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11歳になっちまった。




最近になって、このルミナスでの魔物の状況を聞くようになる。

小さい子供には聞かせないようにしているために、この歳まで知らなかったんだ。


ルミナスのアチラコチラで1ヶ月に1度、多いときには3度ほど魔物征伐が行われている。

これは私がリリさんの時よりも、かなり多い。

もちろん、デュークさんが先頭に立って征伐してる。

そのお陰で、私達がいるルミナスの城下街とその近辺は平和だ。


デュークさんの、あの、辛そうな顔を思い出す。

けど、もう、奥さんがいるんだもの。

大丈夫なんだろう…。




…、私、抱かれるために生まれ変わってきたのになぁ。




ハイヒットの家の近況だ。


アンリ兄様は時々お友達を連れてくる。

美男子って訳じゃないけど、気持ちがいい人だ。

アンリ兄様って、誰にでも打ち解けそうに見えて、実はガードの固い人だから、ね。

よっぽど信頼してるんだろうな。


サー姉ちゃんは、魔法に磨きを掛けるべく邁進中だ。

他の事なんか、興味もないみたいだ。

けど、お姉ちゃんくらいに魔量も多いとやりがいがあるんだろうな。


ジャック兄ちゃんも頑張っている。

けど、サー姉ちゃんやアンリ兄様みたいに魔量が多くないから、苦労している。

けどね、だからこそ、誰よりも真剣に魔法と向き合っているんだ。

センスはルミナスで1番だって、私は思うよ。


マリ姉ちゃんは相変わらずだ。

今は、恋に夢中だ。

恋って言ったって、片想いのキャー!って奴の延長上。

友達と毎日五月蝿い。

けど、不思議なことに、彼氏は出来ない。

なんでかな?



私は、急に背が伸びた。

なんでだろう?

牛乳を沢山飲んだわけでもないし。 


マリ姉ちゃんと同じ位の背になったんだ。

それでも、まだ子供の身長だけどね。

時々、双子に間違われたりする。

けど、似てないよ?マリ姉ちゃんの方が、美人だし…。


ふん、いいもん。




今日はお母様に連れられて、マリ姉ちゃんと一緒に新しい制服の仮縫いに来た。

学園は学年が上がるたびに、制服が微妙に変わる。

だから、必ず新調しないと駄目なんだ。

学年が違うのに去年の制服は着れない。着ちゃいけないんだ。


それが出来なければ、辞めればいいだけ。


ルミナス学園は色々厳しい。


あ、そうそう。

去年の事件以来、別の敷地でアンダー学園が建設されて、地下の人達はそちらに通うことになった。

ちなみに、この学園よりも校則が厳しいらしい。

そこまでしなくても、地下にも学校はあるらしいのに、わからない。


アンリ兄様に言わせると、非常にデリケートな問題だから関わるな、だそうだ。


当然、ミルちゃんはもう、学園にはいない。

彼女がアンダー学園に通っているかは知らないけど、あの後、牢に入ったと聞いているから、普通に考えて、通ってないと思う。


そして、私のストーカー、オラクル・ジャヴォット。

いつの間にか、学園を辞めていた。


一体何をしたかったんだろう?変な奴だ。





あ、制服の仮縫いだった。


「ここよ」


と、城下街の中の1軒の前で、お母様が止まる。


「さぁ、入りましょう?」


お母様に言われて店を見る。

あれ?この店は…。


「ここなの?」

「そうよ」

「去年は違ったよ?」


マリ姉ちゃんが自慢げだ。


「私がここが良いってお願いしたの」


あんた、余計なことを…。


ここって、アリの店じゃん。

このゴージャスな造り、煌びやかな内装。

思わず気後れする雰囲気…。


ああ、ここで暮らすってことは、嫌でも近づくってことなの?

近づいたって、もう、遅いんだよ?


しかし、マリ姉ちゃん、自慢げ…。


「だって、あのアリの店よ!」 


知ってるよ。もう、10年以上も前から、知ってるよ。 


「さぁ、行こう」


私は、マリ姉ちゃんに引き摺られて店に入った。

店員が優雅に挨拶をする。

さすが、高級店。威圧感が違う。


「ようこそ、お待ちしておりました」

「よろしくね?」


さすがお母様。堂々としている。

なんと、マリ姉ちゃんもだ。

いかん、私も頑張らないと…。苦手なんて言ってる場合じゃない。


店員の視線を感じるぞ?

