えば、あそこで褒めたのは失敗だった」
「褒めると調子に乗る人っているよね。そういう人って褒め慣れていないのかな?」
「あーあと、一番苛つかせるのは、知らない所で女子と仲良くしていることだ。それを嬉々として報告してくるのがムカつく。最近は別の女子とも仲良くしているらしい。そんなことも逐一報告してくるのが余計にムカつく」
一通り話し終えてルナはひと息つく。
「その最近知り合った人って言うのは男の人でいいのかな?」
「ああ、そうだ」
「望月さんの、その……知り合いの人は女子だよね?」
「知り合い?」
「……知り合いの人の話だよね?」
「……あっ、うん。そうだ」
「あはは……。その二人って付き合ってるの?」
「違う。それは違う。それだけは断言できる。お互いに好いているわけではないし。さっきも言ったが、説明の難しい関係なんだ」
「そうなんだ……」
付き合いたてのカップルの愚痴を聞いた心境になるも、これは明言しない方がいいだろうと委員長は判断する。
その時、一時限目終了のチャイムが鳴る。
そこで委員長との語らいは終わり、教室に移動するのであった。
「ずいぶんと遅かったですね」
一時限目が終わってからの休み時間中に教室に入ると奈々が詰め寄ってきた。
機嫌が悪そうだ。
怒っているのだろうか。
「すまない」
「……まあ、別にいいですけど」
口を尖らせて拗ねている。
「それでどんな話をしていたんですか?」
「うーん……内緒」
「えー」
珍しく隠し事をしとうとするルナの態度に奈々は不満そうにするのだった。
お昼休み。
奈々が小声で話し掛けてきた。
「茜さんから連絡が入りました。対象はクロで確定。榊さんが準備に取り掛かっているので今夜にでも動けるそうです」
以前から調べていた人物がセイヴァーハンドの一員であると判明した。
「そうか、分かった。あいつの装備は?」
「不本意ですが、用意してあります」
何が不本意なのかは意味が分からない。
「なら、問題はないな。今夜攻める」
「了解しました。そのように伝えておきます」
そこへクラスメイトがやって来た。
「なーに話してんの?」
「コソコソと怪しい」
小さな声で話していたのを訝しむ。
「大きな声で話せない内容と言えば決まっているじゃないですか。恋バナですよ、恋バナ」
「あーはいはい。また奈々がルナに愛してるとか言ってたのね」
「えっ!? なんでわかるの!?」
「いや、普通にわかるっしょ……」
日頃の奇行せいか、クラスメイトはそれで納得してしまった。
セイヴァーハンドへの襲撃の準備は茜と榊に任せて、ルナと奈々は放課後まで学校で過ごすのだった。
ー12ー
もはや日課となった地球への召喚。
今日もルナによって召喚されるが、いつもと雰囲気が違う。
いつも通りにマンションの一室に召喚されるが、ルナはいつになく真剣な面持ちでいた。
「出掛けるぞ」
どこへ?
そう問いただす前に装備を一式渡された。
渡されたのは、鮮やかな青色をしたフード付きのローブ、黒い革手袋、奇妙な模様が描かれた白地の仮面。
「急いでそれを身に着けろ」
理由も言わずに装備するようにと促す。
一体何なんだ?
部屋を見渡すと、ルナも奈々も茜も榊も渡された装備と同じ物を着用していた。
全員が同じ装備なので、体格で判断しないと誰だか分からない。
早くしろという、ルナからの無言の圧力を受けて急いで装備する。
パッと見だと怪しい集団にしか見えない。
「魔法は扱えるようになったか?」
「まだだけど」
「そうか……。なら、どうするか……」
ルナは何か悩む。
「ローブは羽織るだけでも効果を発揮します。ひとまずは同行するだけでもいいと思います」
そう進言する茜にルナは頷く。
「どうせ戦力にならないだろうし、今日は私に付き従っていろ」
「馬鹿にしているのか? 結構強くなってるぞ」
「言うじゃないか。せいぜい期待しないでおくよ」
ルナが装備について説明してくれた。
ローブには認識阻害の魔法が編み込まれているらしく、羽織るだけで魔法を扱えない者には認識されなくなるとの事。
さらに着用者が魔力を送り込むことで効果が増幅するのだが、今の自分にはそれは出来ない。
「他の装備は……説明してもしょうがないか。言ったところで今のお前には使えないし」
「説明する時間も惜しいですからね」
「そうだな。では、行くぞ」
ルナの号令で移動を開始する。
転移の魔法。
予め、魔法を施していた場所に瞬時に転移できる魔法だ。
ルナの発動した転移の魔法によって、転移された先はとあるビルの屋上である。
「私が先行します」
茜はそう告げて先を行く。
ビルとビルの間を跳躍しながら移動する。
その後を追い掛けるように全員が動く。
「どこに向かっているんだ?」
「地下神殿です」
声から奈々だと気付いた。
ルナに話し掛けたつもりだったが、奈々だったとは。
どおりで背がいつもよりも高いわけだ。
全員の装いが一緒だから紛らわしい。
「地下神殿って、あの水害対策で有名なやつ?」
「そうです。あの広い空間の一部を利用しているセイヴァーハンドの一味がいるのです」
やがて目的地に辿り着き、中へと侵入する。
