カモネギ
と、いうわけで俺たちは今エルフの里に歓待を受けている。如何してこうなったのか。それはまあ、いつかの機会にでも。野菜中心の美味しい御飯、至れりつくせりの神対応。そして何より、美人なエルフ女子が両隣に座り、なんとお酌をしてくれるのだ! エルフの里は最高です。
「お、おおおおにいさん、すごい大剣をお持ちででですね」
俺の右側に座っている、前髪が短く比較的露出度も少ない気の強そうなエルフの子が、睨み付けているような強張った笑顔でお酌を注いでくれるのはちょっと怖いけど。リクもあっちでよろしくやってるだろうし、ロンとライムさんは別の所で薬草を見せて貰って居るらしい。何か色々忘れていってる気がするが、此処は楽園のような場所なのだし、気にしなくて良いんだろうな。
「お客様、此方採れたて新鮮のお肉でございます。気に入っていただけると良いのですけど」
ニコニコと初老のエルフが料理を持ってやってきた。そのまま軽い説明と共に出された料理は、ステーキのようだ。なんだか見た事がない肉だが、美味しそうだ。
「今日は本当に大漁でしたわ。人間がネギ(獣人)を連れて来るなんてねぇ」
初老のエルフが小さく呟いた内容は聞き取れないが、まあ、きっとイイコトなのだろう。
ーーだって此処は、楽園なのだから。
「という展開になるのは容易ですぅ。私達かよわぁーい獣人さんはぁ、エルフ族のごちそうになっちゃうんですぅー! エルフの里断固反対!」
ペッツェルトが教えてくれた子天使族の住まう聖地から程近い場所はエルフの里だと教え、子天使族のところにそのまま行かず数日エルフの里に滞在すると言った時から、ライムさんにずっと「エルフの里に行くデメリット」について熱弁されている。もう何時間経つか分からないし最初の方こそ止めてくれていた俺らの良心ことロンはリクの背中で眠ってしまいライムさんのストッパーを止められるひとが居ない。リクは我観せずといった様子なので正直殺したい。
「聞いてますかぁ?! エルフ族はあなたにとっても私達にとっても危険なんですぅ!!」
「あー分かる分かる。エルフはゴミだ。けどダークエルフは良いぜぇ~」
「聞いてるよライムさ……って、え? あんた誰だよ」
いつの間にか俺とライムさんの間に褐色のデカくてダークエルフっぽい男がライムさんの肩を抱いてうんうんと頷いていた。
「アッウッエッ」
ライムさんは現状を理解すると変な声を上げてショートしてしまった。捕食者に肩抱かれてたらそりゃ死刑宣告されてるもんだよな。死んだフリしても仕方ない。
「俺ぇ? 俺様の名前はモード。ダークエルフの商人やってる」
褐色半裸で肩になんか白いの付けてる変態……もとい、モードと名乗った胡散臭い商人は、ヘラヘラと笑いながらライムさんから腕を離し、自己紹介の後ワザとらしいお辞儀をした。
「えーと……モード、さん。なんで突然ここに?」
「そりゃお前かn……困ってるようだったからな! 心優しい俺様が手助け出来ればなぁ~~って来ただけだぜ」
絶対コイツ金目的だ。目が金マークになってる。手も金よこせの形してるしめっちゃ分かりやすい。
「商人ってマジ? じゃあ、剣と飴欲しいんだけど売ってくれない? あとあと、うまくエルフの里回避して子天使族の所行きたいんだけど、案内頼めたりする?」
いつの間にか隣に来ていたリクが札束を二つ出し、モードの手に置き軽い調子で頼む。絶対このエルフ詐欺るぞ、とは思ったが口には出さないでおいた。世間知らずっぽいし、痛い目見とくのも経験だよね。
「札束は今の所一つで良いぜ。剣は切らしてるしエルフの里回避ってのは中々に難しいからな。飴はやろう。これで契約成立っと……おし、案内してやろう! モード様について来な!」




