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12.東堂皇子


 ー1ー


 盗賊団エクリプスの首領であるフランケンを倒すことに成功した。

 誰もが死力を尽くし、掴み取った勝利。

 この喜びを全員で分かち合いたいが、そうもいかなかった。

 疲労困憊で身動き一つ取れず、全員が地べたに座り込んでいる。

 誰もが口を閉ざす。

 終始無言というわけではなく、労いの言葉がそこかしこで囁かれる。

 ちなみに、全員と言ったが実際には一人元気な者がいた。

 マイカである。

 彼女は奥の方を見てくると言ったまま、一人探索を始めてしまった。

 元気だな、本当に。


 「お疲れ様です、勇者様」

 「ああ、うん……」

 「どうしたのですか? 浮かない顔をしてますよ? どこか具合が悪いのですか?」

 「疲れてはいるけど大丈夫。でも、それだけじゃないんだ」

 「何かあったのですか?」

 「この後どうしようかと思って……」

 「この後ですか? まずは休憩を取って、それから出発でよろしいのではないですか?」

 「それが難しいんだよ。ここはエクリプスの本部基地の最奥。外に出るだけでも大変だ。ここから抜け出すのをエクリプスの残党が黙って見過ごすとは思えない」

 「それは……どうしましょうか?」

 「どうしようかな……。帰るまでが遠足とはよく言ったものだ。生きてここから抜け出すまで戦いは終わっていない」


 アマテルと一緒に頭を悩ませているとマイカが戻ってきた。


 「レン君、レン君。なんか奥の方に変なのがあったよ。上に行く階段みたいな感じの」


 帰ってくるなり元気いっぱいに報告をしている。

 その中で気になることを言っていた。


 「マイカ、それってもしかして出口か?」

 「わかんない。行ってみたけど壁になってて通れなかった」

 「壁?」


 ここは本部の最奥。

 非常時用の出入口があっても不思議はない。


 「もしかしたら、そこから出られるかもしれないな」

 「そうなの?」

 「とりあえず見てみないと何とも言えない。ポニィ、悪いけど一緒に来てくれないか」


 仕掛けがあるとしたら魔法が使われているはずだ。

 魔法に詳しいポニィに見てもらった方がいいだろう。

 マイカに案内を頼み、ポニィを連れて奥に進む。


 「ほらほら見て見て。壁になってて先に進めないでしょ」


 幅の狭い螺旋階段を上った先はマイカの言う通り壁になっていた。


 「階段の上った先が壁とはな。見るからに怪しいな。ポニィ、どう思う?」

 「……」


 ポニィは壁を見つめる。


 「……これを壊せばいいの?」

 「なんでそうなるのっ?! この壁が魔法的な仕掛けで開閉するかどうか確認して欲しいのっ」

 「「そうなの?」」


 マイカとポニィが二人揃って首を傾げる。


 「……仲良いね、君達」

 「ふふん、でしょでしょー。あたしたちマブダチなんだー」

 「マ、マイカは友達、なの……」

 「そうですか」

 「あー、興味なさそう。もうキミは仲間はずれだからねー」


 仲間外れは地味にトラウマになっているのでやめてくれ。


 「それよりも、この壁はやっぱ仕掛けがあって開いたりするのか?」

 「うーん。たぶん、開く。けど……」

 「けど?」

 「壊した方がはやい」


 そうですかー。

 壊した方が早いですかー。

 脱出ゲーム的なものを考えていた自分が恥ずかしく思えてきたなー。


 「……ポニィならこの壁を壊せるのか?」

 「できる。けど、もう少し魔力が回復しないと魔法が使えない」

 「どれくらいで回復する?」

 「五分くらい」


 その後、戻って仲間達と合流し、ポニィの魔法で壁を壊してエクリプスの本部から脱出を果たした。


 「自分で言っといてなんだが、本当に外に繋がっていたんだな……」


 周りは木々に囲まれて鬱蒼としていた。

 どうやらここは森の中のようだ。


 「方角的に向こうが街だよな?」

 「方角は合っているが、回り道した方がいい」


 同じく方角を調べていたローゲンがそう告げた。


 「トップが倒れたからといってエクリプスが潰れたわけではない。残党が残っている間は注意しろ」

 「残党か……。エクリプスは今後どうなるんだ? まさかとは思うが、統率を失って全員が暴徒化とかしないよな?」


 ふと思い至った疑問にレンダーが答えてくれた。


 「それは大丈夫だと思うよ。元々エクリプスは統率があるようでない集団なんだ。幹部の管理していない末端の構成員に至っては好き勝手に暴れているとも聞くしね。連携なんて皆無な集団がフランケンの死で本当にバラバラになった。でも、それは彼らからすれば今までと大して変わらない。それでも後ろ盾を失ったのは事実。物資の供給が途絶えて、時間と共に自滅していくだけだよ」


 レンダーはそう言うが、本当に安心していいのだろうか。

 不安がよぎる。


 「勇者様? どうしたのですか?」

 「……何でもない。街に戻ろう」




 「マイカ達はこの後どうするんだ?」


 フランケンの討伐が終わり、マイカ達との協力関係は終わった。

 なので、今後どうするか聞いてみる。


 「この後? 打ち上げ?」

 「そうじゃなくて……」

 「お疲れ様会って言うの? あっ、祝勝会だっけ? そういうのがやりたいなー」


 マイカがこうなのはいつもの事だ。

 話すだけで物凄く疲れる。

 これまでずっと一緒にいるレンダー達は苦労しているのだろうな。


 「レンダーも大変だな」

 「ははは、もう慣れたよ。それにマイカが元気だとこっちも元気になるからね。疲れなんて吹き飛ぶよ」


 その疲れる原因がマイカだと思うのだが。

 このマッチポンプ、止めないといずれレンダーの体が保たないのではないかと心配になってくる。


 「レンダー達もリッチーの討伐を目指しているのだろ? 行き先は同じだし、これからも一緒に行動するのはどうかと思ってな」

 「それは嬉しい申し出だけど……」


 レンダーはちらりとマイカを見る。

 さっきまでこっちで会話をしていたはずなのに、今はアマテルと楽しそうに会話をしていた。

 楽しそうだな。

 アマテルはマイカと話していて疲れないのだろうか。


 「残念ながらそれは受けられない。僕らもリッチーの討伐を目標にしてるけど、マイカはあの通りすぐ脇道に逸れてしまうからね。目的の場所に辿り着くだけでもどれ程の時間が掛かるか検討もつかない。今はよくても将来を見据えるなら別々に行動した方がいい」

 「そっか……残念だけど仕方ないか。でも、甘やかし過ぎじゃないか?」


 客観的に見てマイカが好き放題にワガママをしているのを放置しているようにしか見えない。


 「そこがマイカの長所だからね、仕方ないよ」


 長所といえば長所だけどそれでいいのだろうか。


 「それに結構聞き分けはいいんだ。ダメと言えばやらないし、悪いこともやらない。それにあれでも周りを見ている。気遣いもできるんだよ、彼女は」

 「気遣い? マイカが」

 「彼女なりのやり方でだけどね」

 「なるほど」


 気遣いが空回りしてなければいいのだが。


 「……何にしても、一緒に旅するのは街に着くまでだな」

 「寂しいけど、そうなるね。だけど、目指す場所は一緒だから、いずれまた会えるよ」

 「ああ、また会える時を楽しみにしているよ」


 再会を誓い、レンダーと握手を交わすのだった。




 ー2ー


 「そんな感じでエクリプスのボスを倒した」


 向こうの成果などルナは興味ないだろうけど一応報告しておく。


 「そうか」


 案の定、興味なさそうにしている。


 「旅はもう終盤じゃないか?」

 「どうかな。エクリプスと抗争している地域を抜けて山を一つ超えれば前線基地に辿り着くらしいけど」

 「なんだ、すぐじゃないか」

 「口で言うとそうだけど、実際はかなりの距離があるぞ」

 「ふーん。まあ、しばらくは気楽に旅が出来るんだな」

 「それは違いないな。フランケンが死んで、混乱しているだろうし、エクリプスの弱体化が進んでいく。最初のうちは活動を継続するだろうが、いずれ消滅する。山に辿り着くまでは楽できるはずだ」

