記憶のかけら そんな物語
誰かもわからない誰かに話しかける。
あなたは心から人を愛したことがありますか?
一生を共にしたいと思える人に
会ったことはありますか?
僕はいままで1人だけ居ました。
僕は親とも大して仲良くはなかったし、
友達といる時は楽しいけれど、
心の深くまで全てを話したことはなかった。
たった1人、その人には全てを話せた。
嬉しかった全て、悲しかった全て、
怒った全て、その日起こったことの全て。
なんでも話せた、
聞いてくれる人が居た。
好きじゃないところあった。
でもそれすらを許せる大きな愛が
僕の中にあって、何度も溢れては
涙に変わったり、愛の言葉に変わって
君へ向かって真っ直ぐ、
それは真っ直ぐ届けていた。
喧嘩がなかったわけじゃない。
何度も何度も、お互いを理解し合いたくて、
等身大の思いの丈を伝えあって、
わかり合おうとした。
でも、結果として
それがダメだったみたいだった。
ある日、君は僕に見向きせずに
ケータイの中の相手との言葉を紡ぐことに
夢中になっていた。
前に、僕が君に同じことをして怒られて喧嘩して、
分かり合えたはずだったのに。
君が同じことをした。
君にそのことを伝えると、
「そうだね、私同じことしちゃってるね。」
ただそれだけだった。
いま思えば、君は意識してなかっただろうけど
謝らなかったということは
悪いとも思ってなかったのだろう。
そして数日後、
たまたました小さな喧嘩を機に、別れ話になった。
君と僕はいつものようにわかり合おうと
話し合えていたはずなのに、
だけど、その日は何が違っていた。
最後、たった、ひとつ、一言が違ってたんだ、
「言うか迷ったんだけど、
私、好きな人が出来たんだ。」
その一言を聞いた時、僕は時が止まった、
言葉の理解が出来なかった、
現実を受けられない気持ちで一杯になった、
そしてその日までの違和感の理由が
全てが合致して、動き出したんだ。
「その人にも、今日で全て終わらせるって伝えて
今日ここに来たんだ、だから、ごめんね」
その言葉でさらに僕は既に
君と、その人との中で、
除け者だったことに気付かされる。
僕の知らない君がそこにいた気がした。
「明日その人と遊んでから私の家に来る予定なの」
同じ男ならわかる、見え透いた全て。
想像するだけで吐き気がする、
涙が止まらなくなる。
「悠人のことは好きだよ
でも、この好きは恋愛じゃない、
友達として好きに変わっちゃったの」
その言葉の意味は、
死んだ後のいまも理解出来ていない。
ただ、僕にはもう、どうにも出来なかった。
終わりゆく永遠に続くと信じた
僕たちの相思相愛は、僕だけの愛に変わった。
僕には永遠が見えていた。
永遠を誓い合う姿も
その間に出来る小さな姿も
喧嘩してもお互い許し合えることも
普通だけど普通じゃない日々
シワが増えても
いつまでも同じベット
いつも手を繋いで、
小さな幸せも大きな幸せも
絶え間なく刻み合いながら
最後まで感謝し合って
僕の生まれた意味あるとするなら
まさにこの人この日と思える
そう想って眠る永遠を
だけどいまはもう、ここにはない。
あるのは1人残された憐れな男1人と、
行先を失った大きな愛。
その日僕は心の支えさえも失った、
支えは君しかいなかった、
全てのつらいことや悩みを君に頼っていた、
ほかにこの気持ちを吐き出せる人が居なかった。
立ち上がれるはずがなかった。
立ち上がるための力も残ってなかったし、
ほかからもらう当てもなかった、
誰かと会いたいとも思えなかった、
死んでしまいたい。
それ以外の感情がなくなってしまった。
それから僕は
勝手に行われてしまう呼吸と
心臓の鼓動以外することを辞めた、
ほかにやりたいこともなかった。
そこからの時間感覚はもうない。
ある日両親が僕を病院に連れて行った、
そして青い病院でその時僕は本当の孤独を望んだ。
そう、完全に1人になることは出来ない
パーソナルクロークの仕様で
数少ない、本当に1人になる方法、
それは両親から認識不可の了承を得ること、
これは簡単なことじゃない
正当な理由、嫌になる程
長い事務手続き、その他の様々な制限の先に待つ、
望んだ本当の孤独。
こうして僕は本当に独りになった。
やっと全てを失った、
やっと楽になれる、
だけど、いつまで経っても消えない、
君の姿、声、クセや仕草、
あの日出かけた場所、話した言葉。
思い出すたび心が痛む、
痛くて涙が出る。
耐えられなくて、
でも終わらせることが出来なくて。
そんなことを永遠に繰り返して
僕の命の灯火は消えて行った。
天井のシミを数えていたら
いつの間にか僕は居なくなっていた。
何がいけなかったかさえいまもわからない、
救いようのない男の、
他人から見ればありきたり、
だけど本人にとっては
どうしようもないほど悲しみに満ちた物語。
………
……そんな物語。




