15.マーダースケルトン
(2020/07/24)読者様からの指摘で「スケルトンマーダー」から「マーダースケルトン」に変更致しました。
ー1ー
これはかつて、マイカと交わした会話だ。
「キミは、ドッペルゲンガーを知ってるかい?」
マイカと喫茶店でお茶をしていた時、ふとそんな話になった。
自分にそっくりな者がいて、出会ったら死んでしまう。
地球で聞いたドッペルゲンガーの話と相違なかった。
「居るかもしれないね、キミにそっくりなドッペルゲンガーが」
その話が出る前は、どんな会話をしていたか憶えていないが、全然関係ない話をしていた気がする。
突拍子もない話だったのは間違いない。
まあ、元からマイカは突拍子もない性格をしているからおかしくないか。
そう考えて自分を納得させた。
ー2ー
「一度、前線基地から出ようと思う」
昨夜のジェノサイドとの死闘。
一歩間違えれば死んでいた。
これまでも度重なる死線を潜ってきたが、ジェノサイドとの戦いは他と一線を画する。
あれは本気で死を覚悟した。
ルナがいなければ、自分は亡き者になっていたであろう。
ジェノサイドの強さは別格であり、まったく歯が立たなかった。
今のままではジェノサイドに敵わない。
そして、このままではリッチー討伐は叶わない。
強くならねば。
力を身につけなければ。
このまま前線基地に残っていても強くなれない。
「昨日の戦いでリッチー討伐は難しいと改めて認識した。一度ここを離れて、強くなってから戻ってこようと思う」
自分の考えをアマテル達に伝える。
「勇者様の考えは良いと思います。もちろん、私も同行しても構いませんよね?」
もちろん、歓迎します。
「武者修行というわけか。悪くない提案だ」
「わたしも、もっと強くなりたい」
アマテル達も前線基地を離れるのに賛成のようだ。
「よかった。反対されたらどうしようかと思ったよ」
「勇者様の提案ならば反対などしませんよ」
間違ったことを言っていたのなら反対してほしいのだが。
ローゲンはちゃんと言ってくれるのにな。
ポニィもなんだかんだで意見を言ってくれるし、アマテルだけが盲目的に自分を信じてくれる。
「テル。間違ったこと言っていたら、ちゃんと諌めてくれよ」
「勇者様はそんなことを言わないと思いますよ」
「そんなこと言ってもね。変なこと言っていたらちゃんと訂正してくれ」
「変なこと?」
アマテルは首を傾げる。
その仕草が可愛くて思わず見惚れてしまう。
しばし、見惚れているとアマテルの後ろにいたポニィがジト目で見られているのに気が付いた。
何だろうかと疑問に思っていると、ポニィはそっとアマテルに耳打ちする。
耳打ちされたアマテルは身を竦ませる
「ゆ、勇者様……その、私が反対しないからといって、いやらしいことは言わないでくださいね……」
「えっ?!」
なんで変なことがいやらしいことになっているんだ。
ローゲンも溜息をついて呆れている。
誤解だ。
「変なことなんか考えていないからな!」
「ふーん」
ポニィは興味なさそうにテキトーに流す。
言い出しっぺなのに、なんて無責任なんだ。
「私、勇者様のこと信じていますから……」
目を逸らしながら言われてしまう。
本当に信じてくれているのだろうか。
「あー、うん。もう、いいや……」
逃げかもしれないが、自分もテキトーに流すことにした。
ひとまず、今後は発言に気を付けよう。
昨夜の地球での会話を思い出す。
「昨日の今日でもう前線基地を出るのか。まあ、何となく分かっていたから驚きはしないな」
「ルナはどう思う?」
「別にいいんじゃないか。正直、向こうのことなんてどうでもいいし」
報告として向こうの世界の話はするが、ルナが興味を示したのは最初だけな気がする。
興味がないことには「ふーん」とか「そうか」しか言わない。
それでも話はちゃんと聞いているし、相談に乗ってくれる。
困っていれば進んで助けてくれた。
関心があるんだか、ないんだかよく分からない奴だ。
「……頑張れとか言ってくれないのか」
応援とかしてくれないかなと思って聞いてみる。
「なんで?」
真顔で返されてしまった。
「……何でもない」
「そうか」
興味がないようなので、それ以上聞いてこなかった。
「なあ、強くなるにはどうしたらいい? 前線基地を出るのも勢いで思い付いたのだが、具体的に何をしたらいいか分からないんだ」
「馬鹿なのか、お前は」
相変わらずの暴言。
慣れたとは言い難いが、怒りは湧いてこなかった。
「強くなりたいんだ。今日みたいにならないために」
「……お前は強さが何なのか分かっているのか?」
「強さが何なのか?」
何だろうか。
単純に物理的な強さだろうか。
それとも魔法的な強さだろうか。
もしかしたら精神的なものか。
「……分からないのか」
「……」
「向こうで何をやったらいいか分からないのなら、ひとまず勇者らしく人助けでもしたらどうだ」
強さについては特に何も語らず、ルナはそうアドバイスしたのだった。
「人助けですか?」
前線基地を出てからの道中、今後の方針について昨夜にルナと話した内容を伝えてみる。
この周辺にある街や村でもアンデッドやモンスターに苦しめられている人が居るはずだ。
それを助けてみてはと提案する。
敵を相手にすれば剣の腕も磨けるし、人も救える。
まさに一石二鳥。
「それは良い考えだと思います。私もぜひ協力させてください」
やはりアマテルは反対しない。
その態度を見て、前の会話が思わず頭によぎるが振り払う。
また変なことがどうとか言われたら溜まったものではない。
「聞いた話だと、この先に大きな街があるそうだ」
前線基地を出ると提案した後に話を聞いて回って集めた情報だ。
「リッチーの居城が近いからか、この辺りではアンデッドの被害が多いそうだ」
「ならアンデッド退治だな。リッチー討伐にはアンデッドとの戦闘は避けられないものだし、いい修行になるだろう」
そうして前線基地を出て、近くの街を目指すのだった。
その後、訪れた街で思い掛けない再会を果たす。
ー3ー
「ねえねえ、一緒に依頼を受けない?」
そう提案するのはマイカだ。
以前に盗賊団エクリプスのボス、フランケンを倒す際に共闘した経緯がある。
街を訪れて、依頼を受けるために神殿に行くとマイカ達と再会した。
再会の喜びを分かち合い、依頼の話に移行してマイカから再び一緒に依頼を受けようと提案される。
「どんな依頼なんだ?」
「ふふーん、これだよ、これ」
そう言って突き出された羊皮紙には依頼内容が書かれていた。
「えーと何々、湖畔に現れたマーダースケルトンの討伐?」
マーダースケルトン?
聞いたことないスケルトンだな。
「このマーダースケルトンって何だ?」
「うん? さあ、知らなーい」
おい。
ローゲンに聞いてみるも、マーダースケルトンについては知らないようだ。
他の仲間達も同様に知らない模様。
「新種かな?」
「かもな。受付で聞いてみるか」
受付で確認をしてみると、マーダースケルトンは町の近くにある湖畔に出現するスケルトンのようだ。
高位アンデッドではなく、普通のアンデッド。
その割には依頼の報酬がいい。
訳ありなのだろうか。
詳細を尋ねてみるも、現地にて依頼人に確認してほしいとの事だった。
「合同で参加されましても報酬は変わりませんが、よろしいですか?」
「はい! よろしいですっ!」
マイカが元気良く返事する。
マーダースケルトンの事を聞きに来ただけなのだが、依頼を受けることになっている。
別に構わないのだけど……いやよくないか。
こっちは仲間と相談すらしていない。
仲間の顔を見てみると、皆苦笑いしている。
半ば諦めて流れに身を任せる気だ。
マイカと一緒にいるのならそうしていた方が丁度いいのかもしれない。
それに、たまにはこういう雰囲気も悪くないだろう。
前回一緒に旅した時もなんだかんだで楽しかったしな。
報酬は山分けになるが、人数が多ければ安全性が高まる。
「仕方ない……受けるか」
こうして、マイカ達と一緒にマーダースケルトンの討伐依頼を受ける事が決まった。
「半ば強制的に依頼を受けたのか」
「そうだ」
「ふーん」
いつもみたいに地球に召喚され、いつもみたいに報告をして、いつもみたいにルナは呆れ顔になる。
「言いたいことがあるのなら言ってくれ」
「相変わらず周りに流されているなと思っただけだ」
それを言われると否定出来ない。
「それで、どんな依頼なんだ?」
ルナに依頼の内容を説明する。
場所は依頼を受けた街の近くにある小さな町、さらにその外れにある山の麓に広がる湖畔。
そこにマーダースケルトンが現れるらしい。
そのマーダースケルトンはただのスケルトンでありながら、これまでに勇者候補や冒険者を含む多くの人々を殺してきたという。
とある冒険者一行が調査依頼を受けて湖畔を訪れたそうだ。
しかし、夜に冒険者達は襲撃を受けてしまう。
その時に運良く生き残った冒険者が証言を残した。
全身を覆い隠すように黒い布切れで隠していたが、その顔は髑髏、スケルトンだったという。
「それだけだと、知性を持ったアンデッドの可能性があるな」
