秘密の面影を
界たちは少し他愛もない話をしながら、デパートの中を探検していた。
場所は地下。
瀬利デパートの地下には、食品などの倉庫があるからだ。食べられるものは貴重で、できれば多く手に入れておいた方がいい。
……というものの、今はもう食べられるものなんて、ほとんどない。賞味期限切れや腐ったりカビたりしているものくらいしか、なくなってきている。今食べているものは、少し回復しつつある、人が住んでいる場所の中心地でつくられた、食物や化学製品などを材料としたものだ。
最初の頃こそこういう店に売っている非常食などを食べていた。だがしかし、減ったといってもまだかなりの人がいる世の中。そんなものはすぐに尽きた。
「やっぱりないか……」
界は一通り見終わった後、大きくため息をつく。あると期待していたわけではなかったけれど、ユウナがいるのであれば……と考えていたので、地味にショックだ。ユウナは自分が任されたもの以外はやらないようで、そこは機械なんだなぁと感じされてくれる。
そういえば――
「ユウナさん以外に機械はいなかったのか?」
そんな疑問が湧いてきた。ユウナが任されていなかったのであれば、違う機械がその任務を担っていたのではないか、と。
「前は……いました。ですが十年前、私の、私のせいで、壊れちゃったのです」
ユウナは人のように、悲しんでいるような顔をしている。でも、いつだってユウナの目に涙はない。
機械だから、なのだろう。
「ユウナさんの、せい?」
「はい。ですが、今は教えられません。これも最終日に、合わせてお伝えします」
「わかったけど……どうして最終日?」
「それは、まだ秘密です」
へらっと笑った顔を、ユウナは見せてくる。でも界にはそれが、自棄を含んでいるような笑みに見えた……。
それから界たちはまた探索を始めた。二人はどんどん奥に進んでいく。
「あ、あそこも見ておくか……」
歩いている途中、ひとつ扉があったので、界はそこに入ろうとする。しかし――
「界さん! そこはダメです!」
ビクッ
界は驚いて、一歩後ろへ下がってしまう。
「……い、いきなり大声出すなよ。で、どうしてダメなんだ?」
「えっと、そ、そこは私が管理しているところで、え、えーと、そこには何もありませんから、です」
「ふぅん……。でもそれならいきなり大声出すことないだろ」
「え、えーと、自分の生活ルームって、見られるの恥ずかしいじゃありませんかー」
「機械の癖に棒読みとか器用なことできるんだな。で、本当は?」
「……って、私は機械じゃなくAIロボットです! 機械と私を一緒にしないでください。私には知能がありますから。ほら、もう戻りますよ」
「はいはい」
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