少しずつ見つけて
結局、いいものは見つからなかった。少し残念だと、界は肩を落とす。
それにしてもユウナのあの慌てようはいったい何だったのか、謎は深まるばかり。最終日にはすべて教えてくれるらしいが、それもどこまでの情報でどれほど需要があるかはわからない。
この努力が無駄にならなければな、と思う。
「それにしても、もうすぐ崩壊そうだな。このデパート」
たまに崩れて落ちてくるコンクリート。今日明日ということではないが、崩壊するのも時間の問題だ。
「そうですか? そういう知識は持っていないので、分からないんです」
「でもまだ大丈夫そうだし、気にしなくていいと思うぞ。……もしこのデパートが崩れたら、ユウナさんはどうするんだ?」
「そうですね……。その時になったら考えます。一緒に壊れるのもよし、ひとり旅するのもよし、ですね。でもここを離れたら電気が……あ、私今は発条で動いてるんでした」
「今は、ってどういうことだ?」
「いえ、何でもありません。ただ少し前のことを思い出しただけです」
「そっか」
ユウナは隠し事が苦手なのか、結構気になる発言をしてくる。地下でのことも、今のことも。プログラムされたものではない、自律した自我。こういうところを見ていると、ユウナが本当の人間に見える。
最初に感じた苛立ちは、今ではもうすっかり消えてなくなった。まっすぐな目だけれど、よく見ると悲しさを孕んでいるように感じたから。
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夜になって界が寝静まった頃。
ガチャッ
地下にユウナが来ていた。開けたドアは、界が開けようとした扉だ。その扉の向こうには、動いていない機械、バラバラになった機械、そして――
――動いていない、壊れかけた人型の機械。ユウナはそのロボットの横に佇む。
「ユウアちゃん……。もう少しでここ、崩れちゃうそうです。私、どうすればいいんでしょう。一緒に壊れた方がいいんでしょうか。そんなことしても、何も変わらないですけど……」
ただただ話し続けるユウナ。
ユウアと呼ばれるロボットに発条はない。
「ねえ、ユウアちゃん。私、私ね……好きな人が、できました。界さんっていうんです。おかしい、ですよね。会って間もないですし、まず私はAIロボットですから。自我があるといっても、複雑な気持ちは持てないはずなのに。どうしてこんな気持ちが生まれたんでしょう。でも、今日でお別れなんですけどね。そうしたらまた、ひとりです。せっかく二日間にしてもらったのに、こんな気持ちが芽生えるなんて……」
不意に立ち上がり、泣きそうな顔でユウナは言った。
「ユウアちゃん。ではまた、です」
ガチャッ
ユウナはそう言い残し、その部屋を出ていった。その部屋の中には、変わらず壊れた機械で、溢れ返っている。しかしなぜ、ここには壊れた機械しか、ないのだろうか……。
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