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私達は連れ立って、会見のための部屋に向った。




そこには、なんだか強そうな女性が待っていた。


「陛下、」


臣下の礼の後、顔を上げた女性は凛とした人だ。


「隊長、呼び出してすまない」

「いえ、陛下の為ならば、どこへでも参ります」


そう言った、隊長と呼ばれた女性は、緑の髪を短く切って少し薄い赤紅の瞳で答えるんだ。


「ありがとう。隊長、紹介しよう。カナコだ。いずれはエリフィーヌ・カナコ・ルミナスと呼ばれることになる」

「デュークさん?」


私の名前だ。

そうか、私は、そう呼ばれるんだ。


「良い名だろ?」 

「うん」


その人は私達を見て、微笑んでいる。


「これからはカナコ様の護衛に入ればよろしいのですね?」

「そうしてくれ。それと、カナコに護衛術を教えてやって欲しい」

「畏まりました」


護衛術?

なんでまた?


「どうして?魔法があれば大丈夫でしょ?」

「常に魔法が使えるとも限らない、そうだろう?」


あ、忘れてた。

あの時、使えなかったよね…。


「そうだった、使えない時があった」


苦笑いのデュークさんだ。

隊長に向って、こう言った。


「この通り、物覚えがあまり良くないから、苦労するだろうが…」

「それは、酷いよ?」

「何を言ってる?ヨッシーが泣いていたのを忘れたのか?」


あ、ヨッシー先生。

今でも物覚え悪くてすみません…。


「意地悪…」


デュークさんは私を無視した。


「隊長、面倒を掛けるが、よろしく頼む」


けど、手を握ってくれているんだよ。

気持ちが伝わるんだ。

私のこと、本当に心配してくれている。

愛されてるんだね、嬉しい。


「畏まりました。では、カナコ様?」

「はい」

「頑張りましょう!」

「はい!」


優しい先生みたい。

良かった。


ところがだ。


「では、早速、今から」

「は?」

「頼んだ」

「え?」


私は隊長に腕を引っ張られながら、ダンスの部屋に連れて行かれた。

問答無用ですかー!


デュークさん!

笑ってないで、助けてよぉ=!






1時間後、ぐったりした私がいる。





目の前にいる隊長。

貴女なんでそんなに元気なんですか?


「まだまだ、です!」

「隊長!無理です!」

「いえ、カナコ様なら、出来ますよ!」

「はぁ…」


とにかく人を投げることを体に覚えさせるだそうだよ。


私は隊長の腕を取り、投げる。

上手投げって、奴だ。

もう、何回投げたんだ?


覚えてねーよ…。


「さぁ、体が覚えるまで投げましょう!」


隊長、あなたは痛くないのですか?

私は投げてるだけなのに、足がフラフラです…


「その調子です!」

「お、お休みを、下さい…」

「まだ、5回は大丈夫ですから、頑張りましょう!」


立ってるのがやっとというのに、なんだよぉ!

やるよ、やればいいんだろう?

くそ、負けない!


「後、1回!」

「えええーーい!」


ラスト1回が終る。


「終った!」

「お疲れ様です、次は、」

「え?次があるの?」

「ええ、ありますよ?」


こうなりゃ、なんでも使う。

禁止されてても構うもんか!

隊長を見つめて、口角を上げて、甘えてみる。


「やらないと、駄目?」

「駄目です。やりましょう!」


き、利かない。

何故だ?

