act42 レッツ!! スパルタ教育!その1
今日は、ベガ星系軍の体力トレーニングである。
道場で行うのだが、ジャスと問題児レクリアル・クレードを従えている。
ちなみにと問題児レクリアル・クレード君、彼は以前横やりを入れて来た元貴族君である。
護衛の二人もいずれこちらに配属される予定ある。
今回のメニューは、剣道の指導と試合かな。
剣道の基礎なら何とか教えることはできる。
今、こいつらが使う剣術はお遊戯に等しい。なら少しはまともな剣道を覚えてもらうことにした。
で、それだけだとやる気も出ないだろうと考え、いろいろ餌をまくことにした。
「さて、君たちの武術を指導することになったトモキ篠森だ。
実力は以前見せた通りだ。よろしく頼む」
と月並みな挨拶をする。
「ですが、武術なんて必要なのですか?」
コンテ・ミモレットはかみついてきた。
もう少し落ち着いて聞けないかね。
「健全な体には健全な心が宿るといわれています。それに文武両道ともいわれます。
武術をきちんと行い、礼節を学ぶことで判断力と偏った考え方を修正できます。
そのためです」
「ですが、そんなものに意味はあるのですか」
「ありません。ですので皆さんに対してご褒美をつけます。
まず、成績上位者には君たちが望むモノを一つ差し上げます。
ただし、成績上位者の中で彼レクリアル・クレード君に勝てたものだけにですが」
「わたしには何かないのですか」
レクリアルが質問してきた、目に覇気がないし濁っている。
死んだ魚のような眼だ。
うん、こいつにも餌が必要か。
「そうだね、こいつら全員を倒せれば君の階級は三級兵官から一級兵官に昇格させる。
今よりも自由度は上がるぞ」
「そんなこと、勝手に決めていいのですか」
「君に関してはオレの裁量で決めることができる。つまり免罪もできるわけだ。
君が真摯に行動できればだが…」
とオレは付け加える。
「それは、少しやる気になるね。要はあんたを認めさせればいいわけだ」
「そうだ、剣道の練習後試合を行い、ここにいる全員を叩き伏せる。
そして、ここにいる全員は君を倒せれば望むモノを一つ手に入れられる」
オレは淡々と話す。そこに感情の起伏はない。
ただの業務連絡である。
「では、御託は終了だ。これより剣道の授業を開始する」
まあ、スパルタで始める。
素振り千回、組手一人50回、筋トレメニュー各100回ずつ。行わせる。
まあ、無茶ぶりだ。でもこれはあくまでも手段でしかない。
どう考え、どう判断するかを導き出すための。
研修を受ける本人たちが自分たちに向けられる理不尽がどんなものか、どう感じるかが必要なのだ。
自分がされたらどう思うか、これは自分自身が肌で感じないとわからない。
だから、肌で感じさせるのだ。
約2時間、誰も立てなくなった。
そこに追い打ちをかける。
「では、模擬試合を開始する。立て」
と鬼教官ぶりを発揮してみた。
ポツリポツリと小声が聞こえる。
文句の言葉だ。反骨心はまだ残っているようだ。
でも、誰一人立てない。
仕方がないので今回は終了した。
実際、彼らが行った訓練内容は他の星系軍も行うことになっている。
正直、意味はない。さっきも言ったが
これはあくまでも手段でしかない。
どう考え、どう判断するかを導き出すための。
根性論なんて使うつもりはない。
ただ、考えるための通過事例だ。
身勝手な自己中な考え方がどんな結果を招くか、
そして、理不尽な状況をどう打破するために考えないといけないかだ。
そこに辿り着くは知らない。最初は無茶ぶりするしかない。素直に聞かないからね。
聞くようにするためのスパルタ教育である。
だいぶひどい方法だ。自分でも思う。
でも、彼らの考え方を改めさせするにはこんな荒療治しかないと判断した。
「さて、準備運動だけで動けなくなるなんて大したことないね。君たちは。
だから、あの程度の実力しかないんだよ。口と態度がデカいだけなんて役にも立たない。
次回はもう少しまともになっていること願いますね。では、本日はこれで終了です。
明日は実機での戦闘訓練です、遅刻しないように。
では、解散」
とオレは言うと道場を後にした。
後には目を回し、倒れこむ研修生たちがいた。もちろん問題児レクリアル・クレード君も含まれる。
「ば、化け物かよ」
「軍隊でもこんなことしたことないのに」
「い…今に…み、みてやがれ」
と、口だけは一人前に吠えていた。倒れたままではあるが
「お前ら、そのセリフは立ってから言えよな」
とジャスは半ば呆れ気味に嘆息して見ていた。
根性は認めるけど実力がない。のでこれはただの負け犬の遠吠えになる。
よく言うけど弱い犬ほどよく吠える。
周りを見ずに相手を見ずによく吠えるのだ。
まず、吠える前にやることがあるだろうに。
それに気づかんとはガキだね。うわべだけのガキだ。
しかし、オレの後をついてきたバラット・クランブル監査官が抗議をしてきた。
「こんな無茶な指導がありますか」
おお、キャリアウーマンらしき文句のいい方だあ。
「オレの指導に文句があるのであれば帰っていただいて結構ですよ。
最初にいらぬ問題を起こしたのはそちらだ。
私には、あなた方をお客さんとして迎えているつもりはない。
それにあなたたちは我々を田舎者、下賎な者と見下している。
そんな態度の者たちにモノをきちんと教えるつもりはないよ。
相手がどんな人であれ教えを頼むのなら礼節をきちんと重んじるのが普通だ。
それができないものにちゃんとした指導ができますか」
「それは、詭弁だ。われわれと事を構えるつもりか」
「あなた方の上司には許可をいただいています。確か、ベガ星系軍クブロート・ザルツシュタンゲン提督でしたっけ。
手加減無用で構わないそうだ。まず文句を言うのであればそちらに言うのが先ではありませんか、バラット・クランブル監査官」
冷たい視線を送り、言いくるめる。
「ですが、こんなやり方いけませんよ。パワハラじゃないですか」
「そうですよ」
「わかってしているんですか!!」
顔色が変わり声も大きくなる。
「私は言いましたよね。礼節ができていないと。口の利き方なんてどうでもいい。
その言葉に態度に相手を敬うものがない人に指導しても覚えることなどできない。
あなたたちの目的が他にあるように見えます。そのせいで今、あなたたちは目の前が見えていない。
いや、見ようとしない人たちに何を教えろと、どう指導しろというのですか」
と言うとバラット・クランブル監査官が詰まる。
そらそうだ。
この人たちの目的は最新機の情報だ。研修じゃない。
だから、こういう態度に出ても仕方ないのだろう。
でも、今は研修をしているのだ。
学んでいるのだ、それを理解できないのであれば理解させるまでだ。
ウチのメンバーにもそう伝えてある。
相手に対する礼節と、学ぼうという意識があれば問題など起きない。
思い上がりと相手を見下すことをする限り、この指導方法は変えない。
「まず、あなた達は目の前にいる人を状況を理解すことから始めていただきたい。
何しに来ているのかをもう一度話し合うことが必要なのではないですか」
冷たい視線を突き刺し畳みかける。
バラット・クランブル監査官はこぶしを強く握りしめうつむく。
反論はない。と言うかできたらすごい。
なんせ、ベガ星系軍の提督の名前まで出したんだ。できるわけない。
彼女たちの順番がおかしいのだ。ここは研修会であり、諜報合戦の場ではない。
何か勘違いしてないか、彼女は。
と思いながら、立ちすくむ彼女を残しその場を後にする。