 「なら、こっちの仕事を押し付けても問題ないな」

 「それは……お手柔らかにお願いします」


 断っても逆効果だろうと判断し、せめて負担が減るように願う。


 「来月の連休に入る前に方をつけたかったから丁度いい」

 「連休?」

 「ずっと向こうに居てボケたのか? 来月には春休みに入るぞ」

 「もうそんな時期だったのか。いつの間にか、年を越していたんだな。ついこの間まで文化祭をやっていたような気がするな」

 「……ホントにボケたんじゃないか?」

 「そんな事はないと思うけどな。頭から血を流したのは何回かあったけど、それって関係あるか?」

 「知らん」


 そこまで話してルナは茜を呼んで、何かを告げる。

 茜は頷き、リビングから出て行った。


 「どうした?」

 「奈々と榊を呼びに行かせただけだ」


 少し経つと茜は奈々と榊を連れて帰って来た。


 「全員揃ったな。さて、まずはお前に説明しながら状況の確認をしようか」


 ルナは茜の方に視線を向けると、茜は頷いて引き継いだ。


 「それでは私から説明します。事の発端はルナ様と奈々が通う高校の生徒会副会長。彼女がとある人物について情報を集めていました」


 副会長はセイレーンと契約を結んでいたお嬢様。

 彼女には付き人がいて、それがドラゴンキャッスルと契約した男性。

 二人がセイヴァーハンドに所属していたのをルナ達が突き止めて、抗戦の末に始末した。


 「その時は気付きませんでしたが、後にやって来た男の調査中にその事が判明します」


 副会長の穴埋めとして派遣されたセイヴァーハンドの男性、ジョン・ボイル。

 偶然の遭遇であったため、彼の素性は不明であったが後の調査で判明する。

 シャドウと契約を交わし、ルナの通う高校の文化祭中に戦闘になった。


 「副会長が調べていた事をその男が引き継いだようですが、色々あり男を始末しました」


 チラリとこちらを見てくるが素知らぬ顔をする。

 一方的にやられて死にかけはしたが、そのおかげで敵の能力が判明したんだ。

 体を張って功績を立てたのだ、素直に讃えてほしい。


 「二人が残した調査資料を元に私達も調査を開始しましたが、先日ようやく調査対象を捕捉することに成功しました」


 茜が目配せをすると、榊が写真を取り出して皆に見えるようにテーブルに置く。

 写真には男性が写っていた。


 「東堂皇子。東の堂と書いて東堂、皇帝の皇に子供の子で、おうじと読むそうです」

 「すごい名前だな」

 「最近は普通らしいぞ。まあ、こいつはお前より年上だけどな」

 「時代を先取りした感じか」

 「名前はさておき、先に進めます」


 さておかれてしまった。


 「この東堂はセイヴァーハンドに存在を知られていましたが、身元や所在は知られていませんでした」


 魔法を使用した痕跡や目撃証言。

 断片的な情報はセイヴァーハンドも入手していたが、人物の特定には至らず、見つけられないでいた。

 それをルナ達が突き止めた。


 「彼はゴーレムを作成し、使役する力を持っています。それ自体は大した能力ではありませんが、人類の敵としてセイヴァーハンドがターゲットにするには十分な理由です」


 ゴーレムと言われて、真っ先に思い浮かぶのは土人形。

 果たして、そのイメージであっているのだろうか。


 「彼もセイヴァーハンドに追われる身ですから、当初は調べるだけの予定でした。ですが、調査を進めるにつれて、彼が二つの大規模魔法を発動しようとしているのが判明します」

 「今回はその大規模魔法の発動を阻止。もしくは、東堂皇子を始末する」


 ルナはそう宣言するが、相変わらず大事な部分を端折っている。


 「阻止するのも始末するのも協力するのは構わないけど、その大規模魔法ってどんな魔法なんだ?」

 「一つは、別空間に世界を創り出す魔法だ」

 「くうかん……? え? 世界をつくる? どういう事だ?」


 何を言っているのか理解出来ない。

 頭を悩ませているとルナが詳しく教えてくれた。

 創世の魔法。

 例えば、ルナの部屋を対象に創世の魔法を発動すると、ルナの部屋と同一のものが同じ座標に創られる。

 同じ座標であるが異空間にあるから互いに干渉する事がない。


 「干渉出来ないのに同じ座標にあるのか?」

 「そうだ。通常は元の部屋にしか干渉出来ない。だけど、魔法に長けた者なら、同じ部屋に居ながら創られた部屋に出入りする事が出来る」

 「へー。そんな魔法が存在するんだ」

 「先に言った通り、干渉しない。もっと言えば影響がない。どちらかの空間で物を動かしたり壊しても、もう片方の空間には何の変化がない」

 「なるほど……。創世の魔法については分かったけど、その魔法のどこが問題なんだ?」

 「この魔法自体は大して脅威はない。通常なら部屋一つを対象に使うものだが、東堂がやろうとしているのは街一つ、いやそれ以上の規模で創世の魔法を発動しようとしている」

 「魔法で街を丸ごと創るのか……」

 「魔力量だけでなく技術も必要になってくる。だけど、これだけだと規模は大きいが、脅威には成り得ない。問題はもう一つの大規模魔法だ」


 東堂王子は二つの大規模魔法を発動する気でいるのだったな。

 では、もう一つはどんな魔法なのだろうか。


 「茜。解りやすくなるように東堂の来歴を」

 「かしこまりました」


 茜は恭しく一礼をしてから続ける。


 「では、東堂の来歴について説明します。彼の家は裕福で、幼少期より英才教育を受けていました。詳細は省きますが、成績は常にトップクラスで留学経験があります」


 来歴を説明してくれるのはいいが、それが大規模魔法と何か関係があるのだろうか。


 「両親は健在ですが、今はアメリカに在住。重要なのが、彼の家系が錬金術を得意としていることです」

 「錬金術? 金でも作るのか?」

 「父親が興した会社が成功して儲かっているという意味では合っていますが、違います」


 茜の言葉にルナが続ける。


 「その会社もどこまで魔法が関与しているのか疑わしいところだがな。あと、錬金術についてだが、物質を別の物に変換するという考えで構わない」

 「物質を別の物にか……。そう考えると解りやすいな」

 「厳密には違うが、東堂一族が得意としている錬金術はそういう系統だ」

 「その錬金術がもう一つの大規模魔法に関わっているのか?」

 「ああ、そういう事だ」


 錬金術を用いた大規模魔法。

 その概要は恐ろしいものだった。


 「東堂がやろうとしている事は、人をゴーレムに変える魔法だ」

 「人をゴーレムに変える? 可能なのか、そんな事って?」

 「簡単ではないが、不可能ではない。実際に東堂は実験して成功している」

 「実験って、マジか……」


 そこで榊が再び写真を取り出して見やすいように並べる。

 写っているのは高級マンションに出入りしている住人らしき人達が写っていた。

 写真は複数枚、写っている人物はどれも違う。


 「これは?」

 「マンションの住人だ。ただし、全員がゴーレムだ」


 ゴーレムというが普通の人間にしか見えない。


 「人間にしか見えないのだが?」

 「見た目はな。だが、ゴーレムだ。東堂が住むマンションの住人は全員、ゴーレムに変えられている」


 もう一度写真を見直すが、やはり人間にしか見えない。

 しかも無愛想というわけではなく、普通に笑ったり喋ったりしている写真も見受けられた。

 年齢も性別も様々で、老人やサラリーマンやOL、主婦や学生、赤ん坊や幼稚園児までいる。


 「これがゴーレム? 本当にそうなのか? 仮にゴーレムだったとして、元の住人はどうなったんだ?」

 「元の住人はゴーレムに変えられた。残念ながら元に戻すことは出来ない」


 さっき言っていた実験がこれの事なのか。

 だとしたら許し難い悪行だ。


 「このゴーレム達は今でもマンションに暮らしている。それどころか会社や学校に通っているし、買い物にも行く。休日には遊びにも出掛けている」

 「まんま普通の人間じゃないか」


 むしろ普通の人間より充実しているのではないか。


 「人間よりも人間らしい。ただ、彼らには心はない。なので感情がない。笑顔はハリボテ、心は虚無。全てが演技、紛い物だ」


 ルナはゴーレムの写真を嫌なものを見る目で見下ろす。


 「ルナは、東堂が許せなくて始末するのか……?」


 その言葉を聞いたルナは一瞬憐れみの視線を写真に向けるも、すぐに顔を上げて呆れた視線を投げ掛けて来た。


 「許せない? ふん、何を馬鹿な。私はお前と違って勇者ではない。それに言っただろう。次は街一つを巻き込む気だと。この地区は巻き込まれないが、段階的に拡大していく気だ。いずれ巻き込まれる」

 「セイヴァーハンドの手は借りられないのか?」

 「論外だ。そもそも派遣されていたセイヴァーハンドは私達が始末してしまった。次に派遣されるのがいつになるかも分からない」

 「……やるしかないのか」

 「そうだ。やるしかない」


 本来ならセイヴァーハンドがやるべき事だが、その肝心なセイヴァーハンドは始末してしまった。

 次のがいつ派遣されるのか分からないし、実力があるかも分からない。

 仮にすぐに派遣されて実力が申し分なくても、情報を提供するわけにはいかない。

 ルナもセイヴァーハンドに狙われている身。

 不用意に接触するべきではない。


 「ところで、東堂はなんでゴーレムを作っているんだ?」

 「戦力の拡大と考えるのが普通だが、規模が大き過ぎる。現代社会において意味がないどころか、セイヴァーハンドに目をつけられてしまう。自殺志願者ではないかと疑いたくなるな」


 何が目的なのか分からないようだ。

 街一つを巻き込む程の規模で人間をゴーレムに変える理由なんて思いつかない。

 ルナの言う通り、セイヴァーハンドに狙ってくれと頼んでいるようなもの。


 「調査しても目的は分からなかったというわけか」

 「東堂の暮らすマンションの住人はゴーレムに変えられている。潜入しても即座にバレるだろう」


 それに、とルナは続ける。


 「東堂の目的なんてどうでもいい。奴の行動自体が問題だ。セイヴァーハンドに気付かれなければ、ゴーレムが段階的に増えていき、私の生活圏が侵される。セイヴァーハンドが気付いて動いても問題だ。すでにゴーレムが増え過ぎている。派遣される数は尋常じゃない」


 セイヴァーハンドが増えれば、それだけ見つかるリスクが増える。

 それはルナとしても看過できない。


 「逃げる選択肢はないのか」

 「ない」


 即答である。


 「第一、島国でどこに逃げろというんだ」

 「普通に飛行機に乗ればいいだろ」

 「そういう問題ではない。逃げるのは最終手段だ。そう簡単に使うわけにはいかない」


 まあ、住み慣れた地を離れるのは簡単に決断できるものではない。

 ルナが逃げるのを最終手段だというのも分かる。


 「いずれにしても、セイヴァーハンドが東堂の存在に気付く前に始末するんだろ。だったら早いに越したことはない」

 「珍しくやる気じゃないか。ただ準備があるからすぐには動けない。来週には動けるはずだから、準備しておけ」

 「はいよ」


 それから細かい打ち合わせするも、ほとんど茜と榊に任せることになった。

 自分が準備で手伝えることはなく、せいぜい体をいつでも動けるようにしておくだけだ。


 「そろそろ時間もいいし、帰るよ」

 「そうか」

 壁に掛けられた時計を確認すると、ルナも同じように見上げて確認する。


 「ああ、そうだ。これ、一つ余っていたんだ」


 そう言って、取り出したのは市販の板チョコ。

 ルナはそれを差し出してきた。


 「頑張ったご褒美だ」


 頑張ったご褒美?