ルナの言う通りだ。
黒い布切れで体を夜の闇に隠し、奇襲を仕掛ける。
それはつまり知性がある証拠に他ならない。
「ただ、正体自体は普通のスケルトンなんだけどな」
「高位アンデッドでなくても、知性があるアンデッドはいる。アンデッドも成長するからな。犠牲者が多いみたいだが、大丈夫なのか?」
「今回は人数が多いし、何とかなるだろ」
「楽観視している間に仲間が殺されても知らないぞ。普通のスケルトンとは考えない方がいい。十分に注意しろ」
身を案じてくれているようだ。
「もしかして、心配してくれているのか?」
「自惚れるなよ。戦力が減るのは好ましくないし、向こうで死なれたら迷惑だって話だ」
照れている様子もないし、本心のようだ。
一応戦力の一つとして数えられているようなので、それはそれで安心した。
「とりあえず、気を付けるよ」
ー4ー
街を出て数時間、近くの小さな町に到着した。
「もっと時間が掛かるかと思ったが、案外早く着いたな」
本当は移動にもう少し時間を掛けるつもりでいたが、マイカに急かされたので、いつもよりも早いペースで移動した。
「そうですね。結構早いペースでしたけど、足は大丈夫ですか?」
「相変わらず心配症だな。大丈夫だよ。テルの方は大丈夫?」
いつも気に掛けてくれるのは嬉しいが、こちらとしてはアマテルの方が心配だ。
「長い移動だとやはり足に響きますね。長い旅路に慣れたと思っていたのですが、まだまだですかね」
「今回はマイカのペースに合わせたからな。疲れたのはしょうがないよ。ひとまず今日は町で一晩休んで明日湖畔に向かおう」
宿で四人部屋を二部屋確保し、町で情報収集することにした。
今回は男女に分かれての情報収集だ。
ローゲンとレンダー、ダインを引き連れて、聞き込みに回った。
「あの湖畔周辺は昔は観光地の一つで――」
「晴れた日は山が綺麗に見えて――」
「湖は澄んでいて魚が――」
「湖畔ではキャンプもできて――」
「人気の観光地だったのに――」
「観光客が殺されて――」
「殺人事件――」
「犯人は見つからず――」
「キャンプに来た人が次々殺されて――」
「連続殺人事件って話題に――」
「凶器はナイフで――」
「たまたまアンデッドに殺されるのが目撃されて――」
「殺人事件じゃなくてアンデッドが――」
「一般人は立ち入り禁止に――」
「現れたアンデッドはスケルトンで――」
「スケルトン以外は現れていないとか――」
「スケルトンは単独で――」
「この前も冒険者が殺されて――」
「たかがスケルトンに殺されるなんて――」
「情けない」
「アンタがやるの? なんか――」
「頼りない」
「早くスケルトンの始末を――」
「サッサと討伐を――」
聞き込みの結果はこんな感じである。
色んな話が聞けたが重要なのは、現れたスケルトンがまだ討伐されていないということだ。
今も湖畔で現れるアンデッドはスケルトンのみ。
しかも複数が現れるのではなく、スケルトンが単独。
スケルトンが今もなお湖畔に居ついている。
ついでにそのスケルトンの武器はナイフらしい。
話をまとめるとこんな感じか。
その後、マイカやアマテル達と合流して、さらに情報が増えた。
場所は町の外れにある観光地で有名だった湖畔。
スケルトンが最初に現れたのは五年前。
アンデッドが今まで発生しなかった湖畔にスケルトンが突然現れた。
最初はこそこそと隠れるようにして人を襲っていたらしい。
多くの人々が襲われ、多くの命が失われる。
当時はまだスケルトンの姿は確認されておらず、人が殺したのではと囁かれていた。
やがて、スケルトンの目撃情報があがり、湖畔は立ち入り禁止になる。
立ち入り禁止になるまで、最初の被害から実に四年が経過していた。
その間、スケルトンは見つからぬように巧みに人々を殺して回ったのだ。
アンデッドは成長する。
弱いアンデッドも月日と共に知恵を身に付けて、武器を扱う。
そして、魔法を使えるようになる。
中には悪知恵も覚えて、罠に嵌めようとしてくるアンデッドもいると聞く。
アンデッドは長い年月を経て、厄介な存在へと変貌する。
湖畔が閉鎖されて一年が経過するも、未だにスケルトンは討伐されていない。
今回のスケルトンは五年を生き延びている。
討伐するのは一筋縄にはいかないだろう。
ー5ー
翌日。
かつて観光地として栄え、湖畔がキャンプ地としても利用されていた頃に管理人をしていたという人物に会いに行った。
驚いたことに管理人は町で暮らしてはおらず、今も湖畔の近くに建てられた管理人用に作られた小屋に住んでいるらしい。
町を出てすぐの森林を歩き、小屋を目指す。
遠くに見えるのは山の頂。
聞こえるのは木々のざわめきと鳥のさえずり。
アンデッドが現れる場所はどこか淀んだ空気が漂っているが、この森林は空気が澄んでいる印象を受けた。
今歩いてるのは人が歩けるように整備された道だ。
整備といっても、草を抜いて平坦にならしただけの道である。
この道は観光地と利用されていた頃の名残だろう。
今では所々に雑草が生えてきているのが見受けられた。
人の手が離れた証拠である。
「道があるおかげで楽だな。結構道幅が広いし、迷うこともないし」
「そだね。でも、あまり冒険って感じがしないのは残念だね」
「そこは安全と引き換えにってことで納得してくれ」
「それを言われたらしょうがないかなー」
集めた情報が確かなら、昼間はスケルトンに襲われることはない。
大した警戒もせずに歩く一行。
道は馬車がニ台並んでも余裕がある程の幅があるため、何か異常があればすぐに察知できるし大丈夫だろうと気楽に考える。
「あれ? なんか家があるね。もしかしたら、噂の管理人の家かな」
マイカの指し示す方角を見ても何も見えない。
整備された道が続いており、左右は木々の生い茂った景色。
「何も見えないけど……よく分かるな」
「すごいでしょー」
胸を張って、マイカは自慢げに言う。
ちなみにマイカ以外は自分と同様に何も見えていない。
なぜマイカだけに見えるのか、それはマイカが持つ勇者補正が関係している。
マイカの勇者補正をざっくりと説明すれば、空間把握。
あくまで空間把握であるのでマイカも実際に見えているわけではないのだ。
道なりに歩いていくと、低い石垣に囲まれた建物が見えてきた。
石垣の中の建物は丸太を組み上げて作られたロッジ。
趣きがあるロッジに不釣り合いな鉄の扉を叩く。
どんな人が出てくるのやら。
髭面に屈強な山男が出てきそうと勝手に妄想してみる。
「……誰だ?」
中から声が聞こえてきた。
「マーダースケルトンの依頼を受けた者です。詳しい話を聞きたくて管理人に会いに来ました」
「またか」
また、先日殺された冒険者のことを指しているのだろうか。
錠前が開く音がして、鉄の扉が開かれる。
「ようこそ、寂れた観光地に。来てくれて嬉しく思うよ」
「初めまして、こんにちわ。あなたが管理人ですか?」
「いかにも、と言いたいところだけど。生憎、湖畔は閉鎖されていてね、管理人は休業中なんだ。今は元管理人といったところかな」
元管理人を名乗る人物は中肉中背の三十代半ばの男性だった。
髭は綺麗に剃られ、屈強がいいとも言い難い。
予想していたよりも普通の見た目をしていた。
「ボクの名前はクラップ。立ち話もなんだし、ひとまず中にどうぞ」
ー6ー
ロッジの中は動物の毛皮で作られた絨毯やら、木を組み上げて作ったと思われるインテリアが多数置かれており、お洒落な雰囲気を醸し出していた。
「昔は人が大勢訪れたのに、最近は冒険者しか訪れなくて寂しい限りだよ」
そう言いつつクラップは席に着くように促した。
「椅子の数は……足りるか。お茶を用意するから少し待っていてくれ」
「あっ、手伝います」
「ありがとう。助かるよ」
手伝いを申し出たアマテルはクラップの後に続いて台所に入っていった。
「いいの? テルちゃん取られちゃったよ」
隣に座るマイカがニヤニヤと笑いながら顔を近付けてきた。
「手伝いに行っただけだろ」
「強がっちゃってー。ホントは心配なくせにー」
肘で突いてくるのが鬱陶しい。
「そんな心配しなくてだいじょーぶだよ。テルちゃん、ガードが堅いから」
どうやらからかっているようだ。
こちらの反応を見て面白がる気だろうが、そうはいかない。
特に気にしたふうを見せずにテキトーに返事する。
「……そうだな」
それに別に気にならないから平気だし、気が利くな程度にしか思っていないし。
「なーんだ。つまんない返事」
「何を期待していたんだよ」
「さあ?」
「さあって……」
「にしてもキミはあれだね。ゆー、ゆー……レン君何だっけ?」
マイカは反対側の隣に座るレンダーに尋ねる。
「ユーモアですか」
「そうそれ!」
なんで今ので分かるんだ。
さすがレンダー、マイカのことなら何でも分かるのだな。
マイカ検定があれば間違いなく一級を取れるだろう。
「キミにはユーモアが足りないの」
「はあ、そうですか……」
「それがダメだよ。もっと面白い返しをしなくっちゃ! そんなんじゃ、テルちゃんに嫌われるよ」
そうなの?
