外伝01.星天の従者
本編が終了しましたので、今回から外伝となります。
今回の話は「19.分岐点」直後の話で、主人公が別の選択をしていたらどうなるかという話になります。
今までの話の中で一番残酷な描写があると個人的に思っていますので読む際はご注意を。
ー1ー
聖女はルナの命を狙っている。
聖女が存在する限り、ルナの死は免れない。
リッチーを殺せば、リッチーの共命者であるルナは死ぬ。
リッチーを殺そうとしているのは、向こうの世界にいるリッチー討伐隊だ。
ルナの死を回避するには、二つの条件がある。
一つは聖女が存在しなければいい。
もう一つはリッチー討伐隊がリッチーを討伐しなければいい。
この二つの条件が整えば、ルナは死なない。
ならば、ルナを救うために自分が為すべき事は――。
ー2ー
ソファで項垂れていたルナが顔を上げる。
決意をした強い意志を秘めた瞳がこちらの姿をジッと捉えた。
ルナはソファからゆっくりと立ち上がり、口を開く。
「お前に話がある」
その堂々とした態度から何を告げようとしているか予想がついた。
「向こうに戻ったら――」
ルナが何かを告げる前に体が動いた。
その小さな体を抱き寄せる。
突然の事でルナは驚いたようで出掛かった言葉が遮られる。
以前、ルナがしてくれた優しい抱擁とは似ても似つかない力強い抱擁で包み込む。
初めは硬直していたルナの体が徐々にほぐれていき、自らの体を預けるように身を寄せる。
「……なんで」
ルナがぽつりと呟く。
「なんでこんな事を……。こんな事されたら、私は……」
胸に顔を埋めながらルナは続ける。
「私の決意が、揺らいでしまう……」
そうだろうな。
卑怯かもしれないが、自分にはルナを納得させる言葉は持ち合わせていない。
なぜなら自分がこれから為そうとしているのは、人の道を外れた道なのだから。
だが、それでルナの命が救えるのなら、自分は世界を敵に回そう。
「ルナに話がある」
説得は出来ないだろうし、納得してくれないかもしれない。
でも伝えなければ、自分の想いを。
「次に向こうから戻ったら、契約を交わして欲しい」
「……理由を聞いても?」
理由など決まっているだろう。
「ルナとずっと一緒に居たいから。これからはずっと、一生、片時も離れずに守ってやる」
「馬鹿だな……お前は。そんな理由で……」
もちろん、それだけじゃない。
「一番の理由は……ルナが好きだから」
その言葉を伝えるとルナはびくりと体を震わせた。
「……本当に、本当に馬鹿だよ、お前は……。大馬鹿だ……」
こちらの上着の裾を強く握り締めて、ルナは全身を震わせる。
「泣いているのか?」
長い間、ルナと過ごしてきたが泣いている姿は一度も見たことがなかった。
奈々が生死の境を彷徨っても。
茜と榊が自らの命を犠牲にしても。
ルナは涙を見せなかった。
今日初めて見せた涙にはそれ以上の意味があるのだ。
「これからはずっと一緒に居る。だから、これからも生き続けて欲しい」
「……ずっと一緒。かつて、その言葉を掛けてくれた者達は皆いなくなった。それでもお前はずっと一緒に居てくれるのか? いなくなったりしないのか?」
ずっと一緒。
これまで多くの仲間を失ってきたルナには安易には告げられない言葉だ。
それでも、今なら伝えられる。
「いなくなったりしない。だからルナもずっと傍に居てくれ。ルナのいない世界なんて耐えられない」
「私が生きているせいで争いが起きる。沢山の人が死ぬ。傷つく。それでも私は……、私は生きていていいのか?」
「いいに決まっている。理由が必要なら、目の前に居る、主がいなければ何も出来ない従者のために生きて欲しい」
「……情けない奴だ。まあ、私も人のことを言えないか。私も一人じゃ生きていけない。誰かが居てくれないと心が折れてしまう」
知っている。
ルナが臆病で寂しがり屋なのは皆知っていた。
それを気付いていないフリをして守って来たんだ。
「……ルナに受け取って欲しい物がある」
ルナから体を離して、懐からある物を取り出した。
「これは?」
懐より取り出したのは小さなケース。
その蓋を開けてルナに差し出した。
「少しどころか大分遅くなったけど誕生日プレゼント」
ケースに入っていたのは、指輪。
かつてルナの誕生日にと買った代物だ。
渡そうとした矢先にデストロイとの戦闘、奈々が重傷を負ってしまい、渡すに渡せなかった。
「受け取ってくれるか?」
ルナは涙を拭って頷いた。
左腕を差し出すように伸ばすルナ。
何を求めているのか一目瞭然だ。
ケースから指輪を取り出して、ルナの左手薬指に嵌める。
サイズはぴったり。
それは当然だろう、ルナの事なら何でも知ってる奈々が教えてくれたのだから。
ルナは指輪が嵌った手を見つめ、再び涙を流す。
「状況は最悪な筈なのに、こんなに幸せな気持ちになるなんて……」
嬉し涙を流しながらルナは満面の笑みを浮かべた。
「ありがとう」
今すぐにでもルナに寄り添っていたいが、一度向こうに行かねばならない。
「戻るのか?」
「ああ、向こうでやらなければならないことがあるから」
「そうか……」
ルナは眉根を寄せて、不安そうにしている。
これから向こうで何をしてくるのか分かっているのだろう。
「そう心配するな。すぐ戻って来る」
「ずっと傍に居てくれると言った矢先にこれか」
不満そうに口を尖らせる。
その仕草も可愛いな。
さすがにそれを口にするのは恥ずかしいので言わない。
「それを言われると何も言い返せない。だけど、これだけは他の誰にも任せられないことだ」
「……分かっている。だけど、早く帰って来い。待っているから」
ルナは近付いて来て、背伸びをする。
お互いの唇が触れる。
すぐに離れたルナの頬は紅く染まっていた。
「行って来い」
「ああ、行ってくる」
ー3ー
気が付くと広いテントの中にいた。
テントの隅に並べられた荷物の上に召喚石が置いてある。
アマテルが置いたのだろうな。
テントの中を見渡すと、人が居た。
ランプに火を灯して、作業をしている。
背中を向けており、顔は見えないがローゲンだとすぐに分かった。
どうやら一人テントに籠って、装備の手入れをしていたようだ。
召喚石を懐にしまい、ローゲンに声を掛ける。
「……ローゲン」
「……戻ったのか」
振り返りもせずに、ローゲンは作業を続ける。
「……アマテルは今どこにいる?」
ローゲンに聞くのが一番早いと思い、聞いてみた。
聞いた瞬間、装備の手入れをしていたローゲンの手が止まる。
「なぜ、それを聞く?」
「用があるから」
ローゲンは手入れが済んでいた剣と盾を手に取って立ち上がり、振り返る。
鎧は着ていない。
安全地帯であり、手入れ中というのもあって鎧は着ていなかった。
「気のせい……ではないな。お前から不穏な気配を感じ取れる」
気付かれたのか。
態度に出さないようにしていたが、感づかれたようだ。
誤魔化せる雰囲気でもないし、仕方ない。