 エクリプスの件を言っているのだろうか?


 「じゃあ……いただきます」


 向こうに持ち帰って、アマテルとポニィにあげようかな。


 「お前に渡したんだ。神官や魔法使いの女に渡すのは許さないからな」

 「はい……」


 こちらの考えを見透かしたかのような物言いだ。

 仕方がないので、その場でチョコを食べてから地球を後にした。




 ー3ー


 話はその日の朝に遡る。


 「おはよう。相変わらず仲が良いね」


 ルナと奈々が教室で雑談していると声が掛かった。

 声の主は委員長だ。

 二人も挨拶を返して、委員長も会話に加わる。


 「ところで望月さん。今日がなんの日か知ってる?」


 雑談中に、ふと委員長が聞いてきた。


 「もちろんです」


 ルナではなく、奈々が答える。

 当然ながらルナも今日が何の日か知っていた。

 二月十四日。

 バレンタインだ。


 「はいこれ、委員長の分だよー」


 奈々は荷物から包装されたチョコを取り出して委員長に渡す。


 「ありがとー。よかった、河合さんの分も用意しといて」


 チョコを受け取った委員長は嬉しそうにしている。

 ルナからすればたかがチョコの何が嬉しいのかがよく分からない。


 「望月さんの分もあるからね」


 委員長は奈々とルナにチョコを渡す。


 「ああ」


 ちなみにルナも茜から友人用にとチョコをいくつか持たされているので抜かりはない。

 ルナの友人関係を気にしての行動だ。

 茜の厚意を無下にするつもりはないので、親しい友人には渡すつもりでいる。

 その中には委員長も含まれていた。


 「望月さんも用意してくれてたんだ。ありがとう」


 ルナがチョコを渡すと委員長は奈々から受け取った時よりも嬉しそうにする。


 「露骨に態度が違わない?」


 奈々は不満を漏らすが、その態度から本気で言っていないのが分かる。


 「ごめんごめん。そんなつもりじゃないよ。ただ望月さんから貰えるなんて思っていなかったから驚いちゃっただけだよ」


 ルナが渡したのは少し値が張る市販のものだ。

 それに対して委員長がくれたのは手作り。

 ついでに奈々も手作りである。

 昨日、茜と二人で作ったらしい。


 「望月さんは手作りとかやらないの?」

 「やらないな。手間が掛かるし、その時間を別のことに使った方が有意義だと思っている」

 「ふーん。でも、その手間があるからこそ貰った相手が喜ぶと思うのだけどなー」

 「市販のものでも喜んでいたじゃないか」

 「そりゃあ、嬉しかったよー。でも、手作りだったらもっと嬉しかったなー。河合さんもそう思うよね?」

 「それはもう卒倒しちゃうね!」


 奈々は委員長意見に激しく同意する。


 「来年は期待してるからねー」

 「二人に倒れられると困るから市販のやつを渡すよ」

 「あはは、それは残念」


 委員長は適当に流すも、奈々はがっくりと項垂れる。


 「そういえば、文化祭に来ていた彼氏にもチョコ渡すの?」

 「……いや」

 「えっ? 渡さないの? 彼氏なのに?」


 あれは彼氏のフリをさせていただけで本当の彼氏ではない。


 「渡しても調子に乗らせるだけだ。そんなの見せられても不快でしかない」

 「……それってホントに付き合ってるの?」


 変なところで勘がいい。


 「もう別れちゃえば。うん別れよう。その方がいいよ」


 全ての元凶である奈々が別れろと言い始める。

 誰のせいで彼氏役を作らなければならなくなったか、忘れたわけではあるまいな。


 「もしかして……恥ずかしいの?」

 「は?」

 「渡すのが照れくさいから渡したくないってことでしょ」

 「何でそうなる。そんなわけないだろ」

 「またまたー、照れなくていいのにー」


 このまま会話を続けても埒が明かないと判断したルナは委員長を無視して溜息をつく。

 ホントにこの兄妹は人を苛つかせるのが得意だな。


 「委員長ー、先生が呼んでるよー」


 教室の入口より委員長を呼ぶ声が響く。


 「呼ばれちゃったから行くね」

 「うん、いってらー」


 委員長はそっとルナに身を寄せて耳打ちをする。


 「……チョコ、ちゃんと彼氏に渡しなよ」


 ルナは委員長の顔を不快げに睨みつけるが、委員長はどこ吹く風と気にしない。


 「じゃねー」


 そう言い残し、委員長は去って行った。



 放課後になり、ルナと奈々は帰り支度を整える。


 「今日は途中で茜さんが迎えに来ますので」

 「分かった。奈々は例の件だな?」


 例の件とは、東堂皇子という錬金術士についてだ。

 最近の調査で色々とキナ臭さが増した要注意人物。


 「はい。そのまま調査に向かいます」


 学校を出て、しばらく歩くとコンビニに行き着いた。

 予定より早く着いてしまったので、そこで時間を潰しながら茜の迎えを待つ。

 その間コンビニの中を物色する。

 奈々は雑誌を立ち読みし、ルナはお菓子コーナーの前で立ち尽くす。

 目の前にはバレンタインチョコが並べられていた。

 別に委員長に言われたからというわけではないが、ふと陳列された商品を眺めてしまう。

 茜に持たされたチョコは残り一つ。

 それを渡す相手は榊。

 奈々と茜には朝のうちに渡してある。

 茜が用意したものを二人に渡すのは何かおかしい気もするが毎年のことなので気にしない。

 当然ながら榊にも毎年渡している。

 今朝は会えなかったので渡せなかったが、この後に会うのでその時に渡すつもりだ。


 「買うのですか?」


 いつの間にか到着していた茜が声を掛けてきた。


 「……」


 茜に尋ねられてもルナは黙ったままチョコが陳列された商品棚を見つめるのだった。



 奈々と別れて茜と共にマンションを目指す。

 その道すがら、茜はルナに尋ねてみる。


 「買わなくてよかったのですか?」

 「必要ないだろ」

 「必要だと思いますけどね、私は」


 その言葉にルナは押し黙ってしまう。

 ルナが答えないので茜も無言になる。

 寄り道をせずに自分の家を目指す。

 ルナの住むマンションに近付くにつれて人通りが少なくなる。

 人払いの結界は張っていない。

 ただ単に、この辺りに暮らす人が少ないからだ。

 やがて、道を歩くのがルナと茜の二人だけになる。

 そうなるとルナは茜に手を差し出す。

 茜と二人きりの時だけに見せるルナの姿だ。

 差し出された手を茜は苦笑しながら握り、手を繋ぐ。


 「……甘えん坊さんですね」


 いつもは何も言わずに手を繋ぐが、今日は口を開いた。


 「……イヤ?」


 ルナは恐る恐るといった感じで茜を見上げる。


 「イヤではないですよ。むしろ嬉しいです。いつまでも甘えてきて私は嬉しいです。ですけど、少し心配でもあります」

 「心配?」


 ルナは首を傾げる。

 茜はルナの疑問には答えずに話を続けた。


 「ルナ様はもっと他の人に甘えてもいいと思いますよ」


 ルナはふるふると首を横に振った。

 嫌だと伝えたいのだろう。

 しかし茜はそれに取り合わない。


 「甘えるならやっぱ身近な人がいいですよね。ですけど、奈々には難しいでしょうし、榊さんになるともっと難しいですよね」

 「……」

 「もう一人居ますよね? 彼なら丁度いいと思いますけど、どうでしょうか?」

 「……」


 ルナは何も言わず俯いてしまう。

 そんな姿に茜は思わず口元を緩ませる。

 今度は首を振らないのだな。


 「いきなりベタベタするのは難しいでしょうし、少しずつ歩み寄るのどうでしょうか。たとえば……そう、何か贈り物をするとか」

 「……別にあいつと仲良くしたいわけじゃない」

 「そう言わず、褒賞を与えるのも主の務めですから」

 「あいつにあげる物なんてない」

 「昨日余った板チョコが一つありますから、それでどうでしょうか?」

 「……」


 ルナはなんとも言えない面持ちになる。

 断りたくても断り切れない。

 そんな感じだ。

 事実、茜は何を言われても押し通そうとしている。


 「難しく考えないでください。ただ主が従者に褒賞を与えるだけです。贈るものが何であろうとそれ以外の他意はないですよ」

 「……分かった。茜の言う通りにしよう」


 ルナと茜は帰宅し、夜を迎えるのを待つのだった。




 向こうの世界へ送り返した後、ルナは静かに瞼を閉じる。

 視界を遮ると心臓の鼓動がより一層大きく聞こえた。


 「よく出来ました」


 茜の手がルナの頭を優しく撫でる。


 「別に褒められるようなことはしていない」


 態度に出さないでいるが、ルナの心臓は高鳴っていた。

 どうしてこんなにも高鳴っているのだろうか。

 訳が分からない。

 従者に褒賞を与えただけなのに。

 チョコを渡しただけなのに。

 どうして……どうして?