さすがにアマテルに嫌われるのはイヤだな。
とりあえずポニィに視線で確認してみると、首を横に振られた。
どうやらユーモアがなくても大丈夫のようだ。
「レンダーにはユーモアがあるのか?」
「もちろん。ユーモア王だね。まあ、レン君ならユーモアがなくても、カッコいいからなくてもいいんだけどね」
じゃあ、自分はカッコ悪いのですか。
マイカはレンダーに「ねっ。ねっ」と自らが言った台詞の同意を求めていた。
それに対してレンダーは苦笑いをするのだった。
巻き込んでしまって申し訳ない。
彼こそが一番の被害者である。
そんな彼にダインとニーナは顔を背けて肩を震わせていた。
ローゲンは溜息を吐き、ポニィからは冷たい視線が飛んでくる。
どうやら、レンダーを巻き込んで逃げたと軽蔑しているようだ。
さすがにそれは理不尽じゃないか?
「お茶の用意が出来ました」
その時、アマテルとクラップがお茶を持って台所から出てきた。
わざとらしく咳払いをして、今の話を終わらせた。
それぞれの前にお茶が置かれ、アマテルが隣に座る。
「ねえ、勇者様……」
アマテルが小声で話し掛けてきた。
「マイカさんの声って大きいですね」
その言葉で全てを察して、頭を抱えたくなった。
すぐ隣の台所にいるのだから全部聞こえているよな。
マイカの声が大きいとは言ってくれてはいるけど、他の人の声が聞こえないはずがない。
「……それよりも今は依頼の話だ」
無理矢理にでも話題を切り替えるのだった。
まず最初に町で聞いた話の確認をする。
「五年前にスケルトンが現れて、そのスケルトンがまだ討伐されていないのは本当なんですか?」
クラップは少し考えるような仕草をして口を開いた。
「……五年前から何人も殺されているのは本当だよ。ただ、それがスケルトンの仕業なのかは確証を得られていない。まあ、被害者全員がナイフでメッタ刺しにされた状況から察するにおおよそが同一犯だし、ナイフを武器にしているスケルトンで間違いないと思うよ」
地球と違って監視カメラや指紋の照合がないから確証を得られないのは仕方ない。
状況証拠を見れば同一犯、全部スケルトンの仕業と判断できる。
それに気になる言い方をしていた。
「おおよそが同一犯って、何か例外でもあったのか?」
「ああ、実は若い女性や少女が何人か行方不明なったんだよ。最初の頃はその行方不明者達が人を殺したのではって囁かれていた」
「その行方不明者達はどうなったんです?」
「見つかったよ、行方不明になった数日後に森林の中で。残念ながら生きてはいなかったけどね。全身をナイフで何度も切り刻まれた無残な死体だったよ」
「その言い方だと、実際に見たんですか、その死体を?」
「そりゃあ、ここら一帯はボクが管理していますから、最初に見つけることがありましたよ。一時期、ボクが殺したのではないかと疑われて困ったものでした」
そう言いながらクラップは苦笑する。
「あと、スケルトン以外の目撃情報はありますか?」
「ないね。しいて言えば、熊や猪が目撃されたことはあるけど、その都度依頼を出しているから被害は出ていない」
「スケルトンが討伐されたって話はやはり聞いてないですか?」
「聞かないね。それについ先日も冒険者が殺られたから、まだスケルトンは居るよ」
とすると、やはり最初のスケルトンが討伐されずに生き残っているのか。
「これは相当知恵を身に付けたスケルトンだな」
知恵を身に付けたアンデッドほど恐ろしいものはない。
人並みに知恵を働かせ、こちらの策を掻い潜り、それを逆手に取って仕掛けてくる事だってある。
今回の依頼は思っていたよりも面倒になりそうだ。
余談だが、人間のように人を殺して回る、その一連の出来事がきっかけで件のスケルトンは、マーダースケルトンと呼ばれるようになったとか。
「それにしても、今回は冒険者が大勢来てくれて心強いな」
感慨深げに呟くクラップ。
「すみません。大勢で押しかけてしまって。実はマイカ達とは普段は別々に旅をしているのです。今回は街で再会して、たまには一緒にどうかとなりまして」
「おお、そうなのかい? どおりで多いわけだ。じゃあ、昨日来た勇者候補と冒険者もアンタらの仲間なのか?」
「昨日?」
「違うのか? 昨日も依頼を受けてくれた冒険者が訪ねて来てくれてね。今は湖畔でキャンプしているはずだ」
ー7ー
昼食をロッジでご馳走になり、その後湖畔に向かう。
ロッジを後にしてしばらく横を歩くアマテルが話し掛けてきた。
「勇者様、荷物は重くないですか?」
「少し重いけど平気だよ、このくらい」
アマテルが心配してくれるのにはワケがある。
元管理人であるクラップのロッジを出る際に持たされたテントを背負っていた。
それを皆で分担して運んでいる。
せっかく来たんだ、キャンプ気分を味わって欲しい。
クラップにそう言われて無理やり貸し出された代物だ。
「そろそろ着くから、がんばってー」
励ましてくれるマイカは常人では見えざる道の先がまるで見えてるかのように言う。
「管理人さんが言ったとおり、先客がいるみたいだね」
本当に便利な能力だ。
やがて森林の出口が見えてくる。
さらに歩くと森林を出て、目の前に湖が広がっていた。
緑の絨毯の先にできた澄んだ湖。
湖の先には山がそびえ立ち、湖が鏡のように反射して水面にも山を映しだしていた。
「すごい……」
「これは、壮観だな……」
あまりの美しさに目を奪われていると、人が近付いてきた。
近付いてきたのは三人組の男女。
屈強の体を持つ男戦士。
眼鏡をかけた男魔法使い。
黒髪を伸ばして神官服を着た女神官。
「何者だ」
男戦士が両手剣を構えて牽制をする。
「自分達も勇者候補と冒険者です。あなた達と同じように依頼を受けて来たんです」
そう告げると3人組は顔を見合わせた。
見合わせたというより、男戦士と女神官が困ったように男魔法使いを見た感じだ。
男魔法使いは眼鏡をクイッと上げて呟いた。
「ダブルブッキングか……面倒な」
「どうする?」
警戒を続けたまま男戦士が問う。
「そうだな……ここはお互いを邪魔をしないでどうだろうか。幸いにして、ここは結構広い。こちらに首を突っ込んでこなければそれでいい。依頼の報酬は早い者勝ちで」
どうかな、と促してくる。
「こちらもそれで構わない」
依頼が他の冒険者と被るのはよくにあることだ。
こうなった場合、依頼を共闘して挑むのが望ましいが、それが出来ない時は極力干渉せず、依頼の報酬は早い者勝ちにするようにと神殿から推奨されている。
ただ、これは強制ではなく、あくまで推奨だ。
実際にどうするかは当事者同士が話し合って決める。
「決まりだな。一応言っておくが、こちらはもうテントを張っている、場所を移す気はないので悪しからず」
男魔法使いが指し示す先にテントが張ってあった。
見覚えのあるテント。
どうやら彼らもクラップにテントを押し付けられたようだ。
「そちらが先に着いたんだ。それくらいは分かっているよ」
「理解が早くて助かる」
「ああ、こちらは反対側に陣取るのでよろしく頼むよ」
「お互い、善き隣人であることを祈っているよ」
そう言うと男魔法使いはマントを翻して去っていく。
男戦士と女神官もそれに追随するように去っていった。
去っていく彼らの後ろ姿をしばらく見つめる。
「どうしましたか、勇者様」
少しボーっとしている間に仲間達が離れて置いてけぼりになっていた。
もうすでに仲間達はテントの設営に入っている。
「……んっ? ああ、いや、何でもない」
あの男魔法使いの顔をどこかで見たことがある気がした。
いや、見たどころか会ったことがあるはずだ。
どこか身近で何度も会った気がする。
だが、それがどこなのか、まったく思い出せない。
「そうですか? それでは私達も手伝いに行きましょう」
アマテルに腕を掴まれて、仲間の元に移動するように促される。
「……ああ、そうだな」
もう一度、去っていった彼らの後ろ姿を見るが、すぐに気を取り直して仲間の元に向かった。
苦労したが、陽が傾き始めた頃にテントを二つ設置することができた。
「これ、ギリギリ三人寝られるサイズだな」
体の細い女子なら三人入れそうだが、それでも狭いだろうな。
「でもさ、スケルトンが出るのは夜なんでしょ。見張りもあるし、交代で寝るから別にいいんじゃないの?」
マイカの指摘は正しい。
「それもそうだな。よくよく考えたら、早いうちから順番に寝ておけばよかったな」
スケルトンが現れるのは夜だ。
休めるうちに休んでおいた方がいい。
まあ、今更の話だ、仕方ない。
ローゲンとダインは湖で釣りをしている。
夕食の食材調達だ。
保存食もありロッジで山菜を少し貰ったが、人数が多いため、なるべく節約しておきたい。
何日滞在するか分からない状況だ。
一日もあれば近くの町に戻れるが念の為である。
陽が沈む前に集めておいた薪で火を起こす。
火は毎度のごとくポニィが魔法で火を点けてくれた。
そうこうしているとローゲンとダインが釣りから戻ってくる。
小ぶりの魚が五匹にザリガニっぽい生き物がニ匹。
食べられるのかと疑問に思ったが、誰も何も言わないので大丈夫だろう。
マイカが器用に捌いて、内臓を取り出し、血抜き等の下処理を施す。
慣れた手つきだ。
料理ができるタイプに見えなかったので少し意外だった。
あとで聞いた話だが、マイカはこの世界に来た当初は料理が出来なかったらしいが、レンダーに教わって会得したとの事。
レンダーは料理もできるとは、ホント何でもできる男だな。
マイカがユーモア王と言っていたのも、あながち冗談ではないのかもしれない。
クラップに借りた鍋に水を淹れて、焚き火の上に吊るす。
沸騰してきたら、食材を次々と入れていく。
マイカが捌いた魚とザリガニもどき、アマテルが刻んだ山菜。
塩やら香辛料で味付けをすると、美味しそうな香りが漂い出す。
さあ、夕餉の時間だ。
ー8ー
美味しいのもあってか、それとも人数が多いのもあってか、その両方かもしれないが鍋の中身はあっという間に空になってしまった。
「美味しかったな」
「あー食った食った」
「もっと食べたくなるね」
口々に感想を述べる。
「喜んでもらえて良かったです」
「そだねー」
アマテルの言葉にマイカがうんうんと頷く。
陽が完全に落ちたし、そろそろ本番だ。
「さて、それじゃあ交代で休もうか」
「あーそっか、依頼があったね。忘れてた」
「忘れないでくださいね、マイカ」
レンダーに注意されて「ごめんごめん」とマイカが謝る。
「テントは二つあるし、二人ずつ休ませるか」
その意見に異存はないようで皆頷く。
本当なら、昼間のうちに休んでおいて全員で朝まで起きていたいけどしょうがない。
