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声が聞こえたんだ。
「起きたのか?」
私は何度夢見たことだろうか…。
この声を朝1番に聞いて、目覚める夢を。
瞳がそこに居てくれる。
「うん、起きた」
デュークさんが見ていてくれた。
目がちょっと薄い赤紅になっているよ。
昨日、私をサポートするのに魔法を使ったからね。
これから、毎日毎日デュークさんが起こしてくれる。
夢じゃない。
とても愛おしいよ。
「そうか…」
「どうしたの?」
それには答えずに、キスをくれる。
深いキスなんだ。
卑怯だよ?
なんて卑怯なんだ。
もう立てないくらいに、感じたんだから。
「感じたのか?」
「意地悪…」
なんて意地悪な質問だよ?
けど、魔物征伐が終ったんだ。
吐き出したいよね?
私は両手をデュークさんの首に回した。
ところが…だ。
「悪かった。けど、今はここまでだ」
おいおい、なんだと??
「それって、もっと、意地悪じゃないの!」
私は起き上がってデュークさんを押し倒してやった。
ふざけるんじゃない。
人をその気にさせといて…。
いいか、覚悟しろ?
「カナコ?」
「その気にさせたのは、デュークさんなんだからね?」
「悪かった、が、時間が…」
「そんなの、知らないもの」
デュークさんの上に乗ったままの私。
彼の唇を指で弄ぶ。
「私を、愛して?」
「カナコ…、それは、その仕草は禁止だ」
「駄目、愛してくれるでしょ?」
両手でデュークさんの顔を包み込んで、禁止された仕草で、呟く。
「私が、嫌い?」
「おまえは、俺を駄目にする、」
私からの口づけに応える。
気持ちがいい。
体が熱いよ。
「駄目になったあなたは、私の物だもの」
「カナコ…」
やっぱりデュークさんのキスは私を溶かす。
「抱いて?」
「わかった」
今の私の服は、紐一つで簡単に解けるようになっている。
慣れた手つきで、あっと言う間に私を裸にすると、デュークさんは私の乳房に触れる。
「感じてるな?」
会話のための言葉なんて、出ない。
そして、私の腰を持ち上げると、そのまま、…。
刺激が体中に伝わる。
「いきなり、って、あっ」
「カナコ、」
駄目だ。
私の方が、駄目にされていく。
出した事もない声を上げて、私はデュークさんの上に落ちた。
「可愛いな、カナコは、俺だけのカナコだ」
「うん」
力強く抱いてくれる。
この時間が好き。
電話が鳴る。
手を伸ばしたデュークさんが受話器を取る。
「ああ、わかってる。すまないが待たせておいてくれ。直ぐに行く」
あ、時間がなかったのは本当なんだ。
ってか、今何時なんだろう?
「おまえの誘いは、恐ろしいな。拒めない」
「けど、火を付けたのはデュークさんだよ?」
「悪かった。後は今夜だ。いいな?」
「うん…」
私達は互いに魔法を掛けて、服を着た。
「誰が来てるの?」
「叔父上がな、」
「デュークさんの?」
「後で説明する。カナコはここから出るな。いいな?」
「どうして?」
「俺が嫌だからだ」
なんと。
可愛いと思う。
「わかった」
「ジョゼを呼んでおく。お腹空いてるんだろ?」
「…うん」
「じゃ、後でな」
ちょっとイラついているみたいだ。
会いたく、ないのかな?
しばらくして、ジョゼがやってきた。
「カナコ様、朝食をお持ちしました」
「ありがとう」
本当に、お腹が空いた。
「ねぇ、ジョゼ。私、何時間眠ったの?」
「そうですね、昨日のお昼過ぎに3人で出いかれて、戻っていらっしゃった時には陛下の腕の中で。スヤスヤと」
「あー、そうですか…」
「かなり魔法をお使いになったとか?」
「みたい、1時間程かな」
「やはりカナコ様は特別ですね?」
「そう?」
「はい、普通は20分と持ちません。だから、魔物征伐は短時間で行う必要があるのです」
「そうなんだ…」
そう言えば、私は常に全力で魔法を打っていたけど、ザックは緩急があったな?
あれは無駄に消費しないためなんだろう。
私も、研究の余地ありか。
「私の魔量って、もっとあるのかと思ってたのに…」
「練習と実践は違います。慣れれば練習のようにお出来になりますよ?」
「そうかな?」
「大丈夫です。陛下もザックも征伐に関しては熟練者。カナコ様は初心者です。差があるのは当然ですから」
「そうか、そうだよね?ジョゼ、ありがとう」
私は、感謝して、微笑んだ。
「いえ、お気になさらずに」
ジョゼがせっせと食事を勧めてくれる。
断らずに食べる。
最近は気づいたら食べないことが、多すぎて。
ここでの食事は美味しいから大好きだ。
バタン!
急にドアが開いた。
「失礼?」
知らないおっさんが部屋に入ってきた。
私とジョゼはそっちを見る。
知らない顔だ。
ドアのところで立ち止まるんじゃなくて、部屋の中に、当然みたいに入って来たんだ。
誰だ、こいつ?
「え?」
「リチャード様!」
ジョゼは知ってるらしい。
大きな声で文句を言う。
「ここは、陛下の私室です。いくら叔父上であられても、ご入室はなりません!」
「おお、ジョゼ。そんなに怒らなくてもいいだろう?初めての場所で迷っただけだ」
迷うか?
この家は城みたいに大きくない。
部屋数だって、たった10部屋しかない。
どうやったら、迷えるんだ?
おっさん、白々しいぞ?
「で、そこの見目麗しい女性は?」
ジョゼは私の前に立ち、叔父さんの視線から守ってくれる。
とっさにジョゼの背中に隠れた。
「お下がり下さい。陛下の許可もなく、名乗るわけには参りません」
「つれないなぁ。そんなにキツク当たらずとも、ねぇ、お嬢さん?」
覗き込むように私と視線を合わせようとする。
私はジョゼにしがみ付いた。
「これはまた、随分とお若い。デュークの奴、最近城に戻らないと思えば、このように美しい女性と…」
「お下がり下さい!ここは陛下の私室だと、何回申せば!」
「ハハハ、わかったよ」
まったく分かろうとしない。
おっさんは舐めるような視線で私を見る。
「それでは、お嬢さん。また、お会いしましょう?」
出て行った。
ドアが閉まる。
「…」
侵入者が去っていった。
ジョゼがドアの前の侍従に事情を聞きに行く。
あ、お小言も聞こえる。
かなり怒ってるよ。
しかし…。
なんなんだ?あのいやらしい顔したオヤジは?