 ー4ー


 「ルナ様、良い報せと悪い報せがあります」


 コンビニまで買い出しに行かされてマンションに戻ると奈々が調査から帰っていた。

 扉を開けた瞬間に奈々と目が合い、露骨に嫌な顔をされる。


 「良い報せとは?」


 ルナは大して気にせず、報告を促す。


 「はい。セイヴァーハンドの動向ですが、次に新しく派遣されるのは四、五ヶ月先になる見通しです」


 「なるほど。それまでは東堂の動きに気付くことはないというわけか」


 どこからか東堂の情報を掴んで早期に動く可能性はあるにはあるが、その可能性は低いだろう。


 「それで悪い報せですが、東堂が本格的に動き出しました。来週には創世の魔法を発動します」


 報告を受けてルナは考え込む。


 「……マンションの見取り図は分かっているな?」

 「はい。調査済みです」

 「東堂の行動予測は?」

 「今後は大規模魔法に掛かりきりになるのでマンションに籠もるのが予想されます」

 「そうか……。では明日動く。そのつもりで準備してくれ」

 「了解しました」


 奈々は一礼してリビングから去って行く。

 すれ違う際に、睨みつけられた。

 しかも舌打ちのオマケ付きである。

 敵意剥き出しだ。

 何故だろうか?


 「どうかしたか?」

 「……別に。何でもない」


 茜に買い物袋を預けて、ソファに腰掛ける。


 「話は聞いた通りだ。明日には東堂と戦闘になる。お前も一緒に動いてもらうから、そのつもりで」

 「了解。ルナも一緒に来るのか?」

 「ああ、ついて行く」

 「お留守番していればいいのに」

 「茜と榊との関係上、私がそばに居るだけで、二人の能力が向上する」


 茜は地獄より召喚された悪魔であり、榊は天国より召喚された天使だ。

 二人共、ネクロマンサーであるルナによって召喚された存在である。

 召喚主が近くに居るだけでその能力は向上されるのだ。


 「ついでに言えば、お前もだ。お前も私が近くに居るだけで能力が上がるはずだ」

 「そうなの?」


 あまり実感がないので何とも言えない。


 「こっちの世界では何もしていないからな。明日は存分にこき使ってやろう」

 「文化祭の時よりも強くなった所を見せてやるよ」

 「強くなった強くなったと毎回のように言うが、大して活躍出来ていないじゃないか」

 「そっ、そんな事な……くもないけど。そこそこ、それなりに強くなったのは間違いないからな」

 「口ではなく結果で示したらどうだ。たまにはカッコいい所の一つや二つ見せてみろ」

 「いいだろう。見せてやるよ。一応言っておくが、カッコ良すぎて惚れ直すなよ」

 「……」


 ルナが固まる。

 まるで、虚をつかれたように。


 「……本気に受け取るなよ」

 「……違う。呆れているだけだ」

 「そうかよ……」


 なぜだか、とても悲しい気持ちなった。




 ー5ー


 鮮やかな青色のフード付きローブ。

 黒い革手袋。

 白地に奇妙な模様が入った仮面。

 それらを身に着ける。


 「お前にはまだ説明していなかったな」


 そう言ってルナはそれぞれの装備について教えてくれた。


 まずはローブ。

 これは以前にも説明を受けていた。

 認識阻害の魔法が編み込まれており、これを着用することで魔法の心得がない者には認識されなくなる。

 さらに、着用者が魔力を注ぎ込むことによって、その効果を増大させることが出来る。


 次に革手袋。

 これには伝導の魔法が編み込まれている。

 革手袋を通して魔力を伝えやすくなるらしいが、魔力を伝えやすくなるとどうなるんだという疑問が生まれた。


 最後に仮面。

 通話の魔法が編み込まれた仮面である。

 同じ魔力によって通話の魔法を編み込まれた仮面と通話することができる。

 小声でも仲間と連携が取れるようになる便利なものだ。


 「魔法を使えるようになったお前なら使いこなすことが可能なはずだ」


 ルナ、奈々、茜、榊も同じように装備する。


 「準備は整った。作戦を開始する」




 ー6ー


 転移の魔法で目的地の近くまで移動する。

 そこからさらに移動し、東堂の住む高級マンションへと場所を移す。

 アーチ状の門を潜り、敷地内に足を踏み入れる。


 「今更だけど、正面から入ってよかったのか?」


 仮面を使ってルナに尋ねる。


 「部屋の窓を見てみろ」


 ルナに言われてマンションの窓ガラスを見上げる

 カーテンが閉められているが、その隙間から人の目が見えた。

 こちらをジッと見ている。

 見ているのは一人や二人ではなく、ほぼ全ての部屋から人の目を覗かせていた。


 「ここは東堂の本拠地。身を潜めていても即座に見つかる。それに、隠れれば多少の時間稼ぎにはなるだろうが、東堂の性格を考慮すると正面から行った方がいい」


 東堂の性格?

