67 あなざーさいど 8
アンリ・ハイヒットは思考してる。
参った。
フィーの居所は、依然として掴めずにいる。
ただ、妙な噂が流れてくるんだ。
リック・リトルホルダーが重病で床に臥せっている、と。
彼は陛下の信頼厚い部下であった男だ。
が、リリフィーヌ様が亡くなって以降、人が変わった。
それが使命とばかりに、陛下を不快にさせることばかり行う。
当然のように、陛下は彼を遠ざけた。
が、そのリックをドリエール様とリチャード様は重宝したのだ。
その、彼が、寝込んでいる?
誰もその事を気にも留めていない。
そこが、引っかかる。
私はお爺様の配下の者を借りた。
彼の屋敷にはごく僅かな下僕を除いて、誰もいなかった。
辞めさせられた者、何処かへ消えた者。
どうなっているのか。
引き続き、彼を調べさせた。些細なことも、そうでないことも。
そして、確信した。
私は、陛下の元へ急ぐ。
この件に関して、私はいつでも陛下に会えるようになっていた。
「陛下?」
「アンリか?」
「はい、入って宜しいでしょうか?」
「ああ、入れ」
王の執務室は重い空気が流れている。
「どうした?」
「リック・リトルホルダーの事です」
「あいつが、どうかしたのか?」
「今、重病で寝込んでいるとの噂ですが、屋敷には僅かの下僕を除いて誰もおりません」
「それが?」
「中には辞めさせられた者がいるのです。なぜでしょうか?不思議だと思われませんか?」
「そうだな…」
私は、思うことを述べた。
「これは私の想像ですが、言っても宜しいでしょうか?」
「言え」
「今回の犯人は、彼ではないでしょうか?」
「何故だ?あいつはドリエールと出来てるんだぞ?」
「陛下、彼は、エリフィーヌを知っています」
「何?」
「おそらく、エリフィーヌがカナコ様だと、知ったのです」
「…」
「リック殿はカナコ様に想いを寄せていたのではないでしょうか?」
「そうなのか?」
私は頷いた。
祖父の配下の者達の優秀さは、陛下も知るところだ。
「祖父の配下の者の調べです。間違いありません」
「ああ、ならば、間違いない」
「それで、私は理解したのです。今までのリック殿の行動を」
「あいつは、俺が憎いのか?」
「間違いなく、陛下とザック殿を憎んでいると思います」
椅子に座ったままの陛下が天井を見上げた。
思い当たる節でもあるのだろうか?
「俺が憎かったのか…。そうか、俺がカナコを見殺しにしたと、そう思っているんだな、あいつは…」
「実際は、どのように亡くなられたのですか?」
「そうだな、どう説明したらいいのかな…。直接の原因は魔法の使い過ぎだった。リリフィーヌの体にカナコの魔量は多すぎたんだ」
「なるほど…」
「けれどもな、リリフィーヌの体自体が終っていたのかもしれない。俺はそう思った。カナコは動くことすら出来ずにいたんだ。あれ以上カナコを留めても、苦しいだけだった」
「そうですか…。けれども、リック殿は悲しみに目がくらみ、事実を受け入れなかったのですね」
「そうだな、そういうことになるな」
陛下の体に熱い気が巡る。
先ほどまでとは、部屋の空気が違った。
「で、アンリ。おまえの調べは何処までだ?」
「はい、リック殿はドリエール様からガナッシュに土地を貰い受けております」
「場所は?」
「まだ、そこまでは確定出来ておりません」
「カナコ、いや、エリフィーヌはそこにいる。間違いないな?」
「はい」
私は、陛下の想いに応えたかった。
「しばし、時間を下さい。必ず突き止めます」
「わかった。こちらも準備をしておこう」
「はっ」
動き出すのだな。
その時を早めるために、私は、私の仕事を仕上げよう。
家に戻った時。
マリーが父上と口論していた。
「だから、ガナッシュなのよ!」
「そんな、いくらそうでも、」
「お父様!私のこと、信じてくれないの?」
一体?
マリーと目が合った。
「アンリ兄様!」
「どうした?マリー、大きな声を出して?」
「フィーが、ガナッシュにいるのよ!」
何故、それをマリーが知っているんだ?
「フィーが?ガナッシュに?」
「そうよ、だから、助けて!早く、助けに行って!」
「どうして、そう思うんだい?」
「私には分かるの。フィーがそういう魔法を掛けてくれているの」
そういえば、昔、マリーはフィーを守るっていったな。
だから、フィーの居場所が分かる魔法をマリーに掛けたって、フィーが言ってたな。
その時の魔法が、今も?
そんなに残っているんだろうか?
「アンリ、マリーのいう事だけでは、陛下にお伝えするわけには…」
「父上。もう少しマリーの話を聞きいてもいいですか?」
「それはいいが…」
父上は真偽が分からずに困っておいでだ。
「ガナッシュの地図がありましたね、確か?」
「持ってこさせよう」
しばらくして、地図が来た。
テーブルに広げると、マリーに尋ねる。
「マリー。フィーが何処にいるか、分かるかい?」
「もちろんよ、ここよ!」
マリーはなんの躊躇いもなく、一箇所を指差す。
そこはガナッシュでも山間にある場所だった。
ルミナスからは遠い。
「昔、フィーが学園に入学する時に、フィーの居場所が分かる魔法を掛けてもらったの。フィーが悲しくて泣いたら、私の中で、ピコンピコンって音がなって、その場所のイメージと地図が浮かぶの」
「それを、フィーが?」
「そうよ、私のお願いを全部纏めて、フィーが作った魔法よ」
マリーが自慢そうに言う。
今でも、その魔法が利いていることが、驚きだよ。
普通は1年持つのが限界なんだ。
「だから、私が感じたってことは、フィーが泣いてるの。泣いてるのよ!早く、助けに行かないと!」
私と父上は目を見合わせた。
フィーは、フィーって奴は…。それに、マリーもだ。
きっと、この2人の絆は誰よりも強いんだろうな。
だから、こんな奇跡のようなことが起きたんだ。
ならば、その奇跡を頼りに直ぐに行動開始だ。
「わかった、今すぐ陛下のところに行こう」
父上はマリーに言う。
「ホント?信じてくれるの?」
「もちろんだ」
私も力強くマリーを肯定する。
「アンリ兄様?」
「フィーがガナッシュにいることは間違いないんだ。ならば、マリーの挿す場所にフィーがいるに違いない」
「ありがとう!」
私たちは、城に向った。
1秒でも早く、フィーを救うために。




