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マリ姉ちゃんの結婚式の10日前のことだ。






私はデュークさんと揉めていた。


「駄目だ」

「どうして?一生に一度のことだよ?」

「駄目だ」


マリ姉ちゃんの結婚式の前の日から家に泊まりたいといったら、これだ。


「デュークさんの意地悪…」

「意地悪でいいからな」


仕方が無い、最終兵器を出動させねば。


「ねぇ、お願い。マリ姉ちゃんを見てたいの。だって、私の時の参考にしたもの。いいで、あ、ちょっと!」


遮られた。

私の目を見ないで言いやがった。


「カナコ、駄目だ」

「デュークさん、私を見てよ?」

「見ない。見たら負ける」

「私のお願いよ?聞いてくれるでしょ?」


抱き上げられた。

まだ、昼だよ?

しかも、顔は前を見て、私を見ない。


「これ以上おまえを喋らせておくと、何を言い出すかわからんからな」

「だって、」

「だって、は無しだ」


ジョゼがいない時でよかった。

けど、最近は夜まで我慢するって決めたじゃん?


「夜まで、しない、っていったでしょ?」

「おまえの我が侭のせいだ」

「ちがう、デュークさんの意地悪のせいよ?」

「禁止を守らない、カナコのせいだ」

「行かせてくれないデュークさんが悪いんだ」


あ、ベットに寝かされた。


「いかせてくれない?わかった、今、いかせてやるから…」


急にキスは禁止だよ!

それに、意味が違う!


「意味が、あ…」


駄目だよ、理性が外れるよ…。

息をする代わりに、私達はお互いの唇を求める。

こんな時のキスは情熱的だったりするから、性質が悪い。


「いみ、が、ちがう、から」


その言葉がデュークさんを唆したみたいだ。

いつの間にか胸が肌蹴てしまっている。

一体、いつの間に?

そして、ゆっくりと指が私の乳房に触れるんだ。

優しく感じさせてくれる。


「なぁ、カナコ、やめても、いいんだぞ?」

「いじわる、だ、あ、」

「そうだな、俺は意地悪だ」


そう言って、手が止まった。

本当に止めやがった。

もう、火は付いちゃってるんだよ?

夢中で、しがみ付いた。


「やめちゃ、やだ」

「わかってるよ、なら、なにも考えるな、だた、俺を感じろ?」

「愛してくれる?」

「もちろんだ」


デュークさん、降参です。

だから、私からキスをした。

激しく、意地悪をされた分を取り戻す様に、デュークさんの火を熱くするように。

私達は熱にうなされて、互いの名前を呼び合う。


激しい波が私達を襲う。

余りの刺激に放心状態になってしまった。

ただ、デュークさんの肌に触れていたかったんだ。


波が引いた後。

私達は互いの頬に手を掛けて、見つめ合っているんだ。

こんな時間も好き。


「カナコ、お願いだから、当日だけで、我慢してくれないか?」


私の指を触りながら、デュークさんが申し訳なさそうに言う。


「どうして?」

「おまえが、ここにいないだけで、不安なんだ。もし、おまえに何かあったら、って思うとな」


デュークさんのやり方は卑怯だ。

けど、大好きだ。


「わかった。側にいる」

「ありがとう、これで安心だ」

「まったく、我が侭なんだから。私が拒めないことしってるくせに」

「最終手段だ」

「けど、そんなデュークさんも、好きだよ?」

「それは、嬉しいな?やっぱり、カナコ、おまえには叶わない」


私達は軽いキスをして、身支度を整えた。

その夜は、アンリ兄様とお爺様との食事の約束があったから。




その夜。





たまげたね。

アンリ兄様が、結婚?????



一緒に来たのは、グレイス義姉様だった。

幼い頃から、お爺様の家に遊びに行くとお見かけしたな。

静かで、落ち着いて、私達よりも年上で、大人の女性だった。


お兄様の好みは、彼女でしたか??

