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外伝04.革命の旗印・中編「戦火の街と崩壊」

 前回に引き続き、外伝四作目になります。


 最後まで読んで頂ければと思います。


 ー1ー


 訪れた街は建物の殆どが圧し潰されたかのように瓦礫と化していた。


 「まるで巨大な何かが動き回った後のようだな」


 噂に聞くジェノサイドが暴れ回っただけなら、ここまで建物は壊されない。

 巨大なアンデッドが居ると聞いているし、おそらくそのアンデッドが原因だ。

 だけど、肝心のアンデッドが見当たらない。


 街の中を進む。

 当てはなく、ひとまず中央を目指す。

 かつては街の中央には塔が建っていたのだろう。

 倒れた塔が道に寝っ転がり、その根本がだけが中央に残されている。

 やがて、街の中央に当たる場所に人の姿が見えてきた。

 紫がかった白い髪に青い肌をした青年。

 仕立ての良い金色の刺繍が入った黒服を着ている。

 荒廃した街には不釣り合いな装いだ。

 何者だろうか。

 もしかして、アンデッドか?

 青年は瓦礫の山に腰掛けている。

 その背後から見つからないように忍び寄る。

 魔剣の柄に手を掛けて近付く。

 一歩一歩慎重に……。

 突然青年が振り返った。

 目が合う。

 見つかった。

 青年の目は虚ろで生気が感じられない。


 「アンデッド……なのか?」


 アンデッドにしてはどこかおかしい。

 違和感がある。


 青年は口を開くも、うめき声だけが漏れる。

 やはりアンデッドだ。

 もしかしたら、つい最近まで生きていたのかもしれない。

 だから違和感があるのだろう。

 いずれにしてもアンデッドであることには変わりない。

 仕留めよう。


 魔剣を抜き放ち、斬りかかる。

 青年はおもむろに立ち上がり、光の十字剣を作り出して魔剣を受け止めた。

 剣を作り出して防がれるとは思ってもいなかったが、慌てることなく次なる攻撃を仕掛ける。

 だが突然、右足を引っ張られる。

 突然のことで対応出来ずに体勢を崩してしまう。

 そこへ光の十字剣が襲い来る。

 なんとか防ごうとするも間に合わず、肩口から斬られてしまう。


 「ぐあっ……!」


 筋力強化の効果がある雷の加護を発動し、右足を掴む手を強引に引き剥がして後退する。

 そこでようやく右足を掴んでいた者の正体が分かった。

 スケルトン。

 瓦礫の隙間に潜んでいたのだ。

 さらに周囲を蠢く影。

 スケルトンが至る所から這い出てきた。


 「何だよ、これは……。街の住民のアンデッドか?」


 疑問に答える者はなく、周囲をスケルトンが取り囲む。


 見たところ、青年以外は普通のスケルトン。

 青年を注意しつつ、冷静に対処していけばなんとかなるはず。


 「まずは怪我をだな……」


 魔剣に魔力を流すと治癒の魔法が発動し、肩口から入った傷を塞いでいく。

 この魔剣は、魔力を流し込むことで誰でも治癒の魔法が使えるようになるのだ。


 傷が癒えたのを確認し、状況を分析する。

 問題は数だ。

 見渡した限り、スケルトンは街の至る所から姿を現している。

 その数は計り知れない。

 そして何より青年のアンデッド。

 あれは高位アンデッドに類するもの。

 体力と魔力がどこまで保つか。


 「数……、強さ……。そんなもの些細なことだ。負けられないことには変わらない」


 心に抱くのはステラの願い。

 彼女のためならば成し遂げてみせる。

 どんな苦境だろうと跳ね除けてやる。


 まずは周囲のスケルトンをある程度減らす。

 それから青年を討伐する。


 早速行動に移そうとした時、青年が光の十字剣を投擲してきた。

 真っ直ぐと投げられたそれを躱して駆け出す。

 アンデッドには弱点がある。

 胸部に輝く拳程の大きさをした石、魔臓石。

 その魔臓石を砕けばアンデッドは消滅する。


 手近に居たスケルトンを屠るも、またしても光の十字剣が通過する。

 青年はすぐに光の十字剣を作り出す。

 それをまた投擲してきた。

 魔剣にて軌道を反らして背後に群がるスケルトンに当てる。


 「最初にお前を仕留めないとダメのようだな」


 雷属性の魔法を駆使して距離を詰める。

 電光石火。

 何者の追従を許さずに青年の元へと一気に駆け抜ける。

 走った勢いを乗せて魔剣を突き刺す。

 青年は光の十字剣で防ぐも勢いに負けて後方へと飛ばされる。