高級店は店員までスタイルがいい。


「さすがに噂に上るハイヒット家のご令嬢ですわ」


なんだ?噂?

どんな噂なんだ?

まさか、魔法が使える?いや、ザックには口止めしたよ?

いや、ザックだし…。


お母様が不思議そうに尋ねる。


「まぁ、噂?何かしら?」

「ええ、稀に見る美人姉妹だと、ルミナスのスズメ達が申しております」


は???

そんな噂、聞いたこともないぞ?


てか、あんた、誰?


「アリ、そのようなお世辞を信じないでね?」


アリ??????嘘???


「え???アリ????」


なんで、?凄い、細いじゃん?背はその位だったけど?

肉は、何処にいったんだ?


「どうかなされましたか?」

「え、っと、アリって、太って…いた…」

「あら、どうして、私が太っていたことをご存知ですの?」

「う、あの、聞いたの、誰か忘れたけど、ちょっと聞いたの…」


なんだよ?魔法か?マジックか?

3人分くらい痩せたじゃん。

私は、きっと目を丸くしたままでアリを見続けてしまう。


「そうなの?アリ?」

「はい、奥方様。やはり皆様に美しいものをお届けする私が、それなりでないと、と思いまして」


そうだったんだ…。


「けど、もう10年以上も前の事でございますよ?一体誰が、私の昔話を?」


まずい、な。説明できるかよ?

しらばっくれよう。


「ねぇ、お母様。早く仮縫いをお願いしたいの?」

「フィー、そうね?アリ、お願いしていいかしら?」

「畏まりました。こちらへ」


懐かしい階段を上がる。

幅は大きいままだ。

そして、あの時の部屋だ。

懐かしいなぁ。


そう言えば、チェニックとスパッツ、出来たのかな?


私から仮縫いが始まる。

マリ姉ちゃんは興味深々だ。

昔からお洒落大好きだったもんね。


私はお母様チョイスでも全然平気。

お母様のセンスは良いんだよ?ってか、自分が信用できないんだけどね。


「お疲れ様でした」

「ありがとう」


私の仮縫いが終って、マリ姉ちゃんの番になる。


「お母様、レストルームに行ってくる」

「1人で行くの?」


心配症だな、トイレぐらい1人でいけるよ


「大丈夫」

「わかったわ」


さっき、見つけたから場所は分かっている。

問題なく、たどり着いて用を済ませた。


さて、戻ろう。


あ、壁に絵が飾ってある。

服の絵だ?アリのデザインなのか?


ふーン??

あれ?これって?あの時のだ!

私のチェニックとスパッツって言った話から、起こしたデザインだ。

私、あの時、ルミナスで生きていたんだね。

この絵が証人だわ。


思わず、その絵を手でなぞってしまう。


ジョゼの顔が浮かんだ。

元気かな?


「どうかなさいましたか?」


あ、アリだ。どうやって誤魔化そう?


「え、変わったデザインだと思って…」

「本当にその通りです。その足を見せるデザインはルミナスでは受け入れられませんでした」

「そうなんだ…」


楽なのにね。


「お気に召しました?」

「うん?楽そうだと思ったの」

「楽?確かに、そうですね」


そこに、お母様とマリ姉ちゃんが来た。


「遅かったじゃない?」

「ゴメン!」

「フィー?何をしてたの?」

「お母様、これを見ていたの」

「あら、変わったデザインね?」


お母様はアリに聞いた。


「何方かのご依頼だったのかしら?この様な服は、見かけた事がないわ」

「これを提案なさった方はとても面白い方でした」


私はお笑い担当かい?

まぁ、いいけど。


「けれども、もう、お亡くなりになられた方です」


そうだね、私は死んだ人間だ。


「そう」


そして、お母様は私の手を握る。


「さぁ、帰りましょう」

「「はい」」



この成り行きに、私は自分の耳をつねってみた。






痛かった。

良かったよ、私は幽霊じゃない。






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