誰一人として口を開く者はいない。
静寂の中、天井高くまで聳え立つ巨大な柱が連なる地下神殿の中を突き進む。
周りを見渡せば、テレビや写真なんかでよく見掛けた光景が広がっていた。
実際に柱を目の当たりにして、その巨大さを実感する。
デカい。
とにかくデカい。
想像の何倍も大きい。
その壮大さに心が湧き立つ。
「なあ……」
この感想を共有しようと声を出した瞬間、腹を思いっきり殴られた。
「ぐっ……!」
その場で崩れるように膝をついてしまう。
声を上げられない。
呼吸が上手く出来ない。
苦しい。
抗議の声どころか苦悶の声すら上げられない。
そこへ誰かが膝をついて耳元に口を寄せて囁いた。
「声を上げるな。ここはもう敵地だ。迂闊な行動は控えろ」
小さいからルナかなと思ったら、やはりルナだった。
その声音からは、真剣さが伝わってくる。
だけど、いくら黙らせるためであっても、このやり方はないだろ。
殴られて痛みが残る腹を庇いながら立ち上がり先を進む。
少し進むと先行していた茜が足を止めて合図を送る。
その合図を受けて奈々と榊がそれぞれ別方向に走り去っていく。
いきなり三手に別れて、自分はどうしたらいいか分からず混乱する。
この場に残っているのは自分含めてルナと茜の三人だけだ。
奈々か榊のどちらかについて行くべきなのだろうかと悩んでいると、横からルナが肘で小突いてきた。
「お前の役目は私の護衛だ。いいな?」
頷いて了解の意を示す。
自分にも役割があったようで安心する。
それにしても、ルナ達は言葉を交わすことなく動いているが、事前に打ち合わせでもしていたのだろうか。
動きに無駄がないので、その可能性はある。
茜が動き出し、ルナがその後ろを追う。
自分も置いていかれないように、その後を追い掛ける。
茜の行く先に一人の人物が歩いていた。
こちらに背を向けているが、見覚えのある服を着ている。
ルナの通う高校と同じ制服だ。
あの人物はルナと歳が近い女子高生ということになる。
彼女は何やら手にした紙束を読み耽っている。
歩きながら読むとは器用なやつだな。
その彼女に向けて茜は駆け出す。
ローブに隠れて気付かなかったが、茜の腰には刀が納められていた。
柄を握り、いつでも抜刀することが出来る状態。
殺すつもりだ、あの女子高生を。
なんで? どうして?
理由を問いたくても、もう遅い。
鞘から抜かれた刃が流れるように女子高生の首へと向かう。
「お嬢っ!」
男の叫び声と共に金属音が響く。
刀に斬られそうになった女子高生を寸でのところで男が庇う。
男の手には自身の背丈ほどの大きな盾が握られており、その盾で茜の斬撃を防いだのだ。
茜はさらなる攻撃を仕掛けるも男によって全て防がれてしまう。
男の後方より拳ほどの大きさをした球状の水泡が飛来する。
女子高生による魔法の攻撃が茜を狙うも後方に飛び退って回避していく。
「お嬢。お怪我は?」
「無事です。助かりました」
お嬢と呼ばれる女子高生にそれを守る男性。
ルナが彼らを狙うということはセイヴァーハンドの一員なのだろう。
「どうやら一人隠れていたようですね。最初の一撃で仕留めたかったのですが……申し訳ありません」
「謝る必要はない。むしろ、今ので殺してしまったら拍子抜けにも程がある」
茜は謝罪するもルナは大して気にせずにいた。
「お前らの正体は分かっている」
ルナは対峙する女子高生に向かって話し掛ける。
「ここで逃げ出しても、どこまでも追い掛けて、追い詰めて、殺してやる。だから逃げるのは諦めた方がいいぞ、副会長」
「そうですか……。わたくしが生徒会副会長だと存じているのですね。ここに来たのは偶然ではなく、下調べをした上で来られたようですね」
女子高生の正体はルナの通う学校の生徒会副会長らしい。
「わたくしを狙うということは、あなたが人類の敵。もしくはそれに準ずるものだと考えられます。逃げられないとあらば、ここで返り討ちにさせればよい事」
副会長の纏う雰囲気が変わる。
「今この場で粛清を致します!」
「お嬢、やるのですね」
「はい、やります。……わたくしに力を、セイレーン!」
副会長の足下に魔法陣が出現した次の瞬間、仮面の上を水滴が滑る。
雫が上から降ってきたのだ。
水滴は一滴ではなく、とめどめもなく降り注ぐ。
雨?
でも、ここは屋内だぞ?
雨は豪雨になり、視界を悪くさせる。
「茜。どうだ?」
「この雨は結界による魔法です。結界の中心を叩くか、術者本人を叩くかのどちらかで解除するしかありません」
ルナと茜がこの雨について話している。
どうやら、この雨は魔法によるものらしい。
「榊!」
ルナの声を合図に雨音に混じって銃声が響く。
勇者補正として与えられた右眼があるから捉えることが出来た。
彼方より飛来する銃弾が副会長の頭部を狙う。
だが、それは男が魔法で作り出した岩の壁によって弾かれてしまう。
副会長と男を守るように全方位に築かれた岩の壁。
あれでは攻撃が通用しない。
しかし、茜は駆け出していた。
手には刀が握られているが、ただの刀ではあの壁は破壊できないはず。
どうするつもりだろうか?