「慣れないことをして疲れが出ているし、交代で休んでおいた方が賢明だろうね」
レンダーの言葉に首肯する。
「じゃあ、誰から休ませるか」
そう問うとアマテルから意見が出た。
「まずは勇者様からでいいのでは?」
予め話し合っていないにも関わらず、アマテルがそう提案してくれた。
そろそろ地球に召喚される時間なので気を遣ってくれたのだろう。
だけど、それだと休む時間がないのだよな。
かと言ってマイカ達に説明するのも難しい。
何より地球出身のマイカに説明すると面倒なことになりかねない。
向こうでゆっくり休めるようにルナに頼んでみるか。
「……そうだな。じゃあ、お言葉に甘えようかな」
もう一人はニーナが休むことが決まり、テントに入ろうとした時にそれは起こった。
「キャアアアアアァァァァッ!!」
突如、湖畔に響き渡った女性の悲鳴。
「なんだっ?!」
離れた場所から悲鳴が聞こえてきた。
悲鳴がした方角を考えると、昼間に出会った冒険者達がテントを張っていた方だ。
各々が装備を確認して悲鳴が聞こえた場所に向かう。
ポニィが魔法で火の玉を灯し、湖の縁に沿って移動する。
もちろん全員揃ってだ。
「誰か来るね」
マイカが近付いてくる者の気配を察知し警戒を促す。
だが、今回はマイカが言うまでもなく、誰かが近付いてくるのが分かった。
理由は簡単、光源だ。
ゆらゆらと燃える火の玉が近付いてくるのが目視で確認できた。
行進を止めて近付いてくる者を待つ。
夜の暗がりより現れたのは三人。
昼間に会った男戦士と男魔法使い女神官。
こちらの姿を確認するや否や敵意剥き出しで武器を構え始めた。
「やってくれたな、お前ら……!」
そう言って眼鏡をかけた男は杖を突き出してきた。
なぜ、敵意を向けられているのだろうか。
「よく分からないのだが、向こうで何かあったのか?」
「とぼけるな! さっき、そこの勇者候補の女が俺らの仲間を殺しただろうが」
「えっ?」
マイカが人を殺した?
何を言っているんだ?
いきなり名指しされたマイカは戸惑う。
危険を察知したレンダーはマイカを庇うようにして前に出る。
「言っている意味がよく分からない。マイカはずっと一緒に居たし、そちらに手出しはしていないどころか、近付いてすらいない」
「嘘をつくな! そいつの姿を俺達はちゃんと見たぞ」
「だからマイカはずっと一緒に居たって。マイカ、お前は向こうのテントに近付いていないだろ」
「うん、近づいてないよ……」
「この……まだ嘘をつくのか!」
もはや、臨戦態勢から戦いに移行しようとしていた。
「待ってくれ! 一体何があったのか教えてくれ。本当に知らないんだ」
こちらの態度に男魔法使いは違和感を覚えたらしく、一度口を噤む。
「……本当に何も知らないのか?」
「知らない」
「……分かった。とりあえず何があったのか話してやる。ただ武器は構えさせてもらう。まだ信用できていない」
男戦士と女神官はそれぞれ武器を構えて警戒する。
「それで構わない。皆は下がっていてくれ」
剣を鞘に納めたまま、敵意がないのをアピールして前に出る。
それを確認して男魔法使いは事の経緯を話し始めた。
話を聞いてみると、三人組にはもう一人仲間がいたようだ。
それは地球からやって来た勇者候補の少女。
なんでも彼女はやる気がなく、リッチー討伐の旅もイヤイヤでやっていたらしい。
それでも彼女が生活していくにはお金が必要なので仕方なく旅に出ている。
少女のやる気のなさを考慮して、リッチー討伐は他の人に任せて、自分らはテキトーに依頼をこなしていこうということになった。
今回の依頼を受けたのも高位アンデッドが出ないからという理由らしい。
やる気のない彼女は戦いも何もかも仲間に任せて、テントに籠もっていたのだが。
その彼女が先程殺された。
さっき聞いた悲鳴も彼女のものだ。
近くに居た男魔法使い達は悲鳴を聞くのと同時に、すぐさまテントの中を確認すると血塗れで倒れる勇者候補の少女と返り血を浴びたマイカが立っていたという。
マイカはテントを切り裂いて、そこから逃げ出した。
男魔法使い達はすぐさま追い掛けたが、マイカの姿を見失ったそうだ。
その時、灯りが近付いてくるのが見えたのでこちらに来たというわけだ。
「本当にマイカだったのか?」
「間違いない。他の二人も見ている」
「あたしやってないよ」
マイカは弁明するも、三人に睨まれて押し黙る。
「件のマーダースケルトンではないのか?」
「違う。暗がりではあったが、あれは明らかに人だった。氷で作られた剣で殺したんだ」
確かにマイカは氷の三日月刀を作れるが、はたして本当にマイカなのだろうか。
マイカは自分らとずっと一緒に居たのは間違いないので、殺したのがマイカであるはずがない。
考え込んでいると、背後より声を掛けられる。
「勇者様、お取り込み中すみません。まず先にやるべき事があるのではないですか?」
女子高生くらいの年頃をした少女が無惨な姿で横たわっていた。
喉元をザックリと裂かれている。
眼は大きく見開かれ、口はあんぐりといった形に開いていた。
そんな彼女の遺体をアマテルと彼女の仲間である女神官が優しく手直しをする。
遺体を供養するのだ。
放置していればアンデッドになるという理由もあるが、惨たらしい姿のまま放置しておけないという気持ちもあった。
綺麗に整えられた遺体に向けて、アマテルと女神官は祈りを捧げる。
誰もが望んで死ぬわけではない。
彼女も不運が重なって死んでしまったのだ。
祈りが終わると遺体は大きめの布に包まれ、ひとまず安置される。
あとで町に運び、正式に埋葬する手筈だ。
「さっきはすまなかった。感情的になり過ぎていた」
供養している間に落ち着きを取り戻した男魔法使いが頭を下げてきた。
「仲間が殺されたんだ。感情的になるのも無理はない」
「……正直言うと、あいつが嫌いだった。いつも文句ばっか言って、何もしない。なんでも人にやらせて迷惑ばっか掛けて……。生意気な奴だ。だけど、それなのに……なんで死んだんだ! いくら嫌な奴だからといって死んでいい理由になんかならない……!」
男魔法使いは声を震わせる。
「……マイカは殺してはいない。それは断言できる。おそらくだが、件のマーダースケルトン。そいつが何か関係しているかもしれない」
何も根拠はないが、そう言っておく。
このままマイカが疑われ続けるのは気分が悪いからでもある。
「確かにマーダースケルトンが怪しいな。何かしらの魔法を使っている可能性も否定できない」
思いつきで言った台詞に男魔法使いは同意してくれた。
「変身魔法を使えるとは思えないが、それに類似する何かがあるのかもしれない。擬態や幻惑、偽装……考えられる手段は多い。もし仮に、知り合いに化けられるのなら、今まで被害者が多いのも頷ける」
「それなら手練の冒険者が不意を取られて殺られるのも納得がいくな。それに現れるのは夜に限られている。視界が悪いから偽装を見破るのは難しい……」
マーダースケルトンが関係しているのは、案外的を射ていたのかもしれない。
ー9ー
「マーダースケルトンか。その依頼、まだ終わっていなかったのか」
「今日ようやく湖畔に着いたんだ。さあ、敵に備えるぞって時に敵に先手を取られた」
「敵ね……」
ルナは何か考え込む。
今日の出来事のみならず、マーダースケルトンについて知っていることを全部話してから、ルナは何やら考え込んでいる。
「何か気になることでもあるのか?」
考え込むルナに対して疑問に思い、尋ねてみると別の所から声が上がる。
「はいはい、ルナ様。わたし、分かっちゃいました」
奈々がしゃしゃり出てきた。
「奈々も気付いたか。やはり私の気のせいではないか」
ルナも奈々と同じように何かに気付いていたようだ。
「あれれ? もしかして君は何も気づいてないのー?」
奈々はこちらを小馬鹿にするように笑う。
ものすごく腹が立つ態度だ。
見ていて苛つくが、自分が何も気付いていないのは事実である。
「……で、何に気付いたのか教えてくれないか」
別に隠すことでもないと判断したルナは静かに語り出した。
「マーダースケルトン。もとい、ただのスケルトンであるが、そのアンデッドは本当に実在するのか?」
「どういう意味だ? 実在するからこそ、何人も殺されて討伐依頼が出ているのだろ」
「そうではない。殺した者は実在する。だから、討伐依頼が出たんだ」
ルナが何を言いたいのか分からない。
お互いが同じことを言っているように聞こえる。
「お前の話を聞いて、いくつかおかしな点があった」
「おかしな点?」
「まず一つがアンデッドが現れないはずの場所に現れたスケルトン。低位のアンデッドは死体がなくても自動的に現れることがあるが、何の理由もなしに今まで現れなかった場所にいきなり現れるなんてあり得ない」
「アンデッドって自動的に湧いてくるものなのか?」
「魔力があれば湧いてくる。アンデッドが湧いてこない場所というのは負のエネルギーや魔力が薄かったり、流れがある場所だ」
大気には魔力が漂っている。
魔力が薄いとは大気の魔力濃度が薄いということだ。
「魔力が薄いはなんとなく分かるけど、流れというのは風が強いとかとは違うのか?」
「風も全く影響がないわけではないが、この場合は人の流れだな。人の行き来が多い場所だと、魔力は流されてアンデッドは現れない。ついでに言えば、魔力のみで生まれたアンデッドは大半がスケルトンで、その正体は魔力の集まりでしかない。その中枢にあるのが魔力の塊である魔臓石。だからこそ魔臓石を破壊されたアンデッドは消滅する」
さすがネクロマンサー。
アンデッドに関しての知識は豊富にあるようだ。
「話は分かったけど、アンデッドが現れるはずがない湖畔にアンデッドが現れたのは何か事情があるということか」
「私も最初そう考えたが、それは違う。低位のアンデッドは所詮低位のアンデッドでしかない。知恵があるとは言い難いし、せいぜい道具を振り回す程度にしか頭がない。それに魔法は扱えない」
「でも、現にスケルトンは現れている。何かがあったのは間違いないだろ。例えば……そう、別の場所で現れたスケルトンが流れ着いたとか」
「高位のアンデッドならまだしも、低位のアンデッドならばあり得ない。湧いて出たアンデッドは自身が生まれた魔力の域からは出ることが出来ない」
「じゃあ、なんで湖畔にスケルトンが居るんだ?」
疑問を投げかけると、今度は奈々が応じてくれた。
「間違っているからだよ」
否定を口にする。
何について否定をしているのかは、よく分からないが。
「何が間違っていると言うんだ?」
「前提から間違ってるね」
前提から?
