別れを告げ
「――…ユウナさんを壊したいとは思えない」
「えっ……。どうして、なのでしょうか?」
あり得ない、という顔でユウナは界を見る。
「私は界さんの大切な人たちを、殺したも同然なのですよ!? それを理由もなく許すなんて! どうしてそんなことが言えるのですか! あなたの周りの人たちは、そんな風に切り捨てることができることができる人達だったのですか!?」
最初の問いかけからしばらくして、ユウナは大声を上げた。
いや、怒ったというのが正しいのか。
その様子を見て、界は面を喰らってしまう。
だがすぐに持ち直し、ゆっくりと言葉を紡いだ。
「許す、とは言ってない。ただそれはユウナさんのせいじゃない」
「私のせいですよ」
「違うだろ。ユウナさんは自分の意思でやったわけじゃない。たまたま起こってしまったことだ」
「でもどんな要因であれ、それを起こしてしまったのは私なのですし……」
「だから許すとは言ってないんだ。ただ、ユウナさんが悪いわけじゃないのは分かってる。それに……」
界は話の途中で言い淀んだ。そのことにユウナは疑問符を浮かべる。
「それに?」
「――…それに、そんな顔できる子が悪いとは、どうしても言えないんだよ」
「えっ……」
予想外だらけの反応だったが、最後のひとことは特に予想外すぎて、ユウナは戸惑ってしまう。界のことが好きだと自覚しているだけあって、より戸惑ってしまったのだろう。顔自体は赤いわけではないが、湯気が立っているようにも見える。
最後の最後でそんなことを言われては、さすがにユウナも参ってしまった。
「界さん、好きです……」
「えっ……?」
ユウナが耐え切れずに発してしまった言葉。
その言葉が聞こえてしまった界は、顔を赤くする。
その様子に気付いたユウナは、無自覚にも言ってしまったことにが気付いた。
「い、いや。べ、べべべ別にいやらしい意味じゃなくてですね! ただ、界さん優しいなぁって! そうです! 優しいなって思っただけです!」
ユウナは全力で否定する。
界はその仕草で、明らかに恋愛感情なのだと実感した。
だが、好きだなんて言われても、界にはこたえることができない。
好きかと問われれば、好きと答えるだろう。
だがそれは、恋愛感情なんかじゃない。一緒にいた中でのユウナの言葉や優しさ。そういうものが、とても心地よかっただけ。
本当はこんな時、「俺も好き」と答えるのが道理かもしれない。だがそう答えたところで、界自身にはそんな気はなく、あまりいい方向にはいかないと思う。
まず、ロボットと人間は相容れない相いれない存在だ。
ここは否定された通りにしようと、界は決めた。
「俺もユウナさんの優しいところは好きだぞ。でも、それだけだ」
界は恋愛感情はないという意味を込めて言う。
その直前までおろおろしていたユウナは一瞬動きを止め、
「えっ……」
と零した。
少しかわいそうな気もしたが、これでいいと界は帰る準備を始める。
もうお別れだ。少し寂しい。なんでこんなことを思うのだろうと疑問に思いながら、界はドアの前まで歩いていく。
そして未だに少し呆けているユウナの方に向きなおり、言った。
「楽しかった。今までありがとう。さよなら」
そう言うとユウナはハッと我に返り、また悲しそうな顔をしてこう返す。
「私も、楽しかったです! さようなら!」
その言葉を聞いた界は、デパートを出て行った。
だが、何かを忘れているようなそんな気持ちに襲われる。
しかし、もう時間はない。早く泊まる場所を見つけないとと、そんな思考は消えていった。
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