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翌朝。

私の隣にデュークさんがいる。

瞳が、赤紅の瞳が私だけを見つめているんだ。




幸せだ。

なんて、幸せなんだ。


「カナコ?」

「うん?」

「綺麗だ」


そう言って、おはよう、のキスをしてくれる。

時々、思いもかけずに優しくしてくれるのも変わらない。

久し振りに2人で迎えた朝だ。



 

けどね。 




私は、疲れ果ててしまっていた。

デュークさんの隣で、デュークさんにしがみついて、言うんだ。


「デュークさん、体中が痛い…」

「無理させたな?」

「いい、けど、痛い」


デュークさん、苦笑いだ。

私は、必殺のおねだりポーズを繰り出すことにした。

起き上がって、デュークさんを見つめて、可愛く微笑みながら、甘い声を出すのだ。


「魔法、掛けて?お願い?」


デュークさんの赤紅の瞳が大きく見開かれた。

そんなに驚くことか?


「カナコ?」 

「なに?」

「おまえ、そんな事を覚えたのか?」


そんな事?

ああ、この必殺のおねだりポーズのことだな?


「うん、覚えた。デュークさん、逆らえないでしょ?」 

「小悪魔だな、まったく」


ルミナスにも、小悪魔という言葉があるんだ。 


「ほら、」


感心してたら、魔法が掛かった。

体が、楽になる。

助かったよ、ホント。


「ありがとう」


けど、やっぱりデュークさんの魔法は気持ちがいいんだ。

私から、抱きついた。

今日は、くっ付いていたい。

一日中、デュークさんの肌に触れていたい。


そんな私の髪を撫でながら、呟いた。


「カナコ、俺は、恐ろしさすら感じたよ…」

「どうして?」

「おまえに強請られたら、俺は、ガナッシュくらい滅ぼしに行くな、間違いなく…」

「え?」


おいおい、そんなに軽くていいのか?

まぁ、古文では奥さんを取り返すために国を滅ぼしたってのは、ゴロゴロでてくるからな。

起き上がって、寝ているデュークさんを見た。


「じゃ、私って、魔性の女?」

「俺とっては、そうだ」

「なんか、凄いなぁ…」

「生まれ変わってくる方が凄いと思うがな?」


デュークさんの手が伸びて、私を抱きしめてしまう。

また、寝かされちゃった。


けど、その強い腕が好き。


だから、私からキスをする。

充分に長いキスを。


ようやく離れたと思ったら、王様は駄目出しをする。


「無暗に他の男に微笑むな?いいな?」

「無理だよ?」

「駄目だ」

「無理。普通にしてたい。でないとストレスが溜まる」

「なんだ?ストレスって?」


あ、ストレスはないのか…。


「強度の精神的圧力。長期間にわたって溜まると病気になっちゃう」

「それは、困る」


もう、王様のくせして、グタグタ言わないの!

私からキスしたでしょ?


「でしょ?大丈夫、私の目はデュークさんしか見てないから」

「そうだな」


信じろ?

おまえに会いに生まれ変わってきた私を、な。

だからだ、な?


「だから、わからせてあげる」

「カナコ?」


私はデュークさんの頬を両手で包み込んで、もう一度、キスをする。

そして、そのまま、デュークさんの体中を弄ぶ。


「カナコ、ああ、俺は…」

「感じて?私を、感じて欲しいの…」


デュークさんの引き締まった肌に私の指が触れる。

その度に、私の鼓動が激しくなっていく。

デュークさんにはどう伝わっているんだろうか?

感じてくれているんだろうか?

私は、感じてばかりだよ?


「ああ、カナコ、もう、我慢が、できない、いいか?」

「デュークさん、感じた?」

「ああ、カナコ、」


デュークさんが私に覆いかぶさると、ゆっくりと、私の中に…。

ああ、駄目だ。

駄目になっていく…。


「あ、ああ、」

「カナコ、、カナコ!」


その刺激は甘美過ぎた。

私は気を失いそうになる。

デュークさんが、抱きしめてくれた。


「俺は、おまえに溺れてしまった…」

「良かったってこと?」

「ものすごくな、おまえ以外の女は要らない」

「嬉しい!」


しがみ付く。

もう離れたくないんだもの、いいでしょ?


