ロボットの少女と
「誰、ですか?」
その少女は、驚いた表情で界を見る。
「あ、俺は乃波羅 界。こんなとこに人間がいるなんて信じられないんだけど……。どうしてこんなとこにいるんだ?」
界は自己紹介した後、どうしてここにいるのかを訊いてみた。
こんなところにいるはずもない『人』がいるのだ。奇妙で仕方がない。
だがその答えは、界の予想を超えるものだった。
「私は、このデパートの整備、管理を任されているAIロボット、ユウナです。なので、人間ではありません」
「AIロボット、なのか。俺、見たことなかったな。こんなに人間に近いのか。どうやってできているかが気になる……」
「私のような種類のロボットの皮膚は、本物の人間の細胞をもとに形成されているので、より人に近く見えるのです」
「すごいな。全然知らなかった……。じゃあお前……じゃなくユウナさんは、ずっとここに居るのか? ロボットって電力とかいると思うけど、そっちのほうは大丈夫なのか? いま電気は通ってないはずだけど……」
「私は発条で、動いているんです。戻り終わりそうな時に、自分で発条を巻くんです。だから私は、今もこうして動いているんです」
ユウナは、ここです、と発条を見せてくる。今も少しずつ戻っているようだ。
界が感心していると、ユウナは突然何かを思い出したかのように、界に質問してきた。
「ところで、どうして貴方はこんなところに、いらしているのですか? もしや、このデパートに、いらしてくれたのですか?」
「いや、俺はここに来たというかなんというか……」
デパートにいたのかと訊かれて、どうこたえようか迷う。
ここに来たというのはあながち間違いではないが、買い物をしに来たわけではないので、反応が難しい。
どうしようか界が慌てていると、ユウナは少し考える素振りを見せてから、話し始めた。
「――…これは私の想像なのですが、もしやここで夜明けを待とうとされたのではないでしょうか?」
「そう、だけど……。なんで、わかったんだ? やっぱり、そういうのはダメだとかか?」
「そうではありません。ただ、今の外はとても人が住めるようなところではないので。ここなら、一晩くらいは過ごせますし」
「……ダメじゃないのか。じゃあ、ここで泊まらせてもらう。俺は入り口付近で寝てるから」
界はそれだけ告げて、すぐにそこから離れた。
今ここがどうして綺麗に整理されているかが分かったので、もうユウナと話す必要もない。どうして外がどうなっているのか知っているのに、未だ整理し続けるのか、そこは謎のままだが、特に必要のない考えだと界は思い、そのまま入り口付近へ向かった。
向かう途中、ユウナのことを思い出しながら、界はつぶやく。
「あの顔、幸せそうでイライラする……」
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