act70 観光地の乱入者の焦り
オレはため息を一つつき、目の前にいる初老の男性を見据える。
「ここは、各軍の不可侵条約のもとに成り立っているところのはずだけど・・・。
そのことを踏まえたうえでの行動だよね?」
「もちろんだ、こちらとしても心苦しい所だ。ですがね、こちらも困っていてね。ご同行願えないかな?
手荒な真似はしたくないのだよ。辺境の英雄殿。」
初老の男性は、静かに答えた。
油断しているわけでもなく、こちらを値踏みするわけでもなくオレを一個人として見ているようだ。
その視線は嫌ではないが・・。
「辺境の英雄殿・・・か。オレには意味のない言葉だ。」
「それは、貴方の星に伝わる言葉が嫌だからかね。」
「へえ、よく調べてるね。そうだよ、オレのいた星で戦争を合法にするために言い放った人殺しの言葉が耳に残っているからだよ。」
「確かそれは、一人殺せば殺人者、100万殺せば英雄とかゆう言葉かな。」
「そうだよ、オレにとって英雄は、殺戮者か生贄か・・・どちらかの意味にしか聞こえない。」
「生贄とは・・・どうしてなのかね。」
「簡単だよ。周囲の期待を背負い戦わされ、不要になればその英雄を差し出し、その他大勢を救うために使われる英雄。
英雄なんて生贄としての道具か、大量殺戮者のどちらかだよ。」
「今のあなたがあるのはその考え方があるからなのかね、感心するよ。だが我々にも事情がある、ご同行願えるかな。」
「いやだと言ったら・・・」
「英雄殿、あんたは立場と状況が理解できていないのかよ。この状況でその言い分が通ると思っているか?
戦略はできても所詮は田舎者かよ」
初老の男性の横にいる若い男性が侮蔑するような目でこちらを見て言い捨てた。
うん、いるよね。こんな奴。
自分の立場が必ず上だと思って見下してくる。
これは交渉じゃなくてただの命令だ。
馬鹿なのか、それともこっちが二人しかいないからどうにでもなると思っているのか。
初老の男性は油断できないが、他はそうでもないようだ。
「君は私の邪魔をするためにここにいるのか。我々は彼に協力を願う立場だ。
それを見下すような言い方はやめたまえ」
初老の男性は若い男性をたしなめた。
「しかし、こんな奴に敬意なんていらないですよ。さっさと押さえつけてしまえば済みます。」
若い男性は困り顔で言い訳をする。
「その考えかたがどんな末路を作ったか君も知っているはずだ。自分はその中に入らないと思うことは思い上がりだといったはずだが・・・」
「私にそんなことはないですよ。こんな奴すぐに黙らせて言うこと聞かせて見せますよ」
というと若い男性は、初老の男性の静止を聞かずオレに近づいてくる。
その顔には相手を見下し、侮蔑の笑みを浮かべている。
うん、こいつはダメだ。
自分が負けることを想像できていない。
こんなのが多いからノンドゥに負けてきたことに気が付かないんだ、と理解できないのだ。
どんなに負けていてもそれは画面の向こう側であり、自分たちではない。
自分たちならもっとうまくできるという根拠のない自信に満ち溢れている。
最悪な状況を考えることができない奴だ。
ようは思い上がりだね。
どうしてくれよう?オレは絶賛休暇中なのだが・・・。
まあ、
2日ほど仕事でつぶれたのだが・・・。
それに若干後ろに控えている方の圧が怖い。
邪魔されたのが後ろの方の機嫌を損ねてしまったのだろう。
リオが放つ黒いオーラと圧力がオレを後ろから放たれている。
もちろん、その矛先はオレではない。オレではないのだが、真後ろから黒いオーラと圧力を受けていると落ち着かない。
被害者のオレがなんでこんな気分にならないといけないのだろうか。
疑問である。
どうしよう、もういっそ八つ当たりしようかな。このバカに。
なんて考えてしまう。
「ねえ、早く景色見に行きたいんだけど。」
とドス黒いオーラを出すリオが不満げに言い始めた。
いや、オマエそんなキャラだっけ?
最初はもっと落ち着いた人間じゃなかったか?
怖いぞほんと。
「うるさいな!田舎モン!オレ様がわざわざてめえらみたいなモンに声をかけてやってんだ。ありがたく聞いてろ!」
若い男性が怒りをあらわにする。
「何言ってんの、この程度でその体たらくなの。アンタの器がしれるわよ」
「なんだとこのアマ!」
と言い合いが始まった。
この状態では膠着状態突入だ。
完全な水掛け論だからね。
一行に話が進まない。
そこに一つ咳払いを入れ、平行線を止めに入る初老の男性。
「すまない、ウチのモノが失礼いたしました。何分世間知らずなのだ。
改めてお願いする、ご同行願えないだろうか。」
「お断りだね。今回の状態はほぼ誘拐と変わらない。
もし助けが欲しいのであればしかるべき方法を取り、筋を通すのが一般的だろう。
これじゃそこの若者が言うセリフをそのまま返すこととなる。」
「耳の痛いことだ、だが我々には引けぬ理由と時間もないでな。」
そういうと初老の男性は左手を上にあげる。
待ってましたと周囲を囲む者たちがこちらに向かってきた。
「ねえ、かたずけてもいいよね。」
リオが凶悪な顔つきで聞いてくると
「加減してくれよ、くれぐれも」
「任せて、息の根は止めないわよ。」
と言うと後ろいる4人に向かっていった。
となるとオレの相手はこの二人か。
なんて考えて居ると
若い男性は侮蔑の笑みを浮かべて殴りかかってきた。
まったく短気なことで。
オレはそれをかわし殴りかかってきた腕を取り投げ飛ばす。
呻き声声をあげ地面にたたきつけられる若い男性。
受け身もできないようだ。
なんだこの未熟者は、よくあれだけでかい口を叩ける。
あれか弱い犬ほどよく吠えるってやつかよ。
相手にもならん。
オレが視線を戻すと
静かにこちらを見据える初老の男性がいた。
まあ、焦っているのは仕方がないとして手段が悪い。
手順を踏まないと相手の逆鱗に触れるだけなのだが・・・
「どうする、あんたもやるかい?多分だけど勝ち目はないと思うが・・・」
「その通りだろう、だが先ほども言ったが時間がない。」
初老の男性は渋い顔つきでこちらを見据える。
「なに、まだ片付けてないの。手伝おうか?」
と気分晴れやかな顔で聞いてくるリオ。
その手にはスタンスティックが握られており、痙攣している4人が地面に転がっている。
念のため持たせておいたものがこうも役立つとはね。
「まあ、いいや。話にならんしね、あんたのところには苦情を入れておくよ。それともう少し相手を調べておくべきだな。」
の言葉が終わる前にオレは隠し持っていたスタンスティックを初老の男性にねじ込む。
一気に間合いを詰められ、対処もできなかったのだろう。
その場に倒れこむ。
まあ、こうなるわな。
「さて、行きますか?」
と振り向くとリオが倒れている若い男性にスタンスティックを押し付けとどめを刺していた。
笑顔で・・・。
怖いよ・・・ほんと。




