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サー姉ちゃんは、私を見た。



怒られる…。


「フィー?」

「なに?」

「地下の人間は私達と別人だって、分かったでしょ?」

「うん、わかった」

「地下には地下の善悪があるの。絶対に関わらないこと」

「うん、関わらない…、ごめんなさい。けど、お姉ちゃん」

「どうしたの?」

「なんでなの?なんで、短絡的なことしか考えないの?」


本当に、後のこと考えたら、そんなこと出来ないでしょ?


「私にはわからないわ。ううん、わかれないの。私達は地上に住んでいる。そりゃ、魔物の恐怖と戦っているけど、知恵も持ってるから平和でしょ?」

「うん」

「この平和は私達の手で掴んだもの。ただ、地下の人は私達と違う道を選んだ。守ってもらう道を」


そうか、守ってもらう道か。

そうやって、地下に住んで、生きることにしたんだ。


「それが、いつの間にか、守ってもらって当たり前。それどころか、地上の人間は裕福で魔法も使えてズルイと言い出すようになったのよ」


その人たちもデュークさんは守っているんだ。

ルミナスの王だから。


「陛下はルミナスの民を守っている…よ?それなのに?」 

「そうね、陛下にとっては地上も地下も同じ民だものね」

「だって、あんなにボロボロになって、帰ってくるのに…。それを、地下の人達は当たり前って思ってるのかな?」

「…?」

「あんなに、苦しそうに、なって、帰ってくるのに…」


あ、あああああ!

私、何言ってんだ!

うぁ、ヤバイ!


「フィー?」

「え、あ、…」


そん時だ。


「サーシャ?」


いきなり幕の中に入ってきた人間がいた。



魔法学院、学長、ザック・リトルホルダー。

昔からの知り合いだ。

そうだよね、ザック?


「この幕はサーシャが張ったの?」

「はい、学長」


サー姉ちゃんはシラを切る。


ザックだ。

ああ、ザックなんだ。


私達、目が合っている。


年取ったね。

私は若くなったんだよ?いいでしょ?


いかん、慌てて、恥ずかしそうに目を伏せてみた。


「この少女は?」

「私の妹です。ご挨拶を」

「初めまして、エリフィーヌ・ハイヒットです」

「初めまして…。あの、君、どこかで会ったこと、ないかな?」


こいつ、鋭い。

相変わらずだな、心臓がドキドキだぜ。

だけど、そんなん、答えられるか…。


「…、」


モジモジしてやる。

少女の必殺技だ。


「お、お姉ちゃん…」


サー姉ちゃん、助けて。


「学長、妹は初めて学長に会いましたが?」

「そう、か。では、私の勘違いかな?」


そうそう、そうですよ。勘違いですよ。


「で、サーシャ、状況は?」

「はい、」


サー姉ちゃんとザックは、なにやら話している。


どうやら、この痺れ薬の入った水は魔法で作られているらしい。

それを地下の人が持っていた。


地下の人達の中には魔法を使える人はいない。


という事は…。

地上の人間がそんなものを作って地下で商売してるってことだ。

なんでも商売になるけど、それはいかん、だろ?

違法で間違いない、よね?


まぁ、その話は本題を逸れるから、置いておくことになったみたい。


「ところで、この痺れの魔法も、サーシャが掛けたの?」

「はい、急でしたので強くなってしまいました」


ワザと強くしました。ごめんなさい。


「そう…、」


どうして、こっちを見るんだ?

え?こっち見るな、いいか、見るなよ?


「妹さんは目が紫紺だね?魔法が使えないの?」

「はい、赤紅ではありませんから」

「私の知り合いは濃銀でも、バンバン魔法を使ったよ?」

「え?そんな方が?」

「ああ、面白い女性だった。今でも忘れない」


面白いって、どうなのよ?


「会えたら、謝りたかった。無理をさせて悪かったと」


ザック…。卑怯だ、お前、卑怯だ!


「サーシャ、学園の長が来たか見てきてくれないか?」

「はい」

「お姉ちゃん、私も行く」

「フィーはここに、いなさい」

「けど…」


お姉ちゃん、行くな!行かないで!


「では」


サー姉ちゃんは、行っちゃった。

どうする?ザックと2人きりだ。


「妹さん、魔法ってのは不思議なんだよ?幕を張ったりすると、そこにね、かけた人の癖みたいなものが残るんだ。そしてね、それを探ることにかけては、私は人より上手い。だから、わかってしまうんだ」


何をわかるっていうんだ?


「私はこの幕を張った女性を、知ってる。けど、そんなことは起こりはしないんだ。だって、彼女は亡くなったから。そうさ、私が殺した様なもんなんだ」


違うよ、そうじゃない。

仕方なかったんだよ…。

ザックの目が、私を見つめる。

逸らすことが出来ない。


「だけど、もしも、生きているならば…。ここに、彼女がいるのならば、謝りたいんだ。すまなかった、と。もし、あの時に魔法を使わせなければ、もっと陛下の側にいれただろうに…。私はね、ずっと後悔してたんだよ?」

「…」


何を言えというんだ?

何を言わせるんだ?


「カナコ、すまなかった」


ザックは私に頭を下げた。


……。



降参する。降参だよ。


「ザック、もう、いいよ?謝らなくていい」

「けど、カナコ…」

「バレちゃった…」

「これは、バレるよ」

「そうなの?」

「一目でカナコの魔法だってわかったよ」


ザック、降参します。


「けど、お願い、誰にも言わないで?お願い!」

「陛下に会わないのか?」


会えるかよ?


「私はエリフィーヌ・ハイヒットの人生を生きたいの。デュークさんの人生を邪魔したくないの」

「まったく、君は…」


ザックは苦笑いだ。


「前みたいに入れ替わるもんだと思ってたよ。まさか、生まれ変わっているなんてな…。カナコ、これからは、時々遊びにこいよ?」

「行っていいの?」

「カナコのためならば、ドアはいつでも開かれている」

「わかった。けど、行かないと思う」

「どうして?」

「私はエリフィーヌだから」


驚いた顔をする。


「本気で陛下に会わないのか?こんな、直ぐ側にいるのに?」

「会わない」

「どうして?」

「決めたから」

「…、カナコ。いいのか?」

「うん、」

「後悔しないか?」


後悔だらけだよ。それ以外なにがあるんだよ?


「…しない。するもんか」


嘘だ。

自分でもわかってる。

強がりだ。


けど、まだ10歳の私に何ができる?


「ザック、誰にも言わないで。ジョゼにも言わないで。お願いだから」


ザックは考え込んだ。


「わかった。その代わり、私が会いたい時には会ってくれるかい?」

「頻繁でなければ、いい」

「仕方が無い、それで良しとしよう」


私達は握手を交わした。

交渉は成立した。



サー姉ちゃんは、しばらくして戻ってきた。







危なかったよ。






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