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白い美形と2人ですよ。

大臣さんがどこかに電話してます。


「ええ、ガーネットの間に。直ぐに持ってきて下さい。あと、ザックを呼んでください。ええ、同じです」





見れば見るほど美形の大臣さんですね。

白い髪が揺れてます。理知的です。

福眼です。ありがたや、ありがたや。


「ええと?なんと御呼びしたら良いでしょうか?」

「あの、名前をいってしまったら帰れなくなるとか、下僕に成り下がるとか、そんなのないですよね?」

「?」


そんな目で見ないで。

痛い人ではないんです。


「変なこといってます、よね?けど、なんかそんな設定もあったし…」


そんな設定の小説があったよね。

なんか酷いなぁと思ったの覚えているもん。  


「設定?」

「え、いや、とにかくですね、名前をいって私に不利になることは無いですよね?」

「無いですよ。私が保証しましょう」

「えっと、大臣さん、お名前は?」

「これは失礼しました。私はリック・リトルボーダーです。この国の左大臣を勤めております」


こうだよ、こうこなくちゃね。

ようやく名乗りますよ、たいした名前ではありませんがね。 


「私は上条加奈子です。あ、この場合は加奈子・上条になりますね。きっと」

「では親しい方々の間ではカナコと呼ばれらしたのですか?」

「はい」

「では、カナコ様。この国の事情をお伝えいたします。長くなりますから、食事しながらとなります。よろしいですか?」

「お願いします」


お腹、空いたなぁ。

食事ってどんなんだろう?

なんかヨーロッパっぽいからフレンチかイタリアかなぁ。

ピザもいいよ、お上品なスープも大歓迎。

ウエルカムよ。


侍女さんが料理を運んできた。

うんうん。

いい匂い、お腹がなるわぁ~~。


うん?


どうやら、フレンチではない。イタリアンでもない。

もちろん、和食であるはずがない!

これは…ン。


イングランド風朝食ですか?

イギリス????

わぁ~~~~。


「どうかなさいましたか?」

「あの、お聞きするんですが、この国って島国なのでしょうか?」

「よくお分かりになりましたね?」

「ってことは、フィッシュアンドチップスなんて料理があったりして?」

「うん?それは芋と魚のフライですか?」

「あ、そうです」

「民には人気の食べ物ですよ」

「うなぎはぶつ切りでゼリー寄せとかパイになります?」

「うなぎ?あの蛇みたいなヌルヌルしてる魚ですか?」

「ええ」

「あんなものを好んで食べるのは労働者だけですよ?確かにぶつ切りですが…。カナコ様、一体どこで?」


あ、なんか拙い方向へ行ったよ。

これは修正しないと。

私の拙い知識は出さないでおこうっと。

変な誤解は破滅の元だもん。


「島国っぽい料理だなぁと」


く、苦しいぞ。変な言い訳だ。

頼む、これ以上追求しないでくれ。


「なるほど」


大臣さん、いや、リックさんの目がキランと光った。

見なかったことにしようっと。


「それでは、お召し上がり下さい」

「はい、頂きます」


思わず拍手を打ってしまった。

日本人だもん。これは外せないよね?

リックさんは気づかない振りしてくれてます。


「さて、何からお話しましょうか?」

「えっと、この国のことですかね?」

「わかりました」


リックさんは親切に説明してくれた。


この国は、島国だそうだ。

島が3つ並んでいて島ごとに国になっている。

左端にあるのが、この国ルミナス。

真ん中がガナッシュ、右端がアルホートという国だそうだ。

一番大きいのがこのルミナスらしい。

人口も多いんだそうだ。


で、先日このルミナスの王デューク・シレン・ルミナスと、アルホートの王女リリフィーヌ・ジャンヌ・アルホートが結婚した。

緑の人と私の外見の人のことだ。


なのに私が現れたんだ、そうか…。

それは辛いだろうな…。

けど私のせいじゃないもん。不可抗力なんだよ?


で、この結婚、両端の国には良かったんだけど、真ん中の国ガナッシュにとっては都合が悪かったみたいだ。


リックさんによると、ガナッシュの王女のドリエールって人も緑の人が好きらしい。

で、リリさんに嫉妬中と。


「なので、リリフィーヌ様ではなく、カナコ様だと分かってしまうと、色々と良くないのです」

「そうでしょうね。そのアルホート国にも言い訳ができませんものね」

「さようです」

「はぁ、そうなると、しばらく私は、そのリリフィーヌさんの振りをしなければならないのしょうか?」

「飲み込みが早くて助かります」


なんて、無謀な話なんだ。


「けど、絶対にバレますよ?」

「なんとかしますよ」

「だって、目の色が違うのでしょう?」

「あ、赤紅と濃銀ですからね。けれども、リリフィーヌ様の魔量が尽きたときは濃銀になりましたから、大丈夫でしょう」

「はぁ」


私の頼りないため息に、リックさんの目つきが鋭くなった。


「やっていただかないと。ルミナスの命運が掛かってます」

「命運を掛けられても…、私はしがない事務員ですから…」

「じむいん、とは、なんでしょうか?」

「そうですね、リックさんは大臣ですからいろんな仕事をすると思うんですよ」

「そうですね、いろんな仕事を致します」

「その時に雑用が出ますよね?書類を整理したりお茶入れたり」

「はい、出ますね」

「その雑用をこなすのが仕事でした」

「なるほど」

「簡単な仕事です。誰でも出来る仕事ですから私じゃなくてもいいんです…」


そうだよね、私がいなくなっても誰も困らないんだ。

代わりの人だって直ぐに見つかるだろうし。

あ、そういえば営業の上田さん、いい人だったなぁ。

暖かくて優しくて顔は普通だったけど、結婚するならこの人がいいなんて思ってた。

ちょっとは脈あったのかな?

こうなるんだったら、後悔の無いように告白しておくんだった。

出来なかったけどね。


「どうしました?」


リックさんが覗き込むように私を見つめている。


「え?いや、ちょっと考え事を…」


私の気持ちに気づいてくれた。


「そうですね、不安でしょうね」

「不安ですよ、とっても」


そして、静かに言うんだ。


「カナコ様は元の場所に帰りたいですか?」

「ええ、今すぐにでも帰りたいです。だって、読みかけの本もあったし、ドラマの続きも気になるし。そうそう、漫画の最新刊、明日発売だったんですよ?ねえ、リックさん、続き気になるでしょ?」


苦笑いしてる。

だよね、次元低いよね。けど、それが私の生活だったんだ。


「そうですね。気になります」

「でしょ?それに、…」

「なんでしょう?」

「お母さんと喧嘩したままで…、まだ、謝ってないんですよ」


そうなんだ。ふて腐れて布団に潜り込んでスマホ弄ってた。

何やってんだろう、私。

もう33だっていうのに。お母さんの言うとおりだった。

子供だよ馬鹿みたい。


「それは、辛いですね?」

「わかります?」

「私も母を亡くしました。時々思います。なんでもっと優しくしてあげなかったのだろうとね」

「うっ…」


やだ、泣いた。


…、年のせいにしとく。

リックさんは無言で少しの間泣かせてくれた。

彼ははいい人だ。

ようやく落ち着いたよ。


「もう、会えないのかなぁ…」

「そうですね…」


そうだよね、リックさんだってわかんないよね。


「いつか、会えますよ」

「ホントですか?」

「ええ、だって、貴女も貴女のお母様も、死んではいないのでしょう?」

「そうです」

「なら、いつか会えます。そう思います」


そう言って微笑むんだ。

リックさん…。

私、ついていきます。あなたに。


なんてね。

けどね、そのくらい感謝してます。


「リックさんって、優しいですね」

「そうですか?」

「はい、なんか落ち着きます。良かった、リックさんがいてくれて…」


いやだ、そんなに見つめないで下さい。


「どうかしました?」

「いや、リリフィーヌ様のお姿でその声で、そう仰られると…」

「あ、変ですかね?」

「いえ、カナコ様は素直で面白い。一緒にいて楽しいです」

「私もリックさんと話せて楽しいです」

「それは、良かった」



少し落ち着いた。

安心できるって大切なんだな。






心が弱っているのかな。

優しさが身に染みるよ。









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