振られた刀は壁を捉える。
次の瞬間、壁が崩れるように消失した。
理由は分からないが消えたのだ。
茜自身が何かしらの魔法を使ったからかもしれない。
「くそっ!」
男は副会長をその身を持って庇う。
左腕が斬り飛ばされる。
続く攻撃は盾で防ぐも明らかに動きが鈍っていた。
「来い! ドラゴンキャッスル!」
男が叫ぶと魔法陣が現れて地響きが鳴る。
再び岩の壁が現れて男と副会長を取り囲む。
茜はまたしても刀で岩の壁を斬りつけるも、今度は壁は消え去らずに刀は弾かれてしまう。
さらに岩が幾重にも出現する。
それはやがて巨岩となり、地下神殿の一画を支配してしまう。
男も副会長も現れた巨岩の中だ。
分が悪いと判断した茜は一旦下がり、ルナの元へと引き返す。
「あの岩……、契約モンスターです」
「そのようだな。それに、この雨……マズイな」
今もなお雨は降り続けている。
水かさはすでに膝まで達し、このまま降り続けるのならさらに増していくだろう。
「時間稼ぎして溺死させるつもりでしょうか?」
「奈々からの連絡だと出入口の方は問題なく出入り出来るそうだ。逃げるのはいつでも出来る。時間稼ぎじゃない。これは攻撃の予兆。仕掛けて来るはずだ」
ルナは城のように聳える巨岩を警戒する。
「私と榊が攻めます」
「……分かった。行くぞ」
セイヴァーハンドの相手を茜と榊に任せてルナは移動しようとする。
「どこに行くんだ?」
「奈々と合流する。敵から距離を取り、二人を援護する」
こうしている間にも、水かさは増していた。
腰まで達している。
いずれ水に呑まれてしまう。
「ルナ様を任せましたよ」
茜の言葉に頷き、ルナと共にその場から離れる。
その際に背後より地響きが轟く。
何事かと振り返ると、巨岩が動いていた。
「なあ、あれ動いてないか?」
巨大な鱗のような形をした岩が持ち上がったかと思えば、そこには巨大な瞳があった。
「召喚の魔法にて呼び出した契約モンスターだ。そりゃあ、動くに決まっているだろ」
「契約モンスター? さっきも耳にしたけど、なんだよ、それ」
「説明してる暇はない。っと……」
水かさは胸元まで達した。
ここまで来ると、背の低いルナは頭の先まで完全に沈んでしまう。
「掴まれっ」
そう言ってルナに手を差し出すも、自分もつま先立ちになっているので結構キツい。
「不本意だが、仕方ない……」
ルナはすぐさま手ではなく腕にしがみつく勢いで掴んできた。
必死になるのも分かるが、そこまでがっつかなくていいのに。
手繰り寄せたルナを肩に乗せるように持ち上げる。
体勢はキツいが、これしかやり方を思いつかない。
だけど、口元まで水かさが増している。
泳げなくはないが、着衣泳は普通の水泳とはわけが違う。
しかもルナという重りのオマケ付きだ。
どうしたもんかと悩んでいると、上方より声が掛かった。
「そこのお二人さん、お困りのようですね」
声がした方に顔を向けると、そこには氷で足場を作った奈々が居た。
「ささっ、お手を」
ルナは差し出された奈々の手を握り、氷上へと上がる。
「こっちも早く助けてくれ」
「えー、やだ」
おい。
「今わたしは手が塞がっているから自力で這い上がってね」
そう言って奈々はルナと繋がれた手をこれ見よがしにアピールする。
別にもう引き揚げたのだから手を離しても問題ないだろう。
それを指摘したかったが、機嫌を損ねさせて氷を消失されたくなかったので黙っておく。
苦労をしながらも、なんとか自力で氷上へと上がりルナ達と合流を果たす。
奈々の魔法で作り出した氷の足場は思いの外頑丈で、三人乗ってもヒビが入ることはなかった。
「これからどうするんだ?」
「セイヴァーハンドの二人を殺す」
「どうやって?」
「……ひとまずは茜と榊に任せる。奈々は二人の援護を」
「了解です」
奈々は近場の柱に氷の足場を作って飛び移る。
それを繰り返して移動していく。
「水……大分増えたな」
水かさは五メートルを超えていた。
「三人は大丈夫なのか?」
「問題ない」
ルナの声に不安は感じられない。
不安は感じられないが――
「なあ……ルナ」
「なんだ?」
「この手は、なんだ?」
「……」
ルナがローブを掴んできて離さない。
「まさかと思うが、泳げないのか?」
「……お前は何を言っている。人が水に浮くわけないだろ」
「いや、お前の方が何言ってんだよ……」
どうやらルナは泳げないらしい。
意外な弱点だな。
「なんだ、その目は。文句でもある……っと!」
足場が大きく揺れ、ルナがしがみついて来た。
「大丈夫だ。転覆なんてしないから。仮にしたとしても、必ず助け出すから安心しろ」
「主を助けるのは従者の務めだ。当たり前のことをいちいち宣言するな」
口では強がっているが、相当怯えている。
今もなお離れないのが何よりの証拠だ。
日頃からこうしていれば可愛げがあるのになと、心の中で思うのであった。
ー13ー
水中にて茜は巨大な城のように聳える契約モンスターと対峙する。
岩で全身を覆われた巨大な亀、ドラゴンキャッスル。