 転がったところを狙おうかと思いきや、器用に跳ねて体勢を整えた。

 光の十字剣を作り出して投擲してくるも、体を捻って躱す。

 少しでも距離が開くと投擲してくる。

 出来る限り距離を詰めて戦わなければ。

 ジグザグに移動しながら光の十字剣を躱していき、距離を縮めていく。

 こうなると足場が悪いのがキツい。

 移動するだけで体力が奪われる。

 剣の間合いに入ったところで斬りかかる。

 光の十字剣で受け流されるが、そこで蹴りを入れた。

 左腕を折り曲げて防がれるが、すかさず魔剣による攻撃を仕掛ける。

 今度は光の十字剣で受け止められた。

 剣戟を繰り返すが、背後にスケルトンが迫っていた。

 ここで一気に畳み掛ける。

 相手を圧倒するべく、雷の加護を発動した。

 膂力で上回り、剣を弾いたところで右腕を斬り落とす。

 その時に体を回して背後のスケルトンを屠る。

 一瞬隙を見せてしまったが、腕を落としたことで動きが鈍っているので問題ない。

 もう一度体を回すと青年の姿が消えていた。


 「どこに行った……?」 


 カタカタっと瓦礫が震える。

 なんだろうと思った矢先、地震が起きた。

 ただの地震ではない。

 地中から響く地鳴りは、まるで地面の中を何かが這いずり回っているかのようだ。

 地表に亀裂が入り、地割れとなる。

 割れ目より大蛇が姿を現した。




 ー2ー


 「何だ……アレは?」


 大地より姿を現したのは巨大な蛇。

 白亜色の鱗をしているのかと思ったが、違う。

 所々で蠢き、魔臓石が煌めいている。

 あれはスケルトンの集合体。

 スケルトンが集まり、巨大な蛇の姿を成しているのだ。

 事前に聞いていた巨大なアンデッドとはあの蛇の事なのだろう。

 そして、その蛇を従えるのは……、


 「そこに居たのか……」


 青年の姿をしたアンデッドが巨大な蛇の傍らに立ち、失った右腕を蛇の胴体に突っ込む。

 そして引っこ抜くと、白亜色の腕となって再生していた。

 スケルトンの体を代替わりにしたのだ。


 「建物が圧し潰されていたのは、アレが暴れ回ったからだろうな」


 そんな分析をしてみるも状況が悪い事には変わりない。

 サイズが違い過ぎる。

 一人で相手をするものではない。

 逃げようにも無数のスケルトンに囲まれている。


 「逃げられないとなるなら、アレを倒すしかない」


 巨大な蛇を見据える。


 「元よりアレを倒しに来たんだ。ここで倒してやる」


 魔剣に雷を付与させる。

 大地を蹴り上げて距離を詰めていく。

 内より魔力が迸る。

 魔力を際限なく行使した。

 魔法で稲妻を落とす。

 天より降り注ぐ稲妻がスケルトンを一層する。

 稲妻は巨大な蛇の体をも穿つ。

 その巨大な体を表面から削っていく。


 鳴り止まぬ雷鳴が戦場に木霊する。

 稲妻が戦場を支配する。

 如何に強大な相手だろうと、度重なる稲妻を受ければただではすまない。

 投擲された光の十字剣が迫り来た。

 一回転するように体を捻らせて避けて、さらに突き進む。

 再び光の十字剣が投擲されるが、弾く。

 稲妻で青年を狙うも跳ねるようにして躱される。

 すばしっこい奴だ。

 ひとまず青年は無視する。

 当たらないのなら魔力を無駄に消費させるだけだ。

 それに今の稲妻で巨大な蛇から離すことができたのは幸いだ。

 投擲される光の十字剣を警戒しながら進む。


 巨大な蛇の体が輝き出した。

 攻撃の予兆だというのは予想できる。

 輝いているのは魔臓石。

 ならば、魔臓石を狙うまでだ。

 雷を纏いし魔剣を振るった。

 纏っていた雷は魔剣から離れて雷の龍となり、大地を駆け抜ける。

 巨大な蛇まで辿り着くと、雷の龍は天へと伸びる。

 大地より雷が天へと昇った。

 その際に魔臓石を破壊していく。

 そして、残った魔臓石から光の線が伸びて周囲を破壊する。

 予め魔臓石を破壊していたので光の線には当たらずに済んだ。


 「やはり攻撃の予兆だったか。今のうちに距離を……ぐふっ!?」


 背後から何かで刺される。

 大地を転がり、倒れ込む。


 「な、何が……?」


 脇腹から突き出るの見覚えがある光の刃。

 光の十字剣によって貫かれたのだ。


 「くっ……、すばしっこいのは知っていたが、背後に回っていたのか……」


 魔力で作り出した光の十字剣は消失し、傷口が穴となって血が溢れ出る。

 なんとか瓦礫の陰まで移動し、魔剣の力を用いて治癒の魔法を使う。


 「はあはあ……」

 

