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最終兵器

作者: 鰤金団

始まってそうそうですが今、私はとてもお腹が痛い。

ここまで痛い腹痛は始めてかもしれません。

早く国に連絡しなければ国の存続に係わる一大事になってしまう。

私は急いで公衆電話を探す事にします。

こんな時に限って携帯電話の充電が切れてしまっている。

電話さんお願いです、お願いだから出てきてください。

一応言っておきますが、別に怪しい薬をやっている訳ではありませんよ。

公衆電話が生き物だったら来てほしい、今すぐ私の前に出てきて欲しい、今の私はそんな状況なのです。

ギュルルルル・・・

お腹が警告音を出し始めました。

まだだ、まだ出すには早すぎる、もっと、そうもっと溜めなければ・・・。

別に私は限界まで我慢する事を快感としているM気たっぷりの変態では無い事をお知らせしておきます。

焦っている時に限ってなんで探し物って見つからないんでしょうね?

「なんで公衆電話が無いんだよ」

気が立って少々荒っぽい言葉が出てしまいました。

全く携帯電話が便利だからって公衆電話を減らす事なんか無いじゃないか、国は何を考えているんですか。

このままではこの国を滅ぼしてしまうかもしれませんよ。

私の怒りが天に通じたのか探していた公衆電話がやっと見つかりました。


トゥルルルル・・・

早く出なさいよ総理大臣。

ようやく電話が通じる。

「もしもし?私だけど?何?名前を言えって?バカいってんじゃないよ!!」

電話に出た相手は総理ではなく秘書でした。

私は一刻を争う事態だったので冷静に会話するという事が出来ない状態だった。

秘書はとにかく相手が誰か解らなければ電話を繋ぐ事が出来ないの一点張り。

さっさと相手に私の事を伝えた方が早そうだ。

「人間兵器よ、人・間・兵・器、英語で言うとLethal Weaponよ!!」

そう言うと秘書は失礼しましたと言って総理に電話を繋ぐ。


「総理?私だけど至急ここまで来てください。場所?臨界市よ、陸海空軍全てを使ってでも私の所へ至急来なさい!!限界に近いわ」

電話を切る。

後は迎えが来るのを待つだけだ。

電話したら少し余裕が出てきた。

ここらへんで自己紹介をしておきましょう。

さっき電話で言ってましたが、私は人間兵器です。

最終兵器なんて呼ばれ方もしてますが、この呼び名の本来の文字が嫌いで最終兵器になっています。

なんで人間兵器なのかと言うと、実は私の体は他とは違う特異体質なんです。

その特異体質が原因で幸か不幸かこの国の人間兵器をやっています。


自己紹介もとりあえず終わって後は迎えを待つだけだなのに私のお腹は再び不吉な音を鳴らし始める。

ギュォォォォ・・・

さっきの音より邪悪さが違う、余裕をかましていた罰なのだろうか?

そんな時、遠くから爆音が近づいてきた。

「お待たせいたしました、人間兵器さん。すぐにパトカーに乗ってください」

その時の彼の笑顔は悪意にしか取れなかった。

だってそうでしょ?お腹が痛いのにパトカーで駆けつけるなんて、死刑宣告もいい所だと思わない?

総理はきっとこの国に嫌気が差したんだ、そうでなければパトカーをよこすなんて恐ろしい事する訳ないもの。

しかし、ここで駄々を捏ねては私の家族、友人、知人、その他大勢が大変な事になってしまう。

私は渋々パトカーに乗ることにした。


パトカーに乗ってすぐ私は後悔した。

運転してるこの警官、絶対元走り屋だ。

限界速度ギリギリで走りながら他の車を上手くかわしている。

だ・け・どそんな運転を感心している余裕なんて今の私には無かった。

むしろ中で感心できる人間なんてそうはいないんじゃないかと思うね。

「警官さん、早くって言ったけどそんなにスピードださないで大丈夫ですよ」

焦っている私でもこの時ばかりは敬語になってしまう。

それだけ私は気が気でなかったのだ。

それなのにこの警官は平気な顔して言う。

「大丈夫ですよ、このくらいのスピードじゃ死にはしませんから」

(普通に死ぬ速度ですよ、警官さん)

例え今のスピードで死ななくても今の私のせいで死んでしまいますよ。

ギャルルルル・・・

パトカーの音では無い、私のお腹の音だ。

タイムリミットは近い。

「警官さん、お願いします。もう少しスピードを・・・」

言い切る前に車が停まった。

もう少しで国が滅びるところだった。

「すいません人間兵器さん、渋滞に捕まってしまいました」

ちょっと待ってください、どうして国は交通規制をしていないんですか?

やっぱり総理はこの国を滅ぼしたいんですか?

「交通規制が間に合わなかったんですか?」

私は警官に質問する。

警官は私が予想もしなかったような事をさらりと言った。

「国の存続に係わるって言われてたんで、目的地に少しでも早く着くように指定ルートよりも早い近道を使ったんですよ」

最高に迷惑な事をしてくれる警官だった。

警官は私の怒りを他所に無線で連絡を取っている。

「人間兵器さん安心してください、すぐに迎えのヘリがこっちに来てくれます」

そうかそうか、ヘリが来てくれるのか・・・。

ダメじゃないか、最悪な状態なのにどうやってヘリに乗るのだ。

そもそもヘリが下りる場所が無いじゃないか!!

この国の皆々様御免なさい、今日でこの国は滅びてしまいます。

本当に御免なさい。


無線連絡から数分が経ちました。

ゴギュギュウ・・・

私のお腹にはどんな魔物が住み着いているのでしょうか?と聞いてみたくなるほど音がお腹から聞こえてきました。

空の上から音が聞こえてきました。

車の中にいても聞こえます。

そうです、ヘリが到着しました。

私のお腹も秒読み開始です。

「お待たせしました。しっかりこれに体重を預けてください」

そう言って自衛隊員は私を布に包みました。

これなら私は余計な力を入れずにヘリの中に入る事が出来る。

凄いぞ、自衛隊。

私を包んだ布と一緒にヘリへ向う自衛隊員。

後はヘリに乗って秘密の場所に行けばいいだけと思っていました。

そんな気の緩みいけなかった。

私を迎えてくれたヘリの中にいた隊員の手を掴んだ瞬間、私の最臭兵器が起動した。

その日、世界から一つ国が消えた・・・。


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