あの頑強な体表は茜の刀では傷つけることは叶わない。
かのモンスターに男と副会長は取り込まれており、手が出せないでいる。
榊の銃火器はこの豪雨、さらに水の中では色々と制限されてしまう。
だけど、その銃火器の中で一つだけこの状況下でも制限なく使えるものがある。
そしてそれは、現状を打破出来る唯一の武器でもあった。
榊が来るまで敵に動きがなければいいのだが、事はそう簡単にはいかない。
雨降らしの結界を守るため、ドラゴンキャッスルは動けないが、背中の一部が崩れ落ち、そこから水泡が銃弾のように放たれる。
あれはさっき副会長が使った攻撃魔法と同様のものだ。
次々と放たれる水泡弾を茜は自身の持つ刀で受け止める。
刀身に水泡弾が触れた瞬間に、水泡弾は跡形もなく消え去った。
「長時間水中にいながら溺死することがなく、さらにその不思議な力を持つ武器……。そうか、キサマはアンデッド、しかも天使……いや、悪魔の方か?」
敵である男に問われるが、茜は答える気など毛頭なかった。
そもそも水中で会話など出来るはずもない。
水泡弾での攻撃は効果が薄いと判断したのか別の攻撃を繰り出してきた。
ドラゴンキャッスルの岩のような体表の一部が剥がれたかと思いきや、水の魔法による推進を得て放ってきたのだ。
茜はそれを刀で弾くのは難しいと判断し、泳いで回避する。
剥がれた体表は徐々に塞がっていき、直ぐに元通りに戻ってしまう。
なので再び同じ攻撃を何度も放ってきた。
それを器用に躱す茜であったが、次第に追い詰められていく。
避けられないと判断すると、刀で弾くのではなく受け流す。
軌道を逸らして直撃を防いでいく。
それでもいずれ直撃してしまう。
茜が奮闘する中、突如敵の攻撃が止む。
「これは……?」
男は困惑する。
何故なら、ドラゴンキャッスルの体表がいつの間にか氷漬けにされているのだから。
氷山と化し、水面に突き出る一角には奈々の姿があった。
彼女の魔法によってドラゴンキャッスルは氷漬けになったのだ。
「どうやって近付いたっ?! そんな近くまで接近されるなんて見逃すはずがない! たとえ姿を消しても、水中では体が浮かび上がるはずだ!」
狼狽える男に奈々は得意気に説明する。
「姿を消すのではなく、認識されないようにする。だからこそ近付けたのです」
奈々達が身に着けているローブは特別製である。
ローブそのものに認識阻害の魔法が編み込まれており、着用者が魔力を流し込むことでその効果を増幅させることができる。
奈々はローブに魔力を注いで敵に認識されないようにした。
だから、手が触れられる程までに近くに接近できたのだ。
そして、奈々に意識を向けさせている間にさらなる刺客がドラゴンキャッスルを狙う。
その刺客とは榊のことである。
奈々と同じ要領で近付いたのだ。
彼の手には豪華な装飾が施された拳銃。
その拳銃は普通の拳銃ではなく神の祝福を与えられた特別な拳銃である。
水中でも問題なく使用することが可能。
引き金に掛けられた指に力がこもると、銃弾が発射された。
氷漬けにされたドラゴンキャッスルの体を貫き、中に居る男の心臓を撃ち抜く。
「が、はっ……」
召喚者である男が命を落とし、ドラゴンキャッスルは消滅する。
中枢を失った氷山は瓦解し、崩れ落ちていく。
残ったのは男の死体と氷山の断片、それと雨降らしの結界が込められた魔法陣だけである。
「いない……?」
流氷の上に身を置く奈々は首を傾げる。
そこに居るはずの副会長の姿が見当たらない。
逃げたのだろうか。
「まさか!」
奈々はルナが居る方角に振り返る。
「いま向かいます。どうかご無事でいてください」
この場は茜と榊に任せて、奈々はルナの元へと急ぐのであった。
ー14ー
戦いの余波を受けて足場が揺れる。
その度にしがみつくルナの腕に力が籠もった。
怯えるルナを気遣いつつ、戦況を見守る。
「長時間水の中に潜っているけど、茜さんは大丈夫なのか?」
「話してなかったか? 茜と榊はアンデッドだ。水の中にいくらいようと問題はない」
行動に伴わず、声は落ち着いていた。
「初耳だよ。でも、自我があるのなら二人は高位のアンデッドになるのか?」
「生前は普通の人間で、今は天使と悪魔だ。ネクロマンサーの魔法の一つ。天国と地獄から天使と悪魔をそれぞれ一体ずつ召喚することができる魔法だ」
「普通のアンデッドとは違うのか?」
「違う。身体能力は人間を超越し、魔力量は増幅して高位の魔法を扱える。それと、それぞれが天国と地獄より武器を一つ携えて召喚される」
「茜さんが授かった武器があの刀というわけか?」
「そうだ。茜が持つのが『悪魔の武具』であり、『魔女狩り』の名を冠する刀だ」
「ん?」
今おかしなこと言わなかったか。
「茜さんが悪魔なのか? 天使じゃなくて?」
「……」
「ルナ?」
なぜだかルナは言い淀む。
「……なぜ天国に昇るのか、なぜ地獄に堕ちるのか。同じ死なのにどうして違いが生じるか分かるか?」
ルナに問われて考えてみる。
「一般的なイメージだと、生前に良い事をしたら天国。悪い事をしたら地獄ってイメージがあるな」
