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7歳になりました。
オカッパ頭から、ちょっと脱出。
お下げが出来るように、髪伸ばしてます。
ツインテールも、いいな。
今年からジャック兄ちゃんも魔法学院に入学。
ハイヒット3兄弟は特選クラスの有名人です。
てか、ジャック兄ちゃんも凄かったんだ。
見くびってたよ、ゴメン。
サー姉ちゃんは14歳になって、魔法学院でも、結構な顔。
学長にも会うくらいになったんだって。
ザック、サー姉ちゃんのこと、よろしくね。
アンリ兄様は12歳。
段々と立派になっている気がする。
さすが、跡取りだね。
お父様、ハイヒットはこれで安泰です。
マリ姉ちゃんは8歳。
今年から、私と一緒にダンスのレッスンに通うことになりました。
先生は…。
「いい、あなた達!ダンスは優雅に踊るのよ!」
ヨッシー先生。
7年、いや、8年になりますか?
お元気そうで、感動しました。
私、ワルツ、忘れてます。
不肖な弟子ですが、よろしくお願いします。
「お前、下手だな?」
誰だ、こいつ?
「五月蝿い…」
「女のくせに、刃向かうのか?」
こんな時は、必殺のポーズ!
ちょっと顔を俯けにして、泣き声っぽく喋る。
「こ、こわい…」
そうすると、何という事でしょう!
「やい!お前、フィーになにした?」
「ちょっと、私の妹になにするの?」
マリ姉ちゃんとその取り巻きが現れて、華麗に苛めっ子に制裁を加えるのです!
私、7歳でようやく自分が、それなりの美人、と知りました。
使えるもの使います。
これは私にとって、武器みたいなものですもの。
ダンス教室には、週に3度程、通ってます。
そいつは懲りずに、私にチョッカイかけてきます、が、オチョくってます。
8歳になりました。
相変わらず、魔法の練習を裏の森でやってます。
私の幕はデュークさん並みなので、防音もバッチリですから!
しかもです、中の様子がわからない。
そんな凄い幕に進化してます。
浮足も早くなりました。
ちょっとした車並みです。
特注の防風服を作りました。
まるで、ハリーポッターだ、あ!
箒だ!
箒に乗って移動しよう!
自分で魔法で作ればいいから、簡単だ。
作って乗ってみた。
あ、箒って、細すぎだよ。
痛いわ。無理だわ。
なんか、断念。
飛べないのかなぁ、想像力が欠落してるわ、私。
もう、自分でやるには限界が近いのかな。
いや、昔読んだネット小説には色々なパターンがあったぞ。
思い出して、研究しよう。
お稽古事は、ダンスの他に、言語のクラスが追加になりました。
あん?
なんで、あいつがいるいんだ?
私にチョッカイかける奴。
あ、あれか?
好きだから苛めたくなるタイプか?
人生、損するぞ?
いまや、マリ姉ちゃんがいなくても、クラスの皆が助けてくれるんだからな?
ほんと、美人って得だわ。
お願いしておいてよかった。
何事も起きずに、9歳になりました。
最近はツインテールがお気に入り。
今しか出来ない髪型だもんね。
マリ姉ちゃんは貴族の子女が通う学校に入学しました。
なんでも、魔法学院のハイヒット3兄弟の身内だという事で、大変にチヤホヤされるそうです。
人格歪まないといいね、姉ちゃん。
日中、1人でいることが多いです。
マリ姉ちゃんみたいに友達もいないし。
それよりも、魔法を磨くことに没頭したかったので、好都合。
今日も今日とて、そっと家を抜け出します。
今日は秘密基地に行くことにした。
浮遊の魔法を磨こうっと。
いつもの様に、幕を張って。
この幕も結構研究したんだ。
音漏れない、外の景色になじんで中の様子がわからない。
ここまでは去年の状態。
今年は、魔法がぶつかっても吸収する、に進化させた。
だから、大体のことはここで出来る。
それに家の敷地の中ってのが、安心だ。
移動の時間は少なくしたい。
今日は浮遊の高さの感覚を掴んだ。
もっと高く浮かべることを、確信する。
じゃ、今日はこれで終わりにしよう。
幕を消した。
え?
なんで、みんないるの?
「フィー、あなた、魔法が使えるの?」
あ、マリ姉ちゃん…。
「この幕、あなたが張ったの?」
サー姉ちゃん…。
「中で何をしてたんだ?」
アンリ兄様…。
「フィー、ちょっと教えろ?」
ジャック兄ちゃん、あんたはもう受け入れてるのか?
しかし、弱った。
この事態は想定していたけど、もっと後になると思っていた。
「フィー、なんで、隠してたのよ?」
マリ姉ちゃん、怒るよね。
だって、兄弟の中でマリ姉ちゃんだけが魔法を使えないんだもん。
そんなのいやだよね?
「マリ姉ちゃん、ごめんなさい」
「どうして?なんでフィーが魔法つかえるの?フィーの目は紫紺だよ!赤紅じゃないのに!」
「ごめんなさい、マリ姉ちゃん…、」
マリ姉ちゃんが自分が魔法使えないの気にしてたのは知ってた。
そのたんびに、使えなくてもいいもんね、って、慰めあってきたもんね。
私、マリ姉ちゃんを裏切ってたんだ。
何度謝っても足りないね。
「マリ姉ちゃん、ごめんなさい。嘘ついて、ごめんなさい。傷つけて、ごめんなさい…」
他の3人は黙って見ていた。
マリ姉ちゃんは自分の名誉にかけて、この3人には魔法を使えない悩みを見せてなかった。
そんなの、マリ姉ちゃんのプライドが許さなかった。
「フィーの嘘つき!フィーなんか、大っ嫌い!フィーなんか、フィーなんか、いなくなればいいんだ!」
そのまま、マリ姉ちゃんは駆け出していった。
「マリ姉ちゃん!」
追いかけようとする私をアンリ兄様が止めた。
「フィー、今いってもマリーは興奮しているから、無駄だよ?」
「そうよ。落ち着いた頃に私から話しておくから」
「サー姉ちゃん、ホント?」
「もちろんよ」
「ありがとう」
そして、そっと肩を抱いてくれる。
「さ、話してくれるね?」
アンリ兄様に言われると断れなかった。
私はもう一度幕を張りなおし、秘密基地に3人を迎え入れた。
最悪のことが、おこりませんように…。