 背骨をやられなかったのは幸いだ。

 やられていたら身動きが取れなくなっていたし、治癒の魔法では治せなかった。

 ありったけの魔力を使って傷を塞ぐ。

 傷口が中々塞がらない。

 それ程までに重傷なのだ。

 魔力を流し続ける。

 動けるくらいには治しておかなければ。

 治してからはどうする。

 逃げるか、戦うか。

 当然戦う。

 自暴自棄になったわけではない。

 やると決めたのだ。

 ステラの望む世界を作るために。

 彼女のためにここまで来た。

 絶対に成さねばならない使命があるのだ。

 絶対。

 絶対にだ。

 精一杯やるとか、最後まで足掻くとか、死ぬ気で戦うとか、そんな甘い考えは抱かない。

 中途半端な考えは抱くな。

 自己満足で使命を放棄するな。

 ステラのために、絶対に成し遂げるのだ。

 不屈の何者にも負けず折れぬ絶対の意志を胸に立ち上がった。




 ー3ー


 傷は塞がったが、魔力は残り僅か。

 それでも引き下がる気はない。


 「遂にお前も出て来たか。傍観をやめて、協力でもしてくれるのかな?」


 目の前に降り立ったのは姿なき鳥。


 「協力とは違うか。お前の正体を考えれば」


 陽炎のように揺らめく姿なき鳥。

 実体がない。

 そして自分の前にしか現れない。

 その正体は自分の一部。

 分裂したのか、切り取られたのか、勝手に増えたのかは分からない。

 でも、自分である事に変わりはない。


 「以前にステラが教えてくれた。この世界にいる勇者候補の正体は、かつて地球で暮らしていた者達であると。地球にて事故や事件で命を落とし、この世界に飛ばされる。そして勇者候補には勇者補正が必ず一つ備わっている」