「実際には少し違うが、大体そんなイメージで構わない」
「それじゃあ、茜さんが生前に悪い事をしたというわけか?」
「……人にはそれぞれに人生がある。幸せな人生もあれば、そうでもない人生もある。茜は自分がした行いを正しいとは思っていないが、間違っていたとも思っていない。自らの行いによって人が救われる。やり方こそ責められようと、それでも誰かを救うために自らを犠牲にした」
理由は不明だが、茜は一度命を落とした。
外見を見る限り二十歳前後、若くして亡くなったことが窺える。
「要するに、不必要なことは聞くなということだ。過去がどうだろうと、今の彼女には関係ない」
聞かれたら困るというより、言いたくない、話す気がない、そういった事を伝えたかったのだろう。
榊にも何かしらの事情があるのだろうが、聞かないことにする。
だけど、それでも気になったことがあったので、それだけは聞いておく。
「榊さんは天使なの?」
あの見た目で。
「外見しか見ないんだな、お前は」
「嫌味なつもりで言ったわけじゃないよ。だけどさ、第一印象ってどうしても見た目に左右されると思うんだ。だから、仕方ないじゃないか」
「榊がこの場にいないからいいが、失礼な奴だな」
「本人がいないからこそ言えるんだよ」
「そうか……。榊にも事情がある、私から言えるのはそれだけだ」
ルナはそう言って、何も語ってくれなかった。
「一つ言い忘れていたな。お前は榊にさん付けは不要だ。本人が嫌がるから止めておけ」
「奈々と茜さんは、さん付けで呼んでなかったか?」
「二人はいいんだよ。でもお前は止めておけ」
それにも事情があるかもしれないが、追求はせず素直に了承する。
「さて、そろそろ決着がつきそうだな」
氷山が姿を表し、その一角に誰かが降り立つ。
誰だろうか。
皆同じ恰好をしているから判別がつかない。
「ケリがついたのか?」
「まだだが、そう時間は掛からないだろう」
その時、雨音に紛れて銃声のような音が微かに聞こえた。
氷山が崩れ落ち、その一角に立っていた人物は新たに氷の足場を作り出して着氷する。
あれは奈々だったのかと、ようやく知り得た。
「ん?」
「どうした?」
「今、鳥みたいなのが見えたんだ」
崩れ落ちる氷山から鳥のようなものが出てきたのが見えた。
「鳥? どこに飛んで行った?」
「飛んだというより泳いでいたんだけどな。そっちの方に……」
鳥が泳いでいった方角を指し示そうとした時、何かが物凄い速さで泳ぎ、迫って来ているのを眼で捉える。
水中を泳ぐそれは、上半身は副会長であったが下半身が魚、腰からは鳥の翼なようなもの生やしていた。
「下がれ、ルナ!」
しがみついていたルナを強引に引き剥がし、後方に追いやる。
剣を抜き、迎撃の準備を整えて敵を待つ。
「はあぁっ!」
自身の契約モンスターであるセイレーンの力を得た副会長は手にナイフを携えて突撃してきた。
水面から飛び出して来て、剣とナイフは邂逅を果たし甲高い金属音を響かせる。
邂逅は一瞬の出来事であり、セイレーンは脇を飛び抜けて後方の水面に消えていく。
すぐさまセイレーンの姿を眼で追うも、物凄い速さで水中を泳ぎ回り、視界に捉えるのが困難だ。
勇者補正である右眼の能力のおかげで辛うじて姿を追うことができる。
だけど、視界の外に逃げられたら完全に見失ってしまう。
「くそっ、素早いっ」
セイレーンの動きによって発生したうねりで、足場が揺れる。
バランスを崩した次の瞬間、水中より水泡弾が放たれるも剣で弾く。
「くっ……!」
右眼で捉えていたので、なんとか反応出来た。
だけど、不安定な足場であるため踏ん張りがきかず、何度も同じ攻撃をされたら堪えられない。
再び水中より水泡弾が放たれる。
剣で弾こうとした時、ルナの手が剣を握る右手を抑えつける。
これでは剣が振れず、やられてしまう。
だけどルナはそれに構わずに口を開く。
「その魔法は大丈夫だ」
水泡弾は見えない何かによって堰き止められ、目の前で弾ける。
「忘れていたよ、お前が魔法を使えないことを。……遠距離攻撃は私が防ぐ。お前はさっきの突撃を警戒しろ」
幾度と続く水泡弾はルナの魔法によって防がれる。
その事態にセイレーンの動きが大雑把になってくるのが見て取れた。
焦っている。
心を乱している。
敵の油断は仕留める好機を招いてくれるはずだ。
身構えて右眼でセイレーンの動きを追い掛ける。
あれはルナの通う高校の生徒会副会長を務めているらしいが、その実はセイヴァーハンドの一員である。
ルナの命を狙う者。
お嬢と呼ばれていたから、もしかしたらお嬢様なのかもしれない。
一緒に居た男は何者だろうか。
お嬢様に仕える執事といった雰囲気でもなかった。
正体なんてどうでもいいか。
人にはその人なりの事情がある。
さっきルナとそんな会話をしていたではないか。
あの男にも何か事情があったのだろう。
事情があっても、今頃茜さんや奈々が……。
……。
…………。
………………。
……………………。
…………………………。
……あの男はどうなった?
