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馬車が走る。

私の目の前に、ルミナスの景色が広がる。


こうやって、デュークさんと2人で見るのは久し振りだけど、やっぱり、楽しい。





「私達、どこに行くの?」

「カナコが良く知ってる場所だ」

「?」


馬車はあの丘に私達を連れて行ってくれた。

相変わらず、綺麗だ。


丘からルミナスの街を見る。

そこには、城が見える…、見えるんだ。


「どうした?」


私の僅かな変化に気づくって、愛?


「どうして?」

「少し、さっきと違う」

「私を見てくれてるの?」

「おまえしか見てない」

「なんだか、嬉しい」


私はデュークさんにキスをした。

軽いキスを。


「で、どうかしたのか?」

「あのね、エリフィーヌになってから、城を見るたびにね、あこにデュークさんがいるんだ、って思って見てたの。その時の城は、壮大で輝いていて、」


そうなんだ、あの時の城は、私にとってデュークさんそのものだったんだ。


「けどね、今、一緒に見る城は、普通の城なんだ。城にデュークさんがいないから。うまく、いえてるかな?デュークさんの側にいるってことが、嬉しくて堪らないんだ。だって、本当に戻ってこれるなんて思わなかったし、こうして、また、デュークさんと一緒にいられるんだもん。これって、凄いことだよね?」

「そうだな、凄いことだな」

「私の想いが叶ったんだ」 

「俺もだ。見ろ、あれを」 


デュークさんはあの丘に屋敷を建てていた。

屋敷だよ!


「凄い!」

「カナコが帰ってきたら、必ずここに住もうと決めていた。しばらくはここで暮らす」

「けど、魔物が来るよ?」

「大丈夫だ。城よりも安全だから」


おいおい、ルミナスの城って、そんなに物騒なのか?


「城って、どうなっているの?」

「おいおい、分かる。さあ、入ろう」


私達は中に入る。


「お帰りなさいませ」


ジョゼが既にいる。

出迎えてくれる。


この建物は素晴らしい。

平屋の造りになっているのは目立たないため。

建物自体の色も周りに溶け込むようになっている。

そして、なんといっても、素晴らしいのは居間。

大きなガラスの向こうには、あの景色が広がる。

私は大きなソファに座って、雄大な景色を、ただ、眺めていた。


「凄い…」

「カナコが好きな景色だ。一緒に眺めたかったんだ」

「一緒じゃなきゃ、意味がないものね」

「そうだな」


そういってキスしてくれて、執務室に籠もるんだ。

仕方がない、お仕事があるんだもの。





しばらくして、ザックが訪ねてきた。


「やぁ、カナコ」

「ザック?どうしたの?」

「陛下に呼ばれたんだよ。」

「そう…」


ザックはリックの双子の弟だ。

本当に久しぶりに会ったのに、ズッと一緒にいた気分になる。

その位、似ている。当たり前か。


「兄が、すまなかった」

「ザックが悪いわけじゃないから、」

「けど、身内だ」

「いいの。リックのことがなければ、まだ、意地を張ってたかもしれないし…」


ザックは悲しそうに笑う。


「リックは?」

「来週、処刑される」

「処刑?」

「妥当な刑罰だ。ガナッシュにカナコを拉致して亡命したんだからな」

「けど…」


一瞬、躊躇した私は、まだ、ルミナスの人間になれてないのかもしれない。


「カナコ、陛下に会えて、良かっただろう?」

「うん。ザックのいう通りだった。ごめんなさい」

「おいおい、無暗に謝っちゃいけないよ?」

「けど、謝らないで後悔したくないもの」

「そうか…」


そこへ、デュークさんが現れた。


「ザックか?」

「はい、お呼びと聞きました」


デュークさんが私の腰を抱いた。


「リックのこと、あれで良いな?」

「はい。兄も納得しております。どうぞ、厳正なる処罰を」

「わかった」


デュークさんの手に少し力が入る。

どこか、まだ、迷っているのかもしれない。


「失礼いたします」


知らない男の人が入って来た。

ルミナスでは珍しい眼鏡をかけた男性だ。


「2人に紹介しよう。この度、左大臣になったポポロ・ライゲルだ」


実直そうなだな。

彼は私に向って微笑むと、挨拶をした。


「カナコ様、お初にお目にかかります。ポポロ・ライゲルと申します。ポポロとお呼び下さい」

「初めまして」


あ、私の名前はどう紹介したらいいのなぁ?

今度、デュークさんに聞いてみよう。


「カナコ、ポポロには、おまえの事情は説明済みだ」

「そうなの?」

「カナコを王妃にするために、色々と仕事をしてもらう。頼んだぞ、ポポロ?」

「は、畏まりました」


ザックは優しい口調でポポロに話しかけた。


「ポポロ、やっと頭角を現したな?」

「ザック先生。先生の兄上の失脚をもっての左大臣登用です。なんだか…」

「気にするなよ、それもポポロの実力だ」

「はぁ…」


ルミナスには緑の髪と白い髪の人が存在する。

ポポロは白い髪の持ち主だ。


「ポポロ、問題は山積だ。頼んだぞ?」

「はい。1日も早くお戻りいただけるようにいたしますので」

「任せた」


ポポロは会釈をすると、城に戻るために出て行った。


「さて、ザック。呼び立てたのはカナコのことだ」

「え?私?」

「ああ、そうだ。これからは、間違いなく命を狙われる。遠慮なく魔法を使え」

「いいの?」

「もちろんだ。できるならば、魔物征伐も一緒に行きたい。そうすればおまえを襲っても無駄だとわかるだろう」

「そうですね。早くにわからせた方が、カナコのためにもいい」

「ザック?今、呼び捨てたな?」

「あ、申し訳ありません」


あ、涼しい顔してる。

仕方ないなぁ、ザックのために、おねだり攻撃、発令!


「デュークさん、ザックにカナコ様って言われるとなんか変だから、いいでしょ?ザックだけ呼び捨てでも?」


顔が変わったぞ?

案外、デュークさんもチョロイなぁ。


「あ、わかった…」


デュークさん、陥落。


「だが、カナコ?」

「なあに?」

「その仕草は、使用禁止だ。いいな?」

「え~~~!」


ザック、苦笑いするな。


「陛下、その方がいいですよ。カナコのことだ、都合が悪くなると、誰にでもその仕草を使うに違いない」


おいおい、あんまりじゃないか?

今まで、お父様とデュークさん以外に使ったことないぞ?


泣く振りして、健気な私を発令することは良くあったけど…。

これは、奥の手に取っておこう。


「その通りだな。カナコ、禁止だ」

「つまんない」


その笑顔、卑怯だ。

デュークさんこそ、誰にでもその笑顔を見せないでね?

お願いだからね?


「じゃ、早いうちに魔物征伐に出かけよう。いいな?」

「うん、いいよ」

「カナコの魔法を見せてもらおう」

「わかった」

「だから、俺が濃銀になったら、介抱してくれよ?」

「あ、もう…」


キスするなんて、恥ずかしいよ、もう…。






ザック、ゴメン。

私達、ほら、まだ会えたばかりだから、人前でも遠慮がなくなるんだ。

許して?







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