 初めてステラに会った時に教えてくれた事だ。


 「以前にエリカが教えてくれた。勇者補正は死亡時の状況が反映されると。右眼を損傷していれば、右眼に勇者補正の力が備わるといった具合に」


 他にも脳を損傷していれば感覚に勇者補正が備わるといったこともある。


 「では、自分の話をしよう。死因どうだった? お前なら分かるだろ。この世界に導いた張本人なのだから。そうだ、死んではいない。お前に触れただけだ」


 この姿なき鳥に触れて、気が付いたこの世界にいた。


 「それでも勇者補正が備わっていた。その勇者補正は、『絶対の意志』。一度心に決めたことは貫き通す。どんなに踏みにじられようとも折れず、挫けない」


 この世界に来て最初にステラを信じると決めた。

 それは今でも変わらず心に在り続けている。

 そして今心に抱いているのは不屈の闘志。

 絶対に負けない。

 退かず、勝利してみせる。


 「それはお前にも分かっているはず。この誰にも変えることのできない鋼の意志。その意志を絶対不変の姿と成せ!」


 姿なき鳥が羽ばたき、飛び込んで来た。

 光の粒子となり、体に入り込む。

 僅かだった魔力が回復する。

 回復した魔力が溢れ出す。

 魔力は鋼へと形を変える。

 眼前に鋼が築き上がる。

 鋭く尖った鋼の鉤爪が大地を踏みしめる。

 鋼の胴体より銀色の翼が広がっていく。

 煌めく鋼の嘴が天に向けて開かれる。


 そこに現れたのは機械仕掛けの隼。

 メカニカルファルコン。

 人工的な体躯。

 何者にも屈しない強固なる鋼の意志、挫けずに未来へと羽ばたこうとする様。

 抱く想いが形となり、疑似的な契約モンスターとなって降臨した。




 ー4ー


 瓦礫の山より天へと飛び立つ。

 天高く舞い上がる。

 メカニカルファルコンの背中から、地上を見下ろす。

 巨大な蛇の位置を確認する。


 「空から一気に攻め入る。行くぞ!」


 太陽光を反射した銀色の翼が煌めく。

 荒廃した街の上空を羽ばたくだけ、翼で生成した氷の刃が地上に降り注ぐ。

 地上に居る死者の群れを無慈悲に貫く。

 さらに翼に備え付けられた機関銃より圧縮された風の銃弾が絶え間なく放たれる。

 狙うは巨大な蛇。

 風の銃弾は散りばめられた魔臓石を次々と撃ち抜いていく。

 巨大な蛇の体を容赦なく削る。

 魔臓石が輝き出す。

 そして光の線が放たれるもいち早く距離を取ったメカニカルファルコンには当たらなかった。


 「この調子なら難なく倒せそうだな」


 しかし、問題がいくつかある。

 魔力が回復したとはいえ、このメカニカルファルコンに付けられた機構は魔力の消費が異様に激しい。


 「魔力消費をセーブするために氷の刃の使用は停止。他にも装備があるようだけど、今は機関銃だけを……いや、この装備を使えば……」


 地上の状況を確認すると、巨大な蛇の体が何やら蠢いて形を変えていた。

 翼のようなものが生えてきている。


 「アンデッドは成長するとは聞いていたけど、これがそうなのか? 初めて見たから何とも言えないな」


 呑気にしているが、それには理由がある。


 「これで終わらせてやる。魔力消費が激しいが、それ相応の効果がある」


 メカニカルファルコンの胸部より真っ赤な光が灯る。

 光には魔力が高濃度に圧縮されていた。

 それは球体となり、地上へと投下される。

 巻き込まれないように街から退避する。

 光の球体は巨大な蛇のすぐ脇に落とされた。

 そして、爆発した。

 鼓膜を破く程の轟音が響き渡る。

 灼熱が街を支配し、荒廃した街を更地に変えようとする。

 その威力は凄まじく、街から離れていても轟音と衝撃を受ける始末。


 「予想以上だな……。これならアンデッド共も一掃できただろう」


 街の上空まで戻って、街を見渡す。

 スケルトンは一掃され、魔臓石だけが残されている。

 そして、巨大な蛇も残っていた。

 だが、体は灰となって崩れて始めていた。

 魔臓石を残して消える巨体。

 全てが灰となり風に運ばれる。


 「……しぶといな」


 巨大な蛇に守られていたのだろうか、青年が灰の中から姿を現す。

 最初の時と同じように目が合う。

 このまま空から攻めようと思ったが止めた。

 青年のすぐ傍まで移動し地上に降り立った。




 ー5ー


 アンデッドの青年の体は酷かった。

 巨大な蛇に守られていたとはいえ、体は灼け爛れて両腕は焼失していた。

 足は形を保っているが、もはや足としての機能を果たせずに崩壊を免れた瓦礫に背を預けている。

 ゆっくりと警戒しながら近付く。

 そこで青年の口が開いた。

 うめき声でも発するのかと思ったが違った。


 「……そんなに警戒せずとも、大丈夫、ですよ……」

 「喋れたのか」

 「あなたのおかげです……。あなたが、この街に巣食うアンデッドを倒してくれたから……」

 「よく分からないな。喋れるのは、お前が高位アンデッドだからじゃないのか?」

 「アンデッド……。そうだな……僕はアンデッドだ。無謀にも一人で挑み、返り討ちにあった……。そして彼らの一部となった。自我を失い、人々を無作為に襲うアンデッドに成り果てた……」

 「なるほど。その一部となっていた大元である蛇を討伐したから自我だけ戻ったというわけか」

 「あなたには感謝している……。彼らを、討伐してくれて……」

 「感謝の必要はない。目的があっての事だ」

 「それでも礼を言わせてくれ……。ありがとう……」


 それから青年は僅かに動く首を動かして周囲を見渡す。


 「この街は……美しい街だった……。その景観は王都にも匹敵するものだと自負していた……。誰もが笑い、明るく、仲睦まじく、活気に満ちた……素晴らしい街だったんだ……」


