表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
90/192

90 あなざーさいど15

アンリとスタッカード公爵の会話。






「お爺様?」

「なんだ?」

「私の結婚も決まったので、そろそろ、教えていただけませんか?」

「なんじゃろう?」

「惚けないでください。公爵の火落としの一件ですよ」

「そうだな…、知りたいか?」

「若旦那なんでね、私は」

「シュウがそう呼んだのか?」

「ええ」

「あいつも、早々と」

「良いじゃないですか。いずれ、スタッカードを継ぐのは私なんですから」

「そうじゃな、…わかったぞ」

「では」

「魔物が現れたのは100年程前だ。知っているな?」

「はい、授業で教わりました。魔物が出現し、人間の中に魔法を使えるものが出て来た、ですね?」

「そうだ、諸説あるが、この地上に今までにはなかった意志を持った微粒子が現れた、そう考えるのが自然だな」

「そうですね、その説だとおそらく隕石がその微粒子を運んだと?」

「そうだ。で、我々人間は2つに別れた。地上と地下に」

「地上に残ったものには魔法を使える者が増え続け、地下に潜ったものには稀にしか生まれなかった」

「地下に潜った者達は、助けられる道を選んだんだ」

「そうですね。あの時に地下に潜った中には元貴族もいたとか?」

「いたな、王からの戦闘命令に背いて、我先に地下に潜った奴等がな」

「彼等は地上には出なかったのですか?」

「色々な人間がいたからな、地上に戻って戦闘に加わった者もいたし、恐れて出てこなかった者もいた。あの頃のこの国は今と違って、魔物が全てを壊していたらしいからな…。たくさんの人間が殺された。ルミナスの人口は1/4にも減ったんだからな」 

「それでも、地下の人間は扉を閉じたままで、地上の人間が戦うの待っていたのですね?」

「だから、不公平だと、地上が怒ったのだ」

「それで、征伐税ですか?」

「何事にも、対価は必要じゃ」

「けれどもあの当時、地下になんの産業が?」

「資源だよ。金、銀、銅、その他だ」

「それらを?」

「そうだ、最初は資源の供出だった。が、地下も巨大化しただろ?」

「はい、驚きました。地下にいるという感じではありませんでした。天井も高く、電気も隅々まで通って」

「地熱による発電だ。だから、奴等は地上に戻る気を無くして行った」

「分かります」

「そこで、あの事件だったのだよ」

「公爵の火落としに繋がる、先の王女誘拐ですね?」

「そうだ、馬鹿な人間もいたもんだ。いくら以前は貴族だったと言っても、何もしないで逃げた家に、王家の人間を嫁がせる訳にはいかない、そうであろう?」

「確かに」

「しかも、返して欲しければ、征伐税をやめる事を定めよ、と言いやがって…」

「お爺様…」

「すまない、今でもはらわたが煮えくり返る」

「まぁ、そうですね」

「だから、ワシは先々王に進言したのだ。地下の部落を焼き尽くせばいい、とな」

「それが、火落としですか?」

「そうだ。実際に地下の入り口から、燃える燃料を山のように注ぎ込み、火を放り込んでやった」

「1週間はその炎が消えなかったと?」

「そうだな、消えなかった。それで、充分だった。地下は王女を返し、先々王は大幅な征伐税の値上げを地下に飲み込ませた」

「そして、地下の勢力は削がれたのですね?」

「そうだ。だがな、住処を燃やされた部族は決行前に全員が地上に上がったんだ」

「それが、シュウ達ですか?」

「あの者達は穏健派でな、勤勉で軽快だった。文句無くいい部下になったよ」

「その時で何人くらいですか?」

「500かな。今は、700程に増えたな」

「そうですね」

「しかし、シュウ達のことは、王家とスタッカードの秘密だ。だから、皆がワシを恐れる」

「嫌ではなかったのですか?」

「別にな。家族もいたからな」

「けど、一人娘の母上を父上が貰っていったではないですか?」

「ダニエルだから、許した。あの男は見所がある」

「確かに…」

「ハイヒットの最初の男の子をスタッカードの跡取りにすることは、ダニエルが言ってきたことだ」

「父上が?」

「ああ、先手必勝だと言ってな、ハハハハ!」

「さすがですね…」

「が、思惑が狂ったな。ジャックが学院の教授になるなんてな」

「ジャックは学者向きですよ、真面目すぎます」

「お前が、不真面目だったのではないか?」

「お爺様の若い時程ではありません」

「これは、ハハハハ!」

「そうやって、笑って誤魔化そうとなさる…」

「ハハ、参ったな。まぁ、マリーがハイヒットを継ぐのも面白い。で、マリーは納得したのか?」

「はい、相手にも会いまして、意気投合したようです」

「そうか…、まさか、マリーが一番先に結婚しようとはな…」

「カルロスはいい男です。あいつの人柄はこの私が保証します」

「一度、ワシにも会わせろ?マリーは可愛い孫娘だからな?」

「ええ、わかっております。すぐにでも」

「後は、サーシャか…」

「姉様は頑固ですから」

「しかし、女が魔法で生計を立てるなど、困ったものだ」

「サー姉様は、眠くなる性質だそうですから、悪所には行きません」

「けども、だ。仲間内にはいろんな性質がいるだろう?」

「そうですね…」

「女の数が少ないから重宝がられているだ。悪い噂が立たないうちに、何とかならんか?」

「何とかなるようであれば、とっくに」

「そうだったな…しかも、家を出たとか?」

「仕事が忙しくて、戻る時間が惜しいそうです」

「アンリ、何かがあってからでは、遅いのだぞ?」

「お爺様、サー姉様だって、考えていますよ。姉様が間違いを犯すはずがありません」

「まぁ、そうだな、わしは、サーシャが可愛い余りに、信じることをしてなかったやもしれんな…」

「そうですよ、何か起これば姉様の相談にのりますから」

「なんだな、お前は、もう、立派な跡取りだな。なにせ、シュウが若旦那と自ら呼んだんだ」

「ありがとうございます。お爺様のようにはなれませんが、私なりにやってみます」

「ワシのような人間はもう、必要ない。アンリにはそれなりの道を用意した」

「ありがとうございます。お爺様のご期待に添えるか、どうか…」

「アンリ、おまえなら大丈夫だ。それよりも、わかってるな?」

「はい、フィーですね?」

「そうだ、王妃になる身だ。まぁ、あの王ならば、大丈夫だとは思うが、頼んだぞ?」

「ええ、ようやく目覚められたみたいですからね」

「ワシの可愛い孫娘を泣かすようなことがあれば、許さんがな」






評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