真実を聴く
「なんていうか、あっという間だなぁ。もともと短い時間だけど、さ」
日が昇り始めた朝の頃、ふたりは少し世間話をしていた。世間話といっても、街の様子だとか、今までの過ごし方だとか。面白い話はない。
「そういえば、今日は泊まればいいのか? それとも夕方くらいに出ればいいのか?」
「今日は夕方ほどにお別れしたいと思っています。なのでお昼が終わったころから、私が知っていることについてお話したいと思っています」
「わかった。じゃ、ちょっと連絡してくるから」
そう言って、界は少しユウナのもとを離れる。
「どこからお話すればいいんでしょうか。こんなこと話したことがないのでわかりませんね……。真実を言ったら、界さんは怒るでしょうか。それとも、何も言わずに去っていくのでしょうか。もしかしたら、壊されてしまうかもしれませんね。……そんなことされたら、私は悲しくてどうしようもなくなりそうです。いや、その前に私の自我は、消えてしまっていますか。でも、悲しいって言っても、私はそれだけのことをしたんですよね。本当に、どうすればいいんでしょうか……」
「ユウナさん、連絡終わったぞ」
界はそう言いながら戻ってきた。
「明日くらいには着きそうだ、って。ここからだと夕方に出て、夜に1回野宿しなくちゃだからな」
「1回野宿するのですか!? それは申し訳ないです……」
「いや、全然大丈夫だ。慣れてるし。逆に、ここで寝るのに慣れると、困るからな」
「あはは……。それなら安心ですね」
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「ここでの食事も、最後だな」
そう言ってから、界は携帯食料を食べる。食事というには足らないほどのもの。
何度か見てきた光景を見て、自分の犯した罪を再確認する、ユウナ。
界が食べ終わったのを確認すると、ユウナは心を決めて、話し始めた。
「全部、私のせいだったんです」――と。
「ユウナさんのせい……前も言ってたけど、こんな世界規模のこといち個人でどうこう出来るわけないだろ」
「確かにそう思うかもしれません。こんな夢みたいな話……。私も夢であってほしいと思っています。でも、現実なんです」
「現実だって言ってもなぁ。じゃあ具体的に、どこがユウナさんのせいなのか、教えてくれないか?」
「どこが、ですか。どこが、といいようがないですね。全部、としか」
「だから、具体的に――」
「私は発条で動いてるって、言いましたよね!」
界が問い詰めようとしたとき、ユウナは大きな声を上げた。
顔はもう、泣きそうになっている。遠目から見ると、泣いていると錯覚しそうなほどに。
ユウナは少し落ち着いたのか、はッとなり、今度はゆっくりと話し始める。
「実は発条で動くようになったのは、十年前。世界がおかしくなった日です。こうなった原因は、全部天候がおかしくなったからですよね。毒の雨が降ったから、太陽が出なくなったから、食物は育たなくなった。食物が育たなくなり、唯一残っていた食物や植物は毒が混じってとても食べ物じゃなくなった。人間も家畜も動物も、生き物が生きれるような世界じゃなくなった。だから人の数も減りましたし、毒や人間の手が届かなくなって建物も崩壊。全部が全部、天候がおかしくなったからなんですよ」
「でもそれは天候のせいであり、ユウナさんのせいじゃない。それこそおかしいんだよ」
「そう、ですね……。具体的に説明するには、とあるところに来てほしいです。ここで話していても、何の想像もつかないと思いますから」
「とあるところって?」
「昨日入ったらダメと言った、あの場所です」
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