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女神様の星作り  作者: いと
人間の住まう世界編
10/28

しょうもない出来事を壮大にする(前編)

くだらない出来事をいかに壮大にできるか。そんな女神様の思いつきから、今回もカンパネは振り回されます。

「これはくだらないわ!」

 朝……という概念がカミノセカイに存在しないため、なかなか表現が難しいが、とりあえず僕が休憩を終えて女神様の部屋に行ったら、急な大声で何かを呟いていた。

「また星を壊していたのですか?」

 女神様の気分というのはとても繊細で、何か不満があれば自分で作った星を破壊する。

 隕石を落としたり、バイオテロを起こしたり、状況は様々だが最終的には星が無くなる。

 幸いにも僕が関わっている星の「ベースの星」と呼ばれる星だけは傑作ということで残っているのだが、今女神様が目の前の画面に映し出しているのは「ベースの星」だった。

「……え、ベースの星に何かするのですか?」

「そんなことはしないわよ! まずこれを見なさい!」

 そう言って、女神様は神の力を使って円盤と小さい箱を出す。

「えっと、これは映画等を記録する媒体と、それを映写する機械ですか?」

「そうよ。ベースの星の人間が作り出したものね。問題はその円盤の中の映画よ。まずは見てみなさい!」


 ……二時間後……


「どうだった?」

「凄く、迫力がありました」

 ベースの星の海に存在するサメ。それが人間を襲う物語。

 いつサメが襲ってくるのか分からない恐怖と、本当にそこに存在するのかが分からない恐怖。それらがちょうど良い具合に混ざり合ってとても迫力のある作品だ。

 神という存在は恐れられる存在であるが、まさか映画の登場キャラクターに脅えるとは思わなかった。

「あ、この円盤と箱は返しますね」

「レコーダーは持ってなさい。次にこの円盤を見なさい」

「はい?」

 新たに円盤が渡される。先ほどの映画とは別の作品だとは思うが、一体何が目的なのだろうか。


 ……二時間後……


「どうだった?」

「凄く……残念でした」

 最初に見たサメの映画はとても良かった。

 今回渡された作品もサメが登場する映画だったのだが、空から数匹振ってきたり、地面から生えてきたり、挙げ句の果てには鞄からサメが出てきて人間を襲う。そんな作品だった。

 コメディの類いかとも思ったが、ストーリーは終始シリアスで、最後はサメに対抗する白いサメを人工的に開発してサメを食らうという血の気の多いお話だった。

「サメのインフラでしょうか。滑稽という単語がとてもぴったりな作品です」

「そこなのよ」

「え?」

 女神様の機嫌は良い。最初の発言のくだらないという言葉を疑うほどだった。

「あのくだらない作品は、神には作れないわ。だって、何も生まないもの」

「まあ、なんとも言えませんが」

「でも、この作品から私は『無駄な事を無駄と思わせないことで生まれる出来事』を学んだわ」

 嫌な予感がする。

「それは、今後何かに役に立つのでしょうか?」

「もちろん。次にカンパネに行ってもらう世界は、『しょうもない出来事を大げさ(壮大)に行動してしまう世界に行って貰うわ」

 僕の平凡な日常は消え、昨日まではそれなりに色々な出会いがあった。

 今日行く世界は、滑稽な世界なのだろう。


.しょうもない出来事を壮大にする世界。


 ベースの星での生活もそこそこ慣れが出てきて、時々映画やドラマを見ることがある。

 そこでは、主人公が銃で撃たれてえ恋人の盾になったり、宿敵が親友でどうしても倒さなくてはいけないなど、そういった物語をこの世界の人間は制作する。

 で、今回女神様がベースの星をまたしても複製して設定を変更して僕が転送されたわけだが、一見何も変わらない用にも思える。

 目の前には大きなビルや、学校や図書館などの施設がならび、人々は自由に生活している。

『さて、今回の世界の概要だけど、カンパネにも実体験してもらうわ』

 とうとうこの時が来てしまった。

 つまり、自分がこの世界の物語の人物となってしまうと言うことだ。

『実体験と言っても、概要説明のためね。本番は人間にやってもらうわ』

 少し安堵しつつも何をさせられるのかが心配なので、少し周囲に注意する。

『まず認識阻害をした状態で、これを受け取りなさい』

 突如目の前に光の球体が現れる。急いで認識阻害を行い、周囲からの視線を遮断する。

「これは……リンゴ?」

『そうよ。リンゴが入った紙袋。そして、それを持って転んで』

 意味が分からない。えっと、つまりリンゴをまき散らせば良いと言うことだろうか。

「で、では行きますね」

 少し歩いて、人が数人居るところで転ぶ。リンゴは壮大にまき散らし、周囲の人はそれを見る。

(とはいえ、ちょっとしたトラブルだし、親切な人間がいれば拾ってくれるかな)

 そう感じていたが、現実はそれ以上の出来事だった。


「大変だ! あの少年がリンゴを落とした!」

「なんだって!」

「なんだって!」

「拾わないと、食べられなくなってしまうわ!」

「大変だ!」

「大変だ!」

 

 これからミュージカルが始まるのでは無いかと思うほどに、周囲の人の声はハモっていたり、踊りながらリンゴを拾ってくれていた。

「えっと……これは……」

『ちょっとした出来事を壮大にする世界よ。とりあえず今回はミュージカルっぽいのね。身を任せてみなさい』

 周囲を見ると、踊りながらリンゴを広い、中にはリンゴを投げて籠に入れる。いや、それ僕のリンゴ。

「怪我は無いかい?」

「は、はい」

「良かった!」

「良かった!」

 いや、さっきから数人で同じ台詞を言うのをやめて欲しい。驚くよ。

「さあリンゴだ。次は足を気をつけるのだよ?」

 まるで歌いながらリンゴを渡す。籠に入れてたリンゴも袋に入れてくれて、最終的には全て戻ってきた。

「君は運が良い。ここに居る全ての人は(省略)だ!」

 途中から記憶が飛んだが、いつの間にか僕も踊ったり歌ったりした気がする。

『凄いわね。カンパネまでノリノリだったわよ』

「違います! 何かこれ、変です!」

『変では無いわ。強いて言えば、それがこの世界のルールよ』

 そんな世界、正直体力が持たない。

 リンゴを拾い終え、全員がそれぞれの生活に戻る。

『さて、一段落付いたところだし、本題に行きましょう』

「またミュージカルに付き合わされるのですか?』

「いえ、次は、さらにしょうもない事を壮大にするわ』

 嫌な予感しかしないこの世界。今回は一番早く帰りたいと思ってしまった。

仕事の関係で、間に合えば明日投稿。最低でも明後日投稿を目標にゆるく書きます。

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