 疑問には思ったが、ひとまず先に進む。

 辺りは異様に静まり返っているが、監視の目が緩む気配はない。



 入口であるガラス張りのドアまで辿り着くと、人を検知したドアが自動で開く。

 入ると再びガラス張りのドアが立ちはだかる。

 ドアの前に置かれた機械。

 その機械で認証することでドアが開き、内部に入る事ができる。

 茜が一人、前に歩み出て鞘から刀、悪魔の武具である魔女狩りを抜き放つ。

 そして、ガラスのドアを斬り破る。

 バラバラになったガラスが床に落ち、砕けながら散らばっていく。

 本来なら警報装置が作動するのだが、作動することはなく無音である。

 事前の調べによると、東堂が意図的に装置を止めていたらしい。

 その理由はゴーレムである住人を逃さないため。

 警報装置が鳴った場合、住人は避難しなくてはならない。

 しかし、住人はゴーレムだ。

 その役目は周囲の警戒と護衛。

 拠点であるマンションと東堂のそばを全てのゴーレムが離れるわけにはいかない。

 だからといって警報装置が作動しているにも関わらず、住人が避難しなければ、付近に不審がられてしまう。

 警備会社や警察が動くのもその対処が面倒になる。

 なので東堂はマンションの警報装置を全て切っているのだ。


 「行くぞ」


 エントランスホールに入る。

 派手すぎない装飾に清潔感が漂うエントランスホール。

 天井は高く、一階だけでなく二階までエントランスホールに使われている。

 一画にはお洒落な喫茶店が設えているが、今は閉められていた。

 それを尻目にずかずかと進む。


 「どうやら賊が侵入したようだな」


 突如としてエントランスホールに男性の声が響いた。

 声のした方に視線を向ける。

 そこに現れたのは、見るからに仕立ての良い高級ブランドで全身を着飾った美系の青年。


 「何者だ、貴様らは」

 「お前が東堂皇子だな」


 ルナが青年に問い返す。


 「問うているのは俺様の方だ。貴様らは俺様に従って質問に答えよ」

 「答えるとすれば悪質なクレーマーだな。最近怪しげな大規模魔法を執り行おうとしている輩がいると耳にして、文句をつけるためにこうして出向いたわけだ」

 「俺様の領地に足を踏み入れただけでなく、邪魔もするとは。さらに、こうして話している最中に仮面を外さずに素顔を晒さない。無礼で不敬な賊め」

 「賊とは失礼な。ちゃんと入口からノックをして入って来たではないか。それに警報装置は作動していない。招かざる客人でない証拠だ」

 「ほう、言うではないか。無礼者なりに礼儀を尽くしたわけか」

 「ここはお前の領地と言ったな。ならば私は異国の者。お前の領地の作法など知りはしない。多少の無作法に非礼、それには目を瞑ってもらいたいものだ」

 「知らぬから無礼を許せと申すか。下賤な」

 「この程度のことも許容出来ないのか? 器の大きさが問われるぞ」

 「なるほど。賊風情が俺様を試すのか」


 東堂はこちらをキッと睨みつける。


 「何度も言わせるな。問いに答えるのは貴様らだ。問われるのは貴様らであって俺様ではない」

 「まあ、礼儀なんてこの際どうでもいいけど」

 「開き直るか。これだから下賤な賊は好かぬのだ」

 「それで、お前のやろうとしている事だが、セイヴァーハンドに目を付けられたら色々と面倒だ。そんなことされたらもうお前だけの問題では済まされない」

 「何を言うかと思えばそんなことか。下らんな」

 「世界規模で活躍しているセイヴァーハンドを下らないとは。取るに足らない相手だと言いたいのか?」

 「違うな。奴らが障害になりえるのは理解している。だがな、俺様は世界を手にする男。それしきの障害など些細なものでしかない」

 「……話が通じない男だな」


 ボソリと呟くルナの声音に苛立ちが混じっていた。

 怒りの矛先がこちらに向かないことを祈ろう。


 「どうやらこれ以上会話をしても無駄のようだな」


 大規模魔法の発動を止めろと言っても聞かないだろう。

 説得をしても無駄。

 力づくで止めるしかない。

 魔法を止めるのではなく、息の根を止めるのだ。

 ルナの意思を感じ取ったのか、全員が武器を構える。


 「フンッ。野蛮な……。まあ、もとより貴様らの行いを許す気など毛頭ない。俺様の栄光なる未来の礎にしてくれる」


 東堂が手を掲げると、エントランスホールに細かい粒子が舞い始める。


 「これは……砂?」


 砂の粒子がエントランスホールの床に積み重なって山となる。

 山は人型へと形を変えていく。

 しかもそれは一つではなく、幾つも。


 「ゴーレムか」


 ゴーレム。

 これが話に聞いていた東堂の魔法。

 写真ではマンションの住人の姿をしていたが、それとは別に作り出しているのだ。

 周囲への警戒を強める。


 「これが俺様の軍隊。その一端に過ぎないが、貴様らを処分するには丁度いい数だろう」


 エントランスホールを埋め尽くさんとばかりに現れたゴーレム。


 「数が多過ぎないか?」


 ゴーレムの数が多過ぎて不安になる。


 「怖気づいたのか? 情けない」

 「そうは言うが、さすがにこの数を相手にするのは分が悪いだろ」

 「数が多いだけの雑魚だ。それに全てを倒す必要はない。術者である、あの偉ぶった野郎を仕留めればいいだけの話だ」


 ゴーレムの手元に砂が棒状に形を成す。

 剣だ。

 他にも槍や斧を持つゴーレムがいる。


 「いつも通りでいく。お前は護衛を」

 「了解」




 ー7ー


 茜が先陣を切る。

 悪魔の武具である刀、魔女狩り。

 その刀は如何なる魔法も消失させる。

 魔女狩りを用いて、茜は次々とゴーレムを屠っていく。

 ゴーレムは茜の行く手を遮るように立ちはだかる。

 それとは別にこちらにもゴーレムが襲い掛かって来た。


 「来るぞ! そっちは任せる」

 「任せろ!」


 迫り来るゴーレムは剣を手にしていた。

 そのゴーレムに向けて斬り込むも剣で受け止められてしまう。

 即座に剣を引き、次なる攻撃を仕掛ける。

 数度の剣戟の末、ゴーレムは体勢を崩した。

 すかさず剣を振り落とす。

 肩口に入る刀身。

 だが、剣は僅かに食い込むだけに留まる。

 体表を僅かに傷を付けただけだ。


 「硬っ!?」


 あまりの硬さに驚く。


 「何をやっている! 剣に魔法を付与しないと斬れないぞ!」


 ルナから助言が飛んでくるも、そういうことは先に言って欲しかった。

 剣に風を付与して、ゴーレムを斬るも両断には至らず、数度の斬撃でようやくゴーレムの体を砕くことに成功する。


 「ようやく一体……。どこが雑魚だよ、話が全然違うじゃないか。これじゃあ魔力が保たないぞ」

 「茜を見てみろ。ゴーレム共をバッサバッサと斬っているぞ」


 ルナの言う通り、茜は容易くゴーレムを倒している。


 「あれは武器の性能がいいからだよ。普通はあんな簡単に倒せないからな」

 「武器の性能ではなく、単純に実力だ。如何に武器が優れていようと、使い手の実力がそれに伴わければ武器の性能を発揮できない。まあ、茜なら魔女狩りがなくても、この程度のゴーレムなんぞ造作もないがな」