 その街はとうの昔に失われ、廃墟と化し、先の戦いでさらなる崩壊の波を受けた。


 「……申し訳ないが、一つ頼みたい。……殺してくれ」


 魔剣を手に青年に近付く。


 「……名前はなんて言う?」

 「レイヴン……。街を、民を、何一つ救えなかった愚か者の名前だ」

 「……レイヴン。安らかに眠れ」


 魔剣にてレイヴンの魔臓石を砕いた。



 巨大なアンデッドを討伐し、任務は終わったかと思いきや、まだやる事があった。


 「さて、ここからが本番か」


 魔臓石の回収。

 それが今回の任務だ。


 「とはいえ、面倒だな。一つ一つ回収しないといけないとは」


 最後の爆撃で魔臓石が広範囲に散らばってしまった。

 それを一つ一つ回収しないといけない。


 「回収機能とかはないのか?」


 メカニカルファルコンに聞いてみるも、首を傾げるだけだった。




 ー6ー


 魔臓石を回収するだけで一週間を要した。

 自分では全部回収したと思いたいが、絶対取り忘れがあると思う。

 それでももう終わりにしよう。

 この一週間の間に勇者候補や冒険者が何人も訪れた。

 テキトーに追い払ったが、完全に不審者である。

 それに周辺の村や町にも、この街からアンデッドが討伐された話が広がり始めていると冒険者から情報を得た。

 人が集まって来たら厄介なので、もう撤退しよう。

 撤退したいのだが、とある問題を抱えていた。


 「集めたはいいが、どうやって運ぼうか」


 目の前には山となった魔臓石。

 どうやって運び出そうか悩む。


 「メカニカルファルコンでも全部入り切らないよな」


 頭を悩ませていると微かに人の気配を感じた。

 今居るのは街の外れにある崩壊を免れた建物。

 建物といっても戸は外れているし、壁には穴もある。

 もちろん窓なんてものは割れている。


 ひとまず建物を出て周囲を警戒する。

 微かに感じ取れた気配は消えているが、居るのは間違いない。

 慎重に歩を進めて移動する。

 この時自分は気付いていなかった。

 背後から忍び寄る人影に。

 気付いた時には後ろから押し倒すように抱きつかれていた。


 「ぐふっ……!?」


 魔剣を抜こうにも、拘束するように抱きつかれて腕が動かない。

 振りほどこうと暴れたところで声が掛かる。


 「あ、暴れないでくださいっ! 私です! ステラです!」

 「え? ステラ……?」


 落ち着いて振り返ると、抱きつくステラの姿があった。


 「落ち着きましたか? 全く、暴れないでくださいよ」

 「いや、暴れるでしょ。それにタイミングが悪ければ斬っていましたよ」

 「だから剣を振れないように抱きついたのではないですか」

 「それだと余計に暴れちゃうじゃないですか……」


 呆れつつも、体を回して上半身を起こす。


 「そろそろ離れてくださいよ」


 若干拘束を緩めてくれたがステラは離れてくれない。


 「久し振りに会ったのですよ。いいじゃないですか」

 「でもここ街道ですよ、崩れてはいますが。誰か来るかもしれませんから」

 「その時はその時です」

 「でも……」

 「ずっと会いたかったのです、貴方に。だからお願いします。少しだけ、少しの間だけですから」

 「……少しだけですからね」


 たまに街を訪れる人がいるが、さすがに今日は来ないだろう。


 「ステラはどうしてここに?」

 「貴方が危険な任務に出ると耳にしたので、駆けつけて来たのです」

 「そうでしたか。残念ながら一週間前に討伐しました」

 「残念ではないです。貴方が無事でしたし、こうしてまた会えました。来て良かったです」

 「そうですね、会えて良かった。……あれ? そういえば一人ですか?」

 「はい。表立って動けない立場ですので、人を集められなかったのです。時間を作るだけで精一杯でしたので、そのまま来ちゃいました」

 「危ないですから無茶しないでください」

 「これからやる事に比べたら、これくらいの無茶なんて大したことないです」

 「そうかもしれませんけど、そういう問題ではないです」



 やがてステラと共に魔臓石を保管している建物に移動する。


 「すごい量の魔臓石ですね」

 「討伐するよりも回収する方が大変でした」

 「ふふっ、お疲れ様です。でもどうやって運ぶのですか?」

 「そこを悩んでいるところです。メカニカルファルコンにも入り切らないし、どうしようかと」

 「そのメカニカルファルコンって何ですか?」


 ステラにメカニカルファルコンについて説明し、実際に召喚してみせる。


 「なるほど。これで運ぼうとしていたのですね」


 ステラは興味深そうにメカニカルファルコンを見て回る。


 「乗ってみますか?」

 「いいのですか?」

 「召喚するだけでも魔力を消費しますからね。何もしないで戻すのは勿体ないですから」


 メカニカルファルコンの背中に乗り、ステラをその後ろに乗せる。

 それから大空に向けて羽ばたいた。

 高度が上がるとステラが呟いた。


 「街がもうあんなにも小さくなってしまいましたね……」


 どこか寂しさが宿る声音だ。


 「怖いですか?」

 「いいえ、全然。むしろ気持ちいいくらいです」


 どうやらステラは高い所は平気のようだ。


 「実はこれ、中に入れるんですよ」

 「そうなのですか。なら、なんで背中に乗せたのです?」

 「一人用だからです。二人だと狭いですから体が密着しちゃいますよ」

 「いいじゃないですか。二人で入ってみましょうよ。あっ、でも変なことをしたらダメですよ」

 「冤罪が怖いので止めときます」

 「それは残念。ですけど、私は全身で風を感じられる方が好きなので、このままがいいです」


 しばらくの間、空の散歩を楽しみ、街に帰還するのだった。




 ー7ー