「よくよく考えてみろ。本当にスケルトンは居るのか?」
「居る……はず」
「いいや。スケルトンはいない」
「うん、いないね」
スケルトンがいない?
それはおかしいだろ。
それでは一連の出来事は何が原因だと言うのだ。
「スケルトンがいないのなら、何が居るんだ?」
ルナに問う。
それにルナはなんら躊躇わずに答えを口にする。
「人を殺すのはアンデッドだけじゃない。人だって人を殺す。誰かがスケルトンのフリをして人を殺している。つまり、マーダースケルトンの正体は生きた人間だ」
「人間が人間を殺した……」
それって殺人だよな……。
「待ってくれ。スケルトンを目撃した人がいる。それはどう説明するんだ」
実際、最初に人が殺された頃は人による殺人が疑われていたが、後にスケルトンが目撃されたから人による殺人が否定された。
「そんなのマントを羽織って全身を隠し、髑髏の仮面でも付ければ事足りる。夜の闇に紛れれば多少違和感があっても誤魔化せるしな」
物的証拠ではなく状況証拠ではあるが、ルナはそう断言した。
「ルナ様、この犯人は男性だとわたしは思います」
「なぜ?」
ルナは分かっているが、敢えて聞き返す。
「若い女性や少女が行方不明になって、数日後に死体になって見つかった。これだけで十分です。犯人は碌でもない野郎でまちがいないです」
「たしか、ナイフで全身を切り刻まれていたのだったな。アンデッドは命を奪おうとはしてきても、無闇やたらとナイフで切り刻もうとはしない」
被害者が犯人に生きたままか捕まったのか、死んでから死体を運ばれたのかは考えたくもないし、捕まった後にどのような仕打ちを受けたのかも想像したくない。
「アンデッドは殺すことはあっても連れ去ったりはしないな」
「ついでに教えておくが、アンデッドは生物の血肉を喰らい魔力量を増やし、知恵は戦いの中で身に付ける。これがお前の言うアンデッドの成長というやつだ」
「その生物の中に死体は含まれるのか?」
「死体は入らない。だからアンデッドは死体に目もくれない。生きた人間を襲っても、死体を無闇に傷つけはしない」
では、やはりマーダースケルトンの正体は、人間。
「一体誰がこんな事を……」
ふと、そんな言葉が口に出る。
しかし、誰が犯人か、すでに予想がついていた。
「奈々の犯人が男性だという話を踏まえると、おのずと答えは見えてくるのではないか?」
ー10ー
一連のマーダースケルトンの件について確認しておく。
町の外れにある観光地で有名だった湖畔。
キャンプ地としても使われていた湖畔で、ある日人が殺された。
殺されたのはキャンプに訪れていた客。
夜にテントで就寝していたところをナイフで襲われた。
その後も何人もの人が殺され、巷では連続殺人事件だと囁かれる。
殺される他にも行方不明者も出ていた。
若い女性や少女が行方不明になり、数日後に湖畔近くの森林に死体として発見され、その死体はナイフで全身を切り刻まれた酷いものだったらしい。
後に犯人を見たという目撃者が現れて、殺したのがスケルトンだと判明した。
目撃者は一人ではなく、何人もの人がスケルトンを見たということで確証に至ったそうだ。
ナイフを武器に夜な夜な人を殺してまわるスケルトンをいつからかマーダースケルトンと呼ばれるようになった。
このマーダースケルトンの登場で湖畔は閉鎖される。
湖畔がある一帯を管理しているクラップは、神殿を通してスケルトンの討伐依頼を出しているが結果は芳しくない。
幾人の冒険者が依頼を受けて派遣されるも次々とスケルトンに殺されていった。
ここまでが前提である。
今回、自分達も依頼を受けてやって来たのだが、同じように依頼を引き受けた冒険者と出会う。
その冒険者の仲間である勇者候補の少女が今までの被害者同様に殺された。
この一連の話を聞いたルナは以下のように推理した。
最初からスケルトンは現れていない。
誰かがスケルトンのフリをして人を殺し回っているだけだと。
ルナの話す内容は全て状況証拠でしかないが筋は通っていた。
そのため、ルナの推理は真実ではないかと考えている。
ついでに奈々が言うには犯人は男性だという。
以上のことを踏まえると、犯人に目星がつく。
「スケルトンを見た?」
地球から戻るとアマテルから自分がいない間に起きた出来事を聞く。
「はい。森の中に逃げるのを私も見ましたので間違いありません」
なんでも、スケルトンが森の中に潜んでいるのをアマテルやローゲン、それと自分達と同じように依頼を受けていた男魔法使いが見たそうだ。
「本当に見たのです」
「別にテルを疑っているわけじゃないよ」
スケルトンの存在について懐疑的になっていた自分は無意識に怪訝な顔をしていたようで、アマテルは信用されていないと勘違いしたようだ。
ただ、こうも堂々と言われるとスケルトンの正体が人間であるというのも疑わしくなってくる。
「これから分かれて捜索に出る。準備をしろ」
ローゲンに言われて準備する。
スケルトンの正体が人間であるかもしれないということは、ひとまず黙っておこう。
状況証拠だけの推理である。
実際にどうなのかは自分の目で確かめるしかない。
装備を確認し、不具合がないのを確かめる。
準備にはさほど時間は要さずに整った。
それからマイカ達と合流する。
「チーム分けはどうするんだ?」
「とりあえず、三組に分かれようと思ってる」
レンダーはそう言うが、全員で八人なので三、三、ニになってしまう。
「キミとあたしで二人組になるからよろしくね」
「……別にいいけど、なんで?」
マイカではなく、レンダーに聞いてみる。
「戦力的にその方がいいと判断したんだ。それに二人は風の加護が扱えるから、いざという時は動きやすいと思ってね」
「なるほど……」
一応は理由があるようだ。
「デートだと思わないでね」
「安心しろ。デートとは思っていないから」
まさかと思うが、マイカの子守りを押し付けられたわけではないよな。
疑惑の念が湧いてくるがすぐさま振り払う。
今はそれどころじゃない。
マーダースケルトンの捜索が最優先だ。
それだけの事に集中しよう。
ちなみに他の二組は、アマテルとローゲンにニーナ。
レンダーとダイン、ポニィとなっている。
「彼らはもう森の中に入っています。私達も続きましょう」
彼らというのは男魔法使い達のことだ。
動きが早いのは殺された仲間のためだろうか。
仇を討つ。
それが残された彼らにできる唯一のことであろう。
彼らの後を追うように、三組に分かれて森林の中に侵入する。
ー11ー
「ねえねえ、聞きたいことがあるのだけどいい?」
二人きりになるなり、マイカが尋ねてきた。
「断ってもどうせ聞くのだろ」
「うん、聞いちゃうね。聞くだけならあたしの勝手だし」
そう言うだろうと思った。
「でも、答えてくれるかどうかはキミ次第だからね。だから聞いてるんだよ」
「なら、答えは決まっている。内容次第だ」
「そうかー。そうだよねー。んじゃ、とりあえず聞いちゃうけど、キミってテルちゃんのことが好きなの?」
「……」
「まあ、好きなのは見てればわかるのだけど。どれくらい好きなの? ねえ、どれくらい?」
「…………ふざけてないでマーダースケルトンを探すぞ。多くの冒険者を殺してきたアンデッドだ。気を抜いていたら危険だぞ」
「あー、答えをはぐらかすー。あやしいなー。これはあやしいなー」
ただ単に答えづらい質問なだけだ。
それにマーダースケルトンが脅威であるのは間違っていない。
「別にはぐらかしていない。マーダースケルトンを警戒しているだけだ」
「そんな心配しなくてだいじょーぶだよ。あたしの勇者補正の力をわすれたの?」
「それでも警戒を怠るのは危険だ。何が起きても対処できるようにしておいた方がいい」
「うんうん、キミが言っていることは正しいと思うよ」
だったら、真面目にやって欲しいのだけど。
「だけどさ、あたし達ならおそわれる前に見つけられると思わない?」
「自信を持つのはいいけど、過剰なのは考えものだぞ」
「あたし達は悪者にやられに来たわけじゃない。悪者を倒しに来たんだよ。追いかけるのはあたし達。それとさ、なんでレン君があたしとのペアにキミを選んだかわかる?」
マイカとペアを組ませたレンダーの意図?