ここで、始めよう。
ー4ー
茜より授かった魔女狩りを鞘から抜き放ち、ローゲンに斬りかかった。
ローゲンは予め警戒していたため、この攻撃はあっさりと盾によって防がれる。
「なぜだ!? お前はっ――なぜっ?!」
警戒していたとはいえ、心のどこかで気のせいだと思っていたのだろうか、ローゲンは驚きの表情を浮かべていた。
「これは? ……何をした?」
魔女狩りは如何なる魔法も消滅させる。
それは攻撃を盾で受けたローゲンも例外ではない。
土属性の加護は物理耐性の強化だ。
その効果は装備にも影響を及ぼす。
故に、盾で攻撃を受けたことにより加護は消え去った。
ローゲンの疑問には一切答えずに、次なる攻撃を繰り出す。
当然ながらローゲンは応戦する。
加護が消え去った影響で、盾の表面には真新しい傷が付いていく。
こちらの攻撃を盾で防ぎ、隙を突くように剣で反撃してくる。
ローゲンの剣には一切の躊躇いも迷いもない。
殺す気でいる。
動揺をしたのは最初だけ。
思い返せば、本気のローゲンと戦うのはこれが初めてである。
剣の稽古をつけてもらったのは数知れないが、いずれも殺意などなかった。
これが最初で最後の真剣勝負である。
剣の扱い方はローゲンから教わった。
基礎から応用、技術を学んだ。
自分にとってローゲンは剣の師匠である。
まさかこのような形で剣を向けることになるとは思いもしなかった。
盾を前面に押し出してローゲンは突進する。
だが、この技は何度も見てきた。
慌てることなく後退して間合いを取る。
ローゲンは深追いせず、一度立ち止まる。
「何があったのか、目的が何なのかは知らん。だが、お前が本気である事は理解した。ここでお前を殺してでも止めるっ!」
再びローゲンは盾を前面に押し出して、突進して来る。
そして、銃声が響いた。
ローゲンの突進はこちらに届くことなく、体はその場で崩れ落ちる。
神の矛。
如何なる守りも貫く神の矛によって、ローゲンの体は盾ごと貫かれた。
「なぜだ……なぜ、こんな事、を……」
血溜まりが拡がっていく。
その中に沈むも、まだ息はあるようだ。
「お前になら……あの娘を、任せられると……思ったの、に……」
やがて喋らなくなり、静かになった。
動かなくなったローゲンを一瞥するが、すぐに気を取り直す。
テントの外が騒がしい。
先程の銃声によって、周囲に不審がられているのだろう。
特に銃の存在を知っている勇者候補達は警戒しているはずだ。
持ってきた荷物を取り出す。
あざやかな青色をしたローブを着込み、黒い皮手袋を両手に嵌める。
最後に白地に奇妙な模様が入った仮面を付けた。
準備は整い、後は目的を果たすのみだ。
その時、テントの入り口が開け放たれて、人が入って来た。
「おい、さっきの音は何だっ!?」
入って来たのは男性。
名前は知らないが、何度か前線基地で見掛けた顔だ。
一番近場に居たのだろう。
加護を発動させて、一気に男性との距離を詰める。
そして、魔女狩りを力一杯に横に薙いだ。
強襲の一撃だったが、男性は即座に対応してみせた。
取り出した短剣で横薙ぎの一撃を防ぐ。
さすがは前線基地まで辿り着いた討伐隊の一人というわけか。
だが、踏ん張りが足りず、男性は吹き飛ばされて、テント内に積んであった木箱の山に頭から突っ込んでいく。
その際に短剣が手から離したようで、散乱した木箱の中身と共に音を立てて地面に落ちる。
「いっつつ……んっ?」
崩れた木箱の山から這い出てきた男性はあるものを目にする。
血溜まりに倒れた微動だにしないローゲン。
「ああああああああっ!」
死体を目の前に驚いたのか叫び声が上がる。
「誰かは知らねーが、ここでぶっ殺してやるっ!」
男性は腰にぶら下げていたボウガンを手に取ろうとする。
容易に撃たせると思うな。
男性の落とした短剣を足ですくい上げて、左手に握る。
間合いを詰め、右手の魔女狩りでボウガンを弾き飛ばす。
さらに、左手の短剣を男性の手の平に振り落ろした。
「っぐ……ああああああぁぁぁぁぁぁぁぁっっ!!!!」
短剣は手の平を貫通し、下にあった木箱に突き刺さる。
叫んだかと思えばすぐに物言わなくなる。
動く気配がない。
痛みのあまり気絶したようだ。
無防備な姿。
それを見て、トドメを刺さずに見逃そうとも考えたが、すぐに思い直して魔女狩りを構える。
何を甘いことを考えているんだ。
中途半端にやってリッチー討伐作戦が決行されたらどうする。
やるのなら徹底的にやれ。
不安要素は確実に排除しろ。
男性の首を刎ね飛ばす。
血飛沫が舞う中、首が転がる。
これで男性は絶命した。
「ひっ……」
テントの入り口から小さな悲鳴が上がった。
来客が多いなと振り返る。
首が転がった先である入り口に立っていたのはポニィだった。
この惨状に恐怖しているのだろう。
だが、歴戦の冒険者らしく、すぐに落ち着き、杖を構えて魔法を発動しようとする。
この距離なら魔法が発動する前に攻撃が届く。
電光石火の如く速さで近付き、魔女狩りを振りかぶる。
「んっ……!?」
ポニィは目を強く瞑って顔を背け、杖で自らを守るべく前に出す。
とっさの防御行動によって、魔法の発動は中断された。
魔女狩りで斬る――フリをして、ポニィの横を走り抜ける。
「えっ?」
殺されなかったポニィは疑問に思っただろう。
ポニィに何かあったら、地球の奈々に何らかの影響があるかもしれない。
奈々に何かあれば、ルナが悲しむ。
見逃したのは、それだけの理由だ。
その場で腰が抜けたポニィは地べたにへたり込むのだった。
ー5ー
テントの外には人が集まり始めていた。
銃声に男性の悲鳴が響いたのだ。
人が集まらないわけがない。
「誰だ、お前は?」
近くにいた戦士の男性が疑問を口にするが、即座に斬り伏せる。
戦士の男性は血飛沫を撒き散らしながら倒れた。
集まっていた人々から驚きの声と悲鳴が上がる。
不意を突いて、相手が慌てている間に数を減らす。
手近にいた魔法使いを斬り捨てる。
さらにその仲間であろう隣に居た神官も斬る。
そこで状況を理解したであろう冒険者が声を上げて警戒を促す。
「敵襲っ! 敵襲だっ! 何者かは知らないが三人やられたぞっ!」
武器を持つ者は前に、魔法を扱う者は後ろに。
修羅場に慣れている冒険者達は的確に対応を始める。
敵の数は多い。
今こそ力を最大限に活かす時だ。
そして、思い出せ。
今まで戦ってきた剣の猛者達を。
エビータの素早い剣捌き。
カニアスの剣と魔法の一体化した剣技。
茜の美しく舞う剣術。
ジェノサイドの絶対的な制圧力。
その全ての動きを右眼が捉えて憶えていた。
今までの経験が剣の極地に至る道となる。
そして目の前に群がる烏合の衆がその礎であり、糧だ。
手加減は不要。
加減をすれば自分が殺される。
皆殺しにするのだ。
まずは剣士が二人に槍使いが一人、魔法使いが二人で神官が一人。
相手は六人。
