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最後は私の側にいて  作者: 15me
30/32

25話 伝えたいこと




屋上のテラスは想像より広かった

真っ白はテーブルと椅子が並べられている。



「ここからでも星は綺麗に見えるなぁ。」



「やっぱりこの駅の小島自体、

星見に適してるように作られてるんだね。」




「そうみたいだ。」




僕は端っこのテーブル椅子を指差す。



「あそこに座ろうか。

この島を一望しながら星が見えそうだ。」



「うん。」


お互い、いつものことだが、

話があるからか、会話がぎこちない。



大した会話もなくテーブルにたどり着く。




柵に手をかけ、街を見下ろす。



「おおー。何となくわかってたけど真っ暗だ。」


「ね、でも昼間だったらあの並木道綺麗そうじゃない?

散歩とか気持ち良さそう。」



光莉は少し元気そうに指差す。



僕は光莉の方を見る、


「次は昼間に、また来よう。」


「うん、楽しみだね。」



何気ないまた行こうの約束。

これこそが幸せにどれだけの人が気付けるだろう。



失った人でさえ、

何度だって繰り返す。


大切にしたって、

相手の気持ちでどうしようもなくなるもの。





気持ちを落ち着かせる。


大事な話はやっぱり緊張する。



「話そうか。」


「うん。座ろう。」




真っ白な椅子に座る。



目を閉じて、

深呼吸をして、

息を整える。



「悠人。」


光莉の声がして目を開ける。




光莉は僕に優しく話しかける。


「大丈夫だよ、心配しないで。

きっと全部、大丈夫になる。」



何を話すかもわからないはずの光莉に励まされる。


「ありがとう。」






もう一度、覚悟を決める。




「光莉。」


「うん。」



「怒らないで聞いて欲しい。」



「私は悠人怒れる立場じゃないよ。

悠人に許されてもう、感謝し尽くせない。」





「じゃあ、心置きなく言える。」




僕は大きく息を吸う。


「俺の寿命、光莉にあげる。」


「それだけはダメ。」


即答で光莉で答える。



「ほらすぐ怒った。」


「悠人が怒るってわかってるのに言ったのが悪い。」



光莉は言葉を続ける。


「これは私の償いそのもの、そう言ったじゃん。」



「償いはもう、僕が知らない

今日までの8年近くの想い出で済んでるよ。」



「悠人が良くても私が良くない!」



「光莉、いつも通り、

とりあえず、僕の話を全部聞いて。

光莉の時もそうだったでしょう?

このままだと押し問答になっちゃう。」



「むう………。わかった。」


光莉は不服そうに頬を膨らませた。



「次、何か言うときは、

挙手してからお願いします。」


「はーい。」


光莉は気の抜けた返事をする。






僕は話を再開する。


「僕の寿命あげるから、

僕と一緒に生きて欲しい。

光莉とじゃなきゃ、ダメなんだ。

先に行かせるわけにはいかない。


願わくば僕が先に死ぬ時が来て、

泣きながら笑って、次こそは見送って欲しい。」



ここまで聞いて光莉は

気の抜けた返事をした時の表情を消えて、

真面目な表情だ、黙ったままこっちを見つめている。


さっき茶化した事を後悔したような顔にも見える。




「そりゃ、すれ違いとかもあるだろうし、

その気があってもなくても、

仕方のない事情とかで、

異性と一緒に居なきゃならない時とか

ご飯に行く時とかあるかもしれない。


それがお互い嬉しいわけないし。

嫉妬しちゃうこともある。」



「でも、でもさ。

2人が一緒に居たいって気持ち。

ここまで理解し合えたんだから。

信じてるんだよ。」



「人だから何があるかわからない。

言ってしまえばそれまでだけど。


だからって、僕は受け入れたくないよ。

2人は違うって言いたい。」




ふと、沈黙がやってきた。

ゆっくりと歩いて、

2人の間を通り過ぎて行く。





「ぐちゃぐちゃになってきたけど。


伝えたいのはさ。

お互い、これから色んなことがあると思う。

それで喧嘩したり、素っ気なくなったり、

どうしようもない事を責め立てあったり、


それでもさ、僕も光莉も、

そんなことしちゃう理由はまだわからないけど、

ずっと一緒に居たくて、側にいたくて、

そんな気持ちの一心でやってることに

変わりないんだと思う。


その心を、お互い忘れずにいれば。

その心をお互いに誓えば。

不安な時も、心が壊れそうになった時も、

部屋に雨が降る夜も、

超えて行けると思うんだ。」






「その、つまり。

光莉の言葉を借りるなら。」






「最後は僕の側にいて。」

「最後は私の側にいて。」



その言葉をほぼ同時に発した時

光莉はもうボロボロに泣いていた。





×××××××××××××××





「とりあえずは、

ここまでが僕の伝えたいこと。

光莉はここまで聞いて言いたいこととか

聞きたいことある?」



「とりあえずって、まだあるの?」


光莉は笑いながら尋ねる。



「光莉が納得してないところを

説得するためにとっておこうかなって。」


僕は頭をかきながら答える。



「もう、何言ったって無駄でしょう?

こういう時の悠人は何言っても効かない。」



いつもの喧嘩なら嫌味に言ってるその言葉は

いまは呆れながらも嬉しそうで、

心の中どこか期待していたような、

僕にはそんな風に聞こえた。




「納得していただけたかな?」



「ずるいよ。でも、

ここまで悠人が悠人らしいと少し笑っちゃう。

なんか、変だけど、本当に嬉しいよ。」



「ちゃんと光莉の口から了解の言葉をもらわないと

気が済まない。」



「もう…。」

光莉は少し恥ずかしそうだ。



「私は悠人から寿命をもらいます。

そして、その分、悠人を幸せにする。

きっと同じくらいの時期に死ぬことになると思う。


でも絶対私が見送る。

最後の一瞬まで悠人の側には私がいる。


だから、安心して私と分け合おう。

確かなものを示す方法はないけど。

これが私の全て。」




光莉が困った顔をして僕の顔に触れる。




「だから、そんな顔しないで。」


そう言われて、涙が流れていることに気付く。



「あれ?なんで泣いてるんだ…?」



僕は頬を手で雑に拭う。




「ダメ。」



光莉がその手を止めるように取る。


そして、光莉の指が優しく涙を拭った。




僕は呟く。


「きっと、嬉し涙だ…。」



「だといいな。」



光莉は満面の笑みで涙を拭い続ける。




「ごめん、止まらなくて…。」



光莉が慰めるように話す。


「泪ってね、気持ちが溢れた時に出るんだって。

私の大切な人が教えてくれた。

だから。大切な人の溢れた気持ちは、

私が受け止められたらいいなって、

そう思ってるの。」



「ありがとう。

俺の気持ち、少し伝わっちゃった?」



「うん。私への愛情がたくさん。」


光莉はいたずらっぽく笑う。


「ずるいなぁ。」



「んー?何がー?」


光莉はわざと知らないフリをする。




そうこう話してる間に、

僕は落ち着き始め、涙も止まった。




僕は光莉の手をギュッと握る。




「光莉?」


「どうした?悠人?。」



「さっきあんなにたくさん、

光莉をどれだけ思っているかの愛の言葉を

話したつもりだったけど、

ひとつだけ、言い忘れてたことがあった。」




「なに?」



光莉の方に身体を向ける。



光莉の目を見る。



「光莉、好きだよ。」



光莉はニッコリと笑う。


「私も、好きだよ。悠人。」




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