死んだ?
死んでいる?
なぜ死んだ?
殺したからだ。
あの男は生きた人間だった。
アンデッドではない。
生身の人間だ。
これって人殺しではないか?
人殺しだよな?
良いのか、これって?
悪いことではないか。
どうしよう。
自分は何か取り返しのつかない事をしようとしていないか。
その時、目の前で水飛沫が上がる。
その音を聞いただけで体がビクつく。
副会長も生きた人間だ。
彼女を殺そうとしていた。
それはやっていいことなのか?
正しいことなのか?
人を殺したらダメだろ。
それどころか傷つけるのもダメだろ。
急激に恐怖が湧いてきた。
恐ろしい、怖い。
全身が震える。
奥歯がガタガタと鳴る。
自分がやろうとしていた事に恐怖する。
「何をボサっとしている!」
ルナにローブごと体を引っ張られる。
目の前をナイフを持ったセイレーンが通過していく。
間一髪だった。
ルナが助けてくれなかったら、今頃喉元を斬り裂かれていただろう。
「ルナ。本当に殺すのか? 殺していいのか?」
「殺せ。私のために殺せ」
ルナは躊躇なく即答する。
「それは……うおっ!?」
足場が大きく揺れる。
セイレーンが攻撃方法を工夫してきたのだ。
ルナもよろめく。
そんなルナを狙ってセイレーンが突撃して来る。
「ルナ!」
剣で払い除ける余裕はない。
セイレーンを横から体当たりして突撃を阻止するも、足場から足が離れる。
体が宙に浮く。
けれど、腕が掴まれる。
ルナが掴んでくれたのだ。
水に落ちるのを助けるべく手を伸ばし、掴んでくれた。
だけど、勢いがつき過ぎていたせいか、そのまま二人揃って水の中に落ちてしまう。
水に沈む中、泳げないルナを手繰り寄せる。
手繰り寄せたのはいいが、水を吸った衣服は想像以上に重い。
しかも、それが二人分である。
セイレーンがこの好機を逃すはずもないので、ルナの身を守らなければならない。
ルナを抱えながら、足を動かして浮上を試みるも、その努力は虚しく体は沈みゆく。
ナイフを手にしたセイレーンが迫る。
万事休すかと思われた。
だが、突如として水が一瞬に消え去る。
再び宙に浮かぶ体。
重力に従い、そのまま落ちてゆく。
ルナを庇うように抱き込み、自分の体を下に落ちる。
やがて、地面に辿り着き、背中から衝突を果たす。
「うぐっ……!」
思ったよりも地面が近かったので、背骨は折れずに済んだが、他の部位が折れたかもしれない。
苦痛が体を支配する中、ガサリと何かが動く音を耳が捉える。
「粛清、します……」
この声は……。
「しぶといな……」
副会長が左腕を庇い、左足を引きずらせていた。
水が消失した影響は彼女も受けていたのだ。
物凄い速度で泳いでいたところでの水の消失、体はそのまま投げ出されて柱に衝突した。
そのせいで重傷を負い、魔法が解けてしまうも、歩み、近付いて来る。
彼女の右手にはナイフが握られていた。
「くそっ……なんて執念だ……」
何が彼女をそこまで突き動かすのだろうか。
その執念は恐ろしい。
だけど、迎え討たなくては。
体の上に乗っていたルナを押し退けて、手近に落ちていた剣を掴む。
剣を地面に突き立てて支えにしながら立ち上がるも、その際に足の関節から耐え難い痛みが駆け抜ける。
骨折、もしくは脱臼しているかもしれない。
「副会長、だったな。お前達の負けだ。ここでどう足掻こうと結果は変わらない」
「わたくしの死は敗北ではありません。たとえ、ここで命果てようと、必ずや聖女様があなた方に粛清を与えて下さる」
聖女様?