 「それは何とも恐ろ……頼もしいな」

 「それよりも、魔力の補助はこちらでする。お前は気にせず魔法を使え」


 そういえば、ルナに召喚された自分はルナから魔力の補助を受けられるのだったな。


 「なら、遠慮なく使わせてもらうぞ」


 付与の魔法だけでなく、加護の魔法も発動する。

 迫り来るゴーレムの群れに斬り込む。

 物理的な攻撃はゴーレムに通じにくい。

 魔法属性を付与した剣による攻撃は効果的なようで、ゴーレムの体に大きな傷を付ける。

 だが、それでも硬いことには変わりない。

 地道にゴーレムの体を削っていき、最後に砕く。

 時間は掛かるかもしれないが、確実に仕留めるにはこれしかない。

 数体のゴーレムを倒し、次なるゴーレムに斬りかかる。

 その時、横合いから現れたゴーレムに左腕を斬られてしまう。


 「ぐっ……!」


 正面のゴーレムに意識を集中し過ぎて、視野が狭くなっていた。

 腕を斬ったゴーレムに続くように、四方からゴーレムが襲い掛かる。

 いつの間にか囲まれていた。

 ルナからも離れている、先行し過ぎていたようだ。

 何とか攻撃を防ごうとするも、全てを防ぎ切れずに背中を斬られ、肩を貫かれる。

 傷口から血が流れ出ていくが、そんなことには構っていられない。

 歯を食いしばり、全身に力を込める。

 その際に、さらに血が噴き出す。

 風属性を剣に付与し、それを大きく凪いでゴーレムの群れを牽制する。

 風を纏いし刃が疾走った。

 ゴーレムは揺らめき、後方へと足が流されて退く。

 その好機を逃さず、すかさずその場から離脱する。


 「随分と派手な恰好だな。血を散りばめるとは、お洒落であるし、尚且つ目立つ。自ら先行して囮に志願するとは、その心意気は認めてやってもいいぞ」


 傷だらけでルナの元に戻ると早速嫌味を言われてしまう。


 「小言は後で聞く。それよりも治療を頼み」

 「しょうがないな。奈々、援護してくれ」


 ルナの要請に奈々は不機嫌な様子で答えた。


 「それ、肉の壁にした方がよくありませんか?」

 「よくねーよ」

 「頭がないのなら死体と変わりありません。違うと言うのなら、ちゃんと役目を果たしてください」


 役目というのはルナの護衛である。

 それなのに護衛もせずに一人先行してこの樣だ。

 奈々が機嫌を損ねるのも無理はない。

 そんな彼女は口では文句を言いつつも、ルナの頼みどおりに周囲への牽制を始めた。


 「あまり私から離れるなよ」


 そう言いながら、ルナはこちらに右手を伸ばして胸の上に手の平を当てる。

 丁度、心臓がある位置だ。

 さっきまでは気付かなかったが、心臓が高鳴っている。

 先の戦闘で動き過ぎたせいだろうか。

 だから心臓がいつもよりも高鳴っているのだ。

 この高鳴りは手の平を通じてルナにも伝わっているはずだが、彼女は何ら反応を示さない。


 「悪い……。次からは気を付ける」

 「次があって良かったな。死んでいたら次がなかったぞ」

 「ホント、その通りだよ。だけど、幸運なことに生きている」

 「そんなものがなくても生きろ。言ったはずだぞ、私の命令なしに死ぬことは許さないと。よもや、忘れたわけではあるまいな?」

 「……忘れてないよ」


 忘れてました。


 「ふんっ、どうだか」


 あっさりと見抜かれてしまう。


 「さっ、治ったぞ」


 傷が癒えただけでなく、衣服に空いた穴も塞がっており、お洒落だった血痕も消えている。

 さらに、治療と並行して魔力の補給も一緒にやってくれたようで、魔力も回復した。


 「敵の大将を討ち取るのは茜と榊に任せて、お前は奈々の方に加わって守りを固めろ」

 「了解。今度はちゃんとやるよ」




 ー8ー


 ゴーレムが群がる。

 その数は計り知れない。

 道を埋め尽くす程のゴーレム達が侵入者を排除せんと次々に襲い掛かって来る。

 絶え間なく押し寄せるゴーレムに普通なら悪戦苦闘するはずだ。

 だが、茜は違った。

 刀が疾走る度にゴーレムは霧散し跡形もなく消え去る。

 魔法で作られたゴーレムでは魔女狩りを持つ茜の進行を妨げるには至らなかった。


 「ほう。どのようなカラクリかは知らんが、見事な戦いぶりだ」


 ゴーレムが消え去る様を見て、東堂は不遜な態度を崩さずに驚く。


 「とは言え、俺様には到底叶わぬがな」


 そう言い残し、東堂は近くにあったエレベーターに入り、上の階に消えていった。

 茜はそれを追い掛けるべくゴーレムを駆逐していく。

 その後ろを拳銃を構えた榊が追従する。

 榊が手にしているのは神の矛ではなく、ただのリボルバー式の拳銃だ。

 ゴーレムを相手にするのでは心許ないかもしれないが、装填された弾丸には魔力が込められており、ゴーレムの体を撃ち抜くことができる。

 茜と榊がエレベーターに辿り着いた時には、ランプが最上階を記して停止していた。


 「エレベーターは……停止してますね。ボタンを押しても動きませんし……どうします?」


 どうするべきか迷った茜は榊に意見を求める。


 「階段だ。そこから最上階を目指す」

 「最上階は三十階でしたよね。そこまで階段でですか……。仕方ありませんね。行きましょう」


 茜と榊は最上階を目指すべく階段を駆け上るのだった。



 奈々の戦いぶりを見てみる。

 伝導の魔法が編み込まれた黒い革手袋がゴーレムを捕まえた。

 次の瞬間、ゴーレムの体内から無数の氷柱が突き破る。

 ゴーレムの体は砕けて、土に帰っていく。

 さらに黒い革手袋を嵌めた奈々が別のゴーレムを掴む。

 今度はゴーレムが膨れ上がったかと思ったら、爆発飛散する。

 音も凄いし、炎を纏った破片が飛んでくるので近くでやらないで欲しい。

 それでも分かった、あれが黒い革手袋の使い方だと。

 もしかしたら、さっきルナが触れてきたのも伝導の魔法が関係しているのかもしれない。

 それにしても奈々はポニィと同じように炎と氷の魔法を得意としているようだ。

 年齢も大して変わらないはずだし、背丈も同じくらいだ。

 共通点が多いし、案外仲良く出来そうだな。

 とは考えてみるも、残念ながら住む世界が違うため、出会うことは叶わない。


 「何を余所見している!」


 ルナは叱責を飛ばすのと同時にナイフを投擲した。

 投擲したナイフが背後にいたゴーレムの頭部に突き刺さる。

 奈々の戦いぶりに気を取られていて背後からの接近に気付かなかった。

 意識を切り替えてゴーレムの相手に集中する。




 一閃。

 また一閃。

 茜の持つ魔女狩りが次々とゴーレムを滅ぼしていく。

 榊は追い掛けて来るゴーレムの相手をしながら茜に追随する。

 時に援護し、茜が前にだけ集中できるように立ち振る舞う。

 一切の乱れがない連携。

 無駄がない。

 迷いがない。

 ただ自分達が信じたい事を信じて従い、突き進んでいく。

 ルナを信じ、敬い、尊ぶ。

 それが行動として現れているのだ。

 ルナのために、彼女の平穏のために、日常を、青春を謳歌させるために二人は戦う。


 茜は全ての魔法を断つ刀を手に忠誠を誓った。

 彼女とルナの間に、魔法によって作られた絆ではない確固たる絆が存在する証だ。


 榊は如何なる守りを貫く拳銃を手に忠義を果たす。

 彼がルナのために、揺るがぬ意志の下で信念を貫き通す証だ。


 天使と悪魔だから仕えるのではない。

 主と従者だからではない。

 ルナだからこそ付き従うのだ。

 ルナと出会い。

 ルナと過ごし。

 ルナと歩んだ第二の人生。

 ルナとの思い出が宝物。

 そして、ルナが幸せになるのが何よりの願いだ。

 その願いのためならば茜と榊は持ちうる全てを投げ出す覚悟でいる。

 今この瞬間もそれは変わらずに戦うのであった。




 ー9ー


 「ルナ、一つ聞きたいのだが、いいか?」


 ゴーレムと応戦をしながらルナに尋ねる。


 「戦闘中に舌を噛むなよ」

 「気を付けるって。それで、東堂が契約を結んでいるモンスターについて聞いていなかった」

 「契約……」

 「茜さん達が遅れを取るとは考えられないけど、東堂が逃げたらここを通る可能性がある。今のうちに教えてくれ」

 「……」

 「ルナ?」


 チラリと確認するとルナは口元に手を当てて何やら考え込んでいた。

 こうしている間にもゴーレムは押し寄せて来る。

 それを押し返しながら、再びルナに視線を向けた。

 視線に気付いたルナが首を傾げる。


 「どうした?」

 「いや……いきなり考え込み出したからどうしたのかなって」

 「ああ、大したことでは……あるのか? 東堂の契約したモンスターが気掛かりでな。それだけはどんなに調査しても判明しなかった」

 「ゴーレムではないよな? 東堂は錬金術の一族だったし、ルナみたいに契約しなくても魔法が使えるんじゃないか?」


 ゴーレムはあくまで錬金術で作ったものだ。

 ルナがネクロマンサーの力でアンデッドを作るのと同じである。

 だからゴーレムは契約とは関係ない。


 「そうだが……契約していたら一筋縄ではいかない。これが杞憂で終わればいいのだが……」

 「珍しく心配しているな」

 「お前がやられる分には構わないが、茜と榊にもしもの事があったら……」


 不安がるルナ。

 何か気の利いたことを言ってやりたいが、言ったところで気休めにしかならないだろう。

 それに今は応戦中なのでそれどころではない。


 「ほう。賊にしては善戦しているではないか」


 エレベーターで上階に消えたはずの東堂の声が響く。

 壁面の一部が人型に膨れ上がったかと思えば、東堂が姿を現した。

 出て来た壁は何事もなかったかのように元通りに戻る。


 「さて、そろそろ俺様も参戦しようではないか」

 「参戦だと? 二人に怖じけついて逃げたくせに何を言っている。分断してから襲いに来るとは姑息な」


 そこで初めて東堂が身じろぐが、それは一瞬の出来事だった。


 「俺様を愚弄するか。やはり貴様らは殺すしかないようだな。死して俺様を侮辱した罪を償うがいい」


 東堂の周囲に鋭く尖った石の礫が複数作成されていく。

 それを射出する。

 狙いはルナ。

 ルナの前に身を乗り出し、身構える。

 飛来する石の礫を全て眼に捉えて剣を振るう。

 薙ぎ払い、石の礫を落とす。

 それで全てを落とせたわけではないが、残りは守護の魔法が防いでくれる。

 守護の魔法だけでも防ぐことは可能であるが、あれは攻撃を受け止める度に魔力を消費してしまう。

 剣で落とせば、その分魔力の消費が減る。

 ゴーレムの数を考慮し、長期戦を覚悟して魔力の消費を抑えた方がいいと判断しての行動だ。


 「守護の魔法か。賊らしく小細工は得意のようだな」


 攻撃が失敗に終わったにも関わらず、東堂は余裕の態度でいた。


 「ルナ。どうする? 攻めるか?」


 ゴーレムの群れは面倒だが何とかなる。

 その先にいる東堂を攻めるべきか、ルナに判断を仰ぐ。

 それを受けてルナは奈々を見る。


 「攻めましょう」


 奈々も攻めるのに賛成のようだ。


 「よし。目標を東堂に。命令だ、奴の首を討ち取れ!」

 「了解!」

 「了解しました!」


 守りから攻めへと転じる。

 眼前に群がるゴーレムを蹴散らす。

 茜のようにスムーズにとはいかないが、確実にその数を減らしていく。


 「ゴーレムの軍勢に対抗してアンデッドの軍勢を呼び出したり出来ないのか?」

 「無理だ。アンデッドのストックはそんなにない。大人しく働け」

 「それは残念」


 本来なら自分も、そのアンデッドのストックの中に入る予定だったのか。

 一度は命を落としたが、こうして生身で生きている自分は恵まれているのだろうな。


 「そっち来るよ!」


 死角よりゴーレムが攻めようとしていたのを奈々が教えてくれた。

 いつも口では文句を言いつつも、こういう時はちゃんと助けてくれる。

 奈々からしたら、ルナ様に迷惑がーとか、ルナ様のためにーとか言うのだろうけど、声を掛けて助けてくれたのは嬉しかった。


 ゴーレムの攻撃をいなし、反撃して仕留める。

 土塊となって崩れ去るゴーレム。

 その後も奈々と共にゴーレムを倒しながら突き進む。

 無傷でとはいかなかったが、どれもかすり傷程度だ。

 やがて、東堂の元に辿り着く。


 「ここまでだ! 東堂!」


 東堂に斬りかかるも、その攻撃は土の剣にて防がれてしまう。


 「粋がるなよ。高々、近付けた程度で勝った気になるとは早計にも程がある」


 東堂の手に握られた土の剣。

 形は剣だが、先端が尖っているだけだ。

 刀身の平べったさはなく厚みがある。

 棒といっても過言ではない見た目だ。

 斬ることは出来ず、叩き潰すのに特化している。

 あれで叩かれたら簡単に骨が砕け散るだろう。


 「賊は賊らしく地面を這いつくばっていろ!」


 押し返されたところで土の剣が振り落とされた。

 このままでは左足の甲を狙った一撃をモロに受けてしまう。

 躱せない。

 しかし、背後よりローブのフードを掴まれて引っ張られる。

 地面を転がるも足を潰されずに済んだ。


 「……」


 助けてくれたのは奈々だ。

 無言で見下ろしてくるも、すぐに東堂を見据える。


 「不本意だけど、本当に不本意なんだけど……。ゴーレムの相手をしながらあれを倒すには厳しい」


 だから、と奈々は続ける。


 「不本意ながら……君の力を借りるよ」


 何回不本意って言っているんだ。


 「言いたいことはあるが……あいつを倒したいのは自分も同じだ。異存はない」


 立ち上がり、東堂を睨みつけながら剣を構えた。

 それを見て東堂は嘆息し、肩を竦める。


 「全く……賊は何故群れたがるのか、疑問しかない」


 今度は奈々と二人で攻め立てる。

 周りのゴーレムを牽制しながら、二人で攻め入る。

 それでも東堂は適切に対処していく。

 不意を突こうが、同時に攻めようが、休みなく交互に攻めようとその全てをあしらう。


 「強くないか、こいつ」


 異様に強い。


 「じゃあ、諦める?」

 「まさか、こっから逆転すればいいだけのことだ」


 近付いて来たゴーレムを蹴り飛ばし、再び奈々と二人で攻める。

 東堂の剣によって攻撃が弾かれたその時、一本のナイフが投擲された。

 狙いは東堂。

 背後のルナが投擲したのだ。

 このナイフの投擲はシンプルでいながら非常に防ぎにくい攻撃である。

 なぜならルナの認識阻害の魔法が込められているから。

 認識がずらされているためナイフを弾こうとしても、実際の位置は違うため弾けないのだ。

 しかもそれを予め知っていても、どのように認識をずらされているのかが分からなければ弾くことが出来ない。

 どこにあるのか不確かな点による攻撃に対して面による防御で対抗するしかない。

 もしくは大きく避けるかだ。

 そして東堂は弾こうと剣を振る。

 ナイフに剣が当たることがなく、東堂の胸元にナイフが突き刺さった。

 勝敗が決した。

 そう思ったが、東堂は倒れることはなく平然としていた。


 「姑息な真似を……」


  ナイフは深く刺さっていなかったようで、東堂から抜け落ちて床に転がる。

 そのナイフには血が一切付着していなかった。


 「一度下がれ」


 ナイフを見て、ルナは即座に指示を出す。

 その指示を受けて奈々と共に下がる。

 下がったのを確認したルナは東堂を見据えながら告げる。


 「お前、人間じゃないな」 


 人間じゃない?