深く考えていなかったがちゃんとした理由があるのだろうか。
「風の加護があるから、いざというに動きやすいからと言っていたな」
「そうなの?」
君もその場に居たから聞いてたはずだよね。
「まあ、あたしはなにも知らないけどね」
知らないのかい。
毎度のことながらマイカの相手は疲れる。
「多分だけどさ、あたし達二人なら見つけられると信じて決めたんだと思うよ」
特に根拠はないようだが、マイカはそう言い切った。
だけど、よくよく考えてみればそうなのかもしれない。
マイカの勇者補正はどういったものなのかは詳しくは知らないが広範囲を見渡せるはずだ。
なので、マーダースケルトンの捜索はマイカが一番向いていると言える。
いかに広範囲を見渡せても限界がある。
そこで分散して、マイカが見えない部分をカバーする。
自分とペアを組ませたのは、お互いに風の加護があるからだと話していた。
いざという時に動きやすいからと。
これはつまり、マーダースケルトンを捕捉した時に迅速に動けるということだ。
もし苦戦して撤退するときも同じで風の加護を受けていれば逃げやすい。
他のグループに何かあってもマイカが捉えて、対処しやすいという利点もある。
この全てにおいて、マイカをサポートできるのは仲間の中で風の加護がある自分だけ。
だからマイカとペアを組ませられたのか。
なるほど、レンダーはこんなにも深く考えていたのだな。
問題があるとすれば、作戦の殆どがマイカ頼りで自分はそれに巻き込まれたということ。
だけど、マイカはともかくとして、自分の場合は我慢をすればそれで済む話。
ならば我慢するしかない。
仲間のためにも、ここはひと肌脱ぐか。
「あっ」
突然マイカが声を上げる。
反応を見る限り、あまり好ましい展開じゃないと予想できた。
「どうした?」
「……たおれてる」
「倒れてる? 誰が?」
「……あの三人」
それだけで分かった、誰が倒れているかを。
昼間に始めて会った男魔法使いと女神官に男戦士。
彼らが倒れていると言う。
「場所は? 急いで向かうぞ」
嫌な予感が頭をよぎる。
だけど急げばなんとかなるかもしれない。
僅かな希望を胸に三人の元を目指した。
喉元をザックリと斬られた死体が三つ。
つい先刻まで仲間の死に憤っていた彼らの姿はもうない。
仲間であった勇者候補の少女と同じ殺され方をしている。
犯人は同一犯で間違いない。
「……周囲に誰かいないか?」
「……」
返事がない。
マイカは死体を見たまま硬直していた。
「マイカ?」
「あっ、うん。ごめん……」
「いいよ、別に」
彼らの死体を見て、何か思うところがあるのだろう。
「それでなんだっけ?」
「周囲に誰かいないか、確認……するまでもなかったか」
少し離れた木陰にマントの端が見え隠れしている。
マイカもそれに気が付いていた。
木陰に隠れている者もこちらに見つかったのに気が付いたのだろう。
顔を覗かせてこちらの様子を伺っている。
フード付きのマントで全身を隠しているが、唯一見える顔は紛れもなく髑髏であった。
スケルトン……に見える。
実際はどうなのだろうか。
兎にも角にも、あれが件のマーダースケルトンで間違いないようだ。
マーダースケルトンは再び木陰に隠れたのかと思いきや、すぐさまその場から走り去っていく。
「逃げちゃう!」
「追い掛けるぞ!」
今はマイカと二人で他の仲間はいないが、敵は一人。
いかに相手が強くても油断しなければ遅れは取るまい。
マントで全身を隠したマーダースケルトンをマイカと共に追いかける。
マーダースケルトンは土地勘に優れているのか、淀みなく森の中を駆けていく。
だが、自分とマイカは風の加護を使える。
俊敏性が増した二人の足から逃げられるはずがない。
徐々にマーダースケルトンとの差が縮まってゆく。
「このまま仕掛ける。準備しておけ」
「うん」
マイカはいつになく真剣な面持ちでいる。
正義感の強い彼女のことだから、多くの人を殺したマーダースケルトンを許せないと思っているのかもしれない。
鞘から剣を抜き放ち、さらに加速させようとしたら異変に気付く。
いつの間にかマーダースケルトンが足を止めていたのだ。
自分らもそれに倣って足を止まる。
敵は微動だにしない。
何か仕掛けてくるのだろうか。
「前は任せろ。マイカは後ろから援護を任せる」
マイカに指示を出して、慎重に歩を進める。
「あれ?」
何か様子がおかしい。
次の瞬間、マーダースケルトンの首が転がり落ちた。
夜間で尚且つマントで隠れているため見えにくいが、頭部が落ちたのは間違いない。
首の無い胴体から血が噴き出している。
骨だけのスケルトンならば血は吹き出ないはず。
ならば、ルナが推理した通り、マーダースケルトンの正体は人間になる。
落ちた頭部を確認して息を呑む。
「人……」
転がっているのは人間の頭部。
スケルトンに見えたのは髑髏の仮面を着けていたからだ。
仮面は地面に落ちた時に外れており、見えた顔には見覚えがあった。
クラップ。
湖畔一帯の管理人をしていた男性。
マーダースケルトンの正体はクラップだったのだ。
「それって……」
背後にいるマイカが恐る恐るといった感じで声を掛けてきた。
「クラップだ。スケルトンのフリをするために髑髏の仮面を付けて、人を殺し回っていたようだ」
「……」
マーダースケルトンの正体にマイカは驚愕し、言葉を失っている。
「ひとまず、皆と合流しよう」
歩み出そうとした時、マイカの声が掛かる。
「キミは大して驚いていないね」
マーダースケルトンの正体に驚いていないのを訝しんでいるようだ。
「……正直言うと、予想はしていた。だけど、確証はなかったから言わなかった」
ルナの推理を聞いてクラップが犯人だと予想したが、どうやら当たっていたようだ。
マーダースケルトンの正体がクラップで、人々を殺し回っていた。
そう結論を出す。
…………。
…………。
…………。
…………。
…………。
……………………あれ?