誰だか知らないが、様を付けるからには偉い立場の人間なのだろう。
「それと、勘違いしているようですが、わたくしは別に諦めたわけではありません。負傷はしましたが、それはあなたも同じこと。先の戦いぶりから、あなたは魔法が使えないと見受けられます。魔法がある分、こちらが有利です」
「はっ、それはどうかな」
と、強がってはみるも、副会長の言う通りである。
魔法の有無で戦況は簡単にひっくり返ってしまう。
魔法が使えないこちらが明らかに不利。
それでも、ここで剣を取らなくては。
ルナを守るために。
「何かっこつけている」
いつの間にかルナが背後に立っていた。
「気を失っているのかと思ったよ」
「何を馬鹿なことを言っている。お前が下になってくれただろう。おかげでこの通り元気だ」
「それは何より。体を張ったかいがあって嬉しいよ」
魔法が使えるルナがいるのなら勝敗は決したと言っても過言ではない。
「トドメは私が刺す。お前はアイツを抑えておけ」
やはり殺すのか。
「そうだな……。ルナの命を脅かす者は殺さないとな」
剣を構え、副会長を睨みつける。
先に動いたのは副会長だった。
魔法にて水泡弾を放ってくるもルナの魔法で全て弾かれてしまう。
「守護の魔法。如何なる飛び道具もこの魔法を前にしては無力になる」
「魔法が通じないのなら、近付いて仕留めるだけです!」
副会長は負傷した左足を引き摺らせながら迫り来る。
それを迎え討つべく待ち構える。
リーチではこちらが有利だが、足の関節が痛む。
これでは床を踏みしめることが出来ない。
剣は腕だけで振るものではなく、全身を使って振るものだ。
まともに剣が振れない状況ではあるが、それは相手も同じ。
お互いが負傷している。
魔法を使えないのなら、単純に力が強い方が勝つ。
「まずは……あなたから粛清します!」
ナイフが振られる。
それを剣で受け止める――フリをして手放す。
そのまま副会長の右腕を掴み、副会長が下になるように倒れ込む。
倒れた際にボキリと音を響かせる。
「っあああぁぁぁ!」
悲痛な叫びを副会長は上げる。
「よくやった。後は私が」
「待ってくれ」
「どうした? 情でも湧いたのか?」
「情がないと言えば嘘になるが、違う。……ルナ」
「なんだ」
「これは避けられないことだ。ルナを守るために、これからも幾度となく訪れるはずだ。だから……覚悟を決める。決意を、この場で示す」
「……そうか。なら、お前に任せる」
「ああ」
剣を拾い上げ、副会長の首元にかざす。
「は、ははっ……、わたくしの完敗、ですね……」
手が震える。
剣先が揺れる。
呼吸が乱れる。
怖い。
人を殺すのが怖い。
それでも殺さなくてはいけないんだ。
剣を振りかぶり、副会長の首元目掛けて振り切った。
ー15ー
茜は自身の持つ悪魔の武具である魔女狩りで雨降らしの結界を絶ち切った。
結界が消えると、その効果で降り注いだ雨も消え去る。
「奈々の言う通り、副会長の姿が見当たりませんね」
周囲を見渡す茜はそう呟くも、榊は何も答えない。
別に無視しているわけではなく、ただ単に口数が少ないだけだ。
「ここの処理は任せます。私は奈々の後を追います」
榊の返事を聞かずに茜は駆け出した。
そもそも、待ったところで返事など返って来ないだろう。
榊はそういう男だ。
茜がルナの元に辿り着いた頃には全てが終わっていた。
首元をざっくりと斬られた副会長の死体。
その傍らには見知った二人の人物が見える。
二人は仮面を外しており、その表情から感情を読み取ることができた。
一人は打ちひしがれ、涙を流している。
もう一人はその人物の背中をさすり、慰めていた。
勝利したというのに、まるで敗北したかのような雰囲気が漂っている。
茜は最初、何が起きているのか理解出来なかった。
だけど、すぐに理解する。
彼は今日初めて人を殺したのだ。
罪の意識に苛まれ、心が圧し潰される程に苦悩している。
一度手を汚してしまったら、もう以前の自分には戻れない。
罪と向かい合っていくしかないのだ。
茜自身、初めて人を殺した時はどうだったのだろうかと思い返す。
地獄に堕ちて悪魔としてルナに召喚される前。
生前、あの時は無我夢中だった。
それしか方法が思い浮かばず、それを実行した。
罪の意識など抱かなかった。
その代わりに抱いたのは虚無感。
自分は何をしているのだろう、何をしたのだろう。
当事者でありながら、現実味がなかった。
目の前で涙を流す姿を仮面越しで見つめる。
正直、罪の意識を抱いている彼が羨ましく思えた。
あの姿こそが彼の人生が美しかった証拠である。
清く美しい人生など茜は送れなかった。
羨ましいと思えたが、それと同じくらいに妬ましいとも思えた。
ちなみにルナは茜の経緯を全て知っている。
その上で拒絶せず、受け入れてくれたのだ。
さらに、茜は無意識的に誰かのために行動したのだと美化してくれる気遣いも見せてくれた。
懐かしい思い出が蘇ってくる。
茜はハッとし、思い出を振り払う。
昔の記憶が去来してしまい、思考が停止していた。
今は思い出に感傷するよりも為すべきことがある。
茜は主に歩み寄り、合流を果たす。
「ルナ様、申し訳ありません。賊を逃してしまい、そのせいで御身を危険に晒してしまいました」
「私はこの通り無事だ。茜は気にしなくていい」
気にしなくていいとは言うが、気にせずにはいられないのが人情。
だけど、そうは思っても主がそう言うのだからひとまずは従う他ない。
「死体等の後処理はいつも通り榊さんが行ってくれるはずです」
「そうか。施設の破損は私の方で修復しておこう。それが済み次第撤収する。……お前もいいな」
最後は傍らの涙を流している者に向けて言う。
ルナはその者を連れて施設の修復に取り掛かる。
死体の処理は榊が手を回してくれるが、物的破損はルナの修復の魔法でないと修復出来ない。
従者としてはルナを前に出したくないが、こればかりはルナに任せるしかない。
「追い掛けなくていいのですか?」
茜は柱の陰に隠れていた奈々に声を掛ける。
