心を決めて
「ん?」
朝界が起きると、なぜか布団がかかっていた。
「なんだこれ……?」
「界さん! 起きられたんですね。かってにお布団かけてごめんなさい。そんなうすい毛布じゃ寒いかと思いまして……」
「ふうん。ありがと。じゃ、俺は行くから」
「もう行って、しまうのですか? 久しぶりに人間の方とお話しできたのに……」
「言っただろ、俺は調査で来てるんだ。全然知らない機械の奴に構う暇はねえ」
「わ、私がもし、その調査のことでわかることがあるとしたら、いてくれますか?」
「……ユウナ、さんは俺に居てほしいのかよ」
「はい。いてほしいです」
「なんでだよ」
「久しぶりにこんなに話せたから、です」
「あっそ。俺にはここに居てやる義理はねえし。それにあんたの話を聞いて得られる情報より街を見た方がよっぽど利益があるっての。じゃ」
そう言って、界は歩き出した。
そして、その背中を見つめ続ける、ユウナ。
機械なのに、機械なはずなのに。
ユウナの目は、悲しさで溢れていた。
そしてしばらく歩いたころ。未だに自分のことを見ているユウナに、心が折れた。今度は、ユウナに向かって歩いていく。
そうすると、ユウナはとても嬉しそうな顔になって、
「ありがとうございます!」
って叫んだ。
「言っておくけど、機関長にダメだって言われたら帰るからな」
「はい。でも、戻ってきてくださって、とっても嬉しいです!」
「じゃ、ちょっと待ってて」
ザザッ
「――あ、あ~、こちら、六丁目捜査官、乃波羅 界。瀬利デパート辺りを捜索中、一機の機械と遭遇。少しの間一緒に居ろと言われたのですが……よろしいですか?」
『なぜそんなことに?』
「その、久しぶりに人間と話して嬉しかったから、だそうで……。なんでも、この世界の状況について知っているとかなんとか……」
『そうか。こちらとしても、君には早く帰ってきてもらいたいところなのだが……その情報というものも魅力的だな。よし、そこにいることを許す。しっかりとその情報を聞き出せ』
「はっ!」
「どうでしたか?」
「いいって。ただし、本当にその知ってることを教えてくれるなら、だけど」
「はい! しっかりと知っている情報は教えます!」
「で、いつまで居たらいいんだ?」
「そうですね……。大体二日間くらい一緒にいていただければ、嬉しいです。そしたら最終日にその情報をお教えします」
「そんな短くてもいいのか? 一週間くらいは覚悟してたんだけど」
「いいえ。そんなに長くいても、困りますから」
「ま、俺の方も情でも湧いたら大変だし、それくらいがいいか」
「楽しい二日間が始まりますね」
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