だけど、これっておかしくないか。
「なんで……死んでいるんだ?」
そうだ、マーダースケルトンの正体が人間でクラップだったまではいい。
では、クラップは誰に殺された。
それに気になる点がある。
湖畔で殺された勇者候補の少女。
彼女を殺したのが、マイカにそっくりだったというのが妙に気になる。
姿を変える魔法や偽装に擬態の魔法、魔力が宿った道具を使うという可能性もあるにはあるが、それなら初めからスケルトンの恰好をしないでスケルトンの姿になればいい。
姿を変えられるのなら、スケルトンのフリをする必要さえもない。
何かが引っ掛かる。
転がる頭部を見下ろす。
これまでの被害者をクラップが殺したというのなら、誰がクラップを殺した。
さっきまで生きていたのは間違いない。
ならば、この近くにクラップを殺した者が潜んでいるはずだ。
「あぶない!」
突如、マイカの叫び声が響いた。
森の暗がりの彼方より飛んできた氷の三日月刀。
それが自分に向かってきたのだ。
だが、背後より飛んできた氷の三日月刀によって弾かれる。
防いでくれたのはマイカだ。
しかし、飛んできた氷の三日月刀もマイカと同じモノだった。
「誰だか知らないが、お前がコイツを殺したのか」
恐らくだが、クラップを殺したのは今攻撃をしてきた者に違いない。
正体は誰だ。
草を踏む音が聞こえてくる。
暗がりより誰かが近付いて来ているのが分かった。
剣を構えて、来訪者を待つ。
近付いて来るのが人であろうとアンデッドであろうと攻撃してきたのだ。
敵である。
そしてついに、敵が姿を現した。
「マイカ……」
「呼んだ?」
小さな呟きだったのにマイカの耳に届いたようだ。
しかし、別にマイカを呼んだわけではない。
現れた敵の姿がマイカだったのだ。
ー12ー
「どうしたの? ボーっとしちゃって」
現れた敵の姿に驚いて呆然としているとマイカが声を掛けてくるも、それを無視して敵の姿を再度確認する。
服装も体格もマイカと瓜二つだ。
何度確認してもそれは変わることはない。
マイカにそっくりではあるが、一つだけ違うところがあった。
アンデッドなのだ。
マイカに似たアンデッド。
「ねえ。あのアンデッド、どこかで見たことない?」
お前だよ。
お前に似ているんだよ。
「お前は何者なんだ?」
問い掛ける。
しかし、アンデッドは答えない。
答える代わりに氷の三日月刀を出現させる。
「見てよ、あれ。あたしと同じ魔法を使ってるよ」
姿だけでなく、マイカと同じ魔法を行使する。
そこで、昔聞いた言葉を思い出した。
『キミは、ドッペルゲンガーを知ってるかい?』
「まさか……ドッペルゲンガーなのか?」
マイカと瓜二つの姿に同じ力を持っている。
アンデッドであることを除けば、マイカと何もかもが同じ。
あのアンデッドこそが、噂に聞いたドッペルゲンガーではないだろうか。
「……敵はアンデッドだ。倒すぞ」
マイカに似ていようがアンデッドだ。
ここで討伐しよう。
風が吹き、氷の三日月刀が宙を舞い始める。
マイカの方ではなく、ドッペルゲンガーの方の氷の三日月刀が舞う。
氷の三日月刀を作り出し、風の魔法で操る。
戦い方もマイカと同じようだ。
襲い来る氷の三日月刀。
それを剣で弾いていく。
弾かれ、砕けて、散る。
氷の破片が月明かりに照らされて、キラキラと光を撒き散らす。
美しい光景を眺める余裕はなく、次々と氷の三日月刀が飛んでくる。
風という川を流れて森の中を駆け巡る剣の群れ。
貫くべく真っ直ぐに、切り刻むべく回転し、意表を突くべく弧を描き、奇襲を仕掛けるべく死角より氷の三日月刀が強襲してくる。
全方位からの攻撃。
凌ぎきれない。
しかし、今は頼れる仲間がいた。
木の陰より現れた氷の三日月刀が、別の氷の三日月刀によって撃ち落とされていく。
今のは死角から攻撃。
まったく気が付かなかった。
「助かったよ、マイカ」
「ふふんっ、今のであたしに惚れるなよ」
「それはない」
「えーっ、なんで!? レン君ならあたしのこと褒めて、見直してくれるのにぃっ!」
知らねえよ。
というか、惚気か、惚気なのか。
……ちょっと羨ましい。
「まあいいや。それよりも攻めないの?」
「向こうの剣が邪魔で攻めきれないんだよ!」
「だいじょーぶだよ。さっきキミが言ってたでしょ。守りはあたし、攻めはキミって。キミは安心して攻撃すればいいよ」
「……任せてもいいのか?」
「もちろんだよ。敵の強さはあたしと同じくらいだし、防ぐくらいならどおってことないよ」
聞いた話が本当ならドッペルゲンガーの強さはマイカと同等のはず。
しかし、強さは同等でも人とアンデッドには決定的な違いがある。
それは体力と魔力だ。
人は有限。
アンデッドは無限。
人とアンデッド、同等の力を持つ者同士が戦ったらどうなるかは明白。
アンデッドが勝つ。
だから、自分のドッペルゲンガーに出会った者は死ぬと言われている。
だが、今は二人だ。
人数差で圧倒的に優位に立っている。
負けるわけがない。
「一気に攻める。遅れるなよ」
「まかせて!」
襲い来る氷の三日月刀を弾き、前進を開始する。
四方八方からの攻撃。
その殆どをマイカが防いでくれる。
自分は目の前のことだけに集中する。
砕けた氷が地面に積もっていく。
積もった氷を踏み砕きながら、足を進める。
前から来る氷の三日月刀を薙ぎ払い、突き進む。
行く手を阻む氷の三日月刀はどれも厄介だ。
風に乗った氷の三日月刀は恐ろしい威力を発揮する。
質量持った鋭利な刃物が飛んでくるのだ、厄介極まりない。
これ程の威力があるのだ、スケルトンマーダーことクラップの首を両断できたのも頷ける。
払った氷の三日月刀が砕け散り、その破片が体に当たって傷がつく。
皮膚の表面をかすっただけだ、大したことない。
その時、耳元で氷が砕け散った。
「うおおいっ!」
びっくりした。
顔のすぐ脇で氷の三日月刀同士がぶつかったのだ。
鼓膜が破れるかと思った。
「ごめーん! だいじょーぶ?」
後ろからマイカの声が掛かるも、のん気な口調のわりに切羽詰まっている感じがする。
マイカの状況を確認したくても、襲い来る氷の三日月刀から目を離すわけにはいかない。
「こっちは気にしなくていいから! 行って!」
マイカの声に混じって氷と氷がぶつかり合って砕ける音も聞こえてきた。
視認することが出来ないので詳しい状況は分からないが、聞こえてくる音から察するに、ドッペルゲンガーはマイカにも攻撃を仕掛けている。
マイカは自身を狙う攻撃を防ぎつつ、こちらを狙う攻撃を防いでくれているのだ。
これだけでも、マイカがスゴイというのが分かる。
さらに察知しにくい死角からの攻撃を防いでくれているが、後方からなら攻撃が見えやすいのだろうかと思ったが違う。
マイカの勇者補正のおかげだ。
空間把握に特化していると思われる勇者補正があるからこそ、四方八方からの攻撃に対応できるのだろう。
普段はフザケているが、マイカもこれまでの戦いの中で生き残ってきた。
弱いはずがない。
心の中で感謝を送りながら突き進む。
接近するこちらに警戒したのか、ドッペルゲンガーは腰に差した三日月刀を抜き放つ。
氷で作られていない鉄の刃を持つ湾曲した剣だ。
マイカが持つ剣と同じ造りである。
実を言うと、マイカがその剣を使っているところは一度も見たことない。
マイカの剣術がどれ程のものかは知らないが、受けて立とうではないか。
ここまで接近されたら氷の三日月刀による乱舞での対応するのは厳しいはずだ。
構えた剣でドッペルゲンガーに斬りかかる。
ドッペルゲンガーは三日月刀で受け止めるも、力に圧されて僅かに後退する。
数度剣を打ち合うと、相手は接近戦が苦手らしくこちらが優位に立つ。
辺りを飛び交っていた氷の三日月刀は勢いが落ちていき、マイカはそれを見逃さずに攻勢に出る。
ドッペルゲンガーの体が氷の三日月刀によって傷を増やしていく。
さらに足の腱を斬り、ドッペルゲンガーの体勢を崩す。
そこに一気に畳み掛ける。
振り抜いた剣が三日月刀を持つ右手首を斬り飛ばした。
これで終わりだ。
魔臓石を狙って剣を突き刺そうとするも、動きを止める。
「……」
このまま討伐してもいいのだろうか?
マイカと瓜二つのアンデッド。
その姿のせいで気が引けてしまって、討伐するのを躊躇っているわけではない。
瓜二つというのが気になった。
似たような話を以前聞いたことがある。
死神から聞いた共命者システムの話。
この世界と地球に瓜二つの人物がいて、その片方が死ぬともう片方の世界にいる瓜二つの人物が死ぬとというものだ。
もし仮に、このドッペルゲンガーを討伐したらマイカはどうなる?
