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突然現れた王様が、少し不機嫌そうに喋る。
「何がいいんだ?」
何を聞いてんだよ。
困るじゃないか…。
本当に、困る。
「何って、ねぇ、ジョゼ?」
「そうでございますねぇ…」
私とジョゼは顔を見合わせる。
だけど、だ、王様は諦めない。
「何の話だ?」
まだ追求するのか?しつこいぞ。
…。
けど、ジョゼは諦めた。
「ドリエール様とリチャード様の事です」
当然、苦い顔のデュークさんだ。
だろう?だから、言葉に詰まったんだよ?
掘り下げるなよ…。
「必要がないならカナコには知らせたくないのが、仕方ないか?」
「さようです」
「そうか…、ジョゼ、どこまで話した?」
「御結婚まもなく、ドリエール様がリチャード様と接触した所まで、です」
結婚して直ぐかい?
乱れてる。
ルミナスの王家は乱れてるぞ?
モラルはどこに行ったんだ?
「ドリエールの娘は、叔父上の娘だ。俺の子ではない」
「あの、デュークさんの子供っていわれてる姫様が?」
「そうだ、ドリエールも認めている」
「認めてって…」
認めたから、それで良いのか?
なんだか、色々と問題が違う気がする。
「あいつに言わせると、俺が悪いんだそうだ。見向きもしない俺がな」
「いいの?それで?」
「あいつとは、話が通じない。どっちにしろ、俺は子供を作るつもりもなかったし、誰が継いでも叔父上の子供だ。変わりはないと思っていてから、放置した」
ジョゼが、すかさずお小言。
「8年程前に、カナコ様がこのルミナスにいるとわかったときに、片付けておかなければならない問題でした」
そうだ、もっと言っていいぞ!
「耳が痛いな…」
「しかし、陛下。これから、リチャード様は、全力でカナコ様を狙ってきます」
「わかってる」
「狙ってくるって?」
デュークさんがいやな顔をした。
「言わせるな。気分が悪くなる」
そういうことか。
私を、…、なんだな。
「今、城ではポポロが色々と調べてくれている。誰が叔父上の密偵かもわかってないからな」
「そうなんだ…」
「叔父上は女に対しては病気だ。ドリエールは俺に対して病気なんだ」
「じゃ、私って?」
「城に戻れば、叔父上には貞操を狙われ、ドリエールには命を狙われるな」
「…」
「もし狙われたら、どんな魔法を使ってでもいいから、逃げろ。いいな?」
考え込むよ。
面倒くさいところだなぁ、城って。
「どうした?」
「どこまで本気で魔法使ってもいいの?」
「好きなだけ、だ」
「殺しちゃうかもしれないよ?」
「構わない」
「構わないって…」
ジョゼがいようがお構いなしなデュークさんは私に口づける。
「おまえを襲う奴など、生かせておくものか」
それだけ言うと、ジョゼに話しかけた。
「ジョゼ、後で隊長がくる。来たら呼んでくれ」
「畏まりました」
そう言って、ジョゼが部屋から出て行った。
2人きりになる。
空気が変わるんだ。
そう、私を見るデュークさんの顔が変わる。
誰かがいる時には、決して見せない。
泣きそうな顔。
「ねえ、私、後16年は死なないと思うから、大丈夫だよ?」
「駄目だ。なにがあるかわからないぞ?」
「そうだけど、」
デュークさんに抱きしめられる。
その強さが、愛おしいよ。
「もう、先に行かないでくれるな?」
「デュークさん?」
「毎日を分け合って暮らそう、な?今度こそ、だぞ?」
「喧嘩はなしだからね?」
「わかってる」
また、キスされる。
それも、深いキスなんだ。
何度も何度も繰り返して。
暫くしたら人が来るって言うのに、私達は馬鹿だ。
「カナコを抱きたい」
「いいよ、抱いて?」
だって、やっと会えてから4日しか経っていない。
まだ、熱は引かないんだ。
「どうした?素直だな?」
「意地を張るのを、止めたの」
デュークさんのキスは、ホントに理性を失わせる。
私は抱きかかえられて、寝室に連れて行かれた。
ベットの上に寝かされると、デュークさんはキスしながら私の服を脱がせた。
ようやく唇が離れる。
「器用…」
「早くおまえが欲しいからだ」
「うん、嬉しい」
自分も服を脱ぐと、私の上に重なる。
肌の温もりが伝わる。
何もかもが、デュークさんだ。
忘れるなんて出来なかった。
あの刻まれた感覚が、喜びで震える。
「カナコ、もう離れるな」
「うん」
その後は会話にならない。
デュークさんの指に、舌に、唇に、私は翻弄されていく。
私の声に、応えるように、愛してくれる。
それはあまりにも甘美で堪らない。
もう、駄目だ。
もたない…。
全身の力が抜ける。
「可愛いな」
「へんな顔してた、絶対」
「いいよ、俺にしか見せない顔だ」
「じゃ、私にも見せて?」
「ああ、いかせてくれ」
そう言うと、ゆっくりと私の中に、。
「ああ、!」
その刺激に私は応えてしまう。
デュークさんの声が聞こえる。
私の名を呼ぶ声が、聞こえるんだ。
何度夢見た瞬間だろうか…。
やっと現実になったんだ。
そして。
まるで波が引いた後のように、甘い静けさが場を支配してる。
私達はお互いを見つめている。
「カナコ?」
私の涙にデュークさんは少し驚いている。
私だってだ。
「デュークさんが、愛おしくて、止まらないの…」
「そうか…」
優しいキスの後、優しい瞳で私を見る、緑の髪に赤紅の瞳のデュークさん。
「好きなだけ、泣いていいぞ?」
「うん、」
どうして涙が止まらないんだろう?
デュークさんが、側にいる。
奇跡なんだ。
生まれ変わっても、愛されたかった。
それが、叶った。
この幸せのためなら、なんでもやろうと思った。
ジョゼからの電話で、私達は慌てて互いに魔法を掛けあい、服を着た。
なんか、可笑しくて、とっても、幸せだ。