 「ゴーレムか契約モンスター。お前はそのどちらかだな」

 「さすがに気付くか」


 東堂は自身の体を見下ろし、自嘲気味に笑う。

 そして、背中より灰色の翼が生える。

 まるで石像のような翼だ。

 羽ばたき、東堂の体は宙に浮かぶ。


 「あまり時間を掛け過ぎると、俺様の実力が疑われてしまうな。ここからは加減は抜きだ」


 天井が蠢く。

 何事かと目を凝らして見てみると天井を土が覆っていた。

 照明を避けるように蠢き、唸りを上げる。


 「これは……マズいんじゃないか?」

 「マズいで済めばいい方だ」


 ルナは冷静に天井を見上げている。

 なんで、そんなにも冷静でいられるのだろうか。


 「何か策があるのか?」

 「ない。守護の魔法でどこまで耐えられるか、それだけだ」


 波のように蠢く中、針のように尖った土が次々と形成されていく。

 ルナはただ眺めているだけで動こうとしないが、そんな悠長に構えている場合ではない。

 天井を埋め尽くさんとばかりに広がる土の針。

 それが降り注ごうとした時、エレベーターの扉が内側より蹴破られて宙を舞った。

 扉の残骸とその破片はけたたましい音を立てながら床に散乱する。


 「遅くなりました、ルナ様。これより敵を殲滅します」


 エレベーターより姿を現した茜。

 その後ろから榊が続く。


 「まさか最上階まで移動したのが罠だとは思いませんでした。階段で追い掛けるはめになりましたが、おかげさまでいい運動になりました。準備運動には丁度良かったです」


 仮面を付けているためその表情は読み取れないが、珍しく茜が怒っているのが伝わってきた。

 屋上まで階段で昇らされたにも関わらず徒労に終わり、さらにエントランスホールまで戻って来たのだ。

 その苦労が窺い知れる。


 「昇るのは大変でしたが、降りるのは一瞬でしたね。やはりエレベーターは便利です」


 実際にはエレベーターの扉をこじ開けて最上階から飛び降りたのだが、そこは敢えて教えなかった。


 茜が跳躍すると、天井まで到達する。

 そして、魔女狩りで天井に一太刀浴びせた。

 天井を覆っていた土が魔女狩りの効果によって霧散する。


 「おのれ……! 賊風情がっ!」


 東堂が右手に持つ土の剣を掲げた。

 先程とは別の魔法を使おうとしている。

 しかし、銃声が響き、東堂の剣を掴む右手を貫いた。

 銃を撃ったのは榊だ。

 手に持つのは豪華な装飾が施された拳銃。

 神の矛。

 如何なる守りも貫く神の遺物だ。

 東堂は右手を抑えながら羽ばたく。


 「あれは……」


 ルナは東堂の姿を注視する。

 そして、何かを探すように床に視線を巡らせた。

 すぐに目当ての物を見つけたのか、歩み出て何かを拾い上げる。


 「これがあれば……。茜、榊。ここを任せたい。正確には奴を抑えといてほしい」

 「それは構いませんけど、どちらに?」

 「マンションの中で人探しだ」


 それだけ告げて、今度はこちらに向き直る。


 「お前は大人しく付いて来い。それと奈々にも同行を頼みたい」


 なんか相手によって扱いが違わないか?


 「私は二人の方がよかったのですが、ルナ様が言うなら仕方ありませんね」

 「よし、行くぞ!」


 奈々の返事を聞いてルナは駆け出した。

 自分と奈々はそれに続き、追い掛ける。

 ルナが向かったのは階段。

 そこから上に昇っていく。


 「奈々。このマンションで人を匿う。その人を守る、世話をしやすいのはどの階層辺りだ」

 「そうですね……。私が調査した限りでは中層の少し上、二十階辺りがそうだと思います。あの辺りは住人が密集しているので、人を隠しやすいはずです」


 住人はゴーレムに変えられている。

 守るにしても、世話をするにしてもゴーレムが多い方がいいはずだ。


 「二十階を目指す。遅れるなよ」

 「そこに誰か居るのか?」

 「東堂皇子。そこに本人がいる」




 ー10ー


 二十階に近付くにつれてゴーレムとの戦闘が増えていく。

 その殆どが下から追い掛けて来るのではなく、上から降りて来た。

 階下では茜と榊が可能な限りゴーレムの進行を防いでくれている。

 だから、追い掛けて来るゴーレムの数が少ないのだ。


 「このゴーレム達、本当に倒しても問題ないのだよな?」


 上から降りてくるゴーレムは、エントランスホールで戦った土塊のゴーレムとは違い、人間の姿をしていた。


 「元はこのマンションの住人だが、今はゴーレムだ。構わず始末しろ」


 写真で見せてもらった住人達か。

 実際に目の当たりにしたのは初めてだが、普通の人間と遜色ない姿をしている。

 言われなければ分からないどころか、倒して土塊になるのを見るまで信じられなかった。

 老若男女、様々の容姿をしたゴーレム。

 彼らの手には日用品やスポーツ用品が握られている。

 包丁やバット、ゴルフクラブ、竹刀に木刀。

 家庭にある武器に使えそうな物を持ち出して戦っているのだ。


 「脅威とは言い切れないが、戦いにくいな」


 ゴーレムを斬り伏せながらぼやく。


 「容姿が普通の人間にしか見えないからか?」

 「それもそうだけど、単純に動きが読めない。武器が特殊なのもあるし、動きが独特過ぎるんだよ」


 戦闘の心得があるような動きではないが、力任せに振り回している様子もない。

 武器もそうだが、なんとも中途半端で曖昧な動きをしてくる。

 個々人が独特な動きをしているが、勇者補正の恩恵を受けた右眼があることでその動きに対応出来た。


 次々と襲い来るゴーレムを次々と斬り捨てる。

 そうして進んでいる内に二十階へと辿り着いた。

 ゴーレムはあらかた倒したせいか、今は自分達以外に人の姿はない。


 「一部屋ずつ調べていくのか?」

 「いや、もっと手っ取り早い方法がある」


 ルナはこちらに向き直り、右手を伸ばして仮面を外されてしまう。

 外した仮面を持つように促されて、それに従う。

 空いた右手を再び伸ばして頬に触れる。


 「ルナ?」


 いきなりどうしたのだろうか。

 頬に触れていた手が後頭部に回され、ルナは自らの方に引き寄せる。

 そして、左手を顔に翳してきた。

 なんだろうかと訳も分からずに期待が膨らむ。

 ルナは手を離し、半歩下がる。


 「これでいいだろう」


 何事もなかったかのようにルナは告げた。


 「えっと……、今のは何だったの?」

 「この先を見てみろ。お前なら見えるはずだ」


 ルナが廊下の先を見るように促す。

 促されるまま見てみると、靄のような光が道を成していた。


 「靄みたいなのが道になって見えるけど……これは?」

 「案内しろ。説明は歩きながらでだ」


 言われた通りに靄の道に沿って移動する。


 「東堂が契約しているモンスターはガーゴイルだ」

 「ガーゴイル?」

 「エントランスホールで会ったのは東堂本人ではなくガーゴイルだ。ガーゴイルは東堂に扮し、私達を欺いていたわけだ」


 ルナは懐よりある物を取り出して見せてきた。

 見せてきたのは石。

 欠けた形跡があるから石像か何かの破片だろう。


 「心臓を狙ったナイフが刺さっても、奴は一滴も血を流さなかっただろう。榊がガーゴイルの手を貫いた時も同様だ。そしてこれは、その時に奴の手から落ちた物だ。奴自身の体の一部で間違いないだろう」

 「でも、それだけだと、ガーゴイルじゃなくてゴーレムっていう可能性もあるだろ」

 「私も迷った。だが、この破片には魔力が宿っている。ゴーレムなら破片になった瞬間に魔力は消し飛んでただの土塊なるが、これは違う。それにあの悪魔のような翼。本人は特に意識していないようだが、あれが決定打になった。奴は悪魔の石像たるガーゴイルに違いない」


 ルナは断言した。

 エントランスホールで会った東堂は偽物で、その契約モンスターであるガーゴイルだと。


 「そして、このマンションは東堂が拠点にしている場所だ。本物が隠れ潜むならここしかない」

 「それでこうして探しているのか。この光の道もその一環なのか?」

 「破片に宿る魔力。これには東堂とガーゴイルの魔力が宿っている。それを元にお前に追跡の魔法を掛けた。たとえ、東堂が創世の魔法で創った世界に居ても追跡できるはずだ。座標は同じだからな」

