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リックと同じ顔が残っている。
そっくりだよなぁ…。
さすが双子だ。
なのにいい男度はリックの方が上ってなんだろう?
くどいか?けどね、不思議なんだもん。
まぁ、とにかく、頑張れ、ザック!
「じゃ、カナコ、何から知りたい?」
「初歩でもわかるくらいに簡単な魔法の概要を教えて」
「いいよ。ではこの世界における魔法についての講義だ」
ザックは学院長だけあって講義は分かりやすかった。
「いいかい、まず、この世界で魔法を使えるのは全人口の約1/1000だ」
「え?みんなが使えるんじゃないんだ?」
「そう、だから魔法が使えるだけで仕事には困らない」
そうなんだ、やったね。
で、ザックは順序立てて説明をしてくれた。
まず魔法は大きく分けて3つに分類される。
1、攻撃魔法
2、治療魔法
3、生活魔法
攻撃魔法はゲームでいう所の黒魔法らしい。
雷とか炎とかが出るらしい。
なんか一番やってみたいな。
指からファイヤーって…。
「火が出る魔法って、やっぱりファイヤーっていうの?」
「なにそれ?」
「え?呪文とか魔法の名前とかないの?」
「別にないよ。魔法を使う人の思考とか好みの方が影響あるんだ」
「ちょっとわからない…」
「しょうがないなぁ」
苦笑いのザックの講義によると、ですね。
この世界の魔法って100年前位から使える人が増えてきているそうで、まだまだ発展途上にあるんだそうだ。
だから呪文と言うよりも言葉での定義がまだまだ完成の状態じゃなくて、思考が優先されるらしい。
たとえばファイヤーっていう言葉が人それぞれで理解度が違っていて、統一性がないから今はファイヤーっていっても無駄らしい。
あと200年程すれば言葉と魔法の統一性が出来て、呪文ってものが出来るかもしれないということだ。
だからゲームの魔法みたいにファイヤーっていえばファイヤーが出る訳じゃなくて、使い手が炎を出したいと思えば炎が出るってことだ。
炎の威力も同じ。
大きいのを出そうと思えば大きくなる。
だから、雷の中に氷を混ぜたり水の中に雷を混ぜたりするイメージさえ出来れば、呪文なんて要らないんだそうだ。
「けどさ、ニホンだっけ?カナコのいた世界?」
「そうだよ、なに?」
「そこに住んでる人達は魔法が使えないんだろ?」
「うん、そう」
「なのに、なんでこんなに詳しく魔法の定義ができているんだ?」
「えっと、どうしてかなぁ…」
私のゲームでの知識の話を聞いたザックが不思議そうにいうんだ。
だって、方ないだろう?
ちゃんと覚えないとゲームが進まないんだから。
三竦みの法則とかこの魔法ばかり使うとMPがなくなって困るから弱い魔法も使うとか。
あの、エンディングの画面を見る為に頑張るんだよ。
ああ、生産性の欠片もない話だ。
「とにかく、思えばいいの?」
「そう、やってみて?」
「うん…」
指先に炎!
ポッ。
思っただけでちいさな炎が出ちまった。
なんか色々と大変そうな気がしてきた。
魔法に関連するような思考には注意が必要だな。
思考が駄々漏れで魔法が出てしまうんだよ?危険。
で治療魔法は白魔法。
僧侶だよね、僧侶。こっちに転職もいいなぁ。
純粋無垢な少女ってモテますか?
このリリさんの美貌をもって白衣でも着た日には行列だ出来そうだ。
最後の生活魔法、ヒョイと使うだけでお風呂上りの爽やかさ。
それだけじゃなく本当に生活全般のことに使えるそうだ。
これは必修ですね。
「ねえ、たとえば攻撃と治療を組み合わせて使ったりはできるの?」
「理論上は可能だよ。けど、魔量が足りなくて無理だろうな…」
「うん?じゃ、私は、もしかして出来るかもしれないんだ?」
「そうだね…、けど、カナコがどの魔法を使えるか実証してからだね」
「え?3つ全部使えないの?」
「3つとなると少ない。普通の魔法使いの中で1/30もいないんだ」
それは貴重だ。
「へ?」
「カナコの身近な人間で言えば、この国の王であるデューク陛下、魔法学園学長の私。私の兄のリック。そんなとこかな」
全員じゃん…。
え?この環境って凄いこと?
うーん、わからない。
気にしないでおこうっと。
「あのさ、ちょっと試してみていい?」
「いいよ」
何からやってみる?
って、後、試してないのは治療魔法だけだな。
ザックもそこに気づいてる。
「治療が残ってたね?やってみて。今、私が怪我するから」
「え?」
「大丈夫だよ、直れって思ってみて」
「分かった」
ザックは刃物の攻撃魔法で腕に怪我をした。
血が流れ出した…。
痛そうだ。
直せるかしら???
まぁ、私が駄目でも自分で治すよね、きっと。
「いくよ、」
クルクル、細胞が治って、傷が塞がって、跡が消えるよと、ホイ!
あ、血が止まった。
見る見る間に傷が無くなった。
いったい、なんで、私、こんな事が出来るんだ?
「治った…」
「いやー、早くで綺麗だ。教科書に載せたいくらいの出来だよ」
使って下さい、お願いします。
で、著作権は発生しますよね、お幾ら程になりますか…。
なんたって生活しないといけないので。
「3つ全ての魔法が使えるな。凄い話だ」
「そんなに凄いの?」
「そう。魔量ってのが曲者でね。子供の頃に3つ使えると分かっても大人になって魔量が安定して、魔量不足で使えなくなることもあるんだ」
「え?魔量って、変わるの?」
「変わる。大体15歳くらいで安定するんだけどそれまでは不安定でね、量が多い歳もあれば少ない歳もある。不思議だろ?」
「うん、不思議」
「そのくらいに、この世界での魔法ってのは人間の思考や環境に左右されるんだよ」
「リアルだね…」
「うん?リアル?」
「えーっと、現実的とかってこと。空想じゃないってこと」
「不思議なこと言うよ。現実のことだろ?空想な訳ない」
「そうだね、うん。そう」
「ニホンって不思議な国だね?」
「私から見たらここも不思議な国なんだよ?」
「そうか…、馴染めそう?」
「馴染まないといけないでしょ?」
「そうだね、慣れればルミナスもいい国だよ、きっと」
「うん、そうだね」
ここルミナスから見たニホンは不思議の国だな。
とにかくルミナスに来て1日目。
わかったこと、どうやら雷に打たれたので私は魔法使いになってました。
わからないこと、私は日本に帰れますか?