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女神様の星作り  作者: いと
人間の住まう世界編
12/28

魔法が突如消えた世界

人間がもし魔法が使えたら。という状況は前例があるが、魔法が使えていた人間が使えなくなったらという状況は考えたことがなかった。そんな思い付きからまたしても女神さまが星を作る。

「今日は思考を変えてみるわ」

 唐突に話し出す女神様にも少し慣れを覚えてきて少し危機感を感じたが、とりあえず何かを思いついたらしい。

「何かあったんですか?」

「ええ、少し前にベースの星を複製して、魔法という概念を最初から存在するようにしてみたの」

「と言いますと?」

「元々人間が魔法を使えていた場合の状態から、魔法が使えなくなってしまった世界はどうなるのかという世界を見たくなったの」

 要するに、まだ人間への興味はそがれていないそうだ。

「となると、今回はいつもと違う世界ということですか?」

「そうなるわね。少し神の視線で見てみたけど、風景がかなり変わっていたわ。というわけで、カンパネ。見てきて頂戴」

 いつも突然。だが、これに従わないと僕は消えてしまう。そんな関係がこれからも続いていくのだろう。


.魔法がもし突然なくなったら


 いつもの星ならビルやバスが多く、比較的ガラスが多く存在する人間の世界だが、今回の世界はかなり雰囲気が変わっていた。

 家の形がまず綺麗とは言えない。

 少し曲がっていたり、木の上に存在したりと自由な物だ。

 どちらかというとカミノセカイのエルフ族が暮らす土地に近い雰囲気を出しているが、住んでいるのは人間だろう。

 そして今、周囲の人間は武器を僕に向けている。

「な、何者だ!」

 突然男の人間が僕に質問をする。

「えっと、旅の者で、ここに迷い込んだのです」

「まさか、アレが原因か?」

 混乱は避けたい。もしくは男性は僕を試しているのだろうか。

 神の力で男性の心を読み、最善の答えを導き出す。

「はい。突然力が抜けてしまって、とりあえず歩いた先がここでした」

 男性の心では、魔法が使えなくなったというキーワードを出した時点で、武器を納めるつもりだった。

 それを読み取り、僕もとりあえず魔法が使えないという設定を出してみた。

「そうか。皆、武器を下ろしてくれ。この人も例の現象の被害者だ」

「やっぱりか」

「では、付近でも……」

 人間は本来魔法を使えない。しかし、女神様の力によって魔法が存在していた状態から突如魔法を使えなくした。

 つまり、混乱を起こして人間の行動を眺めたいのだろう。相変わらず女神様の心境は読めない。

 とりあえず女神様は僕の目から人間の様子を見ているから、何か情報を得た方が良いだろう。

「魔法が使えなくなってから、ここの村ではどのような対策をされていましたか?」

「ああ、隣の町との情報も途絶え、歩いて行かねば行けなくなったから、今ではこうして閉じこもるしかない」

「えっと、電話とか車とかは使わないのですか?」

「外の国の言葉か? すまないが、何かしらの技術ならできない」

「そうですか」

 おそらくカミノセカイに住む精霊達も、突如力が無くなったら、このようになるのだろうか。

「では、この村の宿と食料はありますか?」

「貸し部屋ならここから北だ。でも、食料は期待しない方が良い」

「何故です?」

「魔法が使えないからな。全て手作業になる」


 僕の知っている人間は、知性を持って、すべて手作業で何かを作っていた。

 機械という物を頼りにしていた所もあるが、それも人間によって生み出された技術だ。

 この世界の人間が魔法を使えるようになって数百年。そこから何も進化をしなかったのだろうか。

 まずは貸し部屋を借り、情報を集める。

 部屋に入ると同時に、女神様の声が鳴り響いた。


『思った以上につまらない世界を作ってしまったわ!』


 女神様の発言に、僕も呆れる。

「えっと、もっと具体的な意見をいただければうれしいです」

『数百年。神の私から考えれば昼寝してれば過ぎ去ってしまう年だけど、人間は百年生きれば長寿よ。魔法を得てもそれは変わらないわ』

 女神様が何かを操作しながら離しているのだろうか。ピコピコと音が聞こえる。

「魔法という技術を得る前はどうだったのですか?」

『それこそ肉を焼いて、畑を耕し、それぞれ創意工夫をしていたわ。魔法を得てからは全て魔法を使って何かをしていた見たいね』

「はあ、では人間は何も進化しなかったということですか?」

『そうね。正直ここまでひどいとは思わなかったわ。あと少ししたら戻るための神力を発動させるから、それまで少し遊んでて良いわよ』

「はあ」

 そんな事を言われても。

 そう思いつつ、何も思いつかないまま外へ出て、街の様子を眺める。

 ベースの星と比べると、家の場所はバラバラで、全てが雑な用にも思える。

 しかし、映画等ではこういう風景があり、それを人間の役者が『美しい』と言っていた。もしかしたらこれは人間にとって理想の形なのだろうか。

「あれは、書物が沢山ありそうな部屋だ」

 神力で透視をして中を覗くと、書庫の様な場所を見つける。認識阻害をかけて中に入り、書物を見る。


「突如得ることができた力により、人間の進化は止まった。しかし、もし力を失う事があれば、人間はなすすべ無く滅ぶだろう。……一種の預言書だろうか」

 とはいえ、さすがにこの本を読んでから、寒気が止まらなかった。

 当然である。この先、この星は滅ぶのである。つまり人間はなすすべ無く滅ぶ。当たっているのである。

「この書物を書いた人物は……ガナリ?」

 人間の名前は所詮番号と一緒である。僕がカンパネと呼ばれるのと一緒で、他の人間も付いているだけ。

 しかし、この名前だけは、覚えておく必要があると感じてしまった。

 人間の身でありながら、魔法を使えるようになった途端に予言を行ったガナリ。

 後にこの人物と会うことができるのであれば、なぜこの書物を残したのかを知りたい。

 偶然この村で見つけたとはいえ、簡単には見過ごせない。この本は神の力によって作られた部屋に保管して、後に女神様に報告しよう。

『戻る準備もできたわ。そっちは良いかしら?』

「はい」

 そう言って、僕は光に包まれる。


 やがてその星は跡形も無く消滅し、そこに住む人間は全て滅んでしまうのである。

今回は一回での短編です。

特にこだわりはないのですが、たまにはこういった何も得ることができない?話を書いてみたいと思ったので、複線のようなものを交えて書いてみました。

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