剣士と魔法使いの中に勇者候補が一人ずついる。
あの二人は何らかの勇者補正があるはずなので注意が必要だ。
剣士二人が左右に分かれる。
挟撃か。
いや、槍使いが正面にいる。
三方向からの攻撃だ。
それに対して正面突破で応じる。
槍使いに向かって走り出す。
左右から来る剣を姿勢を下げて、地面を滑るように移動して回避する。
すれ違いざまに右側の剣士の右足を斬り落とす。
正面から槍で貫こうと突いてくるが、足に雷属性の加護を集中させて、すぐさま体勢を整えて躱す。
槍の振れない懐に入り込むのと同時に心臓を一突きして槍使いを仕留める。
後ろから無傷の剣士が迫っていた。
勇者候補の剣士だ。
槍使いが刺さったまま魔女狩りを背後に向けて力一杯に振り回す。
魔女狩りから槍使いの体は抜けて、勇者候補の剣士に向かって飛んで行った。
飛来する仲間の体を避けきれず、勇者候補の剣士に衝突する。
倒れる勇者候補の剣士に近付き、その首を刎ねた。
槍使いはまだ息があるようだが、満身創痍で動けず死にかけだ。
放っておいても何も出来ないだろうと放置する。
援護する暇なく、一気に前衛が崩れ、魔法使いと神官の守りはなくなった。
魔法使い二人と神官の抵抗空しく、その命を散らす。
勇者候補の魔法使いが高出力の魔法を放ってきたが、一瞬にして無に帰した。
魔女狩りの前では如何なる魔法も無力だ。
右足を失った剣士は仲間の仇と戦意を燃やすが、手負いの相手など案山子に等しい。
案山子を始末し、残る死にかけた槍使いのトドメを刺した。
苦しみからから解放するためにトドメを刺したわけではない。
少しでも障害になりえる可能性があるから排除したまでだ。
テントの前で、ポニィはその光景を静かに見ていた。
加勢しようと思えば、加勢できた。
黙って人が死ぬのは見過ごせない。
それでも加勢しなかった。
仮面を着けた謎の人物。
あの動きには見覚えがあった。
何度も、何度も見てきた。
前線に出る仲間を後方からいつも見てきたのだから見間違えるわけがなかった。
「勇者……」
ー6ー
テントを離れ、出会う全ての勇者候補と冒険者を屠っていった。
躊躇せずに、容赦せずに魔女狩りを振るった。
ここに居るのはルナの命を脅かす者しかいない。
勇者候補も冒険者も皆殺しだ。
突如、三日月のように湾曲した氷の剣が弧を描いて飛んできた。
魔女狩りでそれを打ち消す。
「そこまでだよっ!」
目の前に現れた四人の冒険者。
マイカ、ニーナ、レンダー、ダイン。
騒ぎを聞きつけて駆けつけて来たのであろう。
かつて共に冒険をした仲間でもある。
だが、それでも手を抜く気などない。
行く手を阻む者は全て敵だ。
四人の中で、障害となりえるのはマイカだけだ。
それ以外は魔女狩りがあれば事足りる。
マイカは自身を中心に出現させた六本の氷の三日月刀を、風属性の魔法で滞空させ始める。
まさしく剣の舞だ。
綺麗だと思った。
だが、見惚れる程ではない。
あんなのに見惚れてしまったらルナに何を言われるやら。
そういえば、彼女の嫉妬する姿は見たことがない。
きっとその姿も愛らしいのだろう。
思わず笑みが溢れる。
だけど、すぐに意識を切り替えた。
マイカの全方位からの攻撃は厄介だ。
初撃で決してやる。
左手で神の矛を構え、引き金を引いた。
銃の恐ろしさを知っていたマイカは即座に刀身が真っ直ぐで幅広い氷の剣を作り出し、自身の前に交差するように並べる。
即席の盾だ。
普通の銃ならそれで防げたであろう。
しかし、神の矛は如何なる守りも貫く。
何を何重に重ねても無意味でしかない。
神の矛より放たれた銃弾は幾重にも重なる氷の剣を無情にも砕いていき、マイカの胸元を貫いた。
驚きの表情を浮かべたまま倒れるマイカ。
ニーナは悲鳴を上げる。
レンダーは何か指示を出しているが、無駄だ。
お前達の対処は遅すぎる。
司令塔であるレンダーに近付き、斬りかかった。
それにレンダーは錫杖で応戦する。
後衛の神官が前衛の剣士に敵う筈もなく、数度の打ち合いの末に錫杖を持つ右腕を斬り飛ばす。
血が舞う中、トドメを刺そうと思ったら炎の鳥が飛来してきた。
ニーナか。
魔女狩りで迎え撃とうとするが、炎の鳥は急降下して地面に当たり炎の壁へと変貌を遂げる。
目眩ましだ。
しかし、それはほんの一瞬にしかならない。
炎の壁に魔女狩りが微かに触れただけで、炎の壁は消失した。
姿が露わになるレンダー。
今度こそトドメだ。
その時、氷の三日月刀がまたしても飛来してきた。
魔女狩りで飛来して来た氷の三日月刀を打ち消し、状況の把握に移る。
仕留めたはずのマイカがダインの肩を貸りながら立っていた。
そうか、治癒の魔法があったか。
レンダーとニーナが注意を引きつけて、その隙にダインがマイカを治療した。
マイカを仕留め損ねていたのは痛い。
「よくもレン君を……許さないっ!」
普段の笑顔から想像もつかない憎悪に満ちた表情のマイカ。
マイカを中心に氷の三日月刀が無数に出現した。
それが渦を巻き、周囲を包囲する。
いくつかの氷の三日月刀は空高くに舞い上がり、無数の氷の三日月刀が四方八方を囲む。
魔女狩りで風魔法を打ち消しても、空高くに舞い上がった氷の三日月刀までは消えず、雨の如く降り注ぐだろう。
魔女狩りでは対処しきれない。
あくまで魔女狩りだけではの話だ。
魔女狩りで周囲に渦を巻く風を打ち消す。
周囲の氷の三日月刀は地面に落ちて砕け散る。
鞘に魔女狩りを納めて、マイカに向かって駆け出す。
舞い上がっていた氷の三日月刀が降り注ぐが、問題ない。
守護の魔法によって氷の三日月刀は弾かれてゆく。
魔女狩りと守護の魔法は相性が悪い。
なぜなら魔女狩りが守護の魔法を打ち消してしまうので、併用して扱う事が出来ないからだ。
周囲に張られた魔力の防御壁で降り注ぐ氷の三日月刀を凌ぐ。
治癒の魔法で治療したといっても、応急手当程度でしかない。
ロクに動けない状態だ。
接近して確実に仕留めてやる。
二人ごと斬り捨てようと抜刀し、魔女狩りを振るう。
しかし、ダインがマイカを後ろに投げ捨てて、自らの体を使って魔女狩りの刃を受け止める。
魔女狩りはダインの胴体を半分程斬るも静止されてしまう。
「がはっ……」
血反吐を吐きながら震える手で刀身を掴む。
「へ……へへっ、捕まえたぜ……」
なるほど、これが狙いか。
「ダイ君っ!?」
「オレごと、やれぇぇっ!」
マイカは一瞬躊躇うも、氷の三日月刀を作る。
それを風に乗せる。
後方からはニーナが炎の鳥を放つ。
「これで勝った気になるなよ!」
集中し、雷の加護の効果を増幅させる。
「うおおおおぉぉぉぉっ!!」
大地を踏みしめて、魔女狩りに刺さるダインごと振り回す。
炎の鳥、氷の三日月刀をダインの体を使って払い除ける。
そして、地面に叩きつけた。
ぐしゃりと音を立てる。
「ダイ君!」
炎に焼かれ、氷で刻まれた痛ましい骸から魔女狩りを引き抜こうとするが……。
「ん?」
抜けない?