なんとなく、納得。

けど、よく連れてきた女性と少しタイプが違う。


「エリフィーヌ様、お久し振りです」

「グレイス義姉様、私、驚いているの。アンリ兄様と結婚するって聞かされて…」


その微笑が、大人です。


「フィーよ、アンリが口説き落としたんだよ」

「そうなの?」

「アンリがか?」

「陛下、フィー、アンリの初恋の女性なんだとさ。意外だったな」

「まぁ!」


アンリ兄様もグレイス義姉様も微笑んでるだけ。


「じゃ、あの数か…」


いかん、言っちゃいけないことがある。


「そうじゃよ、あの浮名の数々で女を泣かしたアンリはな、実は初恋の女性を忘れられなかったんだと」

「けど、どの方もグレイス義姉様とはタイプが違ったわ?」

「そ、それは…」

「アンリ、諦めて全て言うのじゃ?」

「なんだか、ええ、まぁ」

「どうしてなの?」

「フィー、グレイスと違うタイプだから、付き合ったんだ」

「え?」

「同じタイプなら、グレイスの方が素晴らしいに決まってるじゃないか…」


兄様が照れてる…。

グレイス義姉様まで、顔が赤いぞ。

もう、仲がいいんだから。


「まぁ!デュークさん、聞いた?」

「ああ、聞いた」

「ねぇ、もしかしたら、兄様って、デュークさんよりもウブなの?」

「カナコ?おまえ、」

「あ、ごめんなさい」


お爺様もニヤニヤしてる。

アンリ兄様は持ち直した。


「陛下が、ウブだったとは、存じませんでした」

「ワシもじゃな…」

「えっと、お爺様、お兄様。この件はルミナスの最高機密ですのよ。決して、他言はなさらないで?いいでしょ?」


頼むよ?王様の威厳がかかっているんだからな?


「わかってますよ」


グレイス義姉様は静かにアンリ兄様の隣で微笑んでいる。

緑の髪は結い上げられて、瞳の群青を同じ色のサファイアの髪飾りが輝いている。

姿勢、そう、生きる姿勢が美しい人だ。

間違いなく、芯が強い人だな。


「グレイス義姉様?」

「はい、なんでしょうか?」

「お義姉様はアンリ兄様のどこが良かったの?」

「そうですね…」


そう言って、アンリ兄様を見つめる。

アンリ兄様は優しく微笑み返すだけだ。


「アンリとなら穏やかに暮らせると、そう思ったのです」

「グレイスは、家の女性達とは違って穏やかですからね」


まぁ!アンリ兄様が惚気るなんて!

あ、けど、口は昔から上手かったなぁ。

いよ、乙女殺し…。


「アンリ?」

「はい、陛下?」

「エリフィーヌは賑やかだが、真っ直ぐだぞ?」


おおおお!

惚気返しか?偉いぞ、デューク!


「陛下。それは陛下に対してだけですよ。私や父上には我が侭し放題です」

「お兄様!」

「ハハハ!フィーは昔から陛下一筋だったからな」


今夜はいつにもまして、賑やかだな。

けどね、知ってるんだ。

デュークさんはこんな賑やかな食事会が好きなこと。

両親を早くに亡くして、ずっと1人だったから。


だから、ハイヒットの名誉兄様は、楽しくて仕方ないんだ。


お爺様の笑い声につられるように、私達も笑った。

これで、また一つ幸せが増えたんだ。


話が一段落ついたころ。



「グレイスの足の件だが」

「はい、陛下」

「明日にでも城の医師を訪ねてみろ。俺から話をつけておくから」

「よろしくお願い致します」


アンリ兄様はグレイス義姉様を見る。


「グレイス。陛下のお言葉に従うんだよ?」

「私はそのように気にかけていただけるような人間ではありませんから、勿体無くて…」

「グレイス義姉様、いいかしら?」

「エリフィーヌ様?」

「陛下はハイヒットの名誉兄様に就任してるの。兄として、アンリ兄様の妻の体を心配するのは、当たり前のことでしょ?」

「その通りだ。グレイス。元通りにはならないかも知れないが、軽くはなるかもしれない。遠慮はしないでくれ」


グレイス義姉様の瞳から、涙が零れた。


「グレイス?」


気遣うように、アンリ兄様の手が義姉様の背中をさすっている。


「ごめんなさい。私、こんな幸せが待ってるなんて、思ってもいなかったの」

「いいんだよ、グレイス。君には幸せになってもらわないと、私が困るんだからね?言ったろ?この国で一番幸せにするって」

「そうじゃ、あんなロクでもない家の奴等をギャフンといわせるなら、グレイスが幸せにならないと駄目じゃぞ?」


そう、グレイス義姉様の話は聞いた。

なんて酷い家だよ、まったく。

名前も知らない伯爵家だけど、人様の娘さんを傷物にして置いて、追い出すなんて。

よく、アンリ兄様が見逃していると思う。

お爺様とアンリ兄様の方針は、徹底的な無視、だそうだ。

噂の恐ろしさを教えてやる、とお兄様は不気味に微笑んでた。

そっちの方が怖い。


「そうよ!幸せになって、ね?グレイス義姉様?私が許すからね?」


私の許しなんて、たいしたことないけどね。


「エリフィーヌ様、ありがとうございます」

「義姉様、フィーでいいの。フィーって呼んでね?」

「え?」

「だって、エリフィーヌって長いんだもの」

「そうだな、長いな。俺もフィーでいいか?カナコ?」


デュークよ、そこに参戦するのか?


「え?カナコは止めるの?」

「やめない、けど、フィーと呼ぶ」

「もう、なんでもいいよ」


我が侭な名誉兄様だなぁ、まったく。

そして、お爺様は屋敷に帰り、兄様達は城の客間に泊まった。








お兄様グレイス義姉様、ゆっくりしてってね!









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