作戦が終了してもルナが男子と一緒に居るのを声を掛けずに黙って見つめていたのが気になった。
「……うん」
「元気ないですね。そこまで落ち込まなくていいのに」
「落ち込んでないよ……。ただ、寂しいなって思っただけ」
奈々の視線はルナの背中へと注がれている。
「なら、一緒に行けばよかったのに」
「できないよ……。わたしは、ルナ様と一緒にいたい。だけど嫌われたくない。だから行かない」
「嫌われる? ……ああ、そういうことですか。そんなに彼のことが嫌いなのですか?」
「嫌い。大嫌い。私のルナ様をとろうとしている。だから嫌い」
「ルナ様は奈々の物ではないと思いますけど……」
「そうだけど、そうじゃないの!」
奈々がここまでハッキリと嫌いと言うのは珍しい。
ルナが好きだからこそ、そういった感情が生まれるのだろう。
だけど、肝心のルナは彼のことを気に入っているので、奈々は何も言えずにいる。
それが不満となって心に蓄積しているのだ。
「私はルナ様について行った方がいいと思いますけどね。敵を排除したとはいえ、ここは敵地。今の彼が護衛としての任を果たせるとは思えません」
「……」
「ほら、行きましょう」
そう言って手を差し伸べると、奈々は少し逡巡するも自らの手を差し出して握る。
そんな奈々に対し、茜は微笑む。
まったく、二人揃って甘えん坊なんだから。
こういうところは本当の姉妹のようだなと茜は思うのだった。
ー16ー
今回の作戦は無事に終わり、帰投する。
榊だけが後処理があるとかで遅れて帰るそうだ。
「私はシャワーを浴びてくる。汗をかいたからな。お前はどうする? 向こうに戻るか? それとももう少し残るか?」
マンションに着くなり、ルナが聞いてきた。
「浮かない顔をしているな。まだ気にしているのか?」
「……人を殺したんだ。それで、平静でいられるような心は持ち合わせていない」
「敵の命などお前が気にするようなことではない」
「そうそう。一番に気にすべきなのはルナ様の命です。それ以外はどうだっていいのです」
奈々がルナの言葉に同意する。
「奈々はこう言うが、私は皆と一緒ならそれでいい」
皆と一緒。
その中には自分も入っているのだろうか。
「お前には期待している。だから、これからも私のために戦え。それが従者としてのお前の役目だ」
ルナのため。
ただそれだけのために戦う。
たとえそれが、人殺しになっても。
「とは言え、お前には拒否権がなかったな。お前の主は私だ。大人しく私に従え」
「……そうか」
納得は出来ない。
なぜなら、どんなに理由を探しても、人を殺していい理由なんて存在するか分からないのだから。
仮に見つかったとしても、それは自分の行いを正当化したいだけのものでしかない。
所詮は自己肯定。
欺瞞。
自己満足。
だけど、自分を騙して納得させるしかない。
「どこかの誰かの命よりルナの命の方が大事。……それでいいのか?」
「そうだ。この先、理不尽で不条理な事が幾度となく起きる。その度にお前は悩み、複雑な思いを抱くだろう。その時は私を信じろ。私だけを信じればいい。お前が疑問を抱く必要はない。私の言葉に耳を傾けて、実行するだけでいい。お前は従者だ。ただ主に従い、務めを果たせ。安心しろ。お前の罪は私が全部引き受ける。それが主の務めであるからな」
主と従者。
それが自分とルナの関係である。
互いが互いのために務めを果たす。
ルナの言いたいことは分かる。
その気持ちは嬉しい。
だけど、それだけの関係というのは寂しくもあった。
読んで下さり誠にありがとうございます。
今後は後書きにて本編の解説、書けなかった設定等を書いていくつもりなので、ぜひ目を通してくれればと思います。
まずはルナについて解説します。
彼女は本作のヒロインの一人であり、地球サイドの主人公でもあります。
個人的に一番好きなキャラです。
同じヒロインであるアマテルと比べると贔屓目に書かれている部分もありますが、そこは作者の好みということで。
本編ではそれとなく出てきましたが、彼女の本名は「望月ルナ」になります。
ちなみに奈々は「河合奈々」です。
ルナは月の女神の名前で、望月は満月という意味があるので彼女にピッタリだと思って付けました。
それに対して奈々は正直にいうとテキトーに付けました。
地球サイドの雰囲気が暗いなーと思って追加したキャラであり、当初は深く作品に関わるとは思いもしませんでしたが、結構活躍するキャラになってしまいました。
さて、ルナについてですが、彼女については語ることが多過ぎてしまうのでまた後の話で語りたいと思います。
今回の話でルナの敵がようやく判明しました。
セイヴァーハンド、名前の元ネタは救いの手になります。
本編では悪役風に書かれていますが、人々のために働く慈善団体ですので悪しからず。
今回登場したセイヴァーハンドは二人。
名前はありません。
彼らと共に登場したモンスター、ドラゴンキャッスル。
ドラゴンキャッスルの元ネタは竜宮城になります。
それと登場したのが、タイトルにあるセイレーン。
セイレーン自体は登場していませんけど、副会長はその力を行使します。
彼女が使った魔法は憑依の魔法。
その魔法でセイレーンの力を身に纏い主人公に襲い掛かりました。
この憑依の魔法ですが、登場するのは今回だけで後の話では登場しません。
なのに本編では全く触れません。
このまま謎の能力として終わるのは心苦しいので今のうちに解説しておきました。
今回の話は本作を書いてる上で、後から追加した話であり、それも最後の方に書かれた話になります。
なので完成度が高い方の話だと自負しております。
ただ、後から書いたが故に設定をどこまで出していいのか迷った記憶があります。
設定を小出しにしながら書くようにしていますが、その部分が分かり辛くなってしまったのが今回の話では残念なところです。
長くなってしまいましたが、ここまで読んで頂きありがとうございました。
また次回も読んで頂ければと思います。