「可愛いな、カナコ」

「うん?」

「おまえがここにいるなんて、夢のようだ」

「うん、私もだよ」

「ずっと、一緒だ」

「うん、一緒」

「今日は一緒に出かけるぞ?」

「わかった、けど、…」


ごめんなさい。

それよりも切実な、問題です。


「それより…」

「お腹が空いたんだろ?」

「うん…」


昨日は殆どまともに食べなかった。

それどこれではなかったから、ね。






デュークさんは電話で朝食の用意を告げる。

私達は互いに魔法を掛けて、ようやく、服を着た。


朝食はジョゼが運んで来てくれる。




私は、戻ったんだ。




私達は手が繋げる程近くに座って、食事を始める。


「カナコ様、いかがですか?」

「美味しいわ、ジョゼ?」

「それは宜しゅうございました」

「覚えてるもんだな?」

「そうだね」


それは、お互いが触れ合えるほど近くなんだ。

本来ならそんなことは、見っともないって言われるけど、いいじゃん、側にいたいんだから。

で、デュークさんは私の髪に触れる。


「綺麗な髪だな?」

「髪だけが綺麗なの?」


こんな会話にも顔色変えずに世話するジョゼのプロ振りも久し振りだ。


「カナコは全てが、綺麗だ」

「嬉しい、ありがとう」

「これからは、このまま髪を下ろしていろ?」

「え?」

「似合ってるんだ」


赤くなるなよ…、嬉しいじゃないか…。

ところが。


「陛下、お2人のときだけになさいますように。髪を下ろしたまま人前に出るなど、妃殿下のなさることではありませんよ?」


出た、出ましたよ、ジョゼのお小言。


「仕方がない、か」

「そうだね、けど、嬉しいよ?」


このままじゃ惚気で先に進まないと、心配したみたいなジョゼは、デュークさんに進言する。


「カナコ様に詳細をお話になられましたか?」

「まだだ」

「そうですか」

「詳細って?」

「陛下がカナコ様をお救いになられるまでの事です」

「聞きたい。教えて?」


こういう話はジョゼの方がわかりやすく話してくれる。

ジョゼはデュークさんの許可を得て、起こった事実を淡々と話してくれた。


私が居なくなった次の日、事件を知ったジョゼは直ぐにデュークさんに全てを告げた。

その日の内に、お父様とお爺様がデュークさんのところに来て、私の救助を願ったそうだ。


そうして、ルミナス中がくまなく捜索されたそうだ。


けれども、まったく手がかりはない。

当然だ、私はその頃ガナッシュにいたんだから。

そしてリックは病気で臥せっていると嘘をついていた。

だから、誰の仕業かもわからないまま、日々だけが過ぎていった。


リックのやる事には、悔しいけど、抜かりがなかった。


それでも、この頃になって、ようやく、みんながリックを疑いだしていた。

リックと王妃の関係が関係だったから。


そんな頃に、だ。


マリ姉ちゃんが、感じてくれた。

私が泣いていると。

方向はガナッシュだと。


マリ姉ちゃんが皆を説き伏せて、デュークさんに会いに行った。

不審がる皆を前にして、こう言ったそうだ。


『フィーは、絶対にガナッシュのここに居ます!助けて下さい!お願いします!フィーは、ズッと我慢してきました。本当は陛下に会いたいくせに、私達家族が悲しむ顔を見たくなくて、会わないって、意地張って。でも、陛下が助けに来てくれるのを、待ってます。お願いします!もう会えなくてもいいから、生きていて欲しい。私のたった1人の妹なんです。陛下、お願い致します』


本来、ガナッシュの国内に入るにはガナッシュ国王の許可がいる。

だからドリエールさんが握りつぶすのは、目に見えていたらしい。

そこで、デュークさんはガナッシュには無断で僅かの部隊を率いて来た。

マリ姉ちゃんを信じて。


リックも、まさか、デュークさんが殆ど単身に近い状態で、ガナッシュの奥深い山の中に現れるとは思っていなかった。

まったく想像してなかったようだ。


そうして、私はデュークさんに救出された。








マリ姉ちゃんはやっぱり最高の姉ちゃんだ。

会いたいよ…。

会って、ありがとうって言いたいんだ。







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