 「さて、この大量の魔臓石ですが、質が良いものを厳選して数を減らしましょう」


 山になった魔臓石を前にステラはそう告げた。


 「分けるのはいいですけど、どうやって?」

 「魔力を込めれば光が増します。その光が強いと魔力の含有量が多いということになります。それを選んで、あとは破棄しましょう」


 早速作業に取り掛かる。

 山に魔力を込めて光の加減を確認する。

 光が強いものだけを選んでいく。


 「スケルトンって大して魔力がなかった気もしますけど、こうして見ると結構魔力を持つのもいるんですね」

 「魔力が少ないのは自然発生するスケルトンです。元々が人間だったアンデッドは、生前の魔力量に比例しますので、こうして差が出るのですよ」


 そうして、最終的には五分の一にまで数が減った。


 「大分減りましたね」

 「はい。でも、捨てるやつは勿体ないですね。数があるだけに、結構な価値になりますよ」

 「それは仕方ないですよ。ここに残して通り掛かった方の足しにしましょう」


 日が暮れてきたので、今日は街で夜を明かす。

 ステラの持っていた保存食を一緒に食べる。

 ずっと離れていて一緒に居られなかった。

 話したいことが沢山ある。

 それはステラも同じだったようで、沢山話を聞いた。

 話して、喋って、聞いて、耳を傾ける。

 お互いの昔の事や誰にも言えない秘密を共有してさらに距離が縮まる。

 語り合い、笑い合い、夜が更けるまでそれは続いた。

 まだまだ話したい事が沢山あった。

 しかし、さすがに眠くなるとそれは難しい。

 示し合わせたわけもなく、自然と肩を寄せ合う。

 一つの毛布で二つの体を包み込む。

 この温もりをずっと感じたかった。


 「以前に話した事がありましたよね。貴方に隠し事をしていると」

 「はい。覚えています」

 「それを話そうと思います」

 「聞きますよ。なんでも受け入れます。だから聞かせてください」

 「……私は、私は……王国の……王女、なのです。王国第三王女、それが私です」

 「それは……驚きました」

 「あまり驚いているようには見えませんけど」

 「驚いてますよ。でもステラの正体がなんであろうと関係ありません」

 「関係ありますよ。私は……貴方に王配になって欲しいのですから」

 「王配? 聞いたことない単語だな。何かの役職なの?」

 「役職……。うーん、称号と言った方が正しいかもしれません」

 「称号ね。なんでまた、その……王配、だっけ? その王配になって欲しいんだ?」

 「……革命が成功したら、今の王は追放されます。兄達も同じです。そうなれば、私が王位を継ぎます。だから貴方に王配になって欲しいのです。いえ、むしろなってください」

 「ステラの頼みなら王配とやらになるのは構わない。だけど、その王配って何なんだ?」

 「……」

 「ステラ?」

 「……今日はここまでにして寝ましょうか」

 「あっ、うん……。そうだね」


 その日はステラに寄り添いながら眠りにつくのだった。




 ー8ー


 翌日。

 昨日の厳選で数が減った魔臓石をまとめる。


 「どうします? 中に詰め込むか、背中に乗せるか、足に引っ掛けるか。自分達がどこに乗るかにもよりますけど」

 「そうですね……。魔臓石を中に詰め込みましょうか。私達は背中に乗って本部まで移動です」

 「分かりました。そうしましょう」


 魔臓石をメカニカルファルコンの中に積み込んでいく。

 全て積み込むと、背中に乗り、大空へ羽ばたいた。

 向かうはエクリプスの本部。



 「鳥っていいですよね」


 飛行中にふとステラが声を漏らす。


 「どうしたんです、いきなり?」

 「私、鳥が好きなんです。どこにでも行ける翼を持っていて、自由。羨ましいです……」

 「ステラもどこかに行きたいの?」

 「……いいえ。私にはやるべき事があります。王女として生まれた私には国を良いものにする義務があります。我が儘は言っていられません」

 「……ステラも好きな事をやっていいと思うけどな」

 「だからこうして貴方に会いに来たのではないですか」

 「それは……どうも……」

 「照れてるのですか?」

 「まあ……少し」

 「照れてるのですね! それは嬉しいです!」

 「……なぜそこで喜ぶんです?」

 「照れてるということは嬉しいということですよね? だから私も嬉しいのですよ!」

 「……はしゃぎ過ぎて落ちないでくださいよ」

 「はいはい。分かってますよ」



 空での移動はあっという間である。

 越えるのに数日を費やした山も、渡るのに苦労した川も一瞬で過ぎ去る。

 途中に休憩で二回程地上に降りるが、それ以外は空で過ごす。

 そして、その日の夜にエクリプスの本部に辿り着くことができた。



 久し振りに戻った自室は埃が積もっていた。


 「また掃除が必要のようですね」

 「埃っぽいですし、ステラは別室で寝た方がいいですよ」

 「そういうわけにはいきません。軽く掃除しますから貴方も手伝ってください」


 ステラに言われるまま部屋を掃除する。

 軽くと言っていたが、部屋の隅々、ベッドの下まで掃除した。

 掃除が終わる頃には深夜を迎えていた。

 汚れた体をシャワーで流し、後は眠るだけだ。


 ベッドに先に入るも、ステラは立ったままそわそわしていた。


 「どうしたのですか? 寝ないのですか?」

 「いえ……その……」

 「今更気にしているのですか? 大丈夫ですよ。ベッドは半分しか使いませんから。残りの半分はステラが使ってください」


 そう言ってステラの手を引く。

 ステラはなすがままベッドに導かれる。

 抵抗する素振りが見られないので嫌がってはいないようだ。


 「……昨日の話、覚えてますか?」


 昨日……どの話のことを言っているのだろうか。

 今の状況と関係がありそうな話は……、