 「なるほど。この光の道の先には東堂が居るというわけか。でも、エントランスホールを出た時から使っていればよかったんじゃないか?」

 「言っただろう、この破片には東堂とガーゴイルの魔力が宿っていると。あの場にはガーゴイルが居た。追跡の魔法を使ってもガーゴイルを捕捉してしまう。それに直前にガーゴイルはマンション内を移動していた。ある程度目星をつけておかなければガーゴイルを捕捉してしまう。だから、ここで追跡の魔法を使ったんだ」


 ルナの解説になるほどと納得する。


 「ここだ。この部屋に道が続いている」


 ついに一つの部屋に辿り着く。

 その玄関の前に立ち、ルナにどうするか目で問い掛ける。

 鍵が掛かっているはずなので自分にはどうする事も出来ない。

 ルナは迷わずに奈々の方を見やる。


 「奈々。ハッキングしてパスワードの改竄はしてたよな。解錠を頼む」

 「はいはい。任せてください」


 奈々は懐からカードキーを取り出して扉の脇に備え付けられた機械に照合させる。


 「あとはパスワードを入れるだけですけど、なんだか分かりますか?」


 知らん。

 それよりもふざけてないで早く開けてくれ。


 「正解は私の誕生日でしたー」


 そう言って「0、7、0、7」と入力していく。

 ガチャっと音がし、奈々は扉を開ける。

 生活感が漂う一般家庭にしか見えない。


 「こっちだ」


 土足のまま上り込み、進んでいく。

 奥へと進み。

 光の道に沿って進み、扉を開ける。

 壁際に置かれた一つのベッド。

 どうやら寝室のようだ。


 「あれ? 光の道が、途切れてる」


 寝室を見渡しても人の姿はない。

 そう思ったが、薄っすらとベッドに人影のようなものが見える。


 「ベッドに人影みたいのが見えるな……」

 「やはりお前の眼なら視えるのか。お前に追跡の魔法を掛けておいてよかった。奴は創世の魔法を使っている。飛ぶぞ」


 どこに?

 そう思った矢先、ベッドに人影ではなく人が現れた。

 痩せ細った男性。

 いつの間にか現れたベッドの脇にある機械と管を通して繋がっている。


 「何者だ……、貴様らは……」


 男性が口を開く。


 「ここは俺様の、領地……。勝手に立ち入ることは許されん……」


 今にも事切れそうなくらいに弱々しい声音。


 「お前が東堂皇子、本人だな」

 「そうだ。俺様が、俺様こそが……東堂皇子だ」


 顔は頬骨が浮き上がる程にやつれているが、その風貌はガーゴイルの姿に酷似していた。

 むしろ、ガーゴイルの方が東堂の姿に似せていたのだろう。


 「お前を殺す。そのために来た」

 「俺様を殺すか……。フッ……」


 東堂は小さく笑う。


 「何がおかしい」

 「いや何も……」

 「……殺す前に一つ聞いておきたい。お前の目的を」


 東堂は沈黙する。

 しばしの静寂の間に意を決したのか、東堂が再び口を開いた。


 「……俺様は人の頼みなどに耳を貸さない……。だからこれは独り言だ」


 一拍置いて、東堂は語り出した。


 「俺様は俺様の国を作る。……それが俺様の目的だ。まず第一にこのマンションを領地にした。民を得て、これからだというのに……」


 東堂は自身の体を見下ろす。

 目に映るのは痩せ細った体。

 痩せ細っただけでなく、所々が石化していた。

 それを見て彼は何を思ったのだろうか。


 「……領地の拡大、そして、民を増やす。ゆくゆくは日本を……世界を手に入れる。それなのに……それなのにそれなのに……どうして、どうしてこうなった!」


 東堂の叫び声が響く。


 「俺様はこんなところで終わるような男ではない。こんな志半ばで朽ち果てることなど……あってはならない……」


 悲哀を込めた言葉が紡がれる。


 「その体……生来のものではないな。後天的……、おそらくだが魔法の代償。錬金術を行った所為による影響だな」

 「完璧なはずだった……。人を、人間を、ゴーレムに変える。今まで誰も成し得なかった錬金術。それを成し遂げた……。偉業だ。俺様を崇めよ。俺様こそが天才。天賦の才を持つ英雄だ」

 「下らないな」

 「何……?」

 「お前には才能があったかもしれない。だけど結果はその様だ。それこそが、お前の実力、才能がもたらした結果、人生の集大成だ。そしてそれは今日、崩壊する。お前が人生を懸けた偉業は潰える。日の目を見ることもなく、後世に語り継がれることなく、ここで終止符を打つのだ。今ここで誰にも知られることなく、ひっそりと終わる。それがお前の人生、その終焉だ」


 ルナは魔法でナイフを作り出す。

 ナイフを手に握り、東堂に歩み寄ろうとするが、それを間に入って制した。


 「何のつもりだ?」

 「それは従者の役目だ。主がやることじゃない」

 「今更だな。今まで多くの命を奪ってきた。その数が一人増えた程度で何だと言うんだ」

 「それでもやるべきじゃない。地球に召喚されている間だけでも、君の手は汚させない」

 「お前も……下らないな」

 「そうだな。そうかもしれないな」


 ルナは歩もうとしていた足を止めて引き返す。


 「……命令だ。殺せっ……!」


 命令と同時に落雷のような音が轟いた。

 加護の魔法、付与の魔法、その他諸々の力を駆使した電光石火の一撃。

 東堂の体を斬り裂き、灼いて焦がした。

 命は呆気なく散り、魂は消えゆく。


 「ルナ様。茜さん達からガーゴイルが消滅したと連絡が入りました。ゴーレムも同様に消えたようです」

 「そうか。これより茜と榊と合流した後、帰還する」


 創世の魔法で創られた寝室は東堂の死体や機械類ごと消え去り、元の世界の寝室に戻っていた。




 ー11ー


 「ルナには将来の夢とかってあるのか?」

 「唐突だな。いきなりどうした?」

 「東堂を見て、ふと思ったんだ。やろうとしていた事は碌でもないけど、夢を叶えようとしていた。最終的に叶わなかったけど。この世には夢を叶えられずに命を落としてしまう人が沢山いる。夢が叶わないのは辛いだろう。だからルナに夢があるのなら、その手助けをしたいと思ってな」

 「…………」


 ルナは目を瞬かせる。


 「ルナ?」

 「……手助けなど不要だ。私は生き延びるために生きてきた。今を生きるのに必死で将来など考えたことがない。夢など抱いたことがない」

 「そうか……」

 「そうだ」

 「じゃあ、何か夢が見つかったら教えてくれ。全力で手伝うから」

 「…………」

 「なんだったら、夢を探す手伝いでもいいぞ」

 「……お前の……」

 「うん?」

 「お前のその上から目線で、人生を悟ってますよって態度がムカつくな」

 「ルナよりは年上ですから」


 死んだらそこで終わりだ。

 必ずしも向こうの世界に飛ばされるわけではない。

 一度きりの人生。

 せめて身近にいるルナだけでも悔いが残らないように生きて欲しい。

 それに、ただ生きるだけの人生なんてつまらないじゃないか。


 今回も読んで頂きありがとうございます。


 今回の話は地球サイドの話で、これまでの話でそれとなく出ていたゴーレムに関する話になりました。

 正直、前フリを書いたはいいけど、結局いつも通り敵を倒すだけに終わってしまいました。

 なので、チョコを渡す方が話のメインということにしておいてください。


 今回は本作では珍しく季節ネタが登場しました。

 本作の執筆が終盤に差し掛かった頃、地球と行き来しているのに季節ネタが全然ないなと思い、急遽付け足した話になります。


 バレンタイン、つまり作中時間では2月になり、この物語は夏休みの終わりである8月下旬から始まったので半年が経過していることになります。

 作中で語られた以外にも高位アンデッドやセイヴァーハンドと戦っていると思うので主人公達はきっと様々な経験を積んでいることでしょう。


 最後にルナですが、彼女はネクロマンサーでありながらアンデッドを召喚しません。

 その理由の一つとしては彼女自身がアンデッドを好いていないからです。

 他人の死体を使うのは気が引けるといった理由もなくはないのですが、一番はアンデッド自体を嫌っている、生理的に嫌悪しているからです。

 彼女も花の女子高生ですから、血みどろで内臓が見え隠れするアンデッドを嫌悪するのは当然と言えましょう。

 衛生的にも悪そうに見えますしね。

 普段使っている物に関しても、髑髏の装飾品よりもウサギをあしらった物を使います。

 ウサギをこよなく愛する少女です。

 魔法が使える以外は普通の少女……ちょっとズレている所があるかもしれませんけど。


 ついでにルナの使える魔法に攻撃魔法はありません。

 これはルナの母親が敢えて教えなかったからです。

 争いごとに巻き込まれてほしくない、もしもの時は戦うのではなく逃げて欲しい、そう願って攻撃魔法だけを教えなかったのです。

 しかし、親の願いなど知らず、ルナは争いごとに飛び込んでいきます。

 逃げるどころか積極的に関わって、敵を排除しようと動きます。

 それでも戦う術が乏しいので、最前線に立って戦うことは少ないです。

 その部分だけは親の願いが届いたのかもしれません。


 さて、次回の話ですが、本作の要となる設定が登場しますので、是非読んで頂ければと思います。

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