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私以外の人間を幕の中に入れたのは、初めてだった。
「フィー、いつから魔法が使えたんだい?」
アンリ兄様の質問は当然だ。
私は、こう答えた。
サー姉ちゃんが魔法学院に入学したころ、真似してたら、魔法が使えるようになったこと。
それからは、ここで、練習してたこと。
誰にも言わなかったのは、赤紅の瞳じゃないのに魔法が使えると分かったら苛められると思ったから。
と、粉飾した内容にしてみた。
3人は納得していたみたいだ。
よかった、3人がまだ子供の時で。
「じゃ、フィーはどんな魔法ができるんだ?」
ジャック兄ちゃん、あんた、ハウトゥー知りたがり過ぎ。
「…、全部」
「全部って、3つとも?」
「うん…」
そこは本当。
クラスはおそらく、デュークさんを超えます。
それは、言わない。
「この幕はどうなっているの?」
「うんと、中の事は見えなくて、音もしなくて、魔法を吸収するの」
「え?」
「どういうことだ?」
「魔法の練習するのに、ちょうど、いいから」
ジャック兄ちゃんはいきなり小屋を出て、幕に向って炎を飛ばした。
「ジャック!」
「やめろ!」
そうだよね、幕が破れると思うよね。
ところが、だ。
幕は魔法を吸収して、何事も無かったような景色が残る。
3人は口を開けて、呆けている。
ゴメン、こんな化け物で。
「すげーな!フィー俺にも教えろよ?どうやるんだ?」
ジャック兄ちゃん、あんたじゃ無理だ。
魔量が違う。
「ジャック、黙れ」
「けど、俺も知りたいんだよ!」
「ジャック、あなたでは無理よ」
「え?」
「フィーの魔量は俺達をはるかに超えている」
アンリ兄様、当たりです。
「どういうことだ?」
「フィーの魔量は、俺達よりも多いんだろう?」
私は頷いた。
そして、3人の目の色が変わるのに気づいた。
やっぱり、拒まれるよね。
私が魔法を使えることを家族の皆に黙っていたのは、皆に嫌われるんじゃないかって思ったから。
普通に赤紅で魔法が使えるんなら、わかるからいいんだけど、ね。
普通じゃないから。
普通じゃないってことは、異端ってことだもの。
もし言ったときに、拒まれたら傷つくと思う。
てか、今、拒まれてるよね。
仕方ないか…。
「こんな化け物が妹だなんて、嫌だよね…」
誰も喋らない。
「ごめんなさい」
頭を下げたまま、涙を堪えた。
ここで家族を失うんだ、辛いなぁ。
けど、仕方ないよ。
前から考えていたことを実行に移すときがきたんだ。
「今まで、優しくしてくれてありがとう。私、みんなが大好きだったよ」
魔法がバレた時は、この家を去るつもりだった。
血の繋がりは間違いないけど、前の記憶を持ったままの化け物なんて、家族として無理だもん。
周りに隠せるわけないし、そのウチにおかしな事になっていくんだ。
「お父様とお母様と、マリ姉ちゃんによろしくいってね」
それだけ言うと私は幕を消して、浮足で森へ向った。
こんなこともあろうかと、当分は生活出来るように基盤は作ってあったから、大丈夫。
ああ、魔法って、すっごく便利。
泣いてもいいよね?
こんな時の貯めに貯蔵してあった木の実やら、なんやらを少し食べて、寝ることにした。
藁のベットも作っておいて良かった。
虫の声がする。
こんなに静かなこと、フィーになってからは無かったなぁ。
寂しかったら、お母様の所に潜りこんだり、マリ姉ちゃんのベットで一緒に寝てもらったもんね。
ああ、1人だ。
デュークさん、1人になったよ。
寂しいなぁ。
「…、」
あれ?
「ぃー!」
あれれ?
「フィー!いるかぁ!」
「エリフィーヌ様!」
「いたら、返事しろ!フィー!」
「エリフィーヌ様!」
うそだ!
私はベットから飛び出して、外にでた。
お父様と侍従たちが松明を持ってこちらにくる。
「いたぞ!」
「フィー!」
お父様だ、お父様がいる!
私を見つけたお父様は抱きかかえてくれた。
「お父様!」
「フィー、フィー、大丈夫か?怪我はしてないか?」
「お父様!寂しかったよぉ…」
「よしよし、いい子だ。フィーはいい子だぞ?」
「お父様ぁぁ…」
「帰ろうな?」
「いいの?帰ってもいいの?私、帰っていいの?」
「当たり前だ、お前の家だ。帰ろうな」
「お父様ぁぁ!」
そのままお父様の胸にしがみ付いて、泣いた。
なにも聞かずに、お父様が背中を撫でてくれる。
家についた。
みんな起きて待っていてくれた。
「フィー!」
マリ姉ちゃんが飛びついてきた。
「どこに行ってたのよ!心配したんだから!」
「マリ姉ちゃん、ゴメンなさい」
「フィー!」
私とマリ姉ちゃんは抱き合って泣いた。
お父様が他の兄弟を促す。
「フィー、ごめん。僕たち、ビックリしたんだ。けどな、フィーを化け物なんて思ったことはないよ?」
「そうよ、フィーは大切な妹なんだもの」
「サー姉ちゃん、アンリ兄様…」
「さ、ジャックも?」
「うん、フィー、ごめんな?」
「ジャック兄ちゃん…」
私達5人は輪になって抱き合って、泣いた。
1人じゃなかったよ、デュークさん、私、独りじゃなかった。
「ワァアアアアン!、寂しかったんだ!」
「ごめんな?」
「ごめんよ?」
「フィー」
「馬鹿馬鹿!」
マリ姉ちゃん、馬鹿言い過ぎ。
「しかし、だ。お前たちも、フィーも、今日はやり過ぎだ!」
お父様の雷が落ちた。
「フィーが無事だったから、良かったものの。サーシャ、アンリ!ジャック!!おまえ達はもっと反省しなさい!」
「「「ごめんなさい」」」
「あなた、充分に反省してるわ。許してあげて?」
「…、そうだな。今後は気をつけるように、わかったな?」
「「「はい」」」
お父様は私にも、雷を落とすんだ。
「フィー、家出は良くない。もう二度と家出などしないように?いいな?」
「はい、ごめんなさい」
「じゃ、子供達、もう遅いから、今日は寝なさいね?」
「「「「「はい」」」」」
そして、子供は寝た。
私はマリ姉ちゃんのベットで一緒に寝た。




