表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
28/192

28

凄い音がした。 



雷の音って、大きい…。



なんていってる場合じゃない!

どうしよう?どうしたらいいんだろう?

デュークさん!早く、早く、助けにきてよぉ…。


「おまえ、殿下に何をした!」


部下の男が部屋の中に入ってきて、様子を見て、慌ててる。


「殿下!殿下!」


その隙に逃げればいいのに、足がガクガクしてて、動けない。


「助けて!誰か、…」


誰かじゃない、誰かじゃ駄目なんだ。 


デュークさん!助けて!

私の保護者は、デュークさんでしょ?違う?


「デュークさん!!助けて!早く来てよぉ…」 

「貴様!」


殴られる!


その時、目の前の男が崩れ落ちた。


「カナコ!」

「デュークさん!」


良かった…。


「大丈夫か?怪我はないか?」

「怖かった、怖かったよぉ…」

「そうか、もう大丈夫だ」


私は飛びついた。

デュークさんは抱きしめてくれた。

いつの間にか破れていた服も直っていた。

優しいんだ。


「カナコ、落ち着け。いいな?」

「…、うん」


さすが、王様だ。

私は大人しくするしかなかった。

けどだ…。


周りの様子を見たデュークさんの言葉が止まった。


「カナコ、コイツ、生きてるか?」


あ、ヒクヒクしてる…。泡吹いてる…。


「何をした?」

「雷が、ちょっと、落ちて…」

「魔法を使ったのか?」

「使いますよ、貞操の危機だったから」

「貞操の危機?」

「だって、、こいつ、変態なんだもの」

「変態?」

「だって、兄妹なのに結婚したいなんて、そんな法律作ってルミナスに戦争しかけるなんて、変態ですよね?違いますか?」

「リリとか?やはり、噂は本当だったんだな…」

「噂?」

「リリに聞いても、答えてくれなかった。そうか…」


デュークさんはもう一度、私を抱きしめた。

とても、安心したのは、私の保護者だからだよね。


「しかし、面倒なことになったな」

「ですよね?」


そうだよね、変態でも皇太子なんだもんね。

しかし、だよ。

何度でも思うが、アルホートって国も、こんなのが跡継ぎで大丈夫なのか?

まぁ、違う国のことだから考えるのを止めようっと。


「まぁ、生きてるから大丈夫だろう」

「治療しましょうか?」

「おまえは魔法を使うな、いいな?」

「は…はい」


デュークさんは私を離すと、電話で指示を出した。

その姿に、ちょっとキュンとしてる、馬鹿な私です。


「今、人が来る。たぶん間に合うだろう」

「いいんですか?そんなノンビリで?」

「俺の妻に手を出そうとする奴など、死ねばいい」

「デュークさん…」


そうだよね、リリさんラブだもんね。

貴方の妻はリリフィーヌだけだ。

それは変わらないんだよね。


「けど、これでも、アルホートの皇太子でしょ?かなり拙いんですよね?」

「どうして、そう思う?」

「だって、最悪は戦争だって、ジョゼがいってたから…」


デュークさん、笑わないでよ?

ここ、笑うところ?


「アルホートは王が馬鹿じゃないから、大丈夫だ。心配するな」

「けど、リリさんじゃないってバレたかも…。それはアルホートの王も怒るでしょ?」


頭、撫でないで。

そんなことされるのに慣れてないんだから。


「気にするな、大したことではない」

「え?大したことない?」

「お前はカナコだ。リリにはなれないよ」

「リリにはなれない??」


ちょっと、待て。

今なんて言った?????

え?なんて言ったんだ、こいつ。

なんだなんだ?ふざけるなよ…。


気づけば私はデュークさんを睨んでいる。

私の変化に気づいたみたいだ。


「どうしたんだ?」

「じゃ、一体、私は何を頑張ってたんですか?リリさんになれっていったから、頑張ったのに…無駄だったの?必要なかったの?やらなくても良かったの?」

「カナコ?」

「なんなのよ!そんなにリリさんが良いんだ、私がリリさんじゃない、って、ばれて、も、平気なくらい、私なんかどうでもいいんだ?デュークさんにとって、私なんか、私なんか、ただのオバサンで、まともにダンスも踊れない、つまんない人間なんでしょ?」

「おい、落ち着つくんだ、カナコ」


急に肩なんか、抱かないで!