 「えっと……小さい頃におねしょして母親に怒られた話ですか? 心配なら寝る前にトイレに……」


 昨夜に何か秘密を知りたいと言われたので、お互いの秘密を話した記憶がある。

 ちなみに自分は、地球の自室、そのベッドの下に本を隠していたことを話した。

 そういえば、さっき掃除した時にベッドの下を執拗に気にしていたのはそのせいか。

 残念ながら隠しているのは地球の話なので、こっちの世界には何もない。


 「ちちち違いますよ! それではなくて王配の話です!」

 「ああ、それの事ですか。でも、結局王配って何ですか?」

 「それはその……は、配偶者のことです……」

 「へー、配偶者か。それで誰の配偶者何ですか?」

 「そ、それは…………えっと……知りません……。今日はもう寝ます……」


 ステラはどこか不貞腐れるように背を向けて眠る。

 実を言うと、誰の配偶者なんて聞かなくても分かっていた。

 王配。

 王の配偶者。

 女王の。

 つまりはそういう事だ。

 分かっていても、つい誤魔化してしまった。




 ー9ー


 「おおぉ……! これは見事! よくぞここまで集めてくれたわい」


 回収した魔臓石をフランケンに届ける。

 魔臓石の山を見て、フランケンは興奮気味でいるが、見ていて気持ち悪い。


 「足りますか?」


 同席したステラが尋ねる。


 「魔臓石の質は申し分ない。中でもこの魔臓石は素晴らしい。この魔臓石だけでも大部分を賄ってくれおる」


 フランケンが掲げた魔臓石はレイヴンのものだ。

 確かにレイヴンの魔臓石は高い魔力を秘めていた。

 それ一つでも十分な魔力量となるだろう。


 「ようやくこれで準備が整った」

 「決行するのですね」

 「ああ、部隊を王都に向けて動かす」

 「ですが、まとめて移動すれば勘付かれます」

 「分かっておるわ。段階的に移動。一部の者達は残し、これまで通りに活動させる。表向きはいつも通りじゃが、裏では王都陥落のための作戦を進める」

 「では、私も王都での活動を進めておきます」

 「おう。そっちは任せるぞ」

 「貴方もくれぐれもしくじらぬように」

 「長年の悲願が目の前まで来ておるのだ。しくじる気などありはせん」


 王都で革命を起こす。

 それが本格的に動き出した。


 「それでお主のお気に入りは連れてゆくのか?」

 「革命には参加させますが、まずは別行動させます。現段階で無関係の者を出入りさせていたら怪しまれますから」

 「ふむ。賢明な判断であるな。頭の中は色ボケておらぬようで安心したわい」

 「……では、私はこれにて失礼します。協力して頂き感謝致します」

 「礼など不要。利害が一致しただけの事よ」

 「……そうですね。では失礼します」

 「待て」


 ステラがフランケンの元を立ち去ろうとするも呼び止められる。


 「一つ、お主に。我らの協力関係は歪なものであるが、もはや知らぬ仲ではない。お主の生還、目的の達成を願っておる」


 思いがけない言葉にステラは驚きつつも、一礼してから退室する。

 ステラについて行き、自分も部屋を後にした。



 「フランケンにも思いやる心が残っていたのだな」

 「忘れたのですか? 彼の最初の采配で酷い目にあったのを」

 「でもそれがあって今がある」

 「……そうですね」


 本部の出入り口まで移動する。


 「それでは、私は一度王都に戻ります」

 「途中まで送って行きますよ」


 一人で行こうとするがそうはさせない。


 「それは……」

 「分かってます。人目が心配なのですよね? メカニカルファルコンに乗って行けば大丈夫ですよ。あれには光学迷彩の機能が備わっていますから。見つからないで移動できます」

 「こーがくめーさい? よく分かりませんけど、それがあれば見つからないで移動できるのですか?」

 「はい。光属性の魔法を用いたもので、その効果は保証します」

 「……では、お願いしてもよろしいですか」

 「喜んで」


 ステラはこの時知らなかった。

 光学迷彩がどういった仕組みなのかを。




 ー10ー


 メカニカルファルコンの機能の一つ、光属性の魔法によって姿を消して飛行する。


 「本当に姿を消せるのですね」

 「はい。こいつはすごい便利ですよ。戦闘機にも爆撃機にも偵察機にもなれます。少ない量なら輸送することも可能ですし」

 「よく分かりませんけど、便利なのは伝わってきました。ですが……先に言って欲しかったです……」

 「中は狭いって言ってませんでしたっけ?」

 「そうではなくてっ! 姿を消す時は中に入らないといけないことです!」


 メカニカルファルコンの光学迷彩は、当然ながらメカニカルファルコンにしか効果を及ぼさない。

 なので、その背中に乗ったら搭乗者の姿は丸見えである。

 搭乗者の姿を消す場合は中に入り込まないといけない。

 そして今は姿を消して移動しているため、二人で中に入っているのだが、狭いためすごい密着具合だ。

 ステラの色んな所が当たる。


 「前は一緒に入りましょうと言ってませんでしたっけ?」

 「前は前、今は今です。物事というものは時間と共に変わりゆくものなのですよ」

 「確かにあの時と変わりましたね。今は婚約者みたいなものですし、これくらいの密着は我慢してください」

 「そう、でしたね……って、あれ?」

 「どうしましたか?」

 「……やっぱ気付いていたのですね。……まあ、婚約者の自覚があるようなので許しましょう」


 口では文句を言いつつも体をさらに寄せて来た。

 だが、途中で何かに気付いたようで体を離そうとする。


 「……汗臭くないですか?」

 「やっぱ暑いですよね。機能が多い割りに冷房機能が付いてませんからね。ですけど今更ですね。その程度でステラの魅力は落ちませんから安心してください。むしろ魅力が増すと思います」

