12話 ふたご座流星群と天の川
突然の暗闇に目が追いつかない。
光莉が強く握っていた手をさらに強く握った。
徐々に目が慣れてゆく。
真っ暗の中を瞬く、小さな光が増えてゆく。
たくさん、たくさん、
数えて切ることなんて到底難しい。
「すごい、何等星まで見えるんだ…?」
「本当に、こんなにたくさんの星たちが
見えないだけで居たんだね。本当に綺麗。」
「冬の地上から見た空より澄んで、深くて…。
肉眼でこんなに見えることが奇跡みたいだ…。」
あれ、そういえば天の川は…。
「わぁ…!」
光莉が感動の声をあげる。
「悠人!」
隣にいるのに大きい声で光莉が呼ぶ。
「聞こえてるよ、天の川ってど…。」
「後ろ!後ろ!すごいよ!」
「後ろ…?」
振り返り、光莉が見つめる先に目をやる。
「わぁぁ…!!」
視界の中に映る全てが天の川、
そして、数え切れず、
目で追いきれないほどの流星群。
こんな景色がこの星で観れたのか。
想像を超えた景色に、頭は理解するために
ただただ目の前の光景に感動し続けた。
光莉が僕に体重を預ける。
言葉はない。
ただ互いの温もりを確かめていた、
君と僕は確かにここに居る。
そして、約束のためにここまできた。
いま、ひとつめの約束が叶った。
僕の知らぬ僕、でも考えの全てが同じ僕。
そんな僕が光莉と自分を思って立てた計画。
しばらく2人はそのまま。
その景色を2度と忘れることがないように。
同じ記憶でありたいと願いながら
その光景を眺め続けていた。
「悠人?」
「ん?」
光莉の方を見る。
目が暗さに慣れたおかげでよく見えている。
綺麗な景色の横に君がいる。
僕のことをじっと見つめている。
「好きだよ。」
その瞬間、
僕の中で何か起こった。
何かと言われたらわからないが。
心の奥の方の何かに、確かに何かが起こった。
溢れそうになる感情の波を必死で止める。
いまの自分は涙目なのだろうか。
光莉に見られるのが少し恥ずかしい。
「おれ、まだ記憶喪失なのに?」
「うん、何も変わらないよ。
記憶をなくしても、悠人は悠人だよ。
それに、少しずつ思い出してるじゃん。」
「そうだね、本当に嬉しい。
いままで付き合ってか確信が持てなくて、
言えてなかったけど。僕も光莉のこと好きだ。」
光莉は答えるようにニッコリ笑った、
「すごいよね、記憶失くしてるけど、
それでもまた、君を想っている。
なんて言えばわからないけど
すごいことなのかもしれないなって。」
「ちょっと泣きそうになっちゃったよ、
悠人の気持ちってそんなに真っ直ぐで、
敵わないよ。」
「光莉がそれを言う?
彼氏が記憶喪失になっても好きな方が
真っ直ぐだと思うよ?」
「記憶喪失ぐらいで、嫌いになるはずないじゃん。
私の想いと覚悟、舐めてもらっちゃ困る!」
(覚悟…?恋愛でそんな言葉使うか?)
「本当に、僕を選んでくれたのが光莉でよかった。
本当にありがとう。」
光莉は自慢気に僕にちょっとドヤ顔を見せた。
×××××××××××××××
「少し眠たくなってきたな…。」
「えー?こんなに綺麗な景色なのに?」
「綺麗な景色でも、眠くなるものは眠くなる…。
電車の中の暗さもある気もするけど。」
光莉が時計を見る。
「鯨波展望台まであと1時間半くらいあるから、
少し寝た方がいいよ。
この後もまだ大きいイベントがあるからね、
その時に眠たくしてたらほっぺつねるからね!」
「それは痛いから困るなぁ。
ありがとう、少し寝るね」
背もたれ寄りかかり、目を閉じる。
あっという間に微睡みが僕を纏う。
「悠人?」
目を開けて、光莉を見る。
少し不安そうな顔をしている
「私もどこにもいかないから。
どこにもいかないでね?」
「もちろん、何でそんなこと聞くの?」
「何だか、いま悠人が寝たら
どこかに行ってしまいそうな気がして、怖くて。」
「そっか、大丈夫、どこにもいかないよ、
僕の心はいつも光莉と共にある。」
僕はまた目を閉じる。
自分の膝の上にあった手のひらに
光莉が手のひらを重ねる。
そのまま優しく手を繋いだ。
そういえばこの状況になってから
眠るのは初めてだ、
起きたらまた死後の世界に戻るのか?
それともこの状況自体が死後の世界で見てる夢?
ここで寝たら
もうこのまま起きれないのかも…。
そんなことを、
考える力も眠気に奪われ、
僕はそのまま眠りについた。