一緒に死んでしまうのではないだろうか。
それが気掛かりであるから、トドメを刺せないでいる。
だがそれは、敵を目の前にして考えることではなかった。
ドッペルゲンガーは氷の三日月刀を新たに作り出し、斬りかかってきたのだ。
不意をつかれた一撃に防御が間に合わず、剣を持つ右腕に氷の三日月刀が深く入り込む。
「ぐうぅっ……!」
しかし、ドッペルゲンガーの攻撃はそれで終わった。
次なる攻撃が来る前にマイカの操る氷の三日月刀がドッペルゲンガーの魔臓石を砕いたのだ。
ドッペルゲンガーは灰になり、その場から消え去る。
「だいじょーぶっ!?」
慌てた様子でマイカが駆け寄って来た。
「何とか……無事だ。すまない、助かった……」
傷口を縛り、応急手当をしながら気になっていたことを聞いてみる。
「マイカ。体に異常はないか?」
「え? あたしはケガしてないよ。つよいからね」
共命者システムのことが気になって聞いてみるも、マイカは自身が怪我をしてないかと聞かれたと思っているようだ。
共命者システムを知らないマイカからしてみれば、当然の反応である。
「異常がなければいいんだ。ありがとう」
マイカに異常はない。
どうやら、共命者システムについて色々と勘繰り過ぎていたのだろう。
「みんなと合流しないとね」
連絡手段が限られているので、成果の有無に関わらず、時間を決めて湖畔のキャンプに集合することになっている。
今は時間的にも丁度いい頃合いなので、このまま戻ろう。
治療をしなくてはいけないし。
「ねえ、あのアンデッドだけどさ……」
キャンプに戻る道すがら、マイカが尋ねてきた。
次に続く言葉を待つが、中々言葉を繋ごうとしない。
「……やっぱ、なんでもない」
ようやく口に出すが、それ以上は言わなかった。
口では誤魔化していたが、自身にそっくりなアンデッドを目にして気掛かりなのだろう。
マイカにしては珍しく無言で歩き続けて、キャンプのある湖畔に辿り着く。
アマテルとローゲン、それとニーナが先に戻っていた。
治癒の魔法を掛けて貰いながら、さっきの出来事について説明する。
その日は疲れが溜まっていたせいか、そのまま眠りについた。
ー13ー
翌日、近くの町まで戻り、報告をして今回の依頼は終わりを迎えた。
「報告は依頼を受けた神殿でなくても大丈夫なんだな」
アマテルと共に神殿に報告に行き、その帰り道である。
「今回はこの町の依頼が近くの街に斡旋した形でしたからね。報告はこの町でも大丈夫なんですよ」
なるほど、そういうことなのか。
おそらく、ダブルブッキングしたのも、そこら辺に理由があるのだろう。
「それにしても後味が悪い依頼だったな」
「仕方ありませんよ。そういう時もあります」
「肝心の依頼人が死んでいるのに、報酬が出ただけでもありがたいか」
依頼人が犯人だったという奇妙な展開であった。
冒険者を依頼で呼び出し、殺す。
一体、何がしたかったのだろうか。
ちなみに、今回の報酬は神殿が立て替えてくれたので、ちゃんと受け取ることができた。
「それでマイカ達は?」
「先に入り口の所に行っているそうです。報酬を受け取ったら、すぐにでも旅立つと言ってました」
「そうか。居ると騒がしくて、すぐに去っていく。相変わらず嵐みたいな奴だな」
「ですけど、いないと静かで寂しいのではないですか?」
「うーん、寂しくはないかな。どうせ、またすぐに会えるだろうし」
「そうですけど、私は少し寂しいです。せっかく再会できたのに、また離れ離れになってしまって……もっとお話とかしたいのに」
そういえば、アマテルとマイカは結構仲が良いんだよな。
ポニィもマイカと仲良くしていたし、それはやはり、マイカの人柄の良さが影響しているのだろうか。
誰とでも仲良く出来そうな雰囲気があるよな。
「マイカとどんなこと話すの?」
「それは……」
「それは?」
「内緒です」
アマテルは人差し指を立てて、可愛らしくウインクする。
「教えてくれてもいいじゃないか」
「ダメですよ。女の子同士の秘密ですから」
「どうしてもダメ?」
「ダメです」
彼女達がどんな会話をしているか気になるが、仕方ない。
ここは諦めよう。
ー14ー
「そんなわけでマーダースケルトンについては無事に解決しました」
恒例となった報告会をマンションの一室にて披露する。
「人が四人……マーダースケルトンを入れれば五人か。それだけの人が目の前で殺されておいて無事に解決とはよく言えたものだ」
痛いところを突かれてしまう。
相変わらずルナは容赦がない。
「容赦がないのではなく、お前の脇が甘いだけだ」
それを言われると何も言えないが、やはり容赦がないのだと思う。
「犠牲者が出てしまったのは残念なことだが、それよりも気になることがあった」
「女の勇者候補にそっくりだというアンデッドか?」
そう、気になったのはそこだ。
「前に共命者について説明しただろ。それが関係あるのかなと思ったけど、そのアンデッドを討伐しても、マイカに異常はなかった。もしかしたら気にし過ぎなだけかもしれないけど、それが妙に気になってな」
話を聞いたルナは口元に手をあてて考え込む。
「そっくりなアンデッド、勇者候補。アンデッド、ドッペルゲンガー……。瓜二つ、共命者……」
ルナが答えを出すのを静かに待つ。
こういった頭を働かせるのはルナに任せた方がいいと判断して、自分は思考を放棄する。
「……おそらくだが、ドッペルゲンガーの正体は勇者候補の共命者ではないか」
「でも、マイカは健在だぞ? それについてはどう説明する?」
「そのマイカという女、お前も含めて勇者候補とはどういった存在だ。なぜ、向こうの世界にいる。それを思い出せ」
勇者候補が向こうの世界にいる理由?
「世界を救うため?」
「違う。もっと前の段階。向こうの世界に行く前のことを思い出せ」
ルナの魔法で地球に召喚されて……違うな。
地球に召喚されるのは自分だけだ。
それはマイカや他の勇者候補は当てはまらない。
もっと前の段階……地球?
地球に居た。
地球で暮らしていた。
それは全ての勇者候補に当てはまる。
「地球に暮らしていたということか」
「それもそうだが、もっと言えば、地球で一度死んだということだ」
「あーそうか。すっかり忘れていたよ」
「そんな大事なこと忘れるな」
ルナは呆れながら続ける。
「そのマイカで例えるのなら、マイカが地球で暮らしていた時は、向こうの世界でマイカの共命者も生きていたはずだ。それが事故だか事件なんかでマイカと向こうの世界の共命者が死んだ」
そこまで言われてようやく分かってきた。
「つまり、今回現れたドッペルゲンガーの正体はマイカの共命者。そのアンデッドというわけか」
「そういう事だ」
まさか、ドッペルゲンガーの正体が共命者だったとは。
「探せばお前のドッペルゲンガーもいるだろうな」
「自分にそっくりのアンデッドなんて見たくないな。出会わないことを祈るよ」
「見た目はともかく、お前のドッペルゲンガーなら、仮に出会ったとしても大して強くないだろし、楽勝だろ?」
「うっ……」
ムカつくけど、自分が強いかと聞かれれば返答に困る。
「……ルナの共命者もいるのだろうか?」
「いるだろ。もしかしたら畑でも耕しているのかもな」
今度見つけたらイジメてやろう。
心にもないこと密かに決意する。
「ただいま戻りました」
そこへ奈々が帰って来た。
「あっ、いたの」
毎度のことながら嫌な顔をされてしまう。
「今日は何を調査していたんだ?」
「べつに。君には関係ないでしょ」
「従者の教育が出来ていないのではないか?」
奈々の態度についてルナに物申す。
「自分の事を言っているのか? たしかに最近のお前の態度は目に余るな」
「違う。奈々のことだ」
「言っておくが、奈々は私の従者ではない。言うなれば、協力者というやつだ」
「それって何か違うのか?」
「茜と榊、それとお前を私が召喚した。だからこそ、私の従者なんだ。だけど、奈々は違う。奈々は普通の女の子だ。お前と同類ではない」
「そーだそーだ。君と一緒にしちゃダメだよ。だけど、君の態度でルナ様の品位が問われると考えたらなー。ルナ様がかわいそすぎるー。ついでにかわいすぎるー」
奈々はルナの従者ではないのか。
ルナ様、ルナ様と呼んでいるから勘違いしていた。
「あっ、そういえば」
奈々がふと何かを思い出す。
「そこのコンビニでバイトをしていた眼鏡を掛けた男子学生がいたじゃないですか。交通事故に遭って亡くなったみたいですよ」
「あー、そんなのいたな。事故に遭ったのか。それは……ん?」
何かが引っ掛かる。
「どうした?」
「なんて言うか……引っ掛かるんだ。何がと聞かれたら困るんだけど……」
考える。
コンビニ店員。
バイト。
男子学生。
眼鏡。
名前は……、山……山……山本だっけ?
山なんとかさんでいいか。
何度か会った記憶がある。
顔もおぼろげであるが憶えて……。
「あっ」
思い出した。
「そのバイト……。向こうでも会った」
「向こう、という事は共命者か」
「間違いない。さっき話しただろ。殺された男魔法使い。そいつの顔と瓜二つだった」
「奈々。事故の詳細は分かるか?」
「はい。ひと通りは」
死亡時の状態は全く違うが、死亡時刻は概ね一緒だった。
「共命者システム……。どうやら本当だったようだな」
地球と向こうの世界には姿形がそっくりな者がいる。
その片方の世界の者が死ねば、もう片方の世界にいるそっくりな者が死ぬ。
その共命者システムが証明されたのだった。
今回も読んで頂きありがとうございます。
ミステリーを書いてみたいな。
ふと、そんな事を思って書いたのが今回の話です。
そのせいで他の話と比べると毛色の違う話になっています。
書いたはいいけど、ミステリーと呼べるかどうかは曖昧な内容になってしまいました。
ミステリーを意識したけど、ミステリーになりきれなかったミステリーっぽい話だと思ってもらえればと思います。
読めば分かりますが、名前があるキャラが登場した時点で色々と怪しいですしね。
ちなみにクラップはスクラップから取った名前です。
彼にはピッタリな名前だと思います。
さて、今回の話ではマイカとその仲間が再登場しました。
作中時間では、フランケンを倒すために共闘した時から大分時間が経っています。
大体三ヶ月程が経過しています。
久し振りの再会というわけです。
マイカ達ですが、彼女達はまだ前線基地には辿り着いていません。
前線基地を目指しているその道中です。
主人公達と比べると大分遅れています。
それはマイカのすぐに脇道に逸れる癖と、正義感が強くて困っている人がいたら見過ごせない性格が起因しています。
それからこれは作中では語られませんが、マイカは勇者候補の真実について知っています。
割と序盤の頃から、主人公と初めて出会った時には既に知っていました。
彼女のひたすら前向きで明るい性格でいる姿を見て、レンダーはついつい言ってしまったと勝手に想像しています。
裏表がなく、何事も全力で取り組み、それでいて人懐っこい。
そんな彼女に嫌われたくない、むしろ好かれたい。
真っ直ぐな彼女と向き合うには、何の負い目を抱かずに向き合いたい、そして彼女と触れ合いたい。
マイカなら話しても大丈夫だと信じてレンダーは語ったことでしょう。
それに対してマイカは、政治とか難しいことは分からないとか、困っている人がいることには変わりないとか言ったに違いないです。
二人の絆は固いことでしょう。
さて、今回は死神が語っていた共命者システムが登場しました。
この共命者システムとドッペルゲンガーの設定が上手い具合に噛み合うのではないかと思い、ドッペルゲンガーというアンデッドが生まれました。
それと最後に出てきた山なんとかさん。
主人公は忘れていましたが、彼の名前は山根です。
「04.サラマンダー」で一度だけ出てきましたモブキャラです。
次回の話は、短めの話になります。
ですが、興味深い話になると思いますので、是非読んで頂ければと思います。




