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最後は私の側にいて  作者: 15me
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11話 外の世界



空の天井に突入して悠人が感じた感想は

意外なものだった。



橋を渡る電車とほぼ同じ感覚だなぁ…。


光莉も同じことを考えているのだろうか。



電車が揺れ始めて20秒ほど後。


揺れが収まり、

急に外の景色が真っ暗になった。


トンネルにでも入ったのかと思うほどだ。


しかし、それは勘違いだと一瞬でわかった。



窓の外をよく見る。

下は真っ黒の海で水平線の如く広がっている

あれが空の天井なのだろう、

もっと上空から見たら真っ黒になった地球と

勘違いしてしまうほどだろう。

あまりにも精巧で、恐怖のような美しささえ感じる。



そして周りにはちらほらだが星が見える。

電車の中の明かりが点いているせいで

ちゃんとは見えていない。



光莉の方を見る。


光莉も同じことを考えているのだろう。

電車の明かりを見ていた。



……そして僕の方を見た。



「どうやら、考えてることは同じみたいだね。」


「悠人が、こっちも見てたってことは

私は悠人の考えを数秒後に追ってたかな?」



光莉は嬉しそうに笑う。



「まさかこのままなはずないよな…?」




直後にアナウンスが流れる。



(この電車は星見線で、星見お楽しみいただけます。

ご乗車の皆様により星見を楽しんでいただくため、

5分後に電車内の電気を消灯します。

ご了承をください。)



「よかった、流石にね、

これで終わりだったら私でも

ちょっと怒っちゃうよ。」



「ちょっとなのか…。優しいな。」


「じゃあ悠人は怒るの?」


「いや、怒らないけど…。悲しくはなる。」


「じゃあ優しいのは悠人も同じじゃない?」


「光莉の方が優しいのが当たり前でしょ、

記憶がなくても起きてからいままでの間だけでも

十分すぎるくらいわかる。」



「そうかなぁ。私はずっと悠人と一緒にいて、

いつも真っ直ぐすぎるくらいの愛情を感じて、

それ同じくらいの優しさをもらってて、

記憶をなくしてもそれが全然変わらなくて、

嬉しかったし、すごいなって感動もした。」



光莉が少し間を置く。



「でも、いや、だからこそ、

人の優しさってその人そのものなのかなって

ずっと考えてた、

私なんかきっと…そんなことは出来ないよ。

間違えてばっかり。

間違えて間違えて、取り返しがつかなくなって…。

そのあとにやっと気付いて、

馬鹿みたいだよね。本当に。

自分でも嫌になっちゃうよ。」



光莉は少しおどけてみようとしてたが、少し泣きそうだ。



伝えなくちゃ。




「そう思ってるなら、少し違うよ。

僕が光莉に優しいのは最初から優しいからじゃないよ。


僕もたくさん間違えてきた。

それはもうたくさん。光莉が言う、

取り返しがつかないってような間違いも、

僕も光莉も同じ、

だから、僕らは似た者同士なんだよ。」



光莉はこちらを見つめたまま

瞳にいまにも溢れ出しそうなほどの

泪を溜め込んでいる。



「受け売りの言葉だけど、

人はその感情を知るために。

その反対を同じだけ知らないと

真に知ることは出来ない。


つまり、優しいひとはそれだけ

優しくないことを知らないと。

本当の意味で優しくなることは出来ない。


その言葉聞いて、僕はすごく納得いったし、

学ばないといけないなと思ったよ。


光莉がひどいことをしちゃった過去があるなら、

光莉は本当の意味で人に優しくできる。

だから、自分をダメな人だなんて思わないで

今日までのいままで自分が想った人に

想われ続けた、互いに選び続けた自分に自信を持って。」



光莉の泪を塞き止めていたダムは決壊した。

僕を見つめたまま泪を流し続けている。



「まだちゃんと聞けてなかったけどさ」



深呼吸する。



「きっと僕たち、付き合ってるんでしょう?」



涙でぐしゃぐしゃになりかけた顔が

少しぐしゃぐしゃだけど、泣き笑いに変わった。



「当たり前じゃない。何をいまさらなこと

言ってるの。」


「ごめんね、遅くなっちゃって。

でも、変なこと言うと、最初から何となくわかってた。」



「え…?」



「光莉のこと、何にも覚えてなかったけど、

理由もないし、何となくだけど、

この人のこと好きになるんだろうなぁ、

いままでずっと一緒に居たことが

不思議に感じないくらい、自然だったと言うか。

言葉で上手く説明するのは難しいな…。」



「ねぇ悠人?」


「どうしたの?」


「ちゃんと記憶取り戻したら、続き、聞かせて?

悠人の言葉の選び方、いいなぁってずっと思ってたの。」



「なんか、そう言われると嬉しいけど、

なんか恥ずかしいなぁ…。」


「褒められ慣れ、してないからね〜。」


「意地悪だなぁ。」




アナウンスが流れる。


(間も無く消灯します。

周りにお気をつけください。)





光莉が繋いだ手を強く握った。


「いよいよだね…。」


「なんか緊張してきたな…。」


「えー、何それおかしい、変なの。」


「深呼吸、深呼吸…。」


「悠人、私に背中向けて、」


「ん?わかった…。」



光莉に言われるがまま背を向ける。


すると、光莉が僕の肩をポンポン叩いた。

そのあとに背中を優しくさすった。



不思議だ、嬉しくて上がってるのもわかるけど

落ち着く…。


「すごいな…。流石光莉だ。」


「悠人のこと、たくさん知ってるからね。」


「ありがとう、光莉のおかげで落ち着けた。」


「あとは待つだけだね。」


「そうだね。」



ほどなくして、その時を迎えた、

カウントダウンのアナウンスもなかったため。

少し突然に、驚きよりワクワクが勝つように。



電車は消灯し、あたりは真っ暗になった。




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