見ると、死にかけながらも抱えるようにして、奪われまいとするダインの姿があった。
脳漿をぶち撒けながらもよく生きているものだ。
いや、とうに死んでいるのかもしれない。
死してなお仲間のために尽くす。
仲間のためにそこまでするのは称賛したいが、その惨めな姿は哀れとしか言わざるを得ない。
だけどこれはマズい。
死体を蹴り飛ばそうとしたその時、後ろから衝撃を受ける。
「うおっ!?」
右腕を失ったレンダーが体当たりをしてきたのだ。
魔女狩りから手を離してしまい、もつれるように倒れる。
レンダーを蹴り飛ばし、即座に立ち上がった。
「これで終わりだよ!」
眼前にはマイカが立ちはだかっていた。
彼女の手にはいつも腰に下げていた鋼の刃を持つ三日月刀。
それを喉元を狙って振るう。
だが、マイカの攻撃は空しくも喉元の前を通り過ぎていき空を切る。
マイカ自身は当たる位置を狙ったはずだ。
それでも当たらなかったのは、あざやかな青色をしたローブが関係する。
認識阻害の魔法が編み込まれたこのローブは、普段なら魔力を持たない者にしか効果を及ぼさない。
しかし、このローブは魔力を流し込むことによりその効果を上げられる。
魔力を流し込み、マイカの認識をずらしたのだ。
「マイカ!」
レンダーが叫ぶ。
終わりだ。
魔女狩りを失って手ぶらである。
それでも殺す手段がないわけじゃない。
ルナから授かった黒い革手袋。
それで必殺の一撃を外したマイカの首元を掴む。
黒い革手袋には伝導の魔法が編み込まれている。
雷属性を付与して、マイカの体が黒焦げになるまで雷を流す。
さっきのようなミスはしない。
確実に仕留める。
燻る死体を投げ捨てると、放心して呆然とするレンダーの姿があった。
何か仕掛けて来るかと警戒するも、彼はマイカの死体に駆け寄り死体を抱きしめて彼女の名前を叫ぶ。
その間に魔女狩りを回収する。
さすがにダインの死体が抵抗する事はなかった。
「キサマァァァァッ!!」
マイカの死体を抱きしめて振り返るレンダー。
しかし、魔女狩りで首を刎ね飛ばし、すぐに物言わぬ骸に成り果てた。
残ったのは……。
「いや……」
ニーナはへたり込み、怯える。
彼女に抵抗する力は残されていない。
それでも、殺さなくては。
リッチーに仇なす力を持つ者は一人残らず殺す。
歩み寄ると、ニーナは這って逃げようとする。
どうやら腰が抜けてしまったようだ。
魔女狩りを振りかざす。
「だめっ!」
いつの間に近くまで来ていたのだろうか。
ポニィが間に入ってニーナを庇う。
「これ以上は、だめ。だめだよ……」
弱々しい声音が胸に突き刺さる。
堪え切れず、トドメを刺さずにその場から立ち去った。
ー7ー
前線基地の外れ、慰霊碑がある広場に一人の少女が佇んでいた。
幾度も結成されたリッチー討伐隊の死者達の名前が刻まれた慰霊碑。
そこには彼女の両親の名前も刻まれていた。
広場に足を踏み入れると、佇んでいた少女が振り返る。
「勇者様?」
仮面で顔を隠していたのにあっさりとバレてしまった。
「……」
「随分と変わった格好してますね」
「……」
「血塗れですけど大丈夫ですか?」
「……」
「見たところ大きな怪我はないようですけど、何かあったのですか?」
「……」
「その、黙っていても分からないのですけど……」
「……」
「せめて仮面を外してもらえませんか?」
「……」
「そのままでは話しにくいでしょう?」
静かな動作で仮面に手を掛けて外す。
「……」
「勇者様……何かあったのですか?」
「……人を殺した」
「え?」
「……討伐隊の人達を殺した」
「……」
「ローゲンもマイカも殺した。それ以外の冒険者も勇者候補も沢山殺した」
「……」
「次に殺すのは……」
「……私なのですか?」
「……そうだ」
「そうですか……」
「ああ……」
「……理由を聞いても?」
「守りたい人がいるんだ。そのために」
「……」
「たとえ世界を敵に回しても、その人を守りたい……それだけだ」
「……そう、ですか……」
「……ああ」
「……」
「……すまない」
「なぜ、謝るのですか?」
「……それは――」
その時、二人しかいなかった広場に一人の侵入者が入って来た。
「見つけたぞ」
「……アダチ」
広場の入り口に立つアダチは鋭い眼光でこちらを睨んでいた。
「つい昨日までは、さん付けで呼んでいたのに随分と傲慢になったものだ」
「……そんな事をわざわざ言いに来たのか」
「ふんっ。そんなわけなかろう」
アダチは鞘より魔剣を抜き放つ。
「冒険者が志半ばに息絶えるのはよくあることだ。戦いの中で死ねたのなら彼らも本望だろう。お前もそう思うだろ?」
戦いの中で死ねたなら本望?
そんなわけない。
今日殺した者達は皆、様々な表情を浮かべていた。
驚愕、悲観、憤怒、憎悪。
誰も彼もが戦いの中での死を望んでいなかった。
それでも自分は彼らに死を与えたのだ。
自分の身勝手な理由で。
「死に救いなどない。それがたとえ戦場での死でも救いはない。あるのは絶望のみ。もし、華々しく死ねたと思っている奴がいたら、それはただの自己満足だ」
「ならば、お前が彼らを殺したのがどれほど残酷なものか解っているのか」
「そんなのどうでもいい」
「どうでもいい、だと?」
「他人が傷つこうが死のうが、どうなろうと関係ない。ルナが死ぬのに比べたら、些細な事だ」
鞘から魔女狩りを抜き放ち、アダチに刃先を向ける。
「お前もここで死ね、アダチッ!」
「何を言っても無駄のようだな。今更お前が改心しても死んだ者は戻らん。それに、お前がどのような理由で悪行に及んだかなど興味はない」
アダチも魔剣の刃先をこちらに向ける。
「だがな、俺は今回の討伐隊の結成者であり責任者だ。死んでいった者達のために、けじめをつけなければならない」
相手は最強の勇者候補であり、勇者の称号に最も近い男だ。
そんな男と一対一の真剣勝負。
勝てるのだろうか。
いや、勝つんだ。
最強の称号を与えられていようと、聖女よりは弱い。
あの破壊の化身を従える者を超えられる者などいないだろう。
広場で対峙する二人をアマテルは慰霊碑の前で黙って眺めていた。
アマテルの目の前で刀と剣が交差する。
鋼と鋼がぶつかり合い、火花を散らす。
激しい剣戟。
アマテルはどちらに加勢するではなく、黙って戦況を見守る。
何も事情を知らなければ、共にアダチを倒そうとしただろう。
だけど状況はどうだろうか。
ローゲンを殺し、マイカ達も殺したという。
ポニィはどうなった?