 「……」

 「黙って引かないでくださいよっ!」

 「……いえ、ちょっと反応に困っただけですので気にしないでください」


 頑張って体を離そうとしていたが、そのせいで余計に汗をかいていたのは黙っておいた。



 メカニカルファルコンは王都に至る途中の街、その近くに降り立つ。


 「この辺りまでで大丈夫です。あの街で一泊して王都に戻ります」

 「そうですか。自分も今日はあの街に泊まっていきますので、何かあれば言ってください」


 同じ街に居ても話すことは出来ない。

 第三王女であるステラの存在は有名である。

 そんな彼女が見知らぬ人間と共に行動していれば目立つ。

 革命前に不審がられるようなことはしてはいけない。

 人目がある場所で一緒に居るのは避けるべきだろう。


 「今更ですけどステラに護衛はいないのですか? お姫様なのに」

 「一応はいますけど、お父様が用意した形だけのものです。私に対する忠誠心は皆無。そのおかげで一人で好き勝手に動きやすいから助かります」

 「なるほど。でも、気を付けて帰ってください。少しの間一人になってしまいますから」

 「ご心配なく、王都に行く馬車が出ているはずですから、それに乗せて貰います」


 ステラは静かに歩み寄り、顔を寄せる。


 「それと私が帰る場所は貴方が居る所です。必ず帰ります。その時までしばしのお別れです、未来の旦那様」


 口づけを交わして、ステラは先に街へと向かうのだった。




 ー11ー


 ステラが去ってしばらく、自分も街に向かう。

 街に着いてすぐに神殿へと向かった。

 メカニカルファルコンに残っていた魔臓石を換金するためである。

 宿代やら食事代やらの足しになればと思って持ち込んだのだ。

 換金の際に気を付けないといけないことがある。

 勇者候補の左手の甲には魔法で作られた目印が刻まれている。

 自分にはそれがないのでグローブを身に着けて誤魔化さないといけないのだ。


 「すみません。魔臓石の換金をお願いしていいですか?」

 「はい。構いませんよ」


 魔臓石を荷物から取り出して、受付をしている神官の少女に渡す。

 この少女が中々綺麗な容姿をしていた。

 金色の長い髪に澄んだ青空のような綺麗な青い瞳。

 率直に言って可愛い。

 美人である。

 ステラには劣るがなと、勝手に自己評価を下す。


 「一つだけですけど、質は良いので」

 「確かに質はいいですね。鑑定しますので少々お待ちください」


 神官の少女は奥の部屋に一度消えるも、すぐに戻ってきた。


 「お待たせしました。代金がこちらになりますが、よろしいでしょうか?」

 「ふむ……宿代くらいにはなりそうですね。これでお願いします」

 「はい。分かりました」


 手続きを済ませて代金を受け取るも、なぜか神官の少女がチラチラと窺ってくる。


 「……何か?」

 「あっ、いえ……その……勇者候補の方ですよね?」

 「はい、そうです」


 なぜいきなりそんな事を聞いてくる?

 まさか、勇者候補ではないと気付かれたのか?


 「こんなことをいきなり頼むのは不躾かもしれませんが、私は冒険者志望の神官なのです。旅に同行させては頂けませんか?」

 「……理由を伺っても?」

 「私はどうしても旅に出たいのです。新たな勇者候補の出現を待ってはいるのですが、中々現れないので、こうして頼んでいるのです」


 どうやら勇者候補ではないとバレたわけではないようだ。


 「申し訳ありませんが、同行は許可出来ません」

 「謝らないでください! こちらが無理を言っているのは承知しているので」


 実はリッチー討伐の旅ではなく、王都で革命を起こそうとしているなんて、少女は知る由もないだろう。


 「一つ聞いておきたいのだけど、この辺りで高位アンデッドが出現したって話はありますか?」

 「最近は……ないですね。随分と前にこの街の近くにある村に炎属性の高位アンデッドが現れましたけど、それ以降はそういった話は聞いていないです」

 「そのアンデッドは討伐されたのですか?」

 「はい。村に少し被害が出てしまいましたが、私の友……いえ、その村に住む魔法使いが討伐しました」


 どうやらステラの道中の心配はしなくても大丈夫なようだ。

 神官の少女にお礼を述べて神殿を後にした。



 そうして時は流れて革命の日を迎えたのであった。


 今回も読んで頂きありがとうございました。


 所々で本編で登場したものが出てくるようになりました。

 本編の内容を覚えていないのなら読み返して頂ければ、より一層楽しめると思います。

 本編の時系列とズレているものがありますが、それは主人公の行動によって何かしらの影響を受けて変わった結果になります……と今のうちに言い訳しておきます。


 主人公ですが、本編と比べると大分設定が変わっています。

 いつかの後書きで語った通り、主人公には何もありません。

 何にでもなれる存在です。

 なので外伝の主人公は本編の主人公と同じ人物でありながら、別人になります。


 主人公とステラの物語は次回で終わりを迎えます。

 ぜひ次回の話も読んで頂ければと思います。

 次回もよろしくお願いします。

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