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なかなか眠れなかった。
「フィー、寝たの?」
マリ姉ちゃんも同じだ。
「まだ…」
「悪かったわ」
「マリ姉ちゃん?」
「フィーが魔法使えるなんて、考えたこともなかったから」
「ごめん」
「もう、謝らなくてもいい。今度謝ったら怒るから」
「うん」
マリ姉ちゃんの声には力が無かった。
「ああ、魔法使えないの、私だけか…」
けど、マリ姉ちゃんはマリ姉ちゃんだよ?
「けど、マリ姉ちゃんはいつも私を助けてくれるもん」
「そりゃ、私の妹を苛める奴らは絞めとかないと」
姉ちゃん…。格好いいぜ。
「で、なんで、隠してたの?」
なんでって…。
「えーと、目の色が赤紅じゃないのに魔法が使えたら、変でしょ?そうなったら家族みんなに迷惑を掛けるかもしれないし」
「フィー、」
「なに?」
「時々、大人みたいな事言うね?」
「え?」
マリ姉ちゃんは起き上がって上から私を見てる。
なんか迫力ある。
「お父様がいってた。フィーは時々大人になるって。普通の子供なら魔法が使えるって知ったら、嬉しくなって自慢するだろうに、フィーはそれをしないどころか、隠した。それは大人の考えだったって」
さすが、お父様、バレました?
いや、体格は子供だから。
「私もそう思う。だって、フィーはいつも私を立ててくれるもの」
そんな風に見ててくれたんだ。
嬉しい。
「だって、お姉ちゃんだもん」
「けど、サー姉ちゃんみたいに優しくないよ?」
「でも、マリ姉ちゃんは私の事好きでしょ?」
「そりゃ…」
「だから!私もマリ姉ちゃん、大好き!」
あれ?急に布団に潜り込んで寝てしまいました。
え?マリ姉ちゃん?
「どうしたの?」
「なんでもない!おやすみ!」
あ、涙声だ…。
「うん、おやすみ」
マリ姉ちゃん、私のお姉ちゃんでいてくれて、ありがとう。
私も、泣きそうだよ。
次の日の朝。
いつもの朝食。
お父様が開口一番、みんなに言う。
「今日の夜、だが、ハイヒット家の家族会議を行う」
なんだ?家族会議?初めてだよね?
「食事が終わったら、居間に集合だ。いいな?」
私達は素直に返事をした。
なんか、ワクワクしちゃうよ?
夕食後。
ご飯が終わっても、甘いものは入ることになっている。
居間には紅茶と小さいケーキやクッキーが用意されている。
嬉しい。
私とマリ姉ちゃんは早速クッキーを食べていた。
子供達が揃って、しばらくして、お父様とお母様がいらっしゃった。
「じゃ、いいかい?」
「お父様、会議って?」
お父様は優しく笑った。
「昨日、エリフィーヌが魔法を使えることを、私達は知った」
エリフィーヌって誰?と思ったら、私のことだった。
やっぱ、一文字違いって、嫌。
「そこでだ、丁度いい機会だ。おまえ達がこれからをどうしたいのか、家族としてどうしたらいいのか、皆と相談したいのだ。いいかな?」
「はい、お父様」
アンリ兄様、カッコいい。
「まず、フィー?」
「え、はい…」
「フィーはこれからどうしたいんだ?」
「…、えっと…」
どうって、?
「魔法が使えるんだ、魔法学院に行くんだろう?」
「お父様、魔法学院には行きたくないの」
みんなが驚く。
「なんで?フィー?」
「サー姉ちゃん、私、マリ姉ちゃんと同じ学校がいい」
「フィーはそれでいいの?」
お母様が優しく尋ねた。
「うん、駄目?」
「けど、隠して生きるつもりなの?」
「…、わかんない。けど、魔法学院には行かない」
行ける訳ない、と思う。
今の人生を生きるなら、避けたい。
「けど、みんなに迷惑、かかる?」
お父様はため息をついた。
「あなた?」
「あ、すまない」
この選択は思ってもいなかったんだね、きっと。
「魔法が使えることを隠すって、大変だぞ?」
「でも、今まで隠してきた」
「そうだが、なぁ、おまえ?」
お母様が仕方ないという顔で、お父様を見る。
「でもね、フィー。あなたが結婚すれば、隠くすのは無理でしょ?」
「私、結婚なんてしない」
「え?」
みんなが驚く。
どうやらルミナスでは結婚は絶対らしい。
裕福であれば、必須だ。
「結婚しない!ずっとお父様とお母様の側にいる。いいでしょ?」
必殺の笑顔でお父様を見る。
どうだ?いいっていってね?
「あ、ああ、いいぞ!」
「あなた!」
「お父様がいいって、いった」
チョロイぜ…。
「まぁ、今はいいでしょう。じゃ、フィーが魔法を使うことは、この7人の秘密よ?いいわね?」
「「「「はい」」」」
みんなが返事をした。
なんか、安心。
「次はサーシャだ」
「はい」
「サーシャは今年で魔法学院を卒業だが、これからはどうするんだ?」
「お父様、私は魔法を極めてみたい。学長が直属の研究チームに入らないかって誘って下さってるの」
「そうなのか?」
「そこに行きたい」
またまた、お父様がため息だ。
「サーシャ、おまえも結婚しないつもりか?」
「いつかは、するから…」
サー姉ちゃん、それはしないと言ってるのと同じだよ?
「けどな、女でそこまで極めることもないと、思うよ?」
「女だから、やりたいの。必要とされてるんだもの、頑張りたい」
お母様がちょっとため息混じりで話し出す。
「けれどもね、サーシャ、苦労するわよ?」
「いい、頑張ってみたいの」
お父様とお母様がお互いを見て、頷きあった。
「まぁ、いいでしょう。サーシャ、頑張るのよ?」
「はい、お母様」
サー姉ちゃんは嬉しそうだ。
良かったね、サー姉ちゃん。
アンリ兄様とジャック兄ちゃんは淡々と過ぎ、問題はマリ姉ちゃんだった。
「マリーは、これからをどうするつもり?」
お母様の問いかけに、こう言った。
「私はフィーを守る」
え?マリ姉ちゃん?
「マリー?」
「フィーが学校に入ってきたら、魔法は使えないでしょ?」
「そうだが、」
「だったら、フィーは何もしないで、いい。その分、私がフィーを守るから」
「マリ姉ちゃん…」
そう言い切ったマリ姉ちゃんは綺麗だった。
「マリー、本気なの?」
サー姉ちゃんが心配そうに言った。
ホントだよ?
私は自分の身は自分で守るよ?
「うん。だってフィーは私の妹だから」
「…」
姉ちゃん、あんた、格好いいよ…。
ジャック兄ちゃんがマリ姉ちゃんの肩を叩いた。
「マリー、おまえ1人が背負うことはないぞ?」
「ジャック兄ちゃん?」
「隣同士のところに行ってるんだ。いつでも俺達を呼べ?」
「そうよ?マリー、私達、そんなに頼りない?」
「サー姉ちゃん?」
「マリー、おまえだって俺達の可愛い妹だ。怪我をさせるわけにはいかない」
「アンリ兄様…」
私達、ハイヒット5人兄妹は無敵だ。
格好良すぎるっぜ!
今度、あの神もどきにあったら、いい仕事したね、って言おうっと。