あ、…、女性だからか…。


素直に諦める。

諦めますよ。


次は、ストレッチの体操だ。

体を柔らかくするんだって。

隊長が私の体をほぐしてくれる。


こ、これは…。


「気持ちいいね?」

「そうですよ。筋肉のコリを伸ばしてほぐしてるのですからね」

「スッキリするよ」


すっかり気分は爽快になった。


「隊長、これって、いつでもやっていいの?」

「いいです。けど、程ほどに」

「はい!」


ふぅー。

地獄の後の極楽だ。


今日の訓練は終了。

私達は部屋に戻った。

そして、隊長は一度戻り、部下を引き連れて私の護衛に入った。


今日からは常に隊長に見守られる。

不自由は仕方ない。

デュークさんの側にいるためだ。

慣れるしかないんだ。



自分で魔法を掛けて、着替えた私。

居間でジョゼが入れてくれたお茶を飲んでいる。


「美味しいよ、訓練の後のジョゼのお茶は最高だわ」

「ありがとうございます」


一息つけた。


「ところで、デュークさんは?」

「ポポロ殿とご面談中です」

「ふーん。ねぇ、ポポロさんって、いい人そうだね?」


ジョゼが笑う。


「あの方は、真面目な方ですよ」

「知ってるの?」

「はい、ザックの教え子ですから」


そうだよね、ザックは魔法学院の学長だもの。


「へー、じゃ、特選クラスだったの?」

「良くご存知ですね?いえ、そうでした。カナコ様のご兄弟は3人とも特選クラスでした」

「そうなんだ。特にサーシャ姉様は有能だよ?」

「存じております。今はザックのチームにおいででしたね?」

「そう」


サー姉ちゃんの活躍はその内に耳に入るようになる。

必ずだ。


「カナコ様のご兄弟は魔法学院でも優秀な方ばかりですね。サーシャ殿は魔量とセンスが優れていると言っておりましたし、そうそう、ジャック殿は教授に向いていると申しておりました」

「ホント?」

「ええ、ザックに付いて見習いから初めていらっしゃるみたいですが、いずれは学院の教授になれるのではないでしょうか」

「良かった。ジャック兄様はね、凄いんだ」

「それは?」

「妹の私に色々学ぼうとする謙虚さが、凄いの」

「そうですね、確かにジャック殿は真面目ですね。どこかポポロに似てます」

「ジョゼ、会ったことあるの?」

「はい、何度か家で、一緒に食事をしました」

「そうなんだ、知らなかったわ」


ジョゼはハイヒットの皆と親しい間柄になるんだ。


「学院に入られた幼い頃から存じておりましたよ。が、まさか、ハイヒットの末娘がカナコ様だとは気が付きませんでしたけどね」


だよね…。

ずっと探してくれていたのに、逃げてたんだね、私。


「あ…、ゴメン」

「いいのですよ。きっと、その方が良かったと、思いますので」

「どうして?」

「もし、カナコ様の幼い頃に陛下と出会ってしまったら、どうなっていたかと思うと…、やはり、今で良かったと」


そ、それは、うん、そういう事だよね?

話を流そうと決意。

何の話題がいいかな、あ、あと一人残っている。


「アンリ兄様って、知ってる?」

「もちろんです。変わった方ですね。あの方は」

「やっぱり?」

「ええ、しかし、何故?」

「私、アンリ兄様がその内に修羅場に出くわして怪我するんじゃないかと、心配で…」


あの、臭い台詞を連発する癖は直りそうもないしね。

まるで修羅場を求めて生きてるみたいな兄様だもの、妹は本当に心配なんだよ。

今だって、何人と付き合っているんだろうか?


私が、心配そうにしていたからなんだろうか。

ジョゼは、不思議そうな顔をしてから、思い出したように笑う。


「モテる方ですからね。けども、真面目な方ですよ」

「それは女に?」


また笑った。


「人間に、です。あの方は人に好かれる術を持っておいでですから」

「まぁ、そう、だけどね」


アンリ兄様が新聞の記事に載らないことを祈る。


あ、ルミナスにも新聞はあるよ。

印刷技術があるんだもの、ちゃんと新聞はある。

けど、毎日は発行されないんだ。5日に1回。

もちろん、ルミナス国発行です。


「けど、なんでそう思うの?」

「それはですね…」


なんでか、言葉に詰まるジョゼだ。


「私が頻繁に学園に顔を出すので、アンリ殿の方から接触を、ですね」


って、まさか???


「それって???口説かれたの???」

「あ、それは無いです!ザックを裏切るような真似はいたしませんから、大丈夫です!」

「そう、なら良かった」


お互いに苦笑い、だ。


「カナコ様の過去をお知りになりたかったみたいです。それからは互いに情報の交換をしたり、カナコ様を心配したり」

「なにそれ?私の保護者の集いみたい…」

「その通りです」


なんか、すみません…。


「まぁ、あの方は考えて物事を行う方なので、心配はいりません」

「ふーん、」

「そうですよ」


ジョゼの言葉に、一応納得した振りをした。


けどね、アンリ兄様。

外で猫かぶっても、家じゃバレますよ?





やっぱり、妹は心配です。





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