レンダーは?
ニーナは?
ダインは?
他にも沢山殺したと言っていた。
嘘だと思いたいが、嘘をついているようには見えなかった。
それにアダチのあの態度が真実だと物語っている。
アマテルはどうしたらいいのか分からなかった。
ー8ー
刀と剣の応酬が続く。
一見するとこちらの方が圧しているように見受けられる。
力も速さもこっちが上。
それなのに……おかしい。
数度の攻防で違和感に気付いた。
攻め切れない。
今や自分の剣の腕前は並みの相手を凌駕している。
戦い慣れた冒険者を相手に圧倒出来る程だ。
それに単純に剣の腕前の話だけではない。
加護の魔法による身体強化もある。
今出せる自分の全力をぶつけているにも関わらず、攻め切れない。
何度も攻めて、挫けずに攻めて、攻め続けた。
攻め続けるも、こちらの攻撃を易々といなしてアダチは反撃してくる。
攻めていたはずが、いつの間にか攻守が逆転した。
強い。
このままではダメだと判断して、一旦間合いを取る。
追撃はなかった。
「どうした? 逃げるのか?」
あれだけの攻防をしたというのに、アダチは息をまったく乱していない。
「お前の剣の腕前は大したものだ。だがな、お前の実力は俺に劣る」
悔しいが、それは事実である。
「俺とお前の実力の差。それは経験だ。お前もそれなりの修羅場をくぐり抜けてきたようだが、まだまだだ」
経験。
長く、最強の勇者候補の称号を保持し続けた男。
その称号を得るのに、どれだけの時間が掛かったのだろうか。
最強という称号を得た後も、その実力は衰えず、むしろ磨きがかかっていると聞く。
「ポテンシャルはお前の方が上だ。いずれお前は俺を超えるだろう。まあ、その時は訪れないがな」
アダチは魔剣を構える。
「さて、来ないのか? 時間稼ぎをまだ続けるのか?」
力と速さはこちらに分がある。
しかし、それだけでは勝てない。
剣の角度、重心の位置、力の逃がし方。
そういった細かな技術でアダチは自身の不利をなくしている。
それどころか、優位に立っていた。
一朝一夕で身に付けられるものではない。
長い実戦の中でアダチが身に付けたものだ。
「じきに俺の仲間が到着する。時間稼ぎをすれば、そちらが不利になるぞ」
そういえば、アダチの仲間の姿が見当たらない。
ここに来る間にも殺してもいない。
「……ほら、噂をすれば、というやつだ」
アダチが視線を向けた方角に目を向けると、三人の人物がこちらに向かっていた。
アダチの仲間達だ。
ここで増援はマズい。
アダチ一人でさえ手も足も出ないのに、これ以上人が増えたら太刀打ち出来ない。
だけど、諦めるな。
生きている限り、戦える、戦い続けろ。
それに、こんなところでは死ねない。
帰りを待っている人がいるんだ。
もう二度と一人にしないと誓った。
勝って、生きて帰る。
負けてなるものか。
絶対に勝ってみせる。
やがて、アダチの仲間達は広場の入り口に辿り着く。
「諦めろ、お前はここで死ぬ。最後は潔く死ね」
「……ふざけるな! まだ戦える。まだ負けていない!」
その時、広場に隣接する森より何かが飛び出してきた。
飛び出してきたソレは広場の入り口に向かって飛んで行き、地面に突き刺さる。
「何だっ?!」
アダチの仲間達に動揺が広がったかに思えたが、すぐに冷静さを取り戻した。
さすがは最強の仲間と言うべきだろうか。
だが、冷静になっても余裕はなくなった。
その原因は明白。
地面に突き刺さったのは、氷の大剣。
その氷の大剣には見覚えがあった。
森より氷の大剣を投擲した者が静かに姿を現す。
「バカな……!? なぜ、お前がここにいる?」
姿を現したのは黒金の鎧を纏った騎士。
最強と謳われ、虐殺の名を冠するアンデッド。
虐殺の騎士、ジェノサイド。
ジェノサイドの手には氷の大剣が握られており、いつ斬りかかって来てもおかしくない。
こちらにチラリと視線を向けてくる。
気のせいかもしれないが、兜越しに視線が合った。
ジェノサイドはアダチに向かって歩いていく。
身構えるアダチを無視して脇を通り過ぎ、アダチの仲間に斬りかかる。
ジェノサイドが突然現れて驚いたが、どうやら敵ではないようだ。
無論、ジェノサイドが攻撃をしてこないとは限らない。
それでも、ジェノサイドが敵じゃないとさっき視線を交わした時に分かった。
根拠はないが、不思議と理解できたのだ。
ジェノサイドのおかげで増援はなく、敵はアダチのみ。
「まさか、ジェノサイドが現れるとは……」
ジェノサイドのおかげでアダチ一人に集中できる。
「お前を殺して向こうに加勢しなくては」
アダチが斬りかかって来た。
それを正面から受けて、横に流す。
そして、アダチの首元を狙って魔女狩りを振るう。
血飛沫が上がる。
アダチの魔剣によって、右手首を斬られてしまった。
さっきまでと動きが違う。
まさか、手を抜いて戦っていたのか?
灼熱のごとくの激痛が右手首に走り、右手の感覚が薄れていき、魔女狩りが手から滑り落ちてしまう。
痛みに耐えながら、左手で神の矛を取り出す。
銃口を向けると、アダチはすぐさま行動を移した。
こちらの腹を蹴り飛ばして、銃口を逸らす。
引き金を引いて発射された銃弾はアダチの頬を微かに傷つける。
せき込みながら立ち上がり、再びアダチに銃口を向けた。
「どこで手に入れたのかは知らんが、よもや、銃を持っているとはな」
アダチには余裕がある。
銃を持った相手と対峙しても動揺しない。
「さっきも言ったが、時間稼ぎはあまりお勧めしないぞ」
アダチは地面に落ちた魔女狩りを魔剣で弾き飛ばす。
魔女狩りはあさっての方角へと飛んでいく。
拾いに行くには距離があり過ぎる。
右手首の傷も痛むし、血がどくどくと流れていく。
神の矛での攻撃を外したら一気に距離を詰められて斬られてしまう。
「ん?」
アダチの頬にできていた傷が徐々に塞がっていくのに気が付いた。
……そうか、光属性の魔法か。
自動的に発動する治癒の魔法。
小さな傷ではすぐに癒えてしまう。
ここにきて厄介事が増えるとは面倒な。
神の矛の一撃で仕留めなければ、確実に殺される。
手足を撃ち抜く程度では自動治癒の魔法で傷はすぐに塞がれてしまう。
頭に、脳を撃ち抜かなくては。
だが、やはり銃口を向けてもアダチは微動だにせず、鋭い目つきでこちらを睨む。
距離は近いのに当たる気がしない。
むしろ遠く感じる。
当たるのか?
当てないと終わりだぞ。
終わりは死を意味する。
指先が震えてくる。
落ち着け、これでは当たるものも当たらない。
「勇者様っ!」
突如、呼ばれたのと同時に治癒の魔法を掛けられる。
右手首の傷が塞がっていく。
治癒の魔法をかけてくれたのはアマテル。
静観していたのに、なぜいきなり?
「何だ、神官も裏切るのか」
アダチは舌打ちをする。
「私は勇者様の味方です。たとえ勇者様が私を殺すとしても、それでも私は、私だけでも勇者様の味方で在り続けます!」
アマテルは力強く宣言した。
すごいな、アマテルは。
普通、自分を殺す者の味方なんてしない。
それに、これじゃあアダチに勝っても負けても死ぬのだぞ。
それでも、アマテルは……。
「二人まとめて葬ってやるっ……!」
アダチの殺気が鋭い刃の如く突き刺さってくる。
どんだけ力を隠しているんだよ、この老いぼれは。
「これ以上、勇者様を傷つけるのは許しません!」
「これ、はっ……!?」
アマテルの瞳が輝く。
黄金のように瞳が輝き、髪も黄金に輝き出した。
その輝く様は、聖女の姿を彷彿とさせる。
彷彿どころではない、これは聖女そのもの。
アマテルの背後が歪んで見える。
歪んだ先に破壊の化身、デストロイの姿が揺らめく。
これは一体なんだ?
アマテル、君は一体何者なんだ?
様々な謎が湧いてくるが、それを教えてくれる者はいない。
魔法が発動し、光の爆発が起こった。
太陽が地上に落ちたのかと錯覚してしまうほどの爆発。
閃光が視界を白く染め、耳を塞いでも鼓膜に轟く爆音。
周囲に高温の爆風が吹き荒れ、芝生を燃やし、皮膚を灼く。
両腕を上げて顔だけでなく、体を庇うようにして覆うも、爆風の威力に堪えきれずに体ごと吹き飛ばされてしまう。
爆風が過ぎ去る頃には周囲は静かになっていた。
倒れた体を起き上がらせて、状況を確認する。
ローブは焦げてボロボロになり、革手袋には穴が開き、熱線を直に受けた皮膚は爛れていた。
幸いにして致命傷を受けてはいない。
目の前にはクレーターができていた。
その中心にある肉塊。
原型を留めていないが、人だというのは分かった。
「ひゅー……ひゅー……」
微かに漏れる息。
生きている。
ぐちゃぐちゃと蠢く肉塊。
自動治癒の魔法が発動していた。
元の人型に戻るにはどれ程の時間が掛かるのだろうか。
いや、人型になる事はないだろう。
治癒の魔法は傷を塞ぐだけしか効果がない。
この肉塊を皮膚で包むだけだ。
それでは生きていても惨めだろう。
神の矛を肉塊に向ける。
その時、眼球と思しきものがこちらを見てきた。
その目が何を訴えているかは分からない。
そもそも本当に眼球なのかも疑わしい。
でも仮にこれが眼球だとしたら頭部なのだろう。
頭部には脳がある。
ひゅーひゅーと息が漏れているのが口なら脳の位置はその上部。
狙いを定め、引き金を引く。
肉塊の息が止まり、もう蠢くことはなかった。
ー9ー
地面に転がる魔女狩りを回収して鞘に納める。
ジェノサイドの方を見やると、そちらも決着がついていた。
返り血を浴びた黒金の騎士だけが佇み、それ以外は大地に沈んでいる。
ジェノサイドからは敵意を感じ取れず、襲って来る気配もない。
敵意がないのを確かめて、アマテルの方を見やる。
地面に座り込み、錫杖を支えにして息苦しそうに喘いでいた。
先の魔法による影響だろう。
その時、森の木々が揺れる。
気配を隠そうともせずに、何者かが近付いて来る。
魔女狩りを構えようしたが、止めた。
やって来る者は敵ではない。
無防備のまま、森からの来訪者を迎える。
森より出てきたのは白銀の騎士、ケルベロス。
その傍らには、銀髪の少女が姿があった。
「ルナ?」
銀色の髪を持つ少女。
紺色の布で目隠しをしており、瞳を確認できない。
だが、その姿は見間違えるわけがなかった。
ルナの共命者、リッチー。
ツギハギだらけのウサギのぬいぐるみを大事そうに抱いている。
その様は愛らしく感じられた。
ケルベロスを付き従えたまま、リッチーはこちらを見つめてくる。
目隠し越しなので本当に見えているかは分からない。
だが、こちらを真っ直ぐと見つめてくるのだから見えているのだろう……多分。
リッチーがちょこちょこと歩み寄って来た。
すぐ間近まで近寄り、こちらを見上げるように見つめてきた。
こちらからはリッチーの眼を見ることは出来ない。
けれど、この様子だと向こうは確実に見えているのだろう。
リッチーは口元に人差し指を当てて小首を傾げる。
さっきからルナがやらない仕草ばかりをしてくる。
正直言って可愛い。
ルナに頼めば同じ仕草をやってくれるかなと、思考してみる。
……やらないだろうな。
馬鹿か、お前は。とか言って一蹴しそう。
下らない妄想に耽っていると、リッチーがこちらを指差してきた。
指差す先は内ポケット。
内ポケットの中を探ってみると、召喚石が出てきた。
この石に何かあるのだろうか?
リッチーは召喚石を物欲しそうに見つめてくる。
「これが欲しいのか?」
「う?」
召喚石が欲しいのかと思い、尋ねてみるも、リッチーは首を傾げてしまう。
あれ? 違うのか?
「じゃあ、いらないのか?」
再度尋ねてみると、リッチーはまた首を傾げた。
あれ?
不思議に思いつつ、召喚石を引っ込める。
「あー」
すると、リッチーは名残惜しそう手を伸ばす。
「やっぱこれが欲しいのか?」
再度確認を取るも、やはりリッチーは首を傾げるだけだった。
まさかとは思うが、言葉が通じていないのではないか。
確認してみる。
「えっと……名前を聞いてもいいか?」
それから名前以外にも色々と質問してみたが、リッチーは首を傾げてばかりで何も答えてくれなかった。
どうやら、本当に言葉が通じていないようだ。
考えてみたらアンデッドに囲まれて育ったのだし、話せないのは当然ではないか。
会話ができなくても何を求めているかは、ここまでの態度で何となく察しがついた。
「どうせ、もう必要ないだろうし、いいか」
召喚石をリッチーに差し出す。
リッチーは嬉しそうに召喚石を受け取った。
思っていた通り、召喚石が欲しかったようだ。
「あーうーうー、うー!」
小躍りしそうなくらい喜んでいる。
リッチーは自身のポケットから何かを取り出して差し出してきた。
「くれるのか?」
言葉は通じないが、つい声に出てしまう。
「うー」
通じたかは分からないが、肯定してくれたようだ。
リッチーが差し出した物を受け取り、それが何か確認してみた。
「これは……ウサギ?」
受け取ったのは、ウサギの形をした石だった。
召喚石のお礼なのだろうか。
だけど魔力は一切感じられない。
ただの石のようだ。
それでも――
「ありがとう、大事にするよ」
――お礼はきちんと言わないとな。
「うー」
お礼を言われたリッチーは愛らしく笑う。
それで用が済んだのか、リッチーはケルベロスと共に城へと去っていく。
その際に、リッチーは手を振っていたので、こちらもそれに応じるように手を振る。
お互いの姿が見えなくなるまで手を振り続けてくれた。
やはり子供っぽい。
リッチーに応えるように、自分も手を振り続けるのだった。
ジェノサイドだけが残り、前線基地に向けて歩を進める。
前線基地で何をするのか想像に難くない。
こちらとしても、討伐隊の数が減るのはありがたい。
残る問題は一つ。
この問題を解消しなければならない。
慰霊碑の前に向き直る。
アマテル。
彼女を殺さなくては。
ー10ー
アマテルを殺せば、共命者である聖女は死ぬ。
聖女の力は圧倒的で、自分は敵わない。
頑張れば倒せるとか、そういう話ではなく、次元が違う。
絶対に勝てない。
それが聖女だ。
そんな聖女を殺せる唯一の方法。
共命者アマテルの殺害。
聖女を殺すにはこれしかない。
アマテルは先程まで疲労困憊で息も絶え絶えだったが、時間の経過によって幾分か体力が回復したようだ。
居住まいを正した彼女と向かい合う。
「勇者様、少しお話ししませんか?」
アマテルの誘いに乗ることにした。
そしてこれが、アマテルとの最後の会話になる。
「不思議です。なぜだか今は気持ちが晴々としています」
「……」
「おじ様やマイカさんが死んでしまって、アダチさんに手を下した。それなのに全然暗い気持ちにならないのです。勇者様、私は冷たい人間なのでしょうか?」
「冷たくは、ないと思う。多分だけど、ローゲンやマイカに関しては殺した現場や死体を見ていないから実感が持てていないだけだと思う」
「そうですね……。実感が持てていないのはそうだと思います。でも、アダチさんは……私が殺したも同然です」
「でも、おかげで助かった。一人じゃ勝てなかった」
「……あの時、私は勇者様に生きて欲しいと願って、戦いに参加しました。その判断が正しかったのか、私には分かりません。でも、勇者様が無事でいてくれて良かったと思っています」
「……助けた結果、自分が殺されるとしても?」
「生き残っても、どうしようもないじゃないですか。おじ様は死に、マイカさんもアダチさんも他の勇者候補や冒険者達も沢山死んでしまった。討伐隊は壊滅して、勇者様は……」
「……」
「……ねえ、勇者様」
「うん?」
「私……勇者様の事が好きです」
「……」
「大好きです。愛しています」
「……」
「いつの頃からか、勇者様と一緒に居ると胸がドキドキして、心が温かくなります」
「……」
「こんな気持ちになったのは生まれて初めてです」
「……」
「最初はこの気持ちがなんなのか分かりませんでした」
「……」
「でも、これが恋だと気付いてしまいました」
「……」
「勇者様と一緒に居るだけで幸せな気持ちになって、言葉を交わすのが嬉しくて、勇者様が笑っているだけで私も楽しい気分になって……」
「……」
「私は今幸せなんだなって、こんな私でも幸せになれるんだと気付いてしまったのです」
アマテルの想いは痛いほど伝わって来た。
ルナがいなかったら、何も憂う事なくアマテルに惹かれていただろう。
アマテルの気持ちは嬉しい。
こんなにも真っ直ぐに好意を伝えて貰ったのは生まれて初めてだ。
だけど、その想いを受け取ることは出来なかった。
「……すまない。その気持ちには応えられない」
そう告げるとアマテルは顔を俯かせて肩を震わせた。
「……ええ、分かっています。分かって、いました……」
「……」
「分かっていましたけど、心のどこかで私は勇者様にとって特別な存在だと思っていました。でも実際は、私一人が勝手に思い上がっていただけだったのですね」
「……」
「ずっと考えていたのです。リッチー討伐が上手くいったらどうしようかって」
「……」
「もし上手くいったら、私は勇者様に想いを伝えようと考えていました」
「……」
「いえ、リッチー討伐が上手くいかなくても、勇者様が生きていれば、勇者様が傍に居てくれれば、それだけで良かった」
「……」
「旅を終わりにして、どこか二人で静かに暮らせたらいいなと夢見ていました。本音を言うと、討伐隊に参加しないで二人でどこか遠くに逃げ出したかったです」
「……」
「勇者様……私ではダメなんですか……?」
顔を上げたアマテルは目に涙を浮かべていた。
「私じゃ……ダメだったのですか?」
アマテルがボロボロになった上着の袖を引っ張り、懇願するように問うてきた。
「すまない」
その言葉にアマテルの目が決壊し涙が溢れ出た。
「どうして……どうして……」
どれだけアマテルが真剣だろうと、その想いには応えられなかった。
「どうして、私じゃないんですかっ! 私じゃ……勇者様の隣に居るのが、私じゃ……」
アマテルは両手で顔を覆い、泣きじゃくる。
彼女の泣き声をただ聞くことしか出来なかった。
「……勇者様」
決壊した涙は収まるも、まだ微かに涙ぐんでいるアマテルがぼそりと呟く。
「ん?」
「最後に……最後に、お願いがあります」
「なんだ?」
「最後に、ギュッと抱きしめてください」
アマテルの最後のお願い。
敬愛する仲間の最後の願い。
「分かった」
アマテルの体を優しく包む。
「……」
「……」
「……もう一つ、いいですか?」
「……なんだ」
「その……ス……」
消え入るような小さな声で上手く聞き取れない。
「聞き取れないのだけど」
「っ……えっと、そのキ……」
やはり聞き取れない。
「……やっぱ、いいです……」
「そうか……」
「……勇者様」
「その呼び方はおかしいだろ。もう勇者じゃない」
「……そう、ですよね。それじゃあ――」
アマテルに名前を呼ばれるのは不思議な感じがする。
思えば、名前を呼ばれたのはこれが初めてであった。
「――さようなら。最後に話せてよかったです」
「ああ、さようなら、テル」
ー11ー
ニ百人もいた討伐隊は謎の襲撃者によって四十人程が殺され、百六十人にその数を減らした。
正確な犠牲者の数を測ったわけではないので、憶測でしかないが死体の数を見れば、大体それぐらいの数であるとポニィは推測する。
ちなみに負傷者はニーナ一人だけだ。
それ以外は的確に急所をつかれて死亡した。
この死体の列が倒れる先には慰霊碑の置かれた広場がある。
テルは前線基地にいる間、毎日のように広場に通っていた。
おそらく、今も広場に居るのだろう。
勇者の目的は分からない。
でも、広場に向かったということはテルに用があるということだ。
それも良くない用が。
襲撃者を討伐に向かったアダチはまだ戻らない。
勇者が倒されるにしろ、アダチが倒されるにしろ、リッチーの討伐は出来ないだろう。
殺された者が多過ぎる。
戦力が減った状態で討伐に向かうのは愚かでしかない。
ポニィは傍らで泣く少女を慰めながら、倒れる三人の死体に視線を落とす。
勇者候補である少女は誰だか分からないほど損傷しており、他の死体も無残の一言だ。
何度か一緒に冒険をしたのが、良い思い出である。
だけどもう二度と一緒に冒険に出ることは出来ない。
両手を合わせて彼女らの冥福を祈るのだった。
これからどうしようかと悩んでいると、広場より爆発音が轟く。
決着がついたのだろう。
どのような結末を迎えたかは分からないが、いずれにしても戦いに発展した時点でポニィが望むものではないのは確かだ。
それにしても、周囲の冒険者達が口々に叫んでいて騒がしい。
静かなのが好きなポニィはそれを鬱陶しく思った。
たかが襲撃者一人の登場でそこまで五月蝿くしないで欲しい。
五月蝿く騒ぐ声に混じって悲鳴が聞こえてきた。
何だろうか。
悲鳴の原因はすぐに分かった。
ジェノサイド。
かつて勇者を瀕死に追い込んだ虐殺の騎士。
そのジェノサイドが前線基地を襲撃してきたのだ。
勇敢に立ち向かう冒険者を氷の大剣で薙ぎ払い。
怯えて逃げ惑う冒険者を氷の槍で貫き。
肩を寄せ合って震える冒険者を氷の戦斧で叩き割る。
不思議なことにポニィはジェノサイドの標的にならなかった。
ジェノサイドは虐殺の限りを尽くし去ってゆく。
しばらくの間、生き残った者達は隠れ潜んでいたが、何も起こらないのを確認してから姿を現して安堵の声を上げる。
謎の襲撃者。まあ、その正体は勇者なのだが。
それに続いてジェノサイドの襲撃。
度重なる襲撃によって討伐隊は壊滅的な被害を受けた。
もはやリッチーを討伐に向かうのは不可能だ。
終わったんだ、何もかも。
終わってしまったんだ。
「おい、無事かっ!?」
知らない冒険者が叫びながら駆け寄って来た。
「仮面野郎の次はジェノサイドって、まったくどうなっちまってんだよ」
愚痴る冒険者を無視して、ポニィはニーナを連れて歩き出す。
「お、おいっ?! どこ行くんだよっ!? 勝手に行動して死んじまっても知らねーぞ!」
冒険者はポニィを追い掛けようともせずにどこかへ行ってしまった。
それにポニィは安堵する。
いきなり知らない人に声を掛けられるとは思いもしなかった。
「……これからどうするの?」
今だにせせら泣くニーナが尋ねてきた。
「……前線基地を出る」
「どうして?」
まもなく日が暮れる。
「夜になれば、起きる。今日死んだ人たちが」
「それって……」
「ここはキケン。急いで出る準備」
ふいにニーナがポニィのローブを引く。
「テルさんは? ポニィさんのところの勇者も見掛けないし、二人は?」
「二人なら……だいじょぶ」
「……そっか」
ポニィの返答に何かを察したのか、ニーナはそれ以上聞いてこなかった。
勇者とアダチの勝敗の結果は分からない。
でも、おそらくだが、勇者が勝ったのだろうと推測してみた。
これも推測だが、勇者の目的はテル。
それに気付いたおじさんは殺された。
他の冒険者が殺された理由は分からない。
見つかったからとか見られたからとかそんな単純な話ではないだろう。
全部、推測に過ぎない。
広場のある方に視線を向ける。
慰霊碑の傍らで眠っているであろう親友を想って祈りを捧げる。
「……勇者の、ばか……」
ー12ー
地球に戻るとルナが出迎える。
傷だらけだったので心配されたが、生きて帰って来たことに何よりも喜んでくれた。
魔法で傷を癒してもらい、やるべき事を済まそう。
「私はお前と生涯を通じて、共に歩んでゆく」
「ああ」
「お前は私を主と認めて、死するその時まで尽くすと命を、魂を懸けて誓うか」
「誓う、ルナに一生ついて行く」
「そうか。ならば結ぼう、契約を」
契約によってお互いの魂が結ばれる。
これで、いつも一緒だ。
ルナにいきなり上着の襟を掴まれ引っ張られる。
「っ?!」
唇をルナの柔らかい唇によって塞がれる。
やがてルナは体を離す。
「二回目なのに何照れてる」
「いや、照れてないから」
「顔が紅いぞ」
「そう言うルナだって……」
紅くなっていなかった。
一回目の時は紅くしていたのに、今回はなんで平然としているんだ。
「ルナは照れないんだな」
「そう見えるか?」
「もしかして照れてる?」
「さて、どうだろうな」
「……」
どっちだよ。
「ルナの照れてる姿を見たいから、これからは覚悟しておけ」
「従者のくせに生意気な。だけど……楽しみにしておく」
そうして、三度目の口づけを交わしたのだった。
ー13ー
自分が選択し、その世界がどう変わりゆくのかは分からない。
だけど、自分が居た世界は幻想であり、ファンタジーだ。
あれは幻でしかない。
幻であるが故に掴むことも触れることも出来ない。
触れられないということは、干渉出来ないというわけだ。
そもそも、自分が選択した事により世界に大きな影響を及ぼせると考えるのは自意識過剰以外の何者でもない。
干渉しようとしなかろうと、世界はあるべき形にしかならない。
それにもう幻は見ないだろう。
たとえ、万物を捉える右眼を以てしても見ることは叶わない。
存在しないものは視れない。
自分はこれから地球で彼女に寄り添い続ける。
彼女と共に在り続けることは大変だ。
様々な困難や障害が立ち塞がる。
それらに立ち向かうのだ。
幻がどうとか言っていられない。
彼女の命だけでなく、笑顔を守るために自分は戦い続けるのだ。
ーFinー
今回の話も読んで頂きありがとうございました。
内容としましてはアマテルではなく、ルナを選んだという内容になっています。
本編がアマテルルートとするなら、今回の話はルナルートになります。
肝心のルナの出番は少ないですけど。
本編ではルナは死んでしまいますが、あれは最初から決まっていた事です。
最初からルナを殺すつもりで書いていました。
セーラー服にすれば、白地に赤い血が染まれるから映えるだろうなとか碌でもないことを考えていましたのを覚えています。
ルナを殺すつもりでしたが、同時にルナの助かる話も別に書こうとも考えてました。
それが今回の話になります。
ちなみに二人共助かる方法は「19.分岐点」の時点ではありません。
ルナを助けるためには多くの犠牲が出ました。
その中でマイカとの戦闘は書いていて辛かったです。
あそこが一番筆が乗ったシーンでもありますけどね。
本作に於いて、ヒロインであるルナとアマテルは会話をすることはありません。
お互いに主人公から聞いた話しか知りません。
仮に会話することになったら喧嘩になります。
主人公のことを差し引いても、この二人は仲良くすることは出来ません。
理由は簡単です、二人の相性が非常に悪いからです。
とは言え、今後投稿予定の外伝でも二人は会話させる気はさらさらありません。
また次回の話も読んで頂ければと思います。




