16話 答え合わせ
夜空の全体に広がる天の川は
いまにも落ちてきそうで、
流れ星は川の流れのように、
止めどなく、僕には見えない何かを運んでいる。
「悠人が私にフラれてから
完全に塞ぎ込むまでの大体、
6ヶ月くらいのあいだに、
それは、それは大きいことがあったの。」
「空園ビルで言ってた旧人類って人たち?」
「そう、旧人類を名乗る人たちが現れて
その人たちの持っていた技術は現代科学や技術を
圧倒するような、それこそ魔法のような
神様が居るなら神の力のような。
そんな技術を持った人たちが現れて、
この地球を掌握した。
彼らは支配というより、
自らの技術を世界中に浸透させて、
人類の進化を早めるのが目的みたいで、
それが本当かわからないけど、
当時のこの星の科学技術も取り入れて
さらに大きな技術を得た。
そして今もなお、その目的でいまもこの世界に
恩恵を与え続けてくれている。
彼らに対して
否定派肯定派はいまもいて
議論は未だに続いてるけど、
それはまぁ
悪いことじゃないし、
便利なことだからいいことだから、
彼らがどうとかは
どうでも良いことだけど。」
光莉が僕の手をとった。
「私が伝えたいのはつまり、
悠人が世界からの繋がりを絶ったあと
想像も出来ないくらい世界は大きく変わって、
まるで別世界になったこと。」
ここで光莉が一呼吸置いた。
「ここからが大事な話。
私がどうやっていまの状況にしたのか、
なぜ悠人が記憶喪失になったのか、
まず、この状況にした方法、
彼らの技術の中で、最大の発明、
名前は『時間移動』、
わかりやすくいうとタイムマシン。」
「タイムマシン…。」
夢みたいな話だ、僕が生きてる間どころか、
下手したら永遠に出来ないんじゃないかと
思っていたものが、過去の人達が現れただけで
実現可能になってしまった。
「時間移動は色々な制約を伴うし、
許可も手続きも多いし。
振り返るとすごい大変だったなぁ、
そこら辺の話は機会があったらまた話すね。」
大きい流れ星が流れた。
「でもね、私が使ったのは
普通のタイムマシンじゃなかったの。
いまの私の記憶のまま、
ある時間までに移動する方法、
つまり移動した先に私が2人存在しない方法。
そうしないと悠人の側でまた生きることが
出来なくなってしまうから…。
悠人が困ったり悩んだり苦しんだりした時
何があった時でも悠人を助けるのは
私だと誓ったから、心に決めたから。
そして何より、
悠人を助けるための最善の方法だと思ったから。」
光莉が起き上がって僕の顔をのぞいた。
「でもね、
この方法には大きな代償があるの。」
光莉は息を整える。
「それが時間移動した期間分、
その人の残り寿命を失ってしまうこと。」
衝撃の一言に思わず話を遮ってしまう。
「そんな!どうしてそんなこと!?」
「そんな現実、ひどいよね。
でもこれが私の覚悟、悠人にしたことに対する
償いとでも言うのかな。
悠人がそんなこと望まないくらいわかってる。
でも、悠人にあんなことして、
それでも幸せに生きてくれなんて言われて、
私にはそんなこと出来なかった。
ごめんね。」
「ごめんねなんて…。そんな…。」
悲しい沈黙が続いた。
「………話、続けるね。
…悠人が死んだ2225年だったから
悠人は29歳で死んだの。
悠人が死ぬ前もずっと探し続けてたんだけど、
見つけられなかった。
パーソナルクロークで完全孤独になった人を
探すことは、旧人類の人たちにも可能だったろうけど、
法律とか、倫理とか、いろんな理由をつけられて
探してもらえなかった。
ごめんね、私は悠人を探し続けてたのに
見つけられずに悠人が死んでしまった。
見殺しにしたのも同然だよ。」
「そんなことはないよ。
…でもごめんね。光莉がそんなことしてたの
全然知らなかった」
「悠人が謝ることはないの、
これは私の贖罪、償うべき罰。」
僕は何も言えなかった。
「悠人が死んでしまったことが
しばらくして私の耳にも届いて。
1週間くらいは泣き続けたよ。
でも、私はその時に誓ったの、
何があっても悠人を助ける。
いまの私に残った全てを使い果たしてでも。
悠人の幸せな未来を守り抜くために。
そのあと私は悠人を助けるための
色々な算段を立てたの。
お金とか、手続きとか、
一年もかかっちゃったけど、本当大変だった、
でも私は悠人のためだから頑張れた。
悠人を助けたかったから。
だから時間移動したのは30歳の時で
私は30歳の時から悠人と出会う少し前の
15歳の時に時間移動したから
15年分の寿命を失った。
そしてまた君と出会った、
そして恋をした…。」
光莉の瞳が潤む。
「嬉しかった、
確かに私がいままでいた悠人は
ひどいことをした私を知らないけど、
今度はもう余所見なんてしない。
この命が終わるまで君を見ていられる。
君の全てを守るのは私だって、
ここまで人を思えること、
ここまで思える人に出会えたこと、
全て悠人のおかげだよ、ありがとう。」
光莉は話しながら大粒の涙を
何度も何度も流した。
僕は彼女が泣き止むまで
優しく、でも決して離すことなく
抱きしめ続けた。
×××××××××××××××
数十分後、彼女が落ち着いた。
「………ここまでがこの状況に至った経緯。
次に悠人が記憶喪失になった理由だね。」
「ちょっと待って、まだ整理しきれてない…。」
聞きたいことまとめるために
僕はしばらく考えこむ
光莉は気を使ってか黙って待ってくれてる。
「つまり、僕が別の世界に移動したと思ってたけど
実際はいままで生きてた世界の過去に戻ったってこと?」
「そういうこと。
まぁ、パラレルワールドとか
そう言う話になると、何も確証はないんだけどね。」
「俺の記憶だと、生前の世界での
23歳までは普通に生きてたはずだけど
旧人類の人たちは居なかったよ。」
「それは、このあと話そうと思ってたことと重なるけど
悠人が私にフラれて塞ぎ込んだ日から
悠人が世界との繋がりを絶って
完全に塞ぎ込んだ日との間で
旧人類の人たちが来たの。
起きてからいままでカレンダー見てないでしょう?」
「そういえば…。」
「悠人にとってつらいことだから、
日付わざわざ思い出す必要はないけど、
今日は悠人が塞ぎ込んだ日から6ヶ月と23日経ってるの。」
「つまり、俺が23歳まで普通に生きてたとは言え、
23歳の間でも、俺が塞ぎ込んで実質生きてない間に
旧人類の人たちが来たってことなのか。」
「さすが悠人、理解が早いね
私ならまだクエスチョンマークだよ。」
「そんなことないよ、話は大体わかった。
話、途中で止めてごめんね」
「全然いいよ、全部わかり合いたいから。」
光莉はいつもと同じ、でもどこか違うような、
そんは優しい笑顔を見せた。
「じゃあ話続けるね。」
光莉は深呼吸をして一呼吸置いた。




