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78 あなざーさいど12

ザックの視点







カナコの魔法は相変わらず、凄い。

簡単に魔物征伐が終ったよ。


あの、浮足うそくか?

あれはカナコのオリジナルだろうな。

あんなに魔量を無駄遣いして、グイグイ押していくなんて、カナコにしかできないよ。

私は真似をしようなんて思わないね。


陛下は、やってみたい様子だったけど。

ここでも陛下かカナコしか使えない魔法だ。




しかし、本当に戻ってきたんだなぁ。

陛下の隣にいるカナコが一番しっくりくるよ。


長い間、待ち続けたんだ。

陛下が側から離さないだろうな。 



良かった。

生まれ変わってくれて。

私もようやく罪の意識から、開放された。





別のモノを背負ったけどね、




リック兄さん。


兄さんが結婚しないのは、もしかしたら、心に誰かがいるからかもしれない。

そう思ったのは、随分前の事だ。

そう、カナコが亡くなってからかもしれない。


だけど、それが、カナコだったなんて。

それほどまでに、カナコのことを愛していたとは。



処刑される前にと、私は牢獄に入れられた兄に会いに行った。

牢の中でも、平然と本を読む姿は、昔のままの兄の姿だったんだ。


「兄さん?」

「ザックか?久し振りだな。元気そうだ。ジョゼは元気かい?」

「元気だよ、今回のこと、残念がっていた」

「残念?」

「ああ、」

「私は満足しているよ?しばらくの間ではあったけれど、カナコと2人きりで暮らせた」

「兄さん?」


兄さんは私が憎かったんだろうか?


「兄さんは、私が憎かったのかい?」


目つきが変わった。


「当然だろう?ザックとあの王がカナコを殺したんだから…。けど…」

「けど?」

「もうどうでも良くなった。今は後悔しかないな」

「何を後悔してるの?」

「もっと早くにカナコを探し出して、奪っておけば良かった。そうすれば、時間があったのにな」

「時間?」

「カナコが私だけを見るようになるまでの時間だよ」


そんなこと、あるはずないだろう?

あんなに、幼い頃から陛下の元に行くことを夢見ていたというのに。


「それは、ないよ。兄さん」

「いや、ある。ゆっくりと、人形に…」


急に話を止める。


「いや、なんでもない。さあ、ザック。もう時間だ。」

「兄さん…」

「元気でな」

「ああ」


私はその場を離れた。

兄の狂気が恐ろしかったからだ。



確かにカナコは人を虜にする。


ニホンにいたときは、全然モテない行き遅れだったというのだが。

ここルミナスでは前の時も、今も、物凄い美人だからな…。

それでいて、自覚があまりない。

その辺のギャップが、魅力でもあるんだろう。


これからが、大変だな。




まぁ、私にとってはジョゼが一番なんだけど。






さて、いずれは城に戻るカナコのために、私も奮闘しなくてはいけない。




まず、兄が張った色々な魔法を全て解除して、こちら側の魔法を張らなくてはいけない。

侍従、侍女、その他の人間の洗い出しも、やらなくては…。


頼りは、サーシャだ。

急ぎ学院に戻って、彼女を呼び出した。




「学院長、お呼びでしょうか?」

「サーシャ、良く来てくれた。まぁ、座ってくれ」


最近のサーシャは長い髪を除けば、男のようだ。


「失礼します」

「君の班は何名いたかな?」

「全部で10名です」


私は学院を卒業した中で、優秀な生徒を集め、チームを作っている。

そのチームは3班に分かれていて、その内の1つの班のチーフをサーシャに任せている。


仕事の内容は、有体に言えば、何でも屋だ。


警察でもあり、軍隊でもあり、探偵でもある。

だが、最終的には、王家のために存在するのだ。


今回の任務は、新しく妃殿下になられる方のために行われる城の浄化。

カナコの姉である彼女が適任だ。

彼女の瞳はいつも、真っ直ぐだ。


「今から、城の浄化を始める」

「それは、妹と関わりが?」

「そうだ。今の城はリチャード様の思うがままになっている。デューク様が亡くなれば、彼か、彼の子供達がこの国の王になる訳だからな。だが、」


そうなのだ、カナコが戻ってきたんだ。


「今の陛下のお側にはエリフィーヌ様がいる。陛下はいずれ城に戻り、改めてルミナスを支配なさるだろう」

「はい」

「そうなれば、リチャード様は面白くない。抵抗するためならば、どんなことでもやってくる」

「そうですね」

「今からでは遅いくらいなのだ。お2人に安全に、こちらに戻って頂くためにも、急いで行わなくてはならない。わかるね?」

「はい、わかります」


サーシャは微笑む。


「これは、君が適任だと思う。やってくれるか?」

「はい、学院長の仰せならば、是非に」

「よし、任せるよ」


顔が引き締まった。

この顔になったサーシャはいい仕事をする。


「妹は陛下の妃になるんですね…」

「2人は幸せそうだったろ?」

「ええ、妹があんなに嬉しそうに陛下に寄り添っている姿を見たら、父も母も何も言えませんでした」

「そうだろうな…」

「私もです。あの2人が、お互いに想いを通じているのが、よくわかりました。幸せそうで、ちょっと羨ましくって…、あ!」

「うん?どうした?」

「いえ、あの、妹はリリフィーヌ様の時も、あのように幸せだっだのですか?」

「ああ、幸せだったと思うよ。でなければ、生まれ変わってまで添い遂げようとは思わないだろ?」

「そうですね、仰るとおりです」


さて、私も動こう。カナコのためだ。


「私が陣頭指揮を取る。いいね?」

「はい、お願い致します」


私達は行動を起こした。





城の浄化は問題なく進んでいった。









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