ふざけるな!もう、いい加減にして欲しい!

これ以上、私を苦しめないでくれ。


「いやだ!離して!近寄るな!来るな!」


もがけばもがく程、デュークさんは私を強く抱きしめる。


また、間の悪いことに、リックとジョゼが、医師を連れて入ってきた。


「陛下?」

「あ、ああ」


デュークさんが手を離した隙に、私は思いっきり距離を取った。


なぜだか、リックが、その私に近づき、手を取った。


「カナコ様?どうなさいました?」

「え?リック?」


凄い近い距離で、私を見る。


「何があったのですか?」

「え?」


その目にドキドキする。

なんだ?

デュークさんが怒鳴る。


「リック、その手を離せ!」


けれども、リックは離さない。


「どうなさったんです?」


なんか、怖い。


「離して…」


私は彼の手を振り切り、ジョゼの側に駆け寄った。

ジョゼの側は安全地帯だ。


「ジョゼ、私、帰る。日本に帰る!」

「え?」

「帰るから、お願い!帰して!」


リックがデュークさんに話してる。


「陛下、カナコ様は?」

「知らん、放っておけ!」

「いいもん、帰るから!ジョゼ、帰して!」

「ああ、帰れ!」

「いいよ、帰る!」


頭にきた!

自分から、デュークさんに近づいた。


「馬鹿!わからず屋!」



バッチっ!



デュークさんの頬を叩いてやったんだ…。


「デュークさんなんか、大っ嫌い!」


思わず、部屋を出た。




誰が、あの部屋になんか帰るもんか。




魔法があれば食べていけるんでしょ?

魔物がでたら、自分で退治すればいいんだろ?

日本でだって独りだったんだ、ルミナスだって独りで生きていける。


それなのに、涙が止まらない。


わかってるよ、好きなんだ。

私は、デュークさんが大好きなんだよ。

だから、リリさんの代わりが、我慢出来ないんだよ。

我が侭だよ、わかってる。


「カナコ様!」


ジョゼが追いかけてきた。


「どこに行かれるおつもりですか?」

「放っといて!」

「駄目です、あなたはルミナスの何を知っているというのですか?」


ジョゼ、当りです。

何も知りません。


もう、実は迷子です。


私は涙を拭いて、振り返り、ジョゼを涙目で見た。


「私、どうしたらいいんだろう?」

「カナコ様?」

「もう、わからないんだ」

「何があったのですか?」

「だって、リリさんになるために、あんなに頑張ってきたのに…。私なんか、リリさんになれないって、デュークさんがいうんだよ?私なんかどうでもいいんだ。五月蝿いから、面倒になったんだ。ルミナスに、デュークさんの側に、居場所がないんなら、日本に帰りたい…」


ジョゼは私の手を握った。


「カナコ様は、デューク様がお嫌いですか?」

「…」

「どうしました?」

「だって、嫌いなのは、デュークさんだもの」

「え?」

「デュークさんが私を嫌いなんだ」


目が合った。


「本当にそう思われてます?」

「そうだよ、だって、リリさんの体なんだよ?綺麗だっていわれたって、リリさんの体が綺麗なんだよ?私じゃなんだよ?わかってるよ、リリさんの代わりしなきゃいけないことぐらい。けど、…、我慢できないんだよぉ…」

「陛下はカナコ様にそう仰ったんですか?」

「だって、いつも、リリになれ、っていうんだよ?キスされたって、抱かれたって、リリさんなんだもの。私じゃない」

「カナコ様」


ジョゼの手が暖かかった。


「ジョゼ、苦しいんだ。しんどいんだ。逃げ出したいんだ。駄目?逃げては駄目?」

「わかりました。しばらくは、このジョゼがカナコ様を預かります。だから、しばらくお眠り下さい?いいですね?」

「うん、眠りたい」


ジョゼのスリープが、かかった…。

やっと、眠れる。









デュークさんの馬鹿。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