最終話 ハッピーエンドの先
ながい、長い夜が明ける。
明けない夜はないと人々は言う。
明日という日に待ち受ける絶望や、
夜中の暴れ出す鬱な気持ちにも
終わりがあると伝えたいのだろう。
僕はいつだって
夜は明けて欲しくないと願う人だ。
それでも、今日という日だけは、
明日が怖くないと思えた。
光莉とともに超えた夜も何度かあった、
それでも、今日より安心して超えられた夜は
いままでなかった。
これから先、今日よりいい日があるといいね、
これ以上はもうない気がして、
期待しすぎないように生きるけど、
それでも光莉、
君には誰よりも幸せに生きて欲しいんだ。
すっかり白んできた空を2人は見つめる。
天の川もふたご座流星群も
見えなくなくなってきている。
隣に座る光莉の手に手を重ねる。
「帰ろうか。」
「うん。結局朝まで居ちゃったね。」
そう言いながらも光莉は嬉しそうだ。
僕は手を差し出す。
光莉が笑って手を取る。
2人のこれからはまだわからない。
それでも今日というたった1日で、
生前の2人の30年、
そして光莉の15年もの歳月の意味が
大きく変わった。そして報われたとも言えるのかな。
いまの2人が今日の気持ちを忘れなければ。
きっと最後まで添い遂げられる、
そう僕は信じている。
本当の意味で確かなものなんてないけれど。
人々は確かなものを探す。
でも、僕が光莉に向かって伸びること想いは、
間違いなく確かなものだと言える。
心から確信を持って言える。
光莉も同じだといいな。
その気持ちをいつか
言葉にできる日が来たらいいな。
光莉の口からその気持ちを聞けたらいいな。
物語ならばきっとハッピーエンド。
でも僕らの人生はこれからも続く。
本当に願うべきはきっと、
この先の人生のハッピーエンド。
まだ誰も知らない、
でも2人にしか作れない。
2人でしか作れないなら。
一緒にこれ以上とない人生にしよう。
喧嘩も無駄にしないで、
また一つ理解し合えたのだがら。
これからたくさん作るであろう思い出の
全てを覚えていられるわけではないだろう。
でも、どちらかが覚えたなら笑いながら
また話をして喜び合えたらいいよね。
そうやって、これからの全てを
少しでも多くの幸せで満たしていこう。
僕と君が、お互いに望み合えば、
きっとそれが出来るよ。
だからこれからも一緒に行こう。
「そう言えば。」
光莉が立ち止まる。
「ん?」
「よく私の言葉覚えたね。
最後は私の側にいて。
結果的に守れなかったから。
トラウマになっちゃったかと思って。」
「あー。それね。
俺さ、その言葉、すごい好きなんだよね。
いつも知恵熱出そうでパンクするくらい
色んなこといつも考えつくして。
ぴったりな言葉を探してるけど。」
光莉の瞳の奥に白んだ空が映る。
「なんか、とっても綺麗な言葉だなぁ。
これからも大切にしていきたい言葉だなぁって
思ったんだ。」
「なるほどね…。」
「どうしてそんなこと聞くの?」
「あの場面で出てくるとは思わなくて、
嬉しかった半分、驚いて。」
吹き上げた風が光莉の髪をなびく。
「でも、聞けてよかった。
悠人の言葉の選び方が好きだから。
そんな悠人が私の言葉を
好きになってくれることが嬉しい。」
「そっか。そんな風に思ってくれてるなんて、
俺も嬉しいよ。」
きっといま僕は変なにやけ方してる。
光莉は気付いてるだろうけど、
どう映ってるだろう。
「本当に喜んでるみたいで
私も幸せな気持ちになってます。」
光莉が僕の顔を覗き込む。
「へっ?、心読まれた?」
「当たった?悠人ったらわかりやすい。」
「わかりやすいかなぁ…。
なんか恥ずかしいな …。」
僕は頭をかく。
全部光莉の手の中のようだ、
でも嫌じゃない。
「ほら!行くよ!
電車の時間になっちゃうよ!
逃したら1時間後!」
「もう1時間一緒に居れるなら本望だな〜。」
「それは私も同じだけど、
そういうことじゃないでしょうー!」
2人は笑い合う。
この夜明けとともに、
2人の未来が始まるような気がした。
そしていま、
ハッピーエンドの後の
ハッピーエンドに向かって2